ユネスコ無形文化遺産決定！美と実用を兼ね備えた 漆 ▽シェア２％、希少な国産漆の質の高さに迫る▽岩手県浄法寺町・天台寺の御山御器。「漆の一滴は血の一滴」漆かき職人に伝わる言葉▽輝きも音も上質なスピーカー。完成は１００年後！？床も壁も漆の家～福井県鯖江市▽尾鷲山師の相棒、強さを誇る漆のまげわっぱ・驚きの使い方とは？▽江戸から現在、そして未来へ続く技のリレー・日光東照宮＜Ｆｉｌｅ５２１＞
放送：2020年12月11日
美の壺 「うるわしの 漆 」
日本の食卓を彩る和の器
中でも昔から愛されてきたのが漆の器です
漆は縄文時代から使われてきた日本最古の天然塗料
食器はもちろん様々な工芸品や装飾品に
輝く床も漆塗り
巨大建造物にも漆はふんだんに使われています
日本文化の美を高め守る
漆の奥深き世界へとご案内します
命
岩手県二戸市浄法寺町
古くから漆の産地として名高い町です
奈良時代の開山とされる天台寺
地元の人がおやまと親しむ古刹に漆塗りの器が伝えられています
御山御器と呼ばれる飯碗
汁は御歳の碗
僧侶たちのため地元で採れる漆で作ったのが始まりとされています
素朴な普段使いの器はやがて庶民に広まり浄法寺塗りと呼ばれる漆器の起源となりました
町の山にある漆林
国内で取れる漆の七割がここ浄法寺で生産されています
二十年程かけて育てた漆の木
六月から十月にかけて漆を取ります
漆は漆の木が出す樹液
それを集める仕事を漆掻きと言います
漆掻きにはある掟があるのだとか
最初は今から付きますよっていうのでちょっとつけるだけで
この漆は取らないです
一気に傷を伸ばしちゃうと傷長いと木が弱っちゃうんで
最初につける短い傷はこれから樹液をいただきますというご挨拶
ひと夏をかけて少しずつ長い傷をつけていきます
樹皮を一息に削り中心に細い傷をつけるとじわじわと樹液が染み出してきます
これが漆
傷をつけた木は三四日休ませ元気が回復するのを待つのだそうです
木もものすごく暑いとしんどいみたいで出なかったりとかしますね
生き物なのであんまりやりすぎると弱っちゃって漆が出なくなる
にじみ出た樹液をへらで掻き取ります
これが漆掻きと呼ばれる所以です
一本の木から採れる漆はひと夏でほんの200CC程
とても貴重なものです
長年職人たちが伝えてきた言葉があります
漆の一滴は血の一滴
集めた漆は木くずなどのごみを濾します
これが生漆
生漆は桶の中で二週間ほどかけて発酵します
まるでお味噌の仕込みですね
発酵が落ち着いた生漆は漆塗りの職人・塗師のもとへ
塗師の小田島さんです
こちらは生漆をさらに一年寝かせたもの
いいですよね
やはりこう一年ぐらい置くととろっとした感じになってこれが最後の仕上げ塗りする時は
非常に塗りやすいのかなとは思いますね
漆、今日一つ目のツボは生きている森の雫
街中の浄法寺塗のお店です
浄法寺塗の特徴はすっきりとシンプル
毎日使っても飽きのこない器です
浄法寺の漆で塗られる朱色の器はどうやって生まれるのでしょうか
生漆を温めて水分を蒸発させた均質で透明度の高い漆を準備します
これを朱色のもとになるベンガラに加えます
漆をベンガラになじませるように練っていきます
ベンガラの粒子を細かく滑らかにするためにさらに練ります
漆を少しずつ加えていきます
下準備完了
生漆で一度塗り固めたお椀にベンガラの漆を塗っていきます
薄く均一に
塗っては乾かすを繰り返すこと七回
塗り重ねることで器は滑らかな手触りを身に纏っていきます
漆は塗り終わった後も変化してゆく魔法の塗料なのだとか
木のぬくもりも感じますしその漆のぬくもりっていうのもねやっぱりあるんですよね
触ったときってしとっとするんですよね漆器はね特にねでそれをずっと使っていくと
変化してこうつやが出てくるというか、色も変わってくるんですよね
それでも人とするんですよね、なんかすごく心地っていうか
使えば使うほど艶が増し手になじむ不思議の器
漆が生きている証です
艶
鮮やかな朱色に輝くスピーカー
実はこれも漆塗り
インテリアとしても美しい
でも狙いはそこだけではありません
漆のスピーカーを開発した渡邉さんです
スピーカーは木製のキャビネットに使う塗料で音質が変わります
良い音を求めて行き着いたのが漆でした
漆というのはですね、実はケミカル塗料と違ってもともと木から出た樹脂ですから
木に親和性が非常に高い、木との相性が非常にいいですね
固まっても柔軟性があるそれが音に出てくるんですね
非常にまろやかな音
漆のスピーカー輪島で仕上げられます
その輝きはどのようにして生まれるのでしょうか
漆を塗ったばかりの表面をよく見ると刷毛の跡が
これを研いで磨いて滑らかにしていきます
塗った漆に研磨を繰り返し艶を出す仕上げの技を「呂色仕上げ」と言います
江尻浩幸さんは呂色仕上げの職人です
まず炭で研ぎます
柔らかくキメの細かい炭を使って丹念に
次に磨き粉で磨きます
呂色屋っていうんだけど、呂色しかできん仕事
刷毛目が目立たなくなってきました
仕上がって行くたんびに自分の勘はだんだんだんだんとはっきり見えてくれば楽しいですね
大きい座卓ぐらいになってきたら姿見になるぐらい
そうすると自分がだんだん見えてくるってくる
さらに生漆を塗り炭で研ぎ、利磨き粉で磨く
これを何度も繰り返して鏡のような漆の層で包んでいきます
漆はつややかな姿と耳に心地よい音の演出家
今日二つ目のツボは輝きが奏でるハーモニー
越前漆器で知られる福井県鯖江市
町の高台にある漆器神社
漆職人の守り神です
天井にはおよそ五十年前に職人たちによって奉納された作品がはめられています
こちらの工房では現代の生活に合う漆の洋食器やカラフルな漆器を作っています
なんと自転車も漆塗り
あえて漆らしい色ではない水色でモダンな風合いを出します
塗師の内田徹さん
2013年に福井県の伝統工芸士に最年少で認定されました
内田さんは二百年続く塗師の家の八代目
生まれてからずっと漆に囲まれてきました
内田さんのご自宅です
五十五年前、六代目の祖父が建てた夢の家
ここは拭き漆の床になります
それはまさに漆の館
十六年前床を全て漆塗りに改装したのです
きっかけは2004年の豪雨
家は床上浸水の被害に遭いました
修理の際、仕上げを拭き漆にしたのです
拭き漆とは木地に漆を塗って布で拭き取る作業を繰り返し、木目を生かして仕上げる技法
この床は七回も塗り重ねました
一回じゃこの風合いにもならないし、二回三回でもこの風合いにはならない
何度も繰り返すことによってこの艶が生かされるようなやり方になってきます
漆塗りの引き戸を開けて座敷に入ると天井も見事な拭き漆
漆はもったいないなと思って拭き取りを甘くすると綺麗に仕上がらないんで
ふき取る時はもう本当に漆を取る気持ちで取らないと最終的に綺麗に支払えないのが特徴で
床の間には呂色仕上げが施されていました
55年前の建築時よりも輝きが増しているそうです
漆ってあの塗ってから
塗って終わりじゃなくて塗ってからだんだん塗膜が固くなるんで
漆の完成って百年後って言われるぐらい徐々に高度がどんどん硬くなっていくんです
できた時に一番美しいんじゃなくて何十年後何百年後かが一番いい体制で作られてるっていうのも
聞いたことがあるのでそれを通ずるかもしれない
親子三代の時を経てもまだ完成しない漆の家
楽しみが続きます
三重県尾鷲市
江戸時代から最高級の建築材として名を馳せてきた尾鷲ヒノキの三時です
うんヒノキを育てる男たちは
山師と呼ばれてきました
へえうん山手の食事の様子を
手にしているのは曲げわっぱ
実はこれ漆塗りです
こちらが尾鷲わっぱ
重労働の山氏のお腹も満足させる
大ぶりの弁当箱です
尾鷲でたった一人になったわっぱ職人
追孝子さん
昔の日本の原形でな佐渡に持ってかれたり
ご飯も両方こう入れてこうぎゅっとで
昔はまだこれより大きかったが
両方入れて言語飯
言語入るのを持っていくとしてもあったし
ぎゅっと詰めてではちょっとずつ食べてで
昼に昼になったらまこっちがないので
こちらで味噌汁作っやまし
ならではの驚きの使い方があるのだとか
漆塗りのわっぱにお味噌とネギそして水
そこになんとかんかんに焼いた石
でも漆がはがれることも
葉っぱが痛むこともありません
丈夫なんですね
瀬古さんはヒノキを使った生地づくりから
漆塗りまで全ての作業を
一人でこなします
うんうんはいうんうん
うんうんうん生漆に
緑の顔料で色を付けます
うんうんうんうん
これで下地塗下地塗りをすることで
記事は固く締まり
目に見えない気の細かな凹凸も滑らかに
この後に塗る漆ののりもよくなります
うんかなり
乾燥させたら生漆を
すり込みます
うんしっかりと塗っては刷り込み
すり込んではふき取る
これを六回繰り返して
暑い漆の層を作っていきます
仕上げの無理は埃が入らない
特別な部屋ではいうん
透明感のある上質な漆を
たっぷりと塗って仕上げます
はい埃が付いていないか慎重にチェック
うん下地の緑の色が見えなくなるほど
漆の層が厚くなりました
丈夫されるのはやっぱり昔の蒸してそうですね
丈夫にするように乗るとか
うんまくさらんな道が
手荒く扱ってもびくともしない
漆塗りの尾鷲は
ご飯も傷みにくいと
土地の人たちは言います
山の仕事が生んだ力強い漆器
今日最後のツボは気を守る鎧はい
栃木県の日光
東勝負豪華絢爛な彫刻に彩られた
世界遺産です
創建から四百年
その姿を保っている
秘密は漆にあると言います
不動産の脇に金箔があると思うんですけども
あの示唆も漆を塗って
接着剤として漆使ってるんですよま
漆ぬことによって
あのーき我とかも防げるんですよね
そうするとあの長持ちするので
しっかりと建物をこうシステムを持ってる
きらびやかな金箔や彩色の下に
漆が塗られているのです
日光東処遇では
令和二年から六年の計画で本田を囲む国宝
東西好き米の修復が進んでいます
うんうんうん生漆に
とのこなどを混ぜて粘りを出し
下地塗りをします
作業は傷んだ木材を取り替えるのではなく
できる限り江戸時代のものを残したまま
進めます
これから修復に取り掛かるところを
確認しています
表面を五ミリ紙ヤスリで削ると
これまでの修復の跡が
年輪のように現れました
三代将軍家
水の時代からこれまでの修復を分析し
どんな塗り方をすれば良いのか
を検討します
あのーこれが先輩方やった仕事なので
それをなんていうの
自分で見て
あそういう風にすればいいんだな
っていうのは
ここで自分で勉強するんですけども
空きベイの彫刻は取り外して塗り直します
まず表面の色をはぎ漆で
下地塗表からは
見えない部分にも丁寧になります
江戸時代の木材を
現代まで守ってきた伝統の技
はい自分に車で四百年残ってきたんだけど
十七千四百年残るように
やっぱりしていきたい
そういう思いがあります
きらびやかな装飾を支える漆
日本文化の縁の下の力持ちです
