美の壺スペシャル 「 日本のすし 」

日本のすし

日本が世界に誇る食の芸術「 日本のすし 」を大特集!▽140年伝わる老舗の技に密着!「江戸前ずし」の艶の秘密とは?!▽京都の「さばずし」「箱ずし」には、極上の心づくしが!▽金沢では、回転ずしが大盛況!地元の魚をこよなく愛するすし職人のこだわりとは!?▽俳優・木村多江も「知られざるすし」を探して高知の山へ!▽石橋蓮司×草刈正雄のすし対決!

【出演】草刈正雄,石橋蓮司,【語り】木村多江

放送:2022年11月3日、2020年8月21日

美の壺 これまでのエピソード | 風流

美の壺スペシャル 「日本のすし」

今や世界中の人々から愛される日本の寿司。職人の精緻な技から生み出される寿司は食べる芸術。その魅力を美の壺が大特集。新鮮な魚を美しく変身させる江戸前鮨の伝統の技に密着。江戸時代から受け継がれた色と艶の秘密とは。京都のこちらの寿司はご飯が命。都の華やぎを添える心尽くしの一品に注目。私、木村多江も郷土の寿司を探し高知の旅へ。日本の寿司に秘められた美をたっぷり味わい尽くします。

江戸前

朝九時。
開店前の仕込みに追われる東京日本橋の寿司店「吉野寿司本店」。
5代目店主・吉野正敏(よしの まさとし)さん。
140年受け継がれてきた昔ながらの方法で寿司だねを仕込みます。
江戸前寿司に欠かせないあなご。
寿司にするためには泥臭さと滑りを消さなければなりません。
さばいたアナゴは重ねて鍋の中へ。
醤油、砂糖、みりんなどを合わせ弱火でじっくり煮て行きます。

1時間後、臭みは取れて、ふっくらと煮上がりました。
仕上げに、煮汁を煮詰めた甘いタレ。
ふんわりとろける江戸前の味です。

今から200年程前に誕生したと言われる「江戸前寿司」。

始めは、江戸近海で取れた魚を屋台で握った
手軽なファストフードでした。
冷蔵庫のない時代、魚を寿司ダネに使うには、
保存が利くように手を加える必要がありました。
そこで魚ごとに仕込みの技が編み出されます。
江戸前の代表格マグロ。
湯びきをして表面に熱を通したら醤油とみりんを合わせたタレの中へ。
このまま漬け込むことから「ヅケ」と呼ばれました。
およそ三時間。
醤油ダレが染み込んで鮮やかだった赤みが深いルビー色に
仕上げに煮切り醤油を塗ると、マグロが艶やかな色気を醸し出します。

保存のためというのは、いかに美味しく長く美味しく食べられる時間を長く持たせるかってこと
だからその本来の鮮度の良いそれだけの味から一歩進化させると言うか

創業 明治12年の老舗|日本橋|吉野鮨本店

今日一つ目のツボは仕込みが生み出す江戸の花

寿司職人の一日は、この時期の良い魚を見極めることから始まります。朝五時半、鐘の音とともに豊洲市場でマグロの競りが行われます。生のマグロから冷凍ものまで、その数は数千本以上。小売店への仲介をする仲卸業者が質の高いマグロを競り合います。

毎朝豊洲市場へ足を運ぶ吉野正敏さんは、マグロを35年の付き合いがある仲卸から仕入れています。仲卸は目利きのプロで、この日競り落としたマグロの中から吉野さんが求める部分を切り出します。「一番と二番とありますが、二番は使わないんです。二番は大トロ、中トロ、赤身が取れて、マグロの中ではいちばんいいところです。全ての部位がパラせるんですよ。」

寿司職人は複数の仲卸を回ります。次に訪れるのは、寿司や天ぷら用の魚介を扱う店です。旬を迎えた多彩な魚が全国から集まります。江戸前寿司に欠かせないのがコハダです。コハダは一年を通して手に入りますが、季節や産地によって身の大きさや質はまちまちです。それでも江戸前の寿司職人たちはコハダを使い続けてきました。

「店のカラーが出る魚だと思います。10軒あれば10軒、しめ方が違うし、好みも違う。面白い魚じゃないかなと思います。」

コハダをいかに仕込むかが寿司職人の腕の見せ所です。身が薄く水っぽい上に小骨も多いコハダは、煮ても焼いても食べられないと言われてきました。吉野さんの店では、江戸前寿司の伝統的な方法で仕込んでいきます。

まず、中骨と腹骨を丁寧に外します。続いて身の部分に粗塩をまぶして余分な水分をとります。季節ごとに変わる身の大きさに合わせて塩の分量や寝かせる時間を調節。この日は二時間。じんわりと水分が抜けていき、身がしっかりと閉まり、色にもメリハリが出ました。

次に、酢で洗って生臭さを消し、残った鱗もキレイに落とします。さらに酢に漬け込んで旨味を引き出します。残った小骨も柔らかくなります。昔ながらの職人の知恵が生かされています。

仕込み始めておよそ五時間、煮ても焼いても食べられないコハダが、銀色に輝く江戸前寿司の顔に生まれ変わりました。いよいよお披露目です。コハダに飾り包丁を入れたら、昔ながらの技で握ります。最後に切り醤油を添えます。

職人の技と手間に磨かれたコハダの寿司。銀色の背に淡い桜色が垣間見える江戸前寿司の絶景です。「食べ物だからね、食べたらおしまい。なくなっちゃうんです。いくら綺麗に作っても、食べたらなくなっちゃう。本当に儚い美だと思うんだけど、そこに心血を注ぐっていうか。」魚本来の旨みを歳月が育んだ江戸前の仕事です。

京都市北区にある織物の工房「織文意匠 鈴木」
多彩な糸で織り上げる西陣織を家族三代にわたって守り続けています。

「美の壺」日本のすし 再放送です。 | 織屋ぼちぼちブログ

長年を見守ってきた鈴木キクさん。
十五、六歳で機織り職人になり百歳を迎えた今も西陣織を支えます。
この家では特別な日にみんなで囲む食べ物があります。
お寿司です。
鯖を酢でしめて押し寿司にした「鯖寿司」
いなり寿司に巻き寿司、箱寿司。
馴染みの寿司が並びます。
こうしたお寿司は家族にとって思い出深い味。
かつては手のかかる鯖寿司も家で作っていたといいます。

お寿司は前の晩からこしらえてお祭りに食べます。鯖寿司は大変ですね。

今日二つ目のツボハレの気分に誘う

一年を通して様々な祭りが催される京都。
年に1度お目見えする暮尽くした出し物に人々は心躍らせなます。
そんな祭りの日のごちそうに欠かせないのがお寿司。
京都の人々は豪勢に盛りつけたり、家家で作った物親族や近所に配ったり、寿司を囲んで祭りを祝ったといいます。
昔ながらの寿司を今に使える店があります。
明治45年創業「いづ重」。
百年以上変わらない寿司作りの技を守ってきました。
祇園祭りの時にはいつも以上の数を仕込むという鯖寿司。
昆布を贅沢に使った店の看板です。
鯖がたっぷり見える切り口は祭りの気分を盛り上げてくれる豪快さ。
この店では代々寿司作りで大切にしてきたことがあります。

京寿司の老舗 祇園石段下 いづ重

京都のお寿司京都の寿司はご飯が主になってきます。ご飯が主体ですから、ご飯をどう美味しく食べるかという寿司です。

寿司の出来を左右するのはご飯です。京都では、おくどさんと呼ばれる昔ながらのかまどで薪を使って米を炊きます。昆布と鰹節でとった出汁を沸騰させたら、米を一気に流し入れます。この炊き方は「びっくり炊き」と呼ばれています。

寿司を作るときは、ご飯が硬めでないといけません。ねちゃねちゃしているとおいしくないため、硬めに炊きます。一気に強火で炊き上げ、窯のふちから滴り始める頃が出来上がりの目安です。米一粒一粒がしっかり立った、寿司に最適なご飯が炊けました。

味付けは昔ながらの方法で行います。白砂糖を溶かした糖蜜と米酢を創業時から変わらぬ割合で合わせ、ご飯に混ぜます。その後は扇で冷めるのを待ちます。ご飯一粒一粒にしっかりと味を含ませることが大切です。

この極上のご飯をいかに美味しく食べてもらうかに心を砕きます。創業時からの定番、箱寿司では、ご飯と具材を詰めて、美しい仕上がりにします。日比谷卵の彩りを並べ替え、市松模様にすると、見た目にも楽しく食べてもらえる工夫です。

北村のりおさんは、寿司をより楽しんでもらうために、寿司の包み紙を手作りしています。テーマは四季折々の風物詩で、季節ごとに包み紙を変えるという趣向です。大学で日本画を学んだ北村さん自らがデザインし、それを版画にして、妻のゆきさんが和紙に擦ります。手作りの包み紙が完成します。「安い包み紙では合わないので、手作りでないと伝わりません」と、作り手の心づくしが食べる人の心を躍らせます。

「木村いただきまーす。」
まずはとにかくお寿司が見たいと高知市内にある直販所へ年内には近海で獲れた新鮮な魚がずらり。お惣菜や様々なお寿司が並び、見たことのない竹の子寿司や、かぶとマグロの寿司などが並んでいます。初めて見たお寿司に驚きつつも、月に関するおめでたいこともあります。他にも、竹の子を使った寿司など、山の幸を利用した創意工夫が見られます。

高知県は温暖な気候に恵まれた自然豊かな地域で、豊富に採れる海の幸や山の幸を使った料理が地域ごとに伝わり、今も人々の暮らしに根付いています。木村さんが向かったのは、高知県中西部の都農町です。

ここには、寿司作りの名人、笹岡さえさんがいます。彼女は隠し技を駆使して寿司を作ることで知られています。自家製の柚子酢に生姜やゴマを加えたものが美味しそうで、畑で取れたオーラを丸ごと塩ゆでにして使う様子も見られます。ここでは、昔から寿司作りに欠かせない食材が使われています。

特に、赤くなるとともに寿司の材料として使われるものもあります。例えば、柚子の香りを効かせたご飯に、人参や椎茸、たくあんを加えた巻き寿司が作られます。完成した巻き寿司は、山の幸を活かした美しい一品となります。

また、有給(高知の夏野菜)は塩漬けにして冷凍し、いつでも楽しめるように工夫されています。色鮮やかで、寿司の華やかさを引き立てます。爽やかな香りと酸味が感じられ、色も美しいです。昔は手間をかけて作ることが多かったため、今もその技術を大切にしています。

「私は先生のような方とご一緒できて光栄です。幼い頃から食の道を学び、80年を経てようやくその声を聞けるようになりました。やっぱり道を極める方は違いますね」と、寿司作りの道を極めた人々の努力と情熱が感じられる光景です。

北陸の玄関口、石川県金沢市の城下町には、歴史的な情緒があちこちに残っています。その数ある観光スポットの中で、現在人気を集めているのが回転寿司です。金沢には多くの回転寿司店がひしめいており、訪れる人々のお目当ては、日本海の新鮮な海の幸です。

金沢港で上がる甘エビは「赤い宝石」とも呼ばれ、プリプリの身を楽しむことができます。能登沖で獲れたカワハギはとろける肝を添えて提供され、その赤さは身の締まりの良さを物語ります。金沢近海のバラエティ豊かな魚は、目にも楽しく回ります。

地元の食材を使用し、その日のうちにお客様に提供するのが金沢回転寿司の特徴です。金沢市中心部にある近江町市場には、170以上の店が軒を連ね、市民の台所として愛されています。店先には金沢近海で獲れる新鮮な魚がずらりと並び、その日の港に上がったものがすぐに並びます。

寿司職人の乙部友和さんは、数ある魚を自ら確かめながらその日のメニューを決めています。特に、輪島沖で獲れたスズキの仲間や、金沢で「赤い花」と呼ばれるケンサキイカの柔らかさと濃厚な甘みが特徴です。乙部さんは、魚ごとに工夫を凝らし、脂が乗ったアラを最大限に楽しむために切りつけたり、新鮮さを生かすために手間をかけています。

握りにも一工夫が施されており、バラの味を舌でより感じられるように、すし飯を包み込むように金沢の粉醤油でアクセントを付けています。細切りにしたワニの中さんの部分を使い、コリコリした食感も楽しめるように工夫されています。また、一口大のすし飯に能登の塩を一振りし、北陸の素材を活かした一品に仕上げています。器にも北陸らしさを演出し、イカの握りは青い九谷焼に乗せて日本海の景色を感じさせます。

一見派手な印象の器も、金沢の寿司にはぴったりです。金沢の漁港で獲れる白身魚の多さや、色使いの工夫が他にはない魅力を生んでいます。金沢の寿司を愛してやまない人たちは、今も伝統芸能を大切にしながら、寿司の楽しみ方を広めています。

市内の寿司店では、時間やお腹の空き具合に合わせて、好きなものを好きな時に食べることができます。近所のお寿司屋さんは、すぐに食べられる便利さが魅力です。金沢の寿司は、飾らず気取らず、金沢の風土に育まれた楽しみ方を提供しています。