ガジェット愛好家のAちゃんです。
毎日のように誕生するさまざまな日用品。
クリエイターが製品に込めたメッセージを想像しながら眺めていると
ハッとするような発見があります。
不思議な存在感を持つキャニスター
東急ハンズ渋谷店で発見したコーヒードリッパーもその一つ。
富士山の形をしたステンレスのコーヒードリッパーです。
すべすべに磨き抜かれたワイヤーが特徴的な「Mt.FUJI DRIPPER」。
ありふれたコーヒードリッパーとは一線を画した存在感を示しています。
ワイヤーフレームの内側に濾紙を入れると、
灌がれた熱湯がコーヒーを抽出する様子が見て楽しめます.
つくったのは「イルカナ」。
地元の運送会社が2016年に立ち上げた若いブランドです。
ABOUT”ILCANA”
会社があるのは中央本線甲府駅に近い山梨県昭和町。
人口およそ2万人の街です。
イルカナという名前には”いるかな”(手に入れたくなるかな?)という
チャーミングな意味が込められています。
生活観を変える日用雑貨
イルカナがめざしたのは、地域の小さなメーカーでもやっていける商品の開発でした。
日々の生活の為に、より必要な器具は
作られていきます
.
例えばコーヒーを気軽にちゃんと
淹れられたり、出汁取りや紅茶にも
使えたりするものがあれば良いように
.
素晴らしい日本各地の仕事と
アイデアから生み出される良品は
低刺激で生活観をより豊かにします
めざしたのは生活観を豊かにする商品です。
気ぜわしいばかりの日常から豊かな気持ちは生まれません。
ツイッターに寄せられた”低刺激”というキーワードには
ゆったりとした生活を送る上で、必要のないものは削ぎ落とすという強い意思が込められています。
地域を超えたブランド作り
この意思を形にするためにイルカナがこだわったのは
日本各地で物づくりを続ける人たちの力を借りることでした。
イルカナが目をつけたのが新潟県の燕市の町工場でした。
燕市は金属加工では世界一流の水準を誇る町として知られています。
燕の名前を世界に轟かせたのは研磨技術。
町の至る所に金属加工の工場が2,000近く軒を連ねます。
金属を磨きあげる技術はアップルにも認められた高い精度を誇ります。
ところが燕市にはある約束ごとがありました。
それは産地ブランドでした。
燕商工会議所では「メイド・イン・ツバメ」認定委員会を設置して、商品の原産地と品質安全性を確認して認証しています。つまり燕地域で作られたことを証明する目印が「メイド・イン・ツバメ」です。 燕の工場がお客様のことを想いながら丹精込めて製造された商品であること、安心と高品質をお客様に約束するマークです。
燕市以外の町の商品に認証を得るためには燕商工会議所の承認が必要です。
イルカナの作り手たちは少し戸惑ったに違いありません。
「よそ者には自分たちの技を簡単に渡す訳にはいかない」
思っても見なかった障壁が現れたのです。
この難問を解く鍵はお客さんにあることをイルカナの作り手たちは気づきました。
お客さんが安心できる商品を作ること。
そのためには自分たちが信念として掲げる”低刺激”の日用品の良さを説得する以外にはないことを。
ワイヤーフレームのシンプルな形状を示し
刺激の少ない製品が消費者にもたらすであろう安らぎの時間の意味を
燕市の職人たちに説いて回ったのだろうと想像します。
かくして県境のルールを超えた
山梨と新潟の地域を超えたものづくりの絆が育っていきました。
まとめ
「メイド・イン・ツバメ」の認証には、
産地を超えたつくり手同士の会話があったに違いありません。
コーヒーの味を落とさないだけでなく、見た目に清潔で長く使える、
そして、眺めているだけでもワクワクしてくるような愛用品。
モノの形に込められた意匠を想像しなから読み解いていくと、
元気をもらえる物語が聞こえてきそうな気がします。