美の壺 「ニッポンのデニム」

▽品質に世界が注目!一流ブランドも採用する日本製デニムの魅力を紹介!▽旧式シャトル織機が織り上げたデニムとは?▽ジーンズ600本集めた愛好家が、35年はき続けた国産ジーンズへの愛着▽藍染めの技から生まれたデニム▽ジーンズのタテオチ(色落ち)を生み出す糸の染色の秘密▽さまざまな職業の人が、はいて育てる尾道のデニムプロジェクトとは?!<File 426>
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

放送 2018年06月03日 

美の壺 「ニッポンのデニム」

2012年銀座の街中で開かれたファッションショー

服は全て日本のデニム生地から作られたものです。いま世界が日本のデニムに注目しています。今やファッションに欠かせないデニム。普段着から特別な装いまで幅広く使われています。

デニムが広まったのはアメリカ西部開拓時代。丈夫なことから金鉱を掘る労働者たちのワークウェアとして愛用されました。日本に入ってきたのは第二次世界大戦後。1973年には純国産ジーンズがつくられました。アメリカ製のジーンズを元に糸の染色から織、縫製まで全て国内で作られたもの。日本のデニムの礎を築きました。そして現在デニムは様々な形で発展を遂げています。

こちらはデニム生地を使ったスーツ。カジュアルだけでないデニムの魅力を伝えています。「スーツとデニムを結びつければ、従来作業用として使われてきたデニムが従来にない新しい価値を作るのではないか。気軽さもあります」

【インブルー】 「デニムスーツ」で着こなす新しい大人のデニムスタイル

東京青山にある呉服店です。こちらで人気なのがデニムの着物。通常のデニムより薄くて軽い生地を開発し、紬のようななめらかな風合いを生み出しました。「デニムは着る人を選ばないところが最大の特徴です。のデニムと聞くとより重いイメージがすごく強いみたいで皆さん羽織に来られた方が着ていただくととても驚かれるくらい軽さがあの特徴的なものになっております」デニムというカジュアルな素材は初めて着物を着る人にもおすすめだとか。様々な可能性を秘めた日本のデニム今日はその魅力に迫ります。

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織り

瀬戸内海に面した岡山県児島。ここで日本で初めてのジーンズがつくられました。以来デニム産業が盛んになり今ではジーンズの町として知られています。国産ジーンズを600本以上を集めている人がいます。地元でカフェレストランを営む片山章一さん。15歳の時に初めてジーンズを履いて以来、50年以上にわたってジーンズを集めてきました。「私が35年履いている国産ジーンズです。35年前瀬戸大橋が開通した折にこのジーンズを履いて瀬戸大橋を渡った思い出があります。大変気に入っています」大切に履き続けられてきた片山さんのジーンズ。35年という歳月に耐え宝物になりました。「表情が変わって味が出ます。人間と同じに皺がでて愛着があります」今日一つ目のツボは着る人の人生に寄り添う。

こちらは日本製にこだわり海外から注目されているジーンズメーカーです。この店が作るのは丈夫で長く持つことを第一に考えられたジーンズ。そのためにこだわったのが織りだと言います。「織物はゆっくりしっかり織り込むことで丈夫で良い織物ができる。厚手の織物だけど暑くもないし着心地もいい。徹底したものづくりをしていこう」

デニムを織っているのは昭和50年代まで広く使われていた旧式のシャトル織機です。元は帆布などの分厚い生地を追っていました。使われなくなっていた機械を全国から12台集めました。このシャトル織機は人の手での作業が欠かせません。縦糸はひとつひとつ緩やかに張っていきます。80 CM ほどの幅に縦糸がおよそ2000本。太い糸を使い丈夫な生地を作るためにはこの古い機械でなければ織れないと言います。横糸はシャトルと呼ばれる舟形の器を使って送っていきます。シャトルは1分巻に170回ほどを往復します。1時間に織りあがるのは最大で5 M 。ジーンズ二本分です。緩く張った縦糸に横糸を強く打ち込んでいきます。糸同士がずれて重なり合い、生地に独特の凹凸が生まれます。この機械を扱うのは内田茂さん。50年以上シャトル織機に携わっています。「一定のリズムで動いている。壊れるときはカンとかキンとかいう音がする。それで故障したところを見つけて治します」このシャトル織機は1980年台を境に生産されなくなりました。古い機械をメンテナンスをしながら大切に使っています。盛り上がったデニム生地。厚みを持ちながらも柔らかで優しい風合いです。生地の端に見えるのはセレビッチと呼ばれるほつれ止め。シャトル織機で織られた証です。時間をかけて織り上がったデニム。これからどんな人と時を重ねていくのでしょう。

染め

広島県福山市。備後絣の生産地です。藍染の糸で織られた備後絣。その伝統技術がデニム作りにも生かされています。国内産デニム生地の半数以上を作る工場があります。ここでは800種類以上のデニム生地が毎年新たに作られています。アメリカ生まれの染色方法を改良し独自のシステムを開発しました。「日本はずっと藍染を何百年やっているわけですから我々に染み付いた文化だと思っています」この工場で行われているのはロープ染色です。アメリカ生まれの染色方法を改良し、独自の染色方法を開発しました。ロープ染色とはロープ状に束ねた糸をインディゴ染料にくぐらせて染める方法。インディゴ染料は空気に触れることで酸化し発色します。染料に漬けては引き上げる作業を繰り返すことで徐々に濃く染まっていきます。この工場では糸の束を天井にまで高く引き上げて酸化させる時間を長くし濃い青に仕上げています。急が染めあがりました。一見濃い青ですが、中心は白いまま残っています。この糸は芯白または中白と呼ばれています。この糸の表面のインディゴ染料が擦れ落ちるとデニムならではの白い筋。縦落ちになります。「昔はもともとワーキングから出てきた色です。履き込んで色が出てくる。その変化も楽しんでいる。少しでも違った青を作っていきたいと思っています」今日2つ目の壺は伝統から生まれる日本の青

藍の生産で知られる徳島県上板町。ここに伝統技法を継承している藍染工房があります。今、挑戦しているのは藍染のデニム作り。「もともと藍染は世界中にあって、国々でいろんなやり方があって藍色に染まるっていうのがあるんで、僕らのデニムを履いてもらって、日本の伝統文化だった藍染っていうのをもっと知ってもらいたいなと思います」藍を作り始めたのは2年前。染料となる蓼藍の栽培から染色まで全ての工程を自分たちの手で行います。藍の葉は夏に収穫し乾燥させます。10月。宿毛という染料作りが始まりました。乾燥した葉を発酵させて藍の葉に含まれる色素を引き出すのです。水をかけては葉を混ぜ合わせ発酵を促す作業を4ヶ月以上繰り返します。発酵の具合を見ながら慎重に作業を行うことで良質な宿毛ができます。この宿毛をもとに作られるのが藍染液。藍の花と呼ばれる気泡などを目安に染めの作業に入ります。藍染はその日の天候や温度湿度によって染め上がりの色が変わります。繰り返し染めること6回。半年かけてデニム生地300メートル分の糸が染めあがりました。「僕ら畑から色を作って、それを使って染色をして物を作ってるので、汗水垂らして作った僕らの色を見てもらいたいのもあるし、後はやっぱり化学インディゴと違う色落ちの仕方とか、新しいデニムの概念みたいなものを感じてもらえたらと思います」絣からデニムへ。日本の自然から生まれた色は今も受け継がれています。

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育てる

デニムデザイナーの林芳亨さん。ジーンズの経年変化を調べて製品づくりに生かしています。「一回洗ったもの。六ヶ月から七ヶ月。これが二年くらい」林さんが提案するのが、履いて育てるデニム。色落ちの具合を調べ、糸の染めや織の段階から製品づくりをしています。「履く人の顔になるのがデニム。百人いたら百人の顔になるのがデニム」

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今日最後の壺はデニムの顔は百人百様。

広島県尾道市。ここでは世界初のユニークなプロジェクトが行われています。尾道在住の人たちが新品のジーンズを一年間履き、デニムを育てるというもの。プロジェクトに参加している人の職業は様々。およそ70に及んでいます。お客さんの反応は。

このプロジェクトは始まって4年。これまで参加した人は500人にのぼります。「これはですね建設業の男の子男性なんですけど、仕事始めて一年二年というがむしゃらに現場で働いたデニムです。これはもうを語るまでもなくデニムが語ってくれると言うか、汚れもついてるんですけどもこれは汚い汚れとは思わなくてこの彼が1年間本当に一生懸命働いた痕跡と言うかなんか俺見てるだけで頑張れって言いたくなるようなそんなデニムになってるかなと思いますね。すごくかっこいいと思います」柑橘農家の小川さん。一年前からこのプロジェクトに参加しています。「草の種はデニムの場合は落ちる。少々のことであっても引っ掛けたり破れたりすることなく助かってます」小川さんのデニムには膝をついてレモンに向き合った痕跡が残されていました。ラムネ屋を営む後藤さんはプロジェクト最年長の76歳。ケースの上げ下ろし作業の時に擦れた色落ちが特徴的です。「ズボンのせい。年に見えない」大工の吉原さんはプロジェクトに参加して思わぬ出会いがありました。「ドイツのファッション誌の編集長が買っていった。僕のジーパンに一目惚れして、僕のデニムを履いてドイツまで帰りました。お飲みつとドイツがつながった」地元の漁師たちも参加しています。同じ職業でも履き込んだデニムの色や形は違います。週に一度のデニムの回収の日です。参加者に履いてもらったデニムは毎週木曜日に回収して洗ってまた返すそれを一年間繰り返します 。履けば履くほどに自分が刻まれるデニム。小さな港町で生まれたデニムは広い世界へと繋がっていきます。


 

 

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