美の壺「アートを着る アロハシャツ 」

美の壺「アートを着る アロハシャツ 」

ハワイ生まれの南国情緒あふれる「アロハシャツ」▽まさにアート!4000枚以上集めたコレクターの、世界が憧れる名品とは?▽アロハシャツと日本人の深い関わりとは?▽父子二代でデザインを手がける職人の思いとは?▽21もの型を緻密に重ねて染める、型友禅のアロハシャツの凄技!▽パリでも絶賛!入荷と同時に売り切れる、着物リメイクのアロハシャツの現場に密着!▽十勝の“あの人”も特別出演?!<File478>

【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

放送:2019年6月7日

美の壺「アートを着る アロハシャツ 」

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夏、涼やかに彩るアロハシャツ。

カラフルで南国情緒あふれるアロハシャツは暑い夏に大人気のファッションです。

アロハシャツとは1900年代初めにハワイで生まれた開襟シャツのこと。

本場ハワイでは結婚式やビジネスの場での正装としても用いられています。

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京都で染められる艶やかな和柄のアロハシャツのご紹介。

アロハとして蘇った型友禅の技とは。

今回はアロハシャツの魅力をたっぷりご紹介します。

楽園

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東京原宿にあるこちらのお店「Fakeα」( 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1丁目8−21 ラ・レンヌ2F )。

原宿 ヴィンテージ 古着 ベルベルジン(調整中)

BerBerJin Staff Blog

1940年代から60年代にかけて作られたアロハシャツが並んでいます。

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「たとえばこの辺の感じの。たとえばフラガールが入っているものとか。

南国っぽい洋柄のトロピカルっぽい方が人気ですね」

フラを踊る女性はアロハシャツを代表するデザイン。

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観光ブームに沸いた1930年代から土産物としてハワイならではの柄が多く描かれました。

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こちらはコレクターが憧れる一枚。

鮮やかな色遣いにロマンチックな表情の女性たちです。

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「これはメニュー柄と呼ばれているデザインで、

マトソンラインという当時の豪華客船のメニューの表紙に使われた絵を組み合わせてコラージュしてプリントされたものです。

メニューでこの場所にいるこの女性が、向きは反対になってるんですけど、描かれています。こちらの女性もこっちの横の所に描かれてますね」

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アメリカ本土とハワイを運航していた豪華客船。およそ一週間の夢の旅でした。

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メニューの表紙を描いたのは当時の人気画家、フランク・マッキントッシュ。

このイラストは憧れの楽園ハワイの象徴となりました。今日最初のツ壷は憧れを着る。

アロハに魅せられ4000枚以上も集めたコレクター小林享一さんです。

買取実績 東洋エンタープライズ | 高価買取、コダワリの秘密基地 シークレットベース オブ アーモリー

コーリング・ハワイ(写真集)

「アロハシャツは洋服といってもデザインを来ているようなもので、99%柄がすべて。

実は僕にとって着なくてもいい作品なんですけど、なんだけど、実際着られるし、袖も通せて 、それを上手く着こなせばただの絵じゃない。アートを着るということにつきる」

アロハシャツは着るアート。

という小林さん、お気に入りを見せてくれました。

まずはハワイの観光ポスターにも選ばれた一枚。

「ランド・オブ・アロハという名前のシャツで、何がすごいかというと、オーバープリントという手法で、色を21色重ね合わせて作っているというデザイン。ノスタルジックというのは僕が一番好きな部分ですが、この柄を見ていると今のハワイじゃないんだけど、当時のハワイの気分に浸れるっていう、そこがいちばんの魅力」

こちらはゴーギャンの木版画をモチーフにデザインされたアロハ。

描かれているのは楽園タヒチの情景です。

大胆な配色とデザインがお気に入りのポイント。

まさにアートから生まれたアロハです。

アロハシャツの中でも最高傑作のひとつと称えられているのがこちら。コレクターの間で百虎と呼ばれているデザインです。

「この柄は今アロハシャツを集めている人たちの中で、一番みんなが欲しがっている柄じゃないかな。虎一匹一匹見た構図がものすごくかっこいいのですよ。どいつが主役なのか分からないぐらい。やっぱり迫力がもうすぐある。いろんな和柄のデザインがあって、すごいが沢山あるんですけど、そんな中で迫力があるのが一番。この感覚はまさに芸術じゃないですか」

世界でも数枚しかないという百虎が色違いで4枚も。20年以上かけて集めた執念の結晶です。

小林さんにはアロハのとっておきの楽しみ方があると言います。

それはその日の気分で選んだアロハを額に入れ眺めながらの一杯。

額はこだわりの特注アロハが一服の絵画のように。

「波を取り合うようにたくさんのサーファーがテイクオフしているシーンというのが 僕はすごく気に入っています。その波の中に自分が入っている感じです。見ているだけでだんだん自分が波乗りをしているような雰囲気になっていくお酒飲みながらの楽しみですね」

着てよし眺めてよし。アロハシャツは心の楽園へといざなってくれます。

継ぐ

アロハシャツの普及には日本人が深くかかわっていました。

ハワイへ移住した日本人の着物が影響を与えたと言われています。

こちらは1936年に作られたアロハシャツ。

当時ハワイのメーカーは京都の職人にもデザインを委託し、その布を輸入していました。その流れは今も受け継がれています。

アロハシャツのデザインを手がけている細見英知さん。

細見さんの図案制作は手書きにこだわります。

それはハワイの空気感を繊細にデザインしたいという父・豊さんから受け継いだやり方です。

「これはうちの父が柄。アロハ用に。1950年より少し前かな。父は友禅の塾というんですが、そこにおりましたもんで」

当時ハワイからの注文は羽織裏や長襦袢に使われる派手な和柄が人気でした。

しかしデザインは次第に変わっていきます。

なんとも奇妙な色使い。

「ハワイをイメージしながら色使いをした。言葉だけでは、波と鳥を描いてくれという注文があった。ハワイの柄を描いてくれって言われても多分分からなくなってしまった可能性がある。創造するしかないんですが」

ハワイの波は日本と同じ波なのか。

南国の鳥はどんな色をしているのか。

「これなんて信じられない色使い。松の葉の描き方ヤシというアイデアがあったのか。たぶんなかったと思いますがね」

まるでヤシのようなまっすぐ伸びた細長い木。

でも葉は松の葉の形をしています。

未知の世界を想像力だけで描く。

そんな中父、豊さんは生地問屋からの招待でハワイを訪れます。

1955年のことでした。

1ヶ月半もの滞在中、ハワイの風景や動植物。

伝統の暮らしや文化をつぶさに観察しスケッチに残しました。

ハワイの空気を肌で感じた豊さん。帰国後作られたのがこちら。

友禅の塾で培った細やかなデザインと色使い。

友禅のぼかしなどの技法を用いることで、ノスタルジックなハワイの風景を描きました。

「ハワイの雰囲気をやっと知ることができたという落ち着きが出てくるんですかね。楽しみながら描いた雰囲気が出てます」

着物の職人がアロハシャツを描く。

それは着物の歴史の中でもエポックメイキングな出来事だったと英知さんはいいます。

その技と思いは70年たった今も受け継がれています。

今日二つ目のツボはアロハを染める京の技。

スタジオフィリオ | TEXTILE | 京都市

亀田憲明さん。創業100年になる染物屋を営んでいます。

「昔の着物の振袖の図案なんですけど、洋服の型に彫りなおしてアロハシャツにして染めて販売しています」

かつて着物の記事を染めていた亀田さん。

倉庫に眠っていた6000点もの図案でアロハシャツを作り始めました。

「着物の需要とともに工場も縮小していきまして、なんとかこういう昔の着物の柄をもう一回染められないかという時に、一着作ってみようという事でそれが17年前なんですが作りました」

用いるのは型友禅の技法。色ごとに染め方ととう版を作ります。

一つの図案で10から25の染め型が用いられます。

色作りは先代から受け継いだ秘密な配合。

染料をミリグラム単位で測り色を作ります。

湯で溶かし糊と合わせてよく混ぜます。横23メートルの布に型で一色一色染めていきます。

この図案に用いられるのは21色。

全ての色がずれないよう型を重ねていきます。

「型絵が大事なので、そこがやっぱりポイントかな。一ミリ違ったら相当ずれますんで、一ミリの五分の一を気にしながらやっています。もちろん上と下と力が崩れると上下の色は変わりますので、もちろん上から下まで同じ力で行ってます」

100年もの間受け継がれてきた型友禅の染めの技。

一色一色を丹念に刷り込んでいく手作業ならではの風合いです。

染め終わった生地は蒸し釜に入れ色を定着させます。

丹念に水洗いし余分な染料や糊を落とします。

型友禅のアロハシャツが完成しました。

多くの版を重ねて染める伝統の技。

豪華絢爛な日本の文様が鮮やかに浮かび上がりました。

「日本人の精神性だけは絶対に変えずに、他は全部買えてもいいなというくらいの気持ちはあります。ですから職人さんが一生懸命丁寧に染めてくれるものを世に問うていくというのも変えたらあかんことだなと思っています」

時代が変わっても生き続ける伝統の技がアロハシャツに詰まっています。

TV放送のお知らせ 7/28 [Eテレ 美の壺・選] | 京友禅アロハシャツ Pagong ~パゴン

生かす

着物を買い取り、アロハシャツに リメイクする会社

櫻井鉄矢さん。

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