美の壺「天地の恵み 備前焼」

<File457>1000年の歴史をもつ日本最古の焼き物「備前焼」。

圧巻は、100日に及ぶ窯たき。

土を、薪(まき)だけで長時間焼き締めて生み出す景色と色は、不思議な魅力を放つ!

牛、すずめ、ねこ…「細工物(さいくもの)」と呼ばれる作品に込められた願いとは!?

代々大切に受け継がれてきた秘伝の土、8種類の土を混ぜた混淆土(こんこうつち)など、備前焼の命と言われる“土”にまつわる物語!

【出演】草刈正雄【語り】木村多江

美の壺「天地の恵み 備前焼」

放送:2018年10月5日

焼締

長さ85 メートル。 100日間に及ぶ窯炊き。

焼き締めを極めたい。半世紀にわたり備前焼独自の大窯に挑んできた森陶岳さん。焼き締めは釉薬を使わず長時間焼き上げる備前焼の真髄です。陶岳さんが目指す焼き締めの極みとは。

「人の心を捉えて離さない何か分からない えたいの知れない漂っているものが そこに現れてくるかこないか いうところが問題なので非常に明快なんです」半世紀に渡る挑戦。

人の心を捉えて離さない焼締の極みそれにはまだ出会えないまま。陶岳は言います。焼き物の美しさとは何なのか。日用雑器として作られた古備前の凄み。

この壺は室町時代茶器に見立てられ土間から茶室に上がりました。そして備前焼は茶の湯のうつわにも。さらに焼き締め方の工夫によって釉薬や顔料に頼らず様々な色や景色を生み出してきました。今や普段使いの器としても人気。

土塊の皿は料理をぐんと引き立てます。青く輝く盃これも備前焼です。千年の伝統を持つ備前焼。そのその多彩な魅力を味わいます。

揺らぐように天に向かう。その先に花。軽やかにたおやかに。焼締められた器は備前随一の土といわれる田土から生まれました。

海と山に囲まれた備前は有機物や鉄分が豊富な土に恵まれています。中でも田畑の地下から採れる田土は柔らかで腰があり形を自在に操れる土。代々蓄えられ受け継がれてきました。

「 どこを大胆に触ってどこを繊細に触るかっていうのが非常に難しいとこですね。なるべく土が行きたい方向へ。持っていってやるっていうか、あんまりこう思い通りに形が 整わないような方向」

土をねじ伏せるのではなく土に従うことで豊かな形が生まれると金重有邦さんは言います。きょう1つ目の壺。恵みの土、さわる喜び。

土を叩く。隠崎隆一さんが使う土は田土ではありません。

備前出身ではない隠崎さんにとって、代代の土はありません。

そこでそれまで捨てられてきた土を工夫して使うことを思いつきます。

混淆土です。混淆土から生まれた作品。その表情はまるで大地そのもの。

「大地の強さそのまんま。あまり手を加えなくてその自分の思いを単純素直に受け止めてくれる。つい手が伸びる触ってみたくなる焼き物よね」

混淆土とはどんな土なのでしょうか。「乾いた状態なのであまり違いはないように思えますけどもずいぶん違うんですよ」使っているのはおよそ8種類の土。粘りのある田土はつなぎとして少しだけ使い、主役はこれまで捨てられてきたクズ土です。

「すぐ砕けてしまうコシのないザラザラとした土が多いです」

玉石混交そんな思いを込めて混淆土と名づけました。

備前焼の窯は一週間以上の長丁場。土の質が不揃いな混淆土。慎重に窯の状態を見極め焼締めていきます。

炎の中で焼締められ、目覚めた土はやがて焼き物へと生まれ変わっていくのです。混淆土の作品たち。ゴツゴツした土塊の表情に思わず手が。

「なんで触りたいと思うのかっていうところですね。呼んで呼ばれてるんじゃないかなこの大地とか土とかにね。あの薪も水も同じところであるわけだから。僕ら 兄弟みたいなもので、触るというのは郷愁みたいなもの。無意識のうちに理屈抜きにその焼き締めに枠を触るという感触というのあるんじゃないかなと思うんですけどね」

土から生まれ土に帰る。土を触る喜びそれは生きていることそのものなのかもしれません。

土の形に願いを託す

江戸時代から昭和の初めにかけ備前焼の主役はこの細工ものでした。精緻を極めた形。

江戸時代備前焼に新たな息吹を吹きこもうと岡山藩は細工物を奨励します。土を形にして焼く。備前にはえいえいとして積み重ねてきた土の記憶が重なっています。

畑の片隅に小さな瓶。その中には土塊。神様と呼ばれています。

土を形にして祈る・この神社に奉納された牛の細工物。その膨大な数の牛たちを前にすると、人々の祈りが塊となって迫ってきます。江戸時代牛は富や幸せの象徴でした。牛に託した祈り。細工物の原点を見るようです。

「まさに原点ですね これはね。だから やっぱり 細工物っていうのは心の安らぎというかやっぱり そういう 癒やしというかそういうものは あの含まれてると思います」2つ目の壺。土の形に願いを託す。

細工物復活

戦後の高度経済成長期。備前焼の器が人気を集める中、忘れ去られていった細工物。ところが21世紀になると不思議な細工物が脚光を浴びます。

備前焼のイメージを覆すやわらかな色と形。これまでにない造形感覚。焼き肌もまるでクッキーのようです。

現代に細工物を復活させた島村光さん。三十歳の時故郷に戻り45年もの間もくもくと独自の細工物を追求してきました。

「現代美術を描いていて行き詰まりを感じたのです。その時小さい時見て怖がっていた細工物が浮かんできましてね」

不気味そのもの。神棚に鎮座する土の置物は少年の心に深く刻まれました。

「わかりやすく言うとキモカワイ。不気味ということは魅力があることでしょ。その中に。そういうものを感じる」

不気味。それは75歳になった今でも島村さんの心を震わせる感覚です。

十二支ではなく十三支と名付けた細工物たちには遅れてきたという猫が登場します。誠に不気味です。

細工物の釜は器物の釜よりもゆっくりと温度を上げていきます。細工の繊細な形を歪ませないためです。この45年で100回を超える釜に火を入れてきました。窯を重ねていくうちに土の色を大事にして焼きしめることが一番美しいことを知ります。気に入っている作品があるんだ。島村さんがそう言って見せてくれました。

「ちょうどいいサイズ」

窯を焚くための松の割木。その形を残したいと願いました。

「祈りですよ。すべてそこから始まってる。祈りというのは神がどうのこうのじゃなくて、自然に対しての畏敬の念とか。健康だとか、感謝というか、日々感謝の気持ちでしょうね」

普段づかいの備前焼

備前焼を普段遣いの器として楽しむ人が増えています。宗像さん夫妻は休日には備前焼で乾杯。土味豊かなお皿に料理を盛り付けるとちょっと贅沢な食卓に変身。

「ごつごつした味わいがかっこいい」愛用するのは備前の若手作家の作品。古い陶器のかけらのような味わいが特徴の皿です。

室町時代から江戸時代にかけて瓶や壺などを焼いてきた窯跡。

細川隆弘さんは時折ここを訪れます。陶片から作品作りの手がかりをつかむためです。

「かっこいい。勉強になります」土を手でちぎり、陶片の断面のように皿の縁を不揃いにします。都会のマンションぐらしを意識した土味豊かな器です。3つ目の壺。先人の技を今に活かす。

青く輝く磨きの器

青く輝く盃。これも備前焼です。

金属のように磨かれた表面には虹のようなグラデーション。備前に古くから伝わる磨きの土。粒子が細かく手先が乱れるとすぐに歪みます。

藤田昌宏さんの家は、この磨きの土と技を代々受け継いできました。

「別の器に使うのは境目があるけれど、新しいものを作りたいという気持ちが大きかったので僕は通り越した」

伝統の技を今に活かす。その決め手は新しい形でした。磨きは手間の係る仕事。何度も金属のヘラで磨きを繰り返し、ようやく輝きを放ちます。問題はこの細い軸。「あ折れちゃいました色々失敗は何とか」盃の細い軸こそがこれまでの磨きの器にはなかった形。しかし細い軸は折れやすく歪みやすいのです。

7月下旬藤田さんは小さな窯に挑みました。使うのは窯の一部だけ。薪代などを節約しながらも窯の回数を増やしより多くの経験を積むためです。

窯の終盤。炭を入れました磨きのあの青い輝きを作り出すためです。

「磨くというのはいい言葉だなって思ってるので、磨くことをどんどんこれからもやっていきたいなっていう風に思いながらつも作ってます」美しい器は先人の技にさらに磨きをかけ生まれてきます。

美の壺 「天地の恵み 備前焼」 | 協同組合岡山県備前焼陶友会

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