タレント中川翔子の鏡コレクション大公開!アニメや漫画で人気の懐かしのコンパクトが登場!江戸時代、嫁入り道具として大切にされた銅製の「和鏡」。鏡の裏には、職人技光る巧みな装飾が!かつて門外不出とされた技を駆使したイタリアの極上ガラス鏡。映すだけでなくインテリアとしてもはえる飾り方を指南!圧巻は、神社仏閣に奉納する銅鏡を作る鏡師の磨きの技。そこには何が映し出されるのか!?<File460>
放送:2018年11月30日
美の壺 「うつくし、妖しの鏡」
朝起きてから夜寝る時まで鏡は日々の暮らしに欠かせないアイテムです。一方で鏡は不思議な世界への入り口と考えられたり。人々の祈りを受け止める心の拠り所になったり。神羅万象を映し出す鏡の奥深い世界。一緒に覗いてみませんか。
ときめき
メイクルームで支度をするのはタレントの中川翔子さんです。鏡は中川さんの生活の一部。気づけばたくさんの鏡を集めていました。江戸時代の女性にとっても鏡は大切な相棒でした。でも彼女達が使う鏡は現代のものとは少し違っていました。明治時代まで日本ではは和鏡と呼ばれる銅製の鏡が主流だったのです。磨き上げた銅にスズをメッキした鏡はガラスの鏡とほぼ変わらない映り具合でした。600点以上もの和鏡を所有するコネクター・國學院大学教授の青木豊さんは。和鏡は幼い頃から身近な存在だったと言います。「自分の実家にも錆びた和鏡がありました。祖母の鏡もあればそれ以前の先祖の鏡もあったようでありますね。そういうところからずっと和鏡を見てきて、集めるきっかけになったような気が致します」和鏡が庶民に広まったのは江戸時代。嫁入り道具の定番にもなりました。安いも 今の価格でおよそ3万円。なかなかのお値段です。鏡面が酸化して曇りやすいため、こうして漆塗りの箱などに大事にしまっていました。鏡の裏・鏡背のデザインは職人たちの腕の見せ所。人気のモチーフは南天。難を転じて福となすという語呂合わせから縁起物とされました。普及し始めた頃の鏡の大きさは直径10センチほど。それが時代が下るにつれどんどん大きくなります。いったいなぜでしょう。「上方。女性の髪型が大きくなりますよね。島田という髪形になってきます」その一方でこんな小さな鏡も愛用されていました。様々な形がありますね。「携帯用鏡。紐を通して財布に縫い付ける。携帯用が゛味は江戸時代中期以降、伊勢詣など観光旅行が大ブームになったから必需品になった。邪気を払う守りとして持っていった」いつの時代も鏡はヒトに寄り添う大切なパートナー。
現代の鏡の城
エスカレーターの周りに散りばめられたモザイク状の鏡。視線を移す毎に景色もくるくると変わります。都会の真ん中に出現した鏡の洞窟。設計したのは気鋭の建築家中村拓志さん。人の心に寄り添う建築をモットーにしています。鏡を使って訪れる人にドラマチックな演出を仕掛けました。「エスカレーターの時間は長く退屈な待ち時間。この空間の特徴かなと思います。実際こう振り返ってみると今の季節のファッションで着飾った人たちを渦巻いて万華鏡のようにですね。色とりどりの服が渦巻くようなるつぼのような空間に見えるんです。街の風景そのものが空間中に凝縮することで、表参道で買い物をする楽しさっていうものがここに現れるんじゃないかなと思ったんです」夜の帳が下りると鏡が映し出す景色も変わります。今日二つ目の壺。増える広がるワンダーランド。
ベネチアの鏡
京都にある鏡の専門店「岡本鏡店」。明治30年創業の老舗です。店内を埋め尽くす鏡。その数400点以上。店主自らヨーロッパで仕入れてくるとか。イチオシはガラス鏡発祥の地と言われるイタリアベネチアの鏡です。5代目店主の岡本いさおさんにその魅力を教えてもらいました鏡はインテリアとしても楽しんでほしいと岡本勇郎さんにその魅力を教えてもらいました。「ベネチアの鏡は映りがきれいとかそういうところを超越している。とにかくハンドメイドというところに力点を置いて作っている。鏡の部分は鏡を裏側から特殊な工具で彫ることによって模様をつけていっている。堀の深さで模様を現している」現在のようなガラス鏡が生まれたのは14世紀のベネチア。ガラスの裏に水銀合金を付着させ、反射の優れた鏡を作ったのです。その技術は長い間門外不出でした。現在でも最高峰と讃えられるベネチアの鏡。そのイッピンがこちら。鏡そのものにカッティングと彫りで装飾が施されています。もちろんすべて職人の手作業。姿を写すための道具というより、もはや美術品です。鏡はインテリアとしても楽しんでほしいと岡本さんは言います。
「狭い空間であればあるほど少し大きめの鏡をつけるって言うそういうことを心がけると映る範囲がぐっと広くなりますから」お気に入りの小物を映し込み、絵画のように鑑賞することも。映して楽しむ。一枚の鏡が生活に彩りを加えます。鏡の可能性は無限大。
異次元
ルイス・キャロルの鏡の国のアリスには不思議な鏡が登場します。驚いた。鏡が霧みたいになっていくわ。鏡を通り抜けたそこはよく似た世界。でも暖炉の上の時計には顔があり。アリスに笑いかけるのでした。日常の中にふと現れる異次元への扉。古来人は鏡に神秘的な一面を見出してきました。「姿が映らないドラキュラの話もありますし、アリスの鏡の国のようにこちらがとは異なる世界が鏡の向こう側の世界に存在する。そこでは論理があべこべになっているというような話ですとか。鏡と言うとそのその中に自分が見ている世界あるいは見えている世界だけでない霊の世界とか不可視の世界を言ったものがじっと目を凝らしているとそれが見えるような気がしてくるという、瞬時的なもの。左右が逆に映るということ。現実に自分が見ているものとは異なるものを垣間見ることができるそういった瞬間というのがありあの人を虜にしてしまうのかなと思います」。鏡にはその奥に何かがあると感じさせる力があります。今日最後のツボ。鏡面に宿る神秘。
京都下京区にある若一神社。およそ850年の歴史を持ちます。参拝する人の目の高さに鏡が置かれています。この鏡は御神体ではなく別の役目を持っているといいます。「前立て鏡と申しまして、神様にお参りされる方が自分の姿を映しそしてまた心をうつされる鏡なのです。鏡というのはものすごい大切なもんじゃないかと思いますね。自分の生きていく指針をその都度修正して正しい方へ持ってきては行動してるうちに乱れたのをまた合わす。それが正しかったかどうかっていうのは鏡に映して軌道修正すると。そういう意味では生活でも生き方でもその中心になるのが鏡だと思います」。
神社に奉納される銅鏡を昔ながらの技術で作る職人がいます。京都下京区で江戸時代から続く工房。5代目鏡師の山本晃久さんです。銅鏡作りは砂と粘土でできた方にヘラで模様を刻む作業から始まります。鳳凰と桐の文様。昔から伝わる神聖なモチーフです。技術が進化した現代にあってなぜ手作業で銅鏡作りを続けているのでしょうか。「私たちが造る銅鏡は神社とかお寺のご神鏡として使われたり、御神体。神様自体になる鏡もあるので一般のガラス鏡とは全く違うものです。日本で銅鏡が残って僕らみたいな職人がいるのは信仰と結びついているから銅鏡という技術が日本で唯一残っているのではないかなと思ってますね」模様を彫った上に煤を塗った鋳型です。1200度の炉で熱した銅を流し込みます。半日後固まった銅を型から取り出します。鏡作りはここからが本番。鏡面を削って水平にしていきます。鏡面が平らになるまでひたすら削っていくのです。ヤスリをかけた後両側に持ち手のついたセンという道具で削り跡を消していきます。仕上げにニッケルでメッキを施しますがその厚さは1/100mm。 少しでも凹凸があれば表面に浮き出てしまいます。わずかな歪みも許されません。水平に削れているかどうかは職人の目と手の感触だけが頼り。センをかけ終わると今度は磨きの作業。まずは砥石を使います。研いでは流し研いでは流し半日間、黙々と作業を続けます。最後の仕上げは2種類の炭で磨く炭研ぎ。漆工芸にも使われる繊細な技です。山本さんはこうした伝統の鏡作りを人間国宝だった祖父に教わりました。「炭研ぎばかりやらされました。これでできていると思って祖父に見せたらやりなおしということを繰り返すんですけど、これが基準だっていうことを体でわからせていたんじゃないかなっていうのを思ったときに単純作業の繰り返しそういうことだったんかなっていうのを今は感じてるんですけど」1枚の鏡が完成するのにおよそ4ヶ月。磨き抜かれたその鏡面は一点の曇りなく輝きます。「お祈りする対象。人の拠り所になる鏡なので、プレッシャーは感じてるんですけどあんまり神経質に考えしないようにしてます。いい意味でフラットにしてもで作るように本当にいいものとして作るっていう形で対峙するようにしてます」。職人が自分を無理して磨き上げた鏡。そこには何が映し出されるのでしょう。
取材先など
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