美の壺「未知への扉 図鑑」




今、空前の図鑑ブーム!▽1800冊集めた“図鑑コレクター”のイチオシの図鑑とは?▽図鑑の原点の原画公開!▽どこまでも細密に、どこまでも美しく。「ボタニカルアート」の制作に密着!▽解剖学者の養老孟司さんが、少年時代夢中になったドイツの昆虫図鑑。▽虫の命を未来に届ける「サイエンティフィック イラストレーション」とは?!▽図鑑ブームの火付け役となった出版社の、図鑑開発現場に迫る!<File482>

【出演】草刈正雄,養老孟司,杉崎紀世彦,杉崎文子,木村政司,【語り】木村多江

美の壺「未知への扉 図鑑」

放送:2019年8月23日

知らないものに出会ったら是非図鑑を開いて見て下さい。日本には本当にいろんな図鑑があるんですよ。最高の技術で描かれる図鑑絵からおもしろ図鑑まで、図鑑で人生が変わったという養老孟司さんも登場。今日は図鑑の深い世界にお連れします。

図鑑の達人

図鑑の山に埋もれて暮らしたい。そんな野望を実現した人が図鑑コレクター斎木健一さんです。「図鑑は全部で大体1800冊ぐらいあるかなっていう感じです。友達はここに来ると古本屋じゃないかって言われて、古本屋に見えるらしいんですけど、落ち着く空間だと自分では思ってます」1800冊の自慢のコレクション。斎木さん。お気に入りの図鑑とは。「もちろん名前調べるとかってこと以外に美しさそのものを楽しむっていうのもあって、美しさのそのものを楽しむという図鑑で、しかも工夫が凝らされているのはこの「美しき小さな雑草の花図鑑」雑草ってばその辺に生えているんで、あんまり気にしていないんですけど、実はものすごくきれい。例えばコレなんかただのハコベなんです。ここにも工夫があって実際の大きさはここにちっちゃく。見えないと思うけどちっちゃくあるのが実際の大きさ。それを拡大してこんなにきれいな。でも実際に気がつかないんだけど図鑑が美しい世界に導いてくれる。日常的にあるものがわかるのがこちらの街角図鑑。生き物だけじゃなくて身の回りにあるものなんでもわからないものがわかったら面白いだろうなと思うわけなんですね。例えば電柱。電柱にいろんなものがくっついてますよね。あれが一つ一つなんなのかって書いてある。あの電柱にくっついてるもんなんなんだろうってですね教えてくれるって素晴らしい。旅行ガイドブックを持って旅行に行くと、そこにあるただの神社が戦国武将がお参りしたとかって言うと一気に何か違うように見えてくる。ただの電柱も図鑑でそれを知ってると、こんな役割をしているのかと。雑草を見た時には多分すごい綺麗だから見てみようと。図鑑を持っているとガイドブックを持ってるかのように本当に世の中に違って見えてくるんで、どんな方向見ても楽しめるんです。是非いろんな時間を楽しんでいただければと思います」一つ目のツボ図鑑は旅の案内人。

植物図鑑

日本の図鑑の歴史をひもとくならば、まずはこの一冊。昭和15年に出版された牧野日本植物図鑑。日本の植物学の父牧野富太郎78歳の時の大作。初版の5000部が瞬く間に売り切れ、すぐに増刷を重ねたと言います。収められた植物は3,206種。三段組の斬新なレイアウトで、全ての植物に絵と解説がついています。牧野の植物研究の集大成。「昭和6年が最初の下打ち合わせが行われたということが博士に日記からわかります。それで9年かけてつくった」植物の絵の原画が残されていました。牧野の描いた絵の上に、牧野の指導を受けた画工学校の絵を加えて揃えた3200の植物画。調べたい植物がしっかりと見分けられるように牧野は植物の特徴を正しくわかりやすく描きました。茎の断面や花の内部、根など大切な情報も盛り込んでいます。数多くの新種も発見。命名した植物の学名は1500を超えます。牧野はこんな言葉を残しています。雑草とか雑木とか一口に言って片付けてしまう草や木きにも一つ一つに名があり物語が秘められています。「薪のが考えていたのは日本の植物相を解明して植物誌を作りたい。図をくっつけて植物の解説をその全部の種類でやりたい」78歳で図鑑を出版した後も牧野は自宅の離れで植物研究に没頭しました。愛する植物と向き合う暮らしは94歳で世を去る間際まで続いたといいます。「研究している場所には入ってはいけないと。入っていいのは食事時に呼びに来る時くらい。小さい花の絵を描いている姿を肩越しに見ました」牧野の植物図鑑は新しい研究結果を加えながら今も刊行が続いています。まだ見ぬ世界に人々をいざない続ける図鑑です。

みる

本物そっくりに描かれた椿。植物の姿を正確に描きながら芸術性を併せ持ったこのような絵は植物学的な絵画、ボタニカルアートと呼ばれます。図鑑の絵などから発展してきたアートです。山形の園芸試験場。さくらんぼをスケッチしているのはボタニカルアーティスト杉崎紀世彦さん。椿の絵の作者です。杉崎さん。枝の太さを図っています。実寸大に描くのがボタニカルアートの基本なのだそうです。アトリエで作画の続きです。妻の文子さんもボタニカルアーティスト。園芸試験場から頂いてきたさくらんぼの実。「こちらは表。裏には縫合戦の筋があります。ラフスケッチに入る前にスケッチしてわかったうえで全体に入っていく」「正確さですか。構造上の正確さがないと図鑑にならない。細かく分類しなくてもいいですけど、絵を見ただけで実物の、きちなと植物の分類学的にわかってしかも美しい」 さくらんぼに色を入れます。何か模様を描いてますね。模様がある。杉崎さんの目にはこれが見えていたんですね。 甘いさくらんぼが実りました。この日一日かけて一個。絵が完成したのは3週間後のことでした。図鑑二つ目のツボは絵が伝える豊かな世界。

養老さんの図鑑

神奈川県箱根にちょっと風変わりな館。棚は館の主が集めた昆虫の標本箱でいっぱいです。解剖学者の養老孟司さん。子供の頃から大の虫好きで80歳を超えた今も昆虫採集と研究に余念がありません。養老さんが虫の世界に目を開いたのはある図鑑との出会いでした。「20世紀初頭にドイツで出版された昆虫図鑑です。この図鑑に出会ったのは小学生の頃。昆虫に詳しい人を紹介してもらい、会いに出かけた時のことでした。「母に紹介してもらい、鎌倉から高円寺まで行きました」養老さんが世界の豊かさに触れた図鑑との幸福な出会い。

Scientific illustration

昆虫の細かい毛一本まで描き切った図鑑絵。サイエンティフィック・イラストレーションと呼ばれる細密画です。研究者と協働しながら専門的な知識をもとに描かれるもので、科学的な正確さをどこまでも追求した絵です。日本では数少ないサイエンティフィックイラストレーターの木村政司さん。アメリカのスミソニアン博物館に学びこの道に進みました。木村さんの元には海外の博物館や研究者からも多くの作画依頼が届きます。今日の題材は3 mm ほどのゾウムシ。スケッチの上に半透明のプラスチックフィルムのシートをのせて描きます。使うのは色鉛筆。「重ねれば重ねるほど深い色が出てくるので、10色ぐらい入れます。描く前に4ヶ月ぐらい裏表の観察するんですけどもそこでキャッチした色を乗せていくという感じですかね」カッターナイフ。「削る作業のが多いんですね。剥いでいくっていう感じですね。上の下の層と混ぜながら。力は入れてないですが、カッターの重さで混ぜると下の色が微妙に上に出てくるので、修行僧みたいですよ」色鉛筆とカッターナイフだけで描いた木村さんの絵。なぜか写真よりもリアル。これアートですよね。「アートにしようとするとしてるつもりは全くないです。自分の中ではとにかく正確に描こうということだけを目標にして描いてます。額に入れて展示するという世界ではなくて、最終的には博物館の収蔵庫にしまわれてしまうということが実はこういう仕事してる人たちの名誉でもあるわけで、100年200年経ってもその虫がいなくなっちゃってしまっても、正しい図を残しておくということがすごく求められる。それが Scientific illustration っていう世界なんですけどね。標本は命を奪った結果として標本としてあるわけですから、やっぱりその虫が生きていた時の事をきちんと表現してあげると言うか、それはイラストレーターも写真家も昆虫を取ったり動物を取ったりしてる人たちの使命じゃないかなって思いますけどね。生き生きと描く」ゾウムシの絵が命を宿すのはまだ1月先。今日最後のツボ。作り手は使命を負って。

今、新しい図鑑が次々に登場しています。図鑑ブームの火付け役となったこの学習図鑑のシリーズは24巻で1000万部に迫る勢い。子供達が大好きな恐竜。でも最近ではちょっと変わった題材の図鑑も。「本当にこれが売れるのかというような時代です。例えばイモムシとケムシ。世の中のお母さん達特に大嫌いなので私はこれは売れないんじゃないかというふうに思っていたんですが、1年経たずにも重版が決まりましてなので予測不能であります。ただあの一貫してあの感じているのはある程度面白いテーマを考えてそれをどこまで一生懸命作れるかというところなのかなという風に思います。一生懸命作るとですね結構面白くなっちゃう。作っていて楽しいとそういうものがあの1番楽しい図鑑になります。それは間違いないと思います」東京都内の製本書に担当のスタッフがやってきました。新しく出る図鑑の第1回目の見本チェック。企画が立ち上がって3年。やっとここまでこぎつけたそうです。今回の図鑑は幼児向けの恐竜図鑑。窓を開けると下から別の絵が出てくるというしかけ図鑑です。ネタ集めに始まり、レイアウトの考案。専門家による内容チェックも繰り返してきました。「恐竜つて歯の形がすごく重要なんです。歯が見つかると何を食べていたのかがわかる。生きていた時のことがわかる重要な化石です。それを小さい子たちに伝えるために作ったのが口をあーんとあける仕掛け。肉食の恐竜は尖った歯がある」「私は小さい子供がいるんですけれども、やっぱり図鑑をきっかけにどんどん興味が広がっていくので、図鑑を見ることで実際の虫を見たいとか花を見たいとか恐竜を見たいねをきっかけにその次の新しい世界に飛び出していく扉になるようなものを作ってるんだなーって、そういった夢だったり子将来っていうのを決めるきっかけづくりをしてるんだなっていう気持ちで私たちは図鑑を作っています。責任はすごく重要だと思うので、わかりやすく面白くそして正確に言うところを気をつけて作ってます」手に取るだけで世界が広がる図鑑。私も読みたくなってきたな。




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