美の壺「黒の風格 羊羹 」

羊羹

甘い 羊羹 (ようかん)のルーツは中国の羊のスープ!▽まるで万物を吸い込む宇宙!?漆黒の肌に映る金蒔絵▽福島県の江戸時代から変わらぬ製法を守り、薪(まき)で練り上げられた名品▽薄氷のような砂糖の衣を纏う佐賀県の小城ようかん▽“シャリ”が生む砂糖の神秘的な世界▽海外でも絶賛!ラム酒が香る、ワインとマリアージュするようかん▽まるで絵画!切り分けると月が満ち青い鳥が羽ばたくメルヘンの世界が広がる!

放送:2022年9月16日

 美の壺 これまでのエピソード | 風流

美の壺「羊羹」

大切な人への贈り物や、お茶の時間の彩りにぴったりな黒くて艶やかな羊羹。日本人が愛してやまない和菓子の代表格です。全国にはご当地自慢の羊羹がたくさんあります。

福島県には昔ながらの薪で練り上げた羊羹があります。また、日本有数の羊羹の町・佐賀県小城では、薄い氷を張ったように砂糖の衣が覆っています。これらは歴史や風土に育まれてきたこだわりの羊羹です。

さらに、羊羹にはサプライズも隠されています。そのユニークな味わい方とは?また、茶会を賑わすメルヘンな世界にも注目です。古くて新しい羊羹の魅力を探っていきましょう。

京都に残る江戸時代の学問所、弘道館。かつて多くの若者たちがここに集いました。今も京都の伝統文化や歴史の学び舎となっています。ここで社会や講演会を行っている老舗の和菓子店の主、太田達さんが言います。「ひと切れの羊羹には特別な日が宿っている」とのことです。

「他のお菓子みたいに手を加えてない造形の中に光と影があるのですね。手のひらにある宇宙というか、天空のようなものが感じられるじゃないですか」と語る太田さん。

黒く艶やかな表面が鏡のように万物を写し込み、菓子器の中の羊羹は漆黒の肌に金蒔絵が施されています。まさに一期一会のアートであり、そう考えると奥深さが感じられます。

今日一つ目のツボは一切れに宿る光

創業は室町時代後期の京都という老舗の和菓子店です。店頭には看板商品の羊羹がずらりと並びます。それにしても羊羹とは不思議な名前ですね。なぜ「羊」がつくのでしょうか。そこには長い物語があるそうです。

羊羹はもともと中国の料理で、羊の汁物、羊の肉が入ったスープのことだったんですね。甘い羊羹のルーツが羊のスープだったとは驚きです。

羊羹を日本にもたらしたのは、鎌倉から室町時代に中国に留学した禅宗の僧侶でした。そこで羊の肉は、小豆や葛粉などで作られたものに姿を変えていったそうです。なぜなら禅宗では肉食を禁じられていたからです。室町時代後期に書かれた武家の作法書には、羊羹の文字が見られます。この頃、羊羹は僧侶だけでなく、公家や武家の間にも広まっていきました。

一見するとお菓子の羊羹のように見えますが、実はこれまだ料理の羊羹で、甘くない羊羹でした。この店に伝わる菓子の見本帳には、江戸時代の一冊に砂糖の入った羊羹が描かれています。浜辺の入江を表した洲浜形という蒸し羊羹です。古い作法で再現しました。現在の蒸し羊羹は、餡に繋ぎとなる小麦粉を加え、さらに水で溶いた葛粉を入れ、小豆色の生地を型に流し込みます。蒸篭に入れて蒸し上げると、あっさりとした甘さでモチモチとした食感の蒸し羊羹となります。

羊羹を劇的に変えていったのが寒天でした。天草などの海藻を原料とした寒天は保水性や凝固力に優れています。この寒天の特徴を取り入れたのが水羊羹です。水羊羹はさらに進化し、寒天に砂糖を加え煮溶かし、餡を入れて煮詰めると練り羊羹になります。この店では熟練の職人が腕を振るいます。練り上げていくうちに寒天独特の粘りが出てきます。寒天を使うことで黒く艶やかな練り羊羹になります。それまでの和菓子にはない独特のなめらかさと弾力も生まれました。さらに練り上げることで水分が飛び糖度が上がり、飛躍的に日持ちがするようになりました。羊羹には極意があるそうです。

羊羹の練り上げにはここだというタイミングがあります。それは羊羹にしゃもじを入れて垂れ落ちるスピードと重さで見極めます。練り羊羹の美味しさや艶やかさの決め手となる一瞬です。日本に渡ってきた羊羹が練り羊羹になるまで、400年以上の技が磨かれ、現在の練り羊羹が完成しました。


福島県二本松には、江戸時代から続く伝統的な羊羹があります。参勤交代の献上品として愛されてきたこの羊羹は、8代続く和菓子店で製法が守られています。製法の特徴としては、薪で炊く手法が重要で、火力の強い楢の木を使用し、エンマという大きな木べらで練り上げるという方法が継承されています。全身全霊で作り続けている六代目の祖父又吉さんは、美味しい羊羹を一本一本手で包み、大切に届ける姿勢を守り続けています。この伝統的な手法と姿勢が、長い歴史を支えているのです。


家の祖父は江戸時代からの伝統を守り続けており、薪を使って羊羹を作る手法にこだわっています。この伝統的な製法がなければ、この特有の味わいは出ないと考え、頑固にその味を守り続けてきました。現在もその姿勢は変わることなく、羊羹作りに一筋の六代目の祖父又吉さんが、美味しい羊羹を一本一本手で包み、大切に届けています。昔から使われている竹の皮での手さばきも見事で、伝統が今も息づいています。

昭和12年、日中戦争が始まると、六代目はこだわりの羊羹で思いがけないものを作りました。それが「玉羊羹」です。ゴムの袋に羊羹を詰めて、戦地でも手軽に甘いものが食べられるようにと開発したのです。いつでも懐かしい味が楽しめました。それ以来、80年以上作り続けています。食べる時はようじで刺して、くるっと剥くと江戸の味が蘇ります。

「この令和の世の中でも、200年経っても通じる美味しさがあるなぁと思って作っています」と語ります。

今日二つ目の壺は歴史が味を深くする

佐賀県の小城羊羹は、薄氷のような砂糖の衣をまとっています。練羊羹の糖分が時間とともにしみ出し、表面を結晶で覆うのです。この結晶は「シャリ」と呼ばれています。外はシャリッとした食感、中はしっとりとした小城羊羹独特の味わいです。

佐賀県小城駅の駅前には、ずらりと羊羹の店が並びます。小城市内には20軒以上の羊羹店があり、ここは日本有数の羊羹の街です。羊羹に使う砂糖を貯蔵していた建物には、現在小城羊羹の歴史資料が展示されています。羊羹の人気を物語るものがありました。

JR小城駅のホームで販売されていた戦後昭和20年代から30年代に活躍した箱も見られます。本当にたくさんの方がお買い上げいただいており、羊羹の仕事もまた盛んだったと思われます。

駅弁ならぬ駅羊羹。羊羹の一大産地で、その歴史は江戸時代にさかのぼります。小城町は門前町そして城下町で、長崎から小倉までの長崎街道も通っておりました。出島に陸揚げされた砂糖がいろんなところに配られたと言われていますが、長崎街道は別名「シュガーロード」と呼ばれています。この道を通り、様々な砂糖を使った菓子の技術が伝えられました。豊かな砂糖文化を背景に生まれたのが小城羊羹です。

お菓子作りには寒天にザラメを普通の羊羹よりやや多めに投入します。甘さ控えめの時代でもここだけは変わりません。ザラメは光沢のある結晶で純度が高く、スッキリとした甘さが特徴です。自家製のこしあんを入れて練り上げ、昔から漆の箱に流し込みます。表面がうっすらと固まった頃に餡と地図をつけ始めます。表面を傷をつけることが重要な作業です。

翌日、羊羹の表面に砂糖の結晶、シャリがうっすらと現れ始めます。長い羊羹包丁で切り分けると、どの切り口からもじわりと糖分が染み出します。これが小城羊羹の醍醐味で、職人が作り上げる神秘的な世界です。

東京大田区の昔ながらの商店街。その一角にある間口軒という小さな店が、商店街の名物として親しまれています。ヨーカドー切切るとラム酒の香りとともに美しい断面が現れ、ドライフルーツが抽象画のような模様を描きます。スペインの専門誌には、この羊羹を作った二人の日本人が紹介されました。羊羹にドライフルーツという斬新なアイデアが評価されたのです。

羊羹のレシピを練るのはこの町出身の稲葉基博さん。老舗の和菓子店に20年勤務し、そのうち6年間はニューヨークの店で働きました。模様を作るきっかけは、友人から「パンに合う和菓子を作ってほしい」との依頼があったことです。その依頼に応じて、羊羹をつなぎにして考案したのが始まりです。テリーヌのようなものをイメージし、ドライフルーツやナッツを刻まずに丸ごと入れることで、いちじくの種の小宇宙やくるみの子蜘蛛のような感じを表現しました。いちごの赤が鮮やかに映えると考えました。

岩パウンドケーキ用の型を利用し、軽やかな感性も二人の持ち味です。羊羹の切り口をイメージしながら、食感の異なる素材を取り入れました。ラム酒に漬けたプチプチとした歯ざわりのイチジクや、黒砂糖を加えた濃厚な練り羊羹が特徴です。

スライスした羊羹をフランスパンと合わせ、ワインとのマリアージュを楽しむ新しい羊羹の味わい方を提案しています。羊羹を利用して様々なシーンで楽しんでもらうヒントを提供できたらと思っています。楽しい時間を提供するために、爽やかな茶室で若い茶道家が茶会を催しています。主宰の近藤俊太郎さんがその様子を見せてくれました。

普段あまり見ない形の茶会で、今日は艶やかな黒いお菓子が主役です。床の間の掛け軸にはアインシュタインの言葉が書かれており、青い地球をイメージしているそうです。お菓子は8月をモチーフにしたもので、全体的に宇宙をテーマにしています。断面に鮮やかな色が進むにつれて、青い鳥が羽ばたく様子が表現されています。

お月様と青い鳥

ロマンチックなお月様だけの羊羹を作ったのは、福島県会津若松の江戸時代から続く和菓子店です。この羊羹を作るきっかけは、東日本大震災でした。会津若松は比較的大きな被害はなかったのですが、浜通りからたくさんの人が避難してきました。そこで、皆を笑顔にできるようなお菓子が作れないかという思いから、この羊羹が生まれました。

一緒にデザインした砂の静香さんのメモには、切り分けるとパラパラ漫画のように一つの物語になっていくものを作りたかったという思いが込められています。最初はシンデレラがお姫様になっていくイメージで始めたものの、手足が細かく再現が難しく、何度も試作を繰り返したと言います。

最終的に選ばれたのは、幸せの青い鳥をモチーフにしたデザインで、誰もが笑顔になれるようなものがいいという考えでした。その精神は代々伝えられてきたもので、店では江戸時代から作り続けてきたロングセラーになります。甘いものが貴重だった時代、高価な砂糖の代わりにでんぷんなどを使い、誰もが手にできるよう工夫しました。

赤く染めるために黒豆を使い、内側に曲げればだるまさんが現れるユーモア溢れる遊び心が8代目に受け継がれました。切り分けていくと段々と絵柄が変わっていく楽しさを、皆で共感し合えるお菓子です。みんなを笑顔にする不思議な力を宿した羊羹です。

情報

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とらやの和菓子|株式会社 虎屋

NHK「美の壺」で羊羹が紹介されます | 菓子資料室 虎屋文庫 | 株式会社 虎屋

玉嶋屋

 

福島県|二本松|玉嶋屋|

村岡総本店

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創業明治32年(1899年) 小城羊羹初祖 村岡総本舗

Wagashi Asobi

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NHKのBSP「美の壺 黒の風格 羊羹(ようかん)」で wagashi asobiが紹介されました | おーたふる 大田区商店街ナビ

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