チョコレート は今、カカオの産地ごとの味や香りを楽しむ「ビーントゥーバー」の時代! ▽一流ショコラティエが、カカオ豆の焙(ばい)煎から手がける極上の「ボンボンショコラ」▽ダーク・ミルク・ホワイトに次いで、80年ぶりに登場した「ルビーチョコレート」▽200年続く京都の老舗の、伝統和菓子とカカオの融合とは?▽ウイスキーなどの香気成分に合わせて作られた「バー専用チョコレート」も登場!! !<初回放送日:2019年11月15日>
放送:2022年11月6日、2022年10月24日
美の壺 「カカオの誘惑 チョコレート」
チョコレート深い色合いと艶芳しい香り。
一粒口に含むと幸せな気分になります。
チョコレートの世界はいま原料のカカオ豆にこだわり、カカオ本来の深い香りを楽しむ味わい方が広がっています
今年彗星の如く現れたルビーチョコレート。
ショコラティエの心を虜にしました。
香り高いチョコレートはこんなシーンでも。
酒とチョコレートのマリアージュ。
五感をとろけさせる魅惑のチョコレート一緒に味わってみませんか。
豆
東京渋谷区にあるチョコレート専門店「Minimal -Bean to Bar Chocolate-」。
週末にはチョコレートの教室が開かれます。
カカオ豆そのものから作る新しいチョコレート体験
「カカオを食べる味わい深さとか楽しみっていうのは体験できたかなっていう感じです」「こんなに香りがいいと思っていなかったので妻にすごい驚きました」
世界中の選び抜かれたカカオ豆で、焙煎からチョコレート作りまでを一貫して行うビーン・トゥ・バーというスタイルが注目を集めています。
5年前にこの店を始めた山下隆嗣さん。
「カカオの豆を手に入れた、自家焙煎してチョコレートを作って見たら、果実のような味がした。チョコレートの原料のカカオの個性ってこんなに豊かなんだなっていうことにとても大きな衝撃を受けてチョコレートを作ることにハマっていきました」
カカオに魅せられた山下さん。
世界中のカカオ農園を訪ね、産地によって異なる豆でチョコレートを作っています。
「ナッティはニカラグア産の豆とエクアドル産の豆をミックスしながら作っていたりします。一方でフルーティーという果実味があるラインはですね、ベトナムさんとタンザニア産、インドネシア産っていう違うタイプの産をミックスして果実味のあるチョコレートを作っています。
今回はニカラグア産とエクアドル産のカカオを使います。
まめにはカカオバターと呼ばれる油脂が含まれているためすりつぶすとペースト状に。
加えるのは砂糖だけ。
粗挽きにしてあえてジャリっとした舌触りに。
カカオの風味と香りをより際立たせているのだそう。
この店のチョコレートはすべて板チョコ。
大小様々なマス目がつけられています。
このマスメもカカオを存分に味わってほしいという思いが刻まれているようです。
個性がすごく強いの豆っていうのは、このちっちゃい5ミリ角のちっちゃいもの一つで満足が高まることもありますし、一方でしっかり甘味を強調したい場合はこのくらい大きいものをしっかり食べる方が良かったりするので、カカオでも大きさによって味変わるんだと皆さん知っていただくために、このグリットの構造にこだわっています。
今日一つ目のツボは個性いろいろ魅惑の味わい。
大阪梅田にあるチョコレートショップ「ショコラティエ・パレドオール」
ずらりと並ぶのは一口サイズのボンボンショコラ。
技を駆使した美しさはチョコレートの花形と言われています
センターと呼ばれる詰め物の周りをチョコレートが被っています。
手がけたのは三枝俊介さん。
日本を代表するショコラティエの一人です。
三枝さんは自ら厳選したカカオ豆を使い、最高のチョコレートを目指します。
一つ一つ目で確かめ豆を選んでいきます。
豆の香りと風味を引き出す焙煎。
豆の特性によって時間や温度を微妙に変えていくといいます。
「チョコレートは大体どっか作って頂いて、自分はそこからスタートするっていうのがまぁ大半なので
、本当にチョコレートそのものから全部やってるって言う人は数人しかいないと思います。自分が欲しいのは
この一つの豆からできる一つの味。一色の絵の具を組み合わせて自分で色を作るっていう作業を今やってるんですね」
豆の個性を見極めてブレンドする。
三枝さんこだわりのチョコレート。
チョコレート作りに欠かせないのはテンパリングという作業です。
およそ50度に温めたチョコレートを、石の台の上でに27度前後にまで冷やし、再び30度くらいに温めます。
艶のある口どけの良いチョコレートを生み出す美しくも大切な工程です。
ボンボンショコラのセンターはダークチョコレートと生クリームで作るガナッシュ。
形を整えます。
テンパリングした艶やかなチョコレートでコーティングします。
チョコレートフォークを巧みに操り、手早く絡めて行きます。
外はパリッと、中は柔らか。
カカオの風味を存分に活かした三枝さんのチョコレートです。
さらに三枝さんももう一つのこだわりが白ホワイトチョコレート。
実はホワイトチョコレートも同じカカオ豆から作ります。
ペースト状になったカカオをフィルターのついた機械で絞ります。
抽出されるのが透明なカカオバター。
やさしいカカオの香りが特徴です。
砂糖やミルクパウダーを加えてホワイトチョコレートに。
「チョコレートって個性の強い食材なので、素材によっては繊細なものと合わせるとどうしてもチョコレートが勝ってしまうんですね。ホワイトチョコを使っていくことによって例えば繊細な風味が生かされたりとか、そういう良い結果が出てくるんですね
ホワイトチョコレートに入れるのはピスタチオやいちご、パッションフルーツ。
爽やかな味と色彩を引き立てるホワイトチョコレート。
繊細な白と濃厚な黒。
チョコレートのバリエーションは無限に広がっていきます。
ルビー
今年あるチョコレートが大きな話題となりました。
ルビーチョコレート。
それはピンク色をしたチョコレートでした。
着色しているわけではなくカカオ豆の天然の色。
特別な方法で作られた全く新しいチョコレートです。
開発したのはスイスのカカオメーカー。
誕生までには長い年月がかかったといいます。
「画期的な出来事でした。カカオの専門家が長年研究している過程の中で、偶然色の成分を発見したのです。しかし、味や色を引き出す前駆体というものを見つけるまで13年もかかりました。カカオを一つ一つ開けて調べるような地道な作業でした。長い長い道のりを経てやっと実現に至ったのです」
ルビー色の成分を持つカカオはごくわずか。
様々なカカオを開けてみないとその成分があるかどうか分からないのです。
鮮やかな色を引き出す加工技術の開発にも長い時間がかかりました。
「夢が叶いました。新しい歴史を作ったのです。最初にダークチョコレートが作られ、次にミルクチョコ。そして
ホワイトチョコレートが出来て80年。今第4のチョコレートルビーの歴史が始まったのです」
今日二つ目のツボはカカオに秘められた華やかな輝き。
城下町として知られる京都府福知山市。
長年の人に愛されてきた洋菓子店「洋菓子マウンテン」があります。
この店の二代目水野直己さん。
水野さんは2007年のショコラティエ世界一を競う大会で優勝しました。
店にはとっておきのチョコレートが並びます。
その中にピンク色に輝くチョコレートが。
今年初めチョコレートの祭典に出品して大ヒットとなったものです。
一番最初に出会った時には本当にこのチョコレートの色合いとか風味とかというものが天然のものなのかっていうのをまず疑いました。やっぱり一番に特徴的なのは酸味ですね。ベリーを思わせるような酸味も思っていて、カカオの香ばしさとはまた違うの新しいものを作りたくなるような発想の原点になるかなと思います。
ルビーチョコレートと出会った水野さん。
しかし思わぬ壁に当たったといいます。
何か他のものと混ぜた時にアルカリ性に触れた時に変色してしまう。本当にデリケートな食品だと思います。
ルビーチョコレートは酸性からアルカリ性に傾いていくとピンク色がくすんでしまいます。
一旦アルカリ性に触れて変色しても、そのあと酸を補うともう一度ピンクに戻ってくれます。
繊細なルビーチョコレート。
綺麗な薔薇には棘がある。
難しいです。その薔薇にまんまとやられてる感じがしますね。
チョコレートを飾るのはレーズンなどのドライフルーツ。
ルビーチョコレートとドライフルーツ。
それぞれの酸味が口の中で溶け合う一枚になりました。
水野さん。
ルビーチョコレートの新たな作品に取り組んでいます。
デザインはカカオ豆。
さくらんぼの砂糖漬けに、たっぷりルビーチョコレート。
桃のエキスを入れたホワイトチョコレート。
砕いたカカオ豆にはミルクチョコレート。
ダークチョコレートも潜ませます。
チョコレート四世代の味わいを閉じ込めました。
チョコレートといえばルビーっていう風になるように頑張っていきたいなと思ってます。
ココロオドルファンタジックなルビーの世界です。
結
京都・江戸時代よりに二百年以上続く和菓子店「亀屋良長」です。
店先には井戸水が。
水も大切な原材料の一つ。
この水で和菓子づくりをしています。
創業以来受け継がれてきたお菓子がこちら。
黒砂糖とこしあんを練り合わせたものを寒天で包み、けしの実をアクセントに。
万葉集にも歌われた植物・檜扇の漆黒の実になぞらえたお菓子です。
8代目の吉村良和さんです。
代々受け継がれてきた和菓子に新しい風を吹き込もうとしています。
黒くてまん丸いので、お客様からはチョコレートが入っているんですかっていう風によく聞かれるんですよ。そういえばチョコレートを入れてもいいんじゃないかなという風に思いまして、あんこにチョコレートをカカオ使うことはなかったんで、チャレンジだったんですけど。
北海道のこしあんをてんさい糖と沖縄波照間島の黒糖と合わせます。
ここまでは従来の作り方と同じです。
いよいよカカオの出番です。
餡と合わせるために酸味の少ないタンザニア産を選びました。
抱いて練りこみます。
決め手はカカオの割合でした。
最初試作した時は、チョコレートとあんこを半々ぐらいでやってたんです。半々ぐらいでやるとチョコレートの力が強すぎてもうなんかあんこの味が全部飛んでしまって、あとあんこの滑らかな粒子感ですね。それがもうチョコレートに支配されてって言うですか。
試行錯誤の末安とカカオの割合4対1という比率を導き出しました。
細かく砕いたカカオを散らし、寒天を纏わせ艶やかに装います。
抹茶とも合うカカオの和菓子の誕生です。
今日最後のツボはマリアージュを楽しむ。
マリアージュを楽しむ
東京新宿。
お酒の静かな会話を楽しむオーセンティックバー「BAR LIVET」。
オーナーの静谷和典さん。
お酒を知り尽くした静谷さんが選ぶ特別なおつまみがチョコレート。
ウイスキーやカクテルに合わせたバー専用のチョコレートです。
チョコレートの歯が口の中をコーティングするとウイスキーなどの蒸留酒も非常にまろやかに感じるためこちらを使わせて頂いております。お客様の反応としてはウイスキーとチョコレートが口まで混じり合うことによって渾然一体となって非常に楽しみながら飲んでいただいております。
静谷さんが今宵選んだのは、シェリー樽で熟成させたシングルモルトのウイスキー。
合わせたのは花模様のチョコレート。
甘さとほろ苦さの中に複雑な香りが立ち上ります。
バー専用のチョコレートを作るのはショコラティエの須藤銀雅さんです。
日々香りの勉強を積み重ねています。
あの花模様のチョコレートの正体とは。
須藤銀雅@11月22日まで東京(@stuginga) • Instagram写真と動画
沿い良はフェヌグリークというハーブになるんですが、これが香りの成分がソトロンっていう香気成分がありまして、同じようにお酒でいうとシェリー酒にソトロンという香気成分が含まれているんですけども。シェリー樽を使ったウイスキーなんかだと相性がいいのです。
シェリー樽で熟成させたウイスキーの香り成分と、チョコレートに入れたフェヌグリークの香り成分が重なりました。
須藤さんのもとには様々なリクエストが入ります。
今構想を練っているのはカクテルに合わせるチョコレート。
ブランデーとホワイトキュラソーというリキュールが入ったサイドカーというカクテルです。
ハーブとしてはまずローズマリーですね。ローズマリーとあとタイムです。この二つはサイドカーに入っているホワイトキュラソーオレンジとその他相性の良い香りの成分があるんですね。
カクテルの香り成分と限りなく近いものを探していきます。
サイドカーに合わせた香りの相関図。
タイムやローズマリー、ケフィアライムなどを選びました。
タイムとローズマリーは生クリームで煮出して香り付け。
チョコレートに少しずつ加えていきます。
ここで口どけを良くするために一工夫。
冷たいカクテルであるサイドカーに合わせるため水分量をもう少し多めにしてます。そうすることで温度の低いカクテルであってもうまく混ざってくれて、マリアージュの邪魔はしないというようなものになります。
口の中で溶け合うように計算されたチョコレートです。
ハーブの緑とサイドカーのオレンジをイメージしたグラデーション。
ここにまた新たなチョコレートが誕生しました。
大人の時間を演出する深淵なるチョコレートの世界です。