主人公は80歳。
漫画”卒寿まり子”が可愛すぎる





日本の高齢化が急速に進んでいます。
今や人口の三分の一近くの人が65歳以上の高齢者ともいわれています。
しかし高齢者のイメージは介護や認知という面が強調されがちです。
日常生活者としての視線はどこにある。と思っていたところ、
80歳の女性を主人公にしたコミックがあることを知りました。

観察眼の漫画家、期待の新作

本の名前は「卒寿まり子」。3~40代向け女性漫画雑誌に連載されています。
作者はおざわゆきさんです。
おざわさんといえば代表作が「凍りの掌 シベリア抑留記」。
極寒のシベリアに抑留された旧日本軍兵士たちの過酷な生活を、
素朴な筆致で描いた秀作の作者です。
同人誌として描かれた作品が文化庁メディア芸術祭の新人賞に選ばれたと聞いて驚いた記憶があります。

著者の実父が体験したシベリア抑留の記憶を核に関係者に取材を重ね、2年半かけて全3巻の同人誌として刊行。2008年に完結した作品。76万人ともいわれるシベリアに抑留された日本兵の日常を描いた作品。(同人誌として出版:2008年8月17日(B5判、全3冊)2012年文化庁メディア芸術祭新人賞を受賞。

「コミティア」という自主制作漫画誌展示即売会を通して発表された経緯は、こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」の経緯とイメージが重なります。

2012年7月、一般書として刊行された再編集版が第44回(2015年度)日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞した。
新人賞 – 凍りの掌 シベリア抑留記 | 受賞作品 | マンガ部門 | 第16回 2012年 | 文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品

高齢者が主人公の漫画

そのおざわさんが注目したのが高齢者でした。
主人公は80歳のおばあちゃん。
その主人公が家出をし、人生初のインターネットカフェを体験したり、初恋の人と同棲を始めたりする姿が描かれます。
超高齢化した現代社会の荒波をたくましく乗り切っていく女性の波乱万丈の物語です。

朝のニュース番組でも取り上げられていました。

和装で執筆を続けるのがおざわさんの流儀。

作品を描こうとしたのは、おざわさんの母親が80代になったことがきっかけだったといいます。

「おばあちゃんというよりは母のイメージのまま80代になったという感じでした。ですから80代は私からしたらそんなに遠い存在ではないですし、高齢者の人たちが元気になってきている」

おしゃれな高齢者を描きたいと、ファッションチェックに出かけます。ファッションに興味を持つ人、知的好奇心も旺盛な人。
現実の高齢者を観察するうちに、それまで抱いていた高齢者のイメージが覆されたといいます。

「華やかなおばあちゃんが増えているということで、最初のコンセプトとしてはアイドルになれるようなおばあちゃんを描きたい」

いっぽう深刻な場面も描かれています


ボーイフレンドが運転する車が高速道路を逆走。認知症の問題に直面します。

田舎から都会に暮らす娘に呼び寄せられ、高層マンションで孤独な時間を過ごす女性も描かれています。
世間で起きている現実。小沢さんは自分がその立場に立ったらと意識して描いているといいます。

「身体能力の衰え、見た目の衰え、家族が変化していくこととか、自分が80歳になったときにそういう問題に直面した時どう思うか、自分自身の答えとして導き出して描いています」

老いと直面しながらも常に好奇心旺盛で行きてゆく主人公。
80代として描くのではなく一人の女性として描くことが大切だという姿勢に共感します。

「高齢者が夢を持つ部分をどこまで描けるのか自分へのチャレンジでもありますね。年取って嫌なことばかりではなく、案外ちょっと楽しいこともできるんじゃないかって思ってもらえると嬉しい」

まとめ

観察眼とメッセージ性その2つの両輪があって読者の心を揺さぶる作品が出来上がります。
「私は弱者になりたかったわけじゃない。だけど弱者になることは悪じゃない。自分がその立場になったらこう思えばいい。弱者の自分を乗りこなせ」
エンタメの要素は押さえながら、伝えるメッセージはきっちり伝える・・・。取材者・表現者として今後が楽しみな作家の一人です。




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