美の壺「食卓を彩る 箸」




<File453>食卓に欠かせない箸。

全国それぞれの場所で、それぞれの技が箸の文化を支えている。

樹齢120年の吉野杉から生まれる極上の光沢!

料理人絶賛!かやぶき屋根の骨組みから作られる竹の箸とは?

津軽発!菜種が生み出す模様。その驚きの製法とは?

世界中から1000近い数の箸を集めた、箸コレクターのイチオシの貴重な箸とは?

スペイン人建築家も箸デザインに参入!スタイリッシュな箸の魅力に迫る! 【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

【出演】草刈正雄【語り】木村多江

美の壺「食卓を彩る 箸」

放送:2018年10月21日

奥深い箸の魅力

私たちの食卓に欠かせない箸。その種類は様々。

長い時をかけて育まれた極上の素材を使った箸もあれば、匠の技によりひとつの域にまで高められたものも。

箸から見える日本の風土と伝統。そして新たな可能性。

今回は箸が織りなす箸にして奥深い魅力に迫ります。

吉野杉の箸

東京銀座にある箸の専門店「銀座夏野・小夏」。店内には色とりどりの箸がずらり。

およそ3500種類の箸を扱っています。自ら全国を回り厳選した箸を仕入れている店長の佐藤俊樹さん。箸の魅力って何でしょう。

「素材が違うだけで箸はかなり違います。あるいは違うものができると思います。地域性はやはりあると思います。杉が得意なところ、檜が得意な所、あるいは竹が得意なところもありますが、その木その木の色の楽しさみたいなものはとてもバリエーションが豊富でなんで」

自ら全国を回り厳選した箸を仕入れている店長の佐藤俊樹さん。箸の魅力って何でしょう。

「素材が違うだけで箸はかなり違います。あるいは違うものができると思います。地域性はやはりあると思います。杉が得意なところ、檜が得意な所、あるいは竹が得意なところもありますが、

その木その木の色の楽しさみたいなものはとてもバリエーションが豊富でなんで」

箸・こども和食器専門店『銀座夏野・小夏』/TOPページ

奈良南部。吉野郡。ここに長年使われてきた素材があります。

室町時代から人の手によって育成されてきた吉野杉です。

元々良質な建材として使われてきましたが、次第に箸にも使われるように。年輪の幅が狭いため、強度があり丈夫な箸になるのだとか。

この地で昔ながらの箸作りをするのが盛岡誠さん。

盛岡さんが手掛けた箸がこちら。樹齢120年の吉野杉から取れる赤みという部分を使った箸です。

赤く見える部分が赤みです。樹齢を重ねると油分が芯の方にたまり、中央から赤くなっていくといいます。

「三センチくらいの部分を箸にすることによって、光沢があったり艶がすごく良くて、美を求める部分。

いちばんきれいなものを求める部分に使う。箸にしたときにこの部分がいちばん重宝する」

光沢だけではありません。吉野杉は人の手でまっすぐ育てられるのが特徴。そのため木目が真っ直ぐに。この木目をきわだたせるため、カンナで削り上げていきます。光沢をたたえた滑らかな手触りの箸。

「年輪が水をあげてると私は感じる店に若木のように他の言い出せない杉の良さじゃなかろうかなと」

今日1つ目の壺は長い時が育む味わい

煤竹の箸

東京銀座。器や酒器にこだわる江戸前寿司の店があります。

店長の岡部寛之さん。虜となった箸があるといいます。それがこちら。

煤竹という煙で燻された竹で作られた箸。

「粘り強さです。適宜なしなりがいい」細くしなやかな煤竹の箸。どのように作られているのでしょう。

銀座おかべ 旬の鮨(寿司) 東京都中央区銀座 8-7-10

島根県奥出雲町。

ここには今も多くの茅葺き屋根の家屋が残されています。

囲炉裏から出る煙。天井へと上がっていきます。

屋根の骨組みとして使われている木や竹が煙で燻されます。

100年200年と燻され、変色した竹。これが煤竹です。

屋根を葺き替える時にしか取れない貴重な素材です。この煤竹を使い箸を作っているのが若月和宏さん。

「削ったときも丈夫で摩耗しない」

煤竹は縄で縛られていたため独特の模様が生まれます。縛られていた部分は薄く、それ以外は濃い色に。

「唯一無二の模様です。これを活かすことで他にはない箸ができあがります」細部にもこだわりが。

箸頭を削って様々な模様を出していきます。

「削りの浅い方は竹の線が直線に見え、削りの深い方は角度を入れると竹の繊維が模様になって現れる」

中まで燻された煤竹箸ならではの表情。悠久の時を感じさせる唯一無二の姿です。

伝統

日本で箸が一般に使われ始めたのは7世紀頃と言われています。

最初は竹や木をそのまま生かしたものがほとんどでした。

江戸時代になると箸に様々な加工を施こすようになります。

輪島塗、若狭塗など各地で塗りの箸が作られました。

その一つが400年前から漆器を作り続けている富山県の高岡市。

高岡が得意とするのが貝を使った螺鈿細工です。

螺鈿師の武蔵川義則さんです。

「高岡の螺鈿細工の特徴は強い輝きです、赤く光る部分と青く光る部分の使い分けをシながら細工を施します」

螺鈿に使われるのはアワビなどの貝殻の真珠層と言われる部分。螺鈿はこの部分を切り出し研いで使います。

高岡で主に使われるのは薄貝と呼ばれる0.1ミリの薄さに研いだもの。薄いため漆に乗せると海の色がより際立つといいます。

さらに別の技法も。貝の裏に色を施す伏彩色というもの。

顔料を塗ることで様々な色のバリエーションが生まれます。

色を施した薄貝を細かく裁断。黒い漆を塗った部分に貼り付けていきます。周りには色をつけていない薄貝を。最後に磨いて余分な漆を取り除くと・・・。高岡漆器伝統の松の模様が現れました。わずか数センチの装飾が食卓をぐっと華やかにしてくれます。

「普段遣いしてほしいです。螺鈿という文化を加えるわけですから色のバランスを考えながらやっています」

今日2つ目の壺は、小さな世界に息づくいにしえの技。

青森県南西部。岩木山を望む南津軽郡。

津軽塗の職人日村俊一さんです。

日村さんが行っているのは津軽塗の一つ”ななこ塗り”ななことは魚の卵という意味です。

ポップな印象の丸いつぶつぶが可愛いですね。この模様、地元のあるものを使って作られます。

「七々子塗は菜種を使って作ります。なるたけ丸い菜種を使うときれいな模様が出てきます」

青森県は古くから菜種の名産地でした。およそ300年前にその菜種を使ってななこ塗が始まりました。

白い顔料をまぜたうるしを箸全体に塗ります。これが丸い模様の色となるのです。そこにタネを蒔いていきます。

「厚さの加減と塗りムラのなさがポイントですが容易ではない」

菜種を箸全体にまんべんなくつけることが重要なんだとか。接着面を見た見ると菜種の周りに漆が盛り上がってついていることがわかります。

漆が乾いたらヘラで菜種を剥がしていきます。時間が経つと全体が飴色に。表面は菜種の形に沿って円形に盛り上がっています。

色漆を塗り重ねさらに時間を置きます。

研ぎ出していくと盛り上がった部分が円の模様になって現れます。仕上げに漆で磨き上げると鮮やかな青が深みのある色合いに落ち着き完成です。自然の素材と伝統の技が生み出す温かみのある表情。食卓にそっと寄り添います。

「瀟洒で出しゃばらない模様が魅力だと思っています。日常の中で潤いのある生活の一部として末永く使ってもらいたいと思っています」それぞれの場所でそれぞれの技が今も箸の文化を支えています。

多様

箸コレクターの菊池節夫さん。もともと中学校の教師だった菊池さん。箸を集め始めたきっかけは文化祭で箸の展示をシたことでした。

「32年前展示を片付けた後、これでいいのかと思って集め始めました」

集めた箸は千近く。最も古いのが匙とセットになった高麗時代の箸。

こちらは李氏朝鮮時代に女性が持っていたという箸。ケースの中に刀と一緒に収められるようになっています。

「土地土地にはそれぞれその土地の箸があります」

ほかにもの世界各国の珍しい箸があります。

蛇のような模様の石から作られた中国の箸。

ブッダが施されている箸はタイのもの。

そして近年、ヨーロッパでも箸が作られています。

金細工で有名なスペイン・トレドの箸。

白地に青の模様が入るこちらの箸はオランダ・デルフト焼きのもの。

今日最後の壺はさまざまなデザインを楽しむ。

東京丸の内にあるイギリスで人気のインテリアショップ。

最近話題となっているのがスタイリッシュな箱に納められた箸 。

一膳ずつ異なる色の漆で塗られ、パーティーやアウトドアを盛り上げるアイテムとして注目を集めています。

「カジュアルに洋の空間に溶け込む今のライフスタイルに合うお箸を追求しました」(河原幸恵店長)今様々な分野のクリエイターが箸に注目しています。

正規販売店 | カッシーナ・イクスシー

東京都港区の建築事務所。ここで働くスペイン出身の建築家、ハビエール・ビャール・ルイズ[note](Javier Villar Ruiz)1978年バルセロナ生れ、東京在住
ハプンスタンス・コレクティブ共同設立者/隈研吾建築都市設計事務所 設計統括室長ギャラリー・シリ共同設立者[/note]
さん。

四年前画期的なデザインの箸を生み出しました。それがこちら。

まず目を引くのは斬新な形。片方をひっくり返すと一本の角材のように。

この形は韓国出身の妻パクるみさんと使い勝手を考えながらデザインしました。大きな面を上にして使えば食べ物を掬いやすくなります。さらに大きな面を縦にして使うと食べ物を切りやすくなります。

「こうした美しさと知性を兼ね備えた機能的な道具は現代のライフスタイルになじむと思います」形だけではありません。カラーリングにもこだわりが。

香川県高松市。漆職人の松本光太さん。ハビエールさんたちが求めたのはビビットな色合い。そこで注目したのが高松の漆の技術でした。

「香川県の漆はいろいろな色を使う伝統があります。指定した色に近づけるにはふさわしい」

クリエーターの二人はこの箸に思いを込めていました。「伝統的な日本の文化と職人芸は新しいものを生み出すことができる。現代の暮らしの質を高めることができることを世界に知ってもらいたい」様々な発想によって箸の可能性は広がっています。


書籍等


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