中世の奇才ヒエロニムス・ボス─狂気に満ちた絵画がフィギュアで復活

アニメやフィギュアファンなら思わず身を乗り出したくなる一風変わったフィギュアが海外の美術愛好家の間で話題になっています。

木の幹の先には卵の殻のような空間があります。殻の中は酒場のようです。殻はそのまま男の上半身になり、こちらを向いた男の顔が何かを語りかけてきそうな気がします。謎めいたモチーフが何を意味しているのかよくわからないキャラクターたちの生みの親は、中世に活躍した奇才画家・ヒエロニムス・ボスです。

4月18日から始まった「バベルの塔展」。見どころの一つが、巨匠ブリューゲルとともに来日した、世界で2~30点しかないといわれるボスの油彩画のうちの2点です。【公式】 ブリューゲル「バベルの塔」展

ヒエロニムス・ボスはモンスターが跋扈する幻想的な絵画を描き、16世紀のネーデルランドの画壇に衝撃を与えました。中世から近代へ、カトリックからプロテスタントへと価値観が揺らいだ時代、ボスの絵はこの地を治めたブルゴーニュ公フィリップやスペイン国王フェリペ2世などに気に入られました。

フィギュアのモンスターたちが描かれているのが、ボスが40歳から60歳のときに描いたとされる「悦楽の園(えつらくのその)」。

左翼には神がアダムにイヴを贈る場面、右翼には地獄で拷問を受ける罪人などが描かれています。なんといっても奇っ怪なのは絵の中を蠢く異形の者たち。猥雑で人目を引く裸体の人物、空想上の動物、巨大な果物、石などが積み上げられ天国と地獄のぞっとするような世界を、想像力豊かに詳細に描き出したものだとも言われています。

このフィギュアを制作したのは、3Dによる古典絵画の再現を専門にするオランダのParastone社です。ボスの絵に登場するあらゆる人物や獣は、非常に精密に描かれているため、それらを再現した小さなフィギュアはじっと眺めていても飽きないのだと言われます。ボスの作品シリーズも米Amazonやミュージアム・ショップで販売されています。(日本では一部を横浜美術館の通販などで購入できます)

ボッシュ| パラストン