美の壺「心なごむ白い器 粉引」




“粉を引いたように白い”と言われ、茶碗(わん)や酒器に人気の「粉引(こひき)」。

白い肌の理由は、なんと「泥」。

独特の味わいを生む陶芸家の技に密着!“育てる楽しみ”も粉引の魅力。

使う度に少しずつ色や手触りが変化、味わいが深まる謎を解明!

粉引を愛用する料理研究家が、器にぴったりの料理や盛りつけを紹介!

さらに、秀吉も所持したという茶碗など、粉引の茶碗の最高峰が登場。

現代の茶人がその魅力をひもとく!

【出演】草刈正雄,千宗屋,枝元なほみ,【語り】木村多江

美の壺「心なごむ白い器 粉引」

放送:2018年11月13日

プロローグ

東京世田谷区にある生活雑貨の店「而今禾」。暮らしにこだわる人たちの間で人気の器があります。粉引です。粉をひいたように白いことから名付けられました。李朝粉引と呼ばれるこれらの焼き物はファンの間で根強い人気を誇っています。独特の白い肌を生むのはなんと泥。使い込むほどに渋く良い味わいに変化していきます。粉引ならではの究極の楽しみも。どんな料理も優しく受け入れるたのもしい味方。使って楽しい。使うほどに愛おしくなる粉引の魅力をご堪能あれ。

東京南青山の骨董店「一元堂」です。粉引が初めて作られたのは15世紀から16世紀にかけての朝鮮半島でした。李朝粉引と呼ばれるこれらの焼き物は骨董ファンの間で根強い人気を誇っています。粉引が生まれた背景は清廉潔白をよしとする儒教が国の宗教に定められたことにあるといいます。清らかな心や行いを映すものとして白い器が求められたのです。「儒教の白とうことで、白を作りたかったのでしょう。白というのは厳格というか意思をあらわして、それで作ったんですが、粉引は汚れというか、使っているうちにシミだとかヨゴレだとかがずいぶん早く付いちゃうんです。儒教の人たちは真っ白が好きなのに汚れていくんで50年から70年のごく短い間だけ作られたのだと思います」祖国では短命に終わった李朝粉引。日本人は完璧ではない白の中に極上の味わいを見出したのです。今日一つ目のツボ白こそ無限の宇宙。
白い焼き物には粉引の他に磁器や白い釉薬をかけた陶器があります。磁器は白い石の粉を高温で焼いてガラス化させたもの。陶器は素焼きをした土の上からガラス質の釉薬をかけて焼いたもの。白は表面を覆う釉薬の色です。粉引はそのどちらとも異なります。粉引の白色は不均一でザラザラした印象。断面を見ると器の生地と表面をコーティングする透明な釉薬の間に白い層が挟まれています。この層に独特の味わいを生む秘密があります。朝鮮半島で途絶えた粉引の技は室町時代末期に日本に伝えられました。

粉引の器を40年近く作り続けている陶芸家の花岡隆さん。花岡さんの作品です。目指しているのは少し黄身を帯びた温かい白。「柔らかさのある白さ。どこかふっと抜けているような白さが好きです」粉引の湯呑を作ります。まず使うのは粘土。基本となるのは鉄分を多く含む赤土です。側面を削ぎ落とす面取りを施します。陰影が際立ち白に微妙な表情が出るのだと言います。いよいよ粉引の白の正体。不純物の少ない白い土です。水で溶いたものを濾して泥状にします。泥を使う所が大きな特徴です。泥は焼いても完全には解けないため生地に密着しにくい性質があります。食いつきを良くするため、半乾きの状態にかけます。泥をかける化粧掛けは仕上がりを決める重要な作業。厚すぎれば垢抜けない白になり、うす過ぎれば泥が吸い込まれ焼くと白が消えてしまいます。ぎゅっと引くのは内側にむらなくかけるテクニック。化粧掛けが終わった後も泥はゆっくり生地に馴染んで行きます。透明な釉薬で薄くコーティングし、焼きあがった器。土と泥。釉薬の性質を知り尽くした花岡さんでさえ仕上がりは焼いてみなければわからないといいます。「ただ厚く白土をかければま白くなるんだけどそれじゃつまんない。白土からボディの土の兼ね合いって言うんですかね。それはすごくいい感じに出るときとそうじゃない時とありますよね。毎回毎回違うところは面白さなんだろうなと思います」職人技とコントロールし尽くせない素材とのコラボレーション。これが粉引の絶妙な白を生むのです。

景色

粉引の器の中でも最高峰と呼ばれる三つの茶碗があります。雲州松平家伝来の「松平」褐色の部分は泥のかけ残しにより生地が露出したもの。先人たちはこれを景色としてことのほか珍重しました。こちらはおおらかに白化粧された楚白。加賀前田家に代々伝えられてきました。うっすらとついた紫や茶の斑は天井のシミに見立てられ雨漏りと呼ばれました。みっつめの茶碗は豊臣秀吉が所持したことで知られます。ある茶人が所蔵する美術館を訪ねました。武者小路千家若宗匠の千宗屋さん。初めてこの茶碗を手に取りました。「たっぷりした大きさ。存在感。茶碗の大きな魅力の一つは見込みの深さ。思わず引き込まれるかのような深さでしかも底のほうが造形的にも渦を巻いたような、そこが飽きさせない景色になっている。そこに白化粧の肌が溶け込んで、より深みを増している。味わいが少しあることによって、肌の白さがしっかり出ていて、それがこの茶碗の持つ清涼感。味っぽい茶碗と言うより凛とした茶碗だと思いました」歴史を重ねることで生み出された品格。今日二つ目のツボ。時が育む変化に酔う。
とある昼下がり骨董好きの男たちが集まってきました。古い粉引を持ち寄ってちょっぴり自慢し合いながら酒を楽しもうという趣向です。使い込んだ肌とどこかいびつな形が骨董好きの酒飲みにはたまらないのだとか。実は楽しみはこれからが本番。酒を注ぐと不思議。まるで花が咲くようにシミが広がっていきます。骨董の粉引の肌にはごく小さな穴が。釜で焼かれた際のガスの通り道だったと考えられています。ここから酒が染み込んで広がっていくのです。長い間使われることでシミが残り白い肌は味わいを増していきます。粉引の宴。酒を煽って時を飲み干す。

相棒

料理研究家の枝元なほみさん。粉引のごはん茶碗を20年愛用しています。粉引の器をおろす時には米やとぎ汁と一緒に煮るとシミができにくくなるといいます。「土鍋と一緒でだからちょっとお昼からお風呂」毎日の食卓に粉引の器は大活躍。優しい白は料理を美味しく見せてくれると枝元さんは言います。キャベツの緑と梅のピンクを合わせれば爽やかな和え物。他の皿と並べても邪魔をしない。何にでも合う心強い相棒です。「ニュアンスがあって料理を盛った時に、ちょっとホクロがあったり、ちょっと朱があったりするところがなんかその料理のざっくりを受け入れてくれるって抱擁力があるって言うか。イケメンの隣にいて緊張して、この人には私なんか何の意味もないんだなって思うじゃなくて、好きだそばにいるよみたいな感じのところがありがたいなって思うんです」今日最後のツボ。気がつけばかたわらに。

熊本県天草市。釣りをしているのは陶芸家の余宮隆さん。余宮さんは今注目の陶芸家。焼き物の産地唐津で粉引の技法を学びました。15年前から故郷天草に工房を構え器作りをしています。

余宮隆|うつわ SouSou|Online Shop

余宮隆|暮らしのうつわ 花田 作家もの和食器(陶器 磁器 ガラス 漆 鉄瓶 土鍋)通販の専門店

余宮さんの粉引の魅力は素朴な味わい。それぞれの素材の個性を大切にしています。そんな余宮さんの器作りに発想を与えてくれるのが自然と共にある天草の暮らし。アイデアをひねり出す必要はありません。自然のリズムに身を委ねているうちに暮らしが器の中に染みてくると余宮さんは言います。こうした考え方を持つようになったのはある出来事がきっかけでした。「囲炉裏があったのんです。中の灰を見て釉薬を作ったらどうなるか試したら黄色いアンティークっぽい粉引が焼けたんで今そこがヒントになって色々とその灰を自分で作ったりとか。灰って木が育ったところの 養分を木が吸い上げてその燃えかすが灰になりますから鉄分が多い所で育った木だと黄色くなったり青くなったりする」自然がもたらす変化を存分に受け入れることで自分らしい粉引ができたように感じました。天草の大地の恵みが進むべき道を教えてくれたのです。決して主張しないけれど気がつけばいつも隣に寄り添っている。粉引の器は家族の温もり。

取材先など

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余宮さんが、美の壺に : うつわ屋フラパニ オーナー日記

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