生き物らしく描く・美術解剖学に注目集まる

骨や筋肉まで描くキャラクターデザインの未来

映画やアニメ、立体造形などエンターティンメントの世界で求められるのが人間や生物のリアルな動きです。高精細度な映像の進化は、描かれたキャラクターのストーリーまでも感じさせるようなリアリティのある表現が欠かせなくなってきています。鑑賞者が映像に違和感を感じてしまった瞬間に物語は薄っぺらいものになってしまうからです。このため,リアリティのある人物やキャラクターの表現を美術に求める流れが加速しています。

しかしいくら絵がうまくても、キャラクターが本来持っているしぐさが伴わないとリアリティは伝えられません。リアリティを追求する上で欠かせないのが、生物の構造に対する知識です。動物だけでなく想像上のキャラクターも骨格や筋肉といった基礎構造を踏まえて表現することにより存在感をもたせることができるのです。そこで注目が集まるのが「美術解剖学」です。

美術的な解剖学は,アーティスティックアナトミーと言われ、病気を治すための解剖学であるアナトミー(医学的な解剖学)と区別されます。美術解剖学では基本的に骨と筋肉と表皮,とくに骨と筋肉の機能を知っていくことが中心になるといいます。

本日開催・美術解剖学セミナー

古生物の復元から現代アートまで幅広い分野で表現活動を続けているのが画家・イラストレーターの小田隆さんです。大阪・梅田の総合生涯学習センターで開催される『小田隆とHiroの美術解剖学講座』で本格的に外部向けの美術解剖学講座を、美術解剖学モデルHiro氏とともに開講するのだそうです。
小田隆とHiroの美術解剖学講座・2017年4月8、9日開講 – [STUDIO D’ARTE CORVO]

小田さんは、「動物の場合は,それぞれの動物において骨格・筋肉図を理解することはもちろん,爪を出す仕組みといった動物ならではの動きも押さえておきたい。人体と同じく,骨格図・筋肉図を正しく把握しておけば,想像上のクリーチャーのデザインなどにも活かせる」といいます。

骨格図を描いたら今度は筋肉を描いていくことになるが,そのときに重要なのが目に見える表層筋肉だけでなく,関節を動かすインナーマッスルを把握すること。わざわざ見えない筋肉の起始と停止,要は筋肉が骨のどこから始まってどこで終わるかを把握しないと,正しい筋肉の動きを想像できず,体の形を理解することにつながらないためだ。

 

小田隆(@studiocorvo)さん | Twitter

小田 隆 1969年、三重県に生まれる。1995年、東京芸術大学美術研究科修士課程修了。博物館のグラフィック展示、図鑑の復元画、絵本など多数制作。幅広い古生物学者たちとの交流の中で、科学的資料に支えられるとともに、オリジナリティに富んだ作品群を生みだしつづけている。大学では美術解剖学を応用した人体の描写を研究、授業を担当。画家、イラストレーター、成安造形大学イラストレーションクラス特任准教授