早春のスウェーデン、ストックホルム。築100年の古民家に暮らすサンナさん一家は春に向けた家の模様替え真っ最中だ。サンナ・フィリング・リードグレンSanna Fyring Liedgrenはスウェーデンで人気のフードスタイリスト。イースターに向けて親戚20人分の料理を仕込むサンナ。“フィーカ”と呼ばれるお茶タイムで気分転換する夫のオスカル。番組は、サンナさん一家のイースターまでの1週間を取材、「真の豊かさ」の秘密に迫る。北欧インテリアや季節の料理、お菓子も続々登場。
【出演】
サンナ・リードグレン
オスカル・リードグレン
フローラ・リードグレン
テア・リードグレン
ヒューゴ・リードグレン
2018年6月13日、7月5日
サンナのすてきな北欧スタイル
スウェーデンではイースターを境に季節は一気に春へ。
冬の二重窓を外し、春の模様替えにいそしむサンナとオスカル。
「春を待ち望んでいたわ」
娘たちはサンナさんが作る春の料理を心待ちにしています。
アーモンドクリームたっぷりの季節のお菓子セムラ。
近くの森で摘んだベリーのジャムは
ハート形のワッフルでいただきます。
サンナさんは四季折々の恵みを暮らしに生かすフードスタイリスト。
シンプルかつちょっとした工夫で日常を彩るライフスタイルが今スウェーデンで人気です。
たとえばこの日のテーブルセッティングは。
「ナプキンの上にミモザを置いたらどうかしら」
「そして紐で結ぶの。きれいだと思わない」
サンナさんが腕を振るったごちそうが並ぶイースター。
各地から集まった家族が食卓を囲んで再開を祝います。
北欧スウェーデンの春を待つ家族の一週間にお邪魔しました。
「こちらは 夫のオスカルよ。職業はデザイナーよ」
「娘のフローラとテアよ」
「ママが作るお菓子はとってもおいしいの」
これから春のお菓子を作ってくれるそうです。
「これが今日使うルバーブ」
スウェーデンを代表する春の野菜ルバーブです。
「ルバーブは春の訪れのしるしなの。春が来たんだなって」
ルバーブは茎を食べます。酸味がありジャムやデザートによく使われます。
「ほらこのエプロンの柄もルバーブよ。オスカルのお母さんがデザインしたの」
ルバーブは見ているだけで元気が出てくる野菜です。
サンナさんのルバーブパイ。まずはバターをどっさり溶かします。
そして砂糖、小麦粉、ベーキングパウダーと混ぜてパイ皿に敷き詰めます。
「ルバーブパイはいつも簡単なやり方で作るの。簡単だと何度でも作れるでしょ」
ルバーブには片栗粉をまぶしてとろみをつけます。
砂糖を足してパイ生地に入れるだけ。
「簡単でしょ。それが大事なの。お客が来てからでもパイが作れるのは便利でいいとおもうわ」
「すごくおいしそう」。今年はこれがはじめてね」「この端のところがおいしいの」「あ、誰か来たみたい」
「いらっしゃい。あなたもルバーブパイを食べない」「ルバーブパイがあるの。うれしい」「クララよ。うちの息子の彼女なの」
生クリームの甘味とルバーブの酸味が溶け合い、相性は抜群。
ルバーブのパイはサンナさん一家に近づく春を知らせます。
食卓を飾るのに欠かせないティーカップ。実はこれサンナさんのおばあさんが絵付けしたものです。
野原を飛び回る小さな虫たちをおばあさんは見ていたのでしょうか。
「壊れているわね。でも捨てられないわ。祖母が絵付けしたものだから」
「完璧でないものには魅力があると思う」
サンナさんの家は地区100年の古い家。リンゴの樹に囲まれた自然が気に入り求めました。
15年前。購入当初は荒れ放題でしたが家族で手入れを重ね、天井が高く開放的な今の家が完成しました。
壁一面に飾られているのは家族の写真。小さなころの子どもたちや、おじいさん、おばあさん。みんなで居心地の良い空間を作り上げました。
夜9時のリビング。
ちょっと薄暗い中に家族が集まっています。
「勉強は終わった」
家族のお茶の時間。はちみつたっぷりのお茶を飲みながら一日に起きたことを語り合います。
「いいものよ落ち着いて。そう思わない」「やらなきゃいけないことがたくさんあると寝る前に考えるのはつらいの。そういうことから解放される」
ほのかな明かりを家族で囲みゆっくりするのがスウェーデンの夜の過ごし方です。
オスカルさんピアノの演奏を始めました。このピアノオスカルのおばあさんが芝刈り機と交換して引き取り使えるようにしたのだとか。
「ヤン・ヨハンソンの曲ね」「さあ、読書の続きをしようか」
サンナさんの朝の野日課は犬のミムランとの散歩。
この日の外の気温はマイナス5度。スウェーデンで飼い犬と一定の時間触れあうことを法律で進めています。
まだ雪が積もっています。一週間後には春の祭りイースターが始まります。
「きれいにしなくちゃ。ミムランが冬中座っていたから。これも洗わないと」
イースターに向け部屋の大掃除が始まりました。
「昔は大掛かりな模様替えを春が来る前にやったのよ。今は忙しい生活だから簡単にね」
「春の色にしましょう」
どこの家でも季節ごとに模様替えをするのだそう。春を象徴する色、黄色でクッションを統一しました。
「冬は暗くて寒くて中にこもりがちなの。だからできるだけ早く春を家に取り込むの」
掃除が終わるとお出かけです。皮には氷が張ってまだ冬の気配。
町の中心に差し掛かりました。ストックホルムは人口およそ95万人。北欧ではもっとも多くの人が暮らしています。
中心街からさらに車で10分。到着したのは動物の庭という名のユールゴーデン。
「こんにちは。春の買い物に来たの」
サンナさんがやってきたのはお花屋さんです。温室育ちの花が咲き乱れています。
「小さい花がいいわ。テーブルにおいても会話の邪魔にならない。これも買いましょう同咲くか楽しみ。春の期待を与えてくれるわ」
この日の一番のお目当ては。手に取ったのは廿日大根の種でした。
家に帰るとサンナさんは古新聞で何か作り始めました。
「世界で一番安い植木鉢ね」
廿日大根の種を丁寧に植えていきます。小さく可憐な花を咲かせる廿日大根に命の息吹を感じ取るのです。
「ここは太陽の光が一番履いてくる場所ね」
窓辺にも春を迎える準備が整いました。
スウェーデン人が好きなこの季節限定のお菓子があります。それはセムラと呼ばれるパンのお菓子。
サンナさんのセムラはカルガモンをたっぷり入れたスパイシーな風味が自慢です。生地を焼いている間に中身を作ります。
「アーモンドをたっぷり使うわよ。まずアーモンドをお湯でゆでるの。冷ますと皮をむきやすくなるわ」
砂糖といっしょにミキサーにかけるとアーモンドペーストの出来上がりです。
「中身を掻き出して、温めたミルクを少し。そこにアーモンドペーストを入れて混ぜ合わせます」
再びパンに戻します。
そして甘味控えめな生クリームをたっぷり乗せて、パンにをかぶせるとセムラの完成です。
家族もサンナさんのセムラが大好き。
「蓋を取らないと生クリームがはみ出るよ」
家族でお菓子とお茶を楽しむひととき。スウェーデンではこうした時間をフィーカと呼びとても大切にしています。
残ったセムラはオスカルさんの会社へのお土産にします。
朝8時オスカルさんは会社に出勤。やってきたのは川のほとり。ここは船の停泊所。定期船が頻繁に出ているのです。
ストックホルムは水路に点在する島々を含んだ都市です。
職場まではいくつかの島を経由して向かうのです。
島には橋が架かっているのでバスでも行けますが、オスカルさんは船での出勤がお気に入りです。
船内には温かいコーヒーが用意されています。
「コーヒーはサービスだからいつも船内で飲むよ。とてもいいよね」
フィーカをしながら船出勤。目的地までは40分。中心街に近づいてきました。
ノーベル賞の晩餐会の会場もこのあたり。
オスカルさんのオフィスは歩いて5分ほどのところにあります。
「おはようマティアス」
オスカルさんの職業はグラフィックデザイナー。CDジャケットやお店のロゴなどをデザインしています。
仕事を始めて30分。職場でも必ず一日に二回はフィーカの時間があります。フィーカで欠かせないのが酸味の利いたコーヒー。
仕事仲間が集まりフィーカが始まります。
「この大きさが好きなんだ。すごくおいしい」
フィーカの時間は15分から30分。仕事と関係ない情報を交換して、気分転換を図ります。フィーカの効果なのか、スウェーデンの一人当たりの生産性は日本のおよそ1.5倍といわれています。
「フィーカの時間はだれもが平等だから、仕事の役割に関係なくお互いのことを知ることができるんだ」
「いいキャッチフレーズだね。フィーカの時間はだれもが平等」
フィーカ。なんだかいいですね。こちら国民高等学校でもフィーカはカリキュラムに組み込まれています。コーヒーももちろん無料。
先生と生徒が同じテーブルについて語り合います。
SNSでのコミュニケーションが増えたのはここスウェーデンでも同じ。顔を合わせて会話するフィーカはより大切な時間になっているのです。
町にはフィーカの歴史を感じさせるものもあります。
ビンテージ食器を扱うお店。1950年代以降フィーカを楽しむための様々なカップが生れました。
「置いているのはスウェーデン製ビンテージの磁器です。50~70年代のものですね。私たちにとって美しいカップをテーブルで楽しむことはとても大切なことです」
「テレビの影響でテレビ用のフィーカカップができました」
「ここにパンを置いて準備完了。ほらここにも自然の柄がありますよ」
お皿にびっしりと描き込まれているのは葉っぱの模様でしょうか」
こちらはスウェーデンで最も有名な模様が描かれたカップです。ベルサと言います。理想のフィーカという意味が込められています。
「ベルサは木々や花に囲まれている場所。テーブルとイスがあり、ゆったりと話す場所。ハチの羽音を聞きながらフィーカするそんな場所です」
サンナさんも家でフィーカです。
「牡蠣の殻を使っているの。スプーンの代わりに」
春分を過ぎるとイースターはすぐそこ。町もお祭りの準備をする人たちでにぎわい始めます。
みんなが買い求めているのはポスクリースというイースターならではの羽飾り。
白樺の間にカラフルな羽をつけたポスクリースをどこの家でも飾り春を迎えます。
イースター三日前、スウェーデン最大の島でちょっと変わったパレードが行われます。
5万人が暮らすゴッドランド島。
サンナさんの動画集
関連サイト
北欧フィーカ|サンナのすてきな北欧スタイル|サンナの贈りもの|サンナ・フィリング・リードグレン – Sanna Fyring Liedgren|スウェーデン|Scandinavian fika.