日曜美術館 「ルーブル美術館・美の殿堂の500年 〜革命とナポレオンのルーブル」

日曜美術館 「ルーブル美術館・美の殿堂の500年 〜革命とナポレオンのルーブル」

ルーブル美術館を8K映像でたどる。18世紀末~19世紀初頭、フランス革命により王宮ルーブルは民衆の美術館に。英雄ナポレオンは、世界の至宝をルーブルに持ち帰る。イタリアからルネサンスの傑作「カナの婚礼」を戦利品として獲得、皇帝となった自らの姿を大作「ナポレオンの戴冠」に描かせる。そしてエジプト遠征によって、古代エジプトの至宝がルーブルにもたらされる端緒を開く。ルーブルが世界的美術館へ変貌した時代!

初回放送日: 2021年11月14日

 

日曜美術館 「ルーブル美術館・美の殿堂の500年 〜革命とナポレオンのルーブル」

ルーブル美術館美の伝道は十六世紀の初め、イタリアからもたらされた一枚の絵画とともに歩んできました。

モナリザ。
モナリザは世界の至宝がこの地に集められた歳月を見つめてきました。

シリーズ・ルーブル美術館。
今回はフランス革命とナポレオンの時代。
十八世紀一人の英雄によって世界の傑作がもたらされますから
美術館へと変貌を遂げていった時代をたどります。

時を超えルーブルの至宝は問いかけます。

西洋美術。
実は六万点を超える古代エジプトの美術品が収められています。
それは四千年以上前。
ナイル川流域で生まれた文明の遺産です。
古代エジプト美術の最高傑作の一つ「書記坐像」
背筋を伸ばした姿。
ナイルの日差しに焼けた肌。
書記は国王ファラオの祈りを神に届ける役目を担っていました。
パピルスに記す
神が読むと信じられたヒエログリフ。
太陽神などの神々に祈りを捧げました。

目に埋め込まれているのは磨き抜かれた水晶。
生きるとは世界を見つめること。
古代エジプトの人々は

その人見る四千年以上の時を経た今も輝き続けています。

ルーブルに古代エジプトの美の結晶がもたらされたのは十九世紀。
そのきっかけを作ったのは一人の英雄でした。
1789年に起きたフランス革命。
民衆が蜂起し王政を打倒しました。
その直後からフランスは革命の連鎖を恐れたヨーロッパ諸国との戦争に追い込まれます。
その時救世主のように現れたのがナポレオン・ボナパルトです。

アントワーヌジャングル
アルコレ橋のボナパルト性はいええ
イタリア遠征で部下を鼓舞する二十七歳の姿です。
ナポレオンは戦争の天才でした。
革命軍を率いてヨーロッパの国を相手に連戦連勝。
フランスの独立を守りました。
私は民衆の懐から生まれた軍人。

自由と平等を歌った革命は悟空の宮殿だったレベルを劇的に変えました
歴史上初めて美術館になり市民に公開されたのです。
その名も共和国美術館。
美術館には多くの民衆が詰めかけました。

戦前は戦争で勝利するたびここに大量の美術品を戦利品としてもたらします。
イタリアで大勝利を収めたナポレオン。
五百を超える美術品を持ち帰ります。
求めたのは歴史に名を残す偉大な作品でした。
十六世紀ルネサンスの傑作「ヴェロネーゼのカナの婚礼」
イタリアの修道院から持ち出したルーブル最大の絵画です。

縦7メートル横10メートル。
巨大な画面には溢れんばかりの人々結婚の宴です。

イエスキリストが初めて起こす奇跡の場面が描かれています。
舞台は世界最高の繁栄を謳歌する十六世紀のヴェネツィア。

宴の後半ワインがなくなったと相談されたイエスは瓶に水を汲むよう命じます。
すると瓶から溢れ出たのはなんととびきり上等のワイン。
しかし誰もイエスの奇跡だとは気づきません。

世話役新郎新婦にぼやきます。
なぜこんなうまいワインを最後まで取っておいたんだね

かつてない反映
祝祭に美味しれる人々
しかし画家はこの絵にある不吉なものも描いています。
それはイエスの下の本
小さなテーブルに置かれ砂時計。
繁栄の中で刻まれていく時の移ろい。
やがて訪れるキリストの受難を暗示していると言われています。

人はこの世の富も神の奇跡を欲する幸せの全てを望む人間の性を表わした大作です。

パリの象徴・凱旋門。
ナポレオンの戦争での勝利を記念し作られたものです。

私は敵を征服することによって栄光を手に入れる
私の力を維持させるのは勝利だけだ

戦いに明け暮れるナポレオンが憧れた地。
それは偉大なものだけが征服しえたエジプトでした。
1798年。
29歳のナポレオンは五万の兵と学者百七十人を伴いエジプトに遠征します。
ヨーロッパは小さいエジプトでこそ真の栄光を得ることができる。
そうナポレオンは信じたのです

ルーブル一階にあるエジプト美術のギャラリー。
四千年前神を祀った巨大な神殿の遺構です。

柱に刻まれているのは聖なる文字ヒエログリフヒエログリフには神に祈りを届ける力があると信じられていました
ヒエログリフを刻ませたのは絶大な権力を誇った国王。
払ううん
紀元前十四世紀黄金期のエジプトを治めた荒尾アメンヘテプ三世。
あのツタンカーメンの祖父です。

ファラオは肉体が滅んだ後、自らの栄光が永遠に続くことを願いました。

エジプトで見た永遠になるもの。
それはナポレオンにとっての別れられない魔力となっていきました。

西洋にとって神秘そのものだった古代エジプト。
中でも美しい装飾をまとったミイラは驚くべき旨の芸術でした。

エジプトの民は死後、魂が肉体に戻り永遠に生きられるようにミイラを作りました。
一部の隙もなく布で巻かれた顔。
死者の魂を悪霊から守るためでした。

棺も美しく飾られました。
これは紀元前十一世紀頃に生きた歌姫タヌテレレの棺。
神に祈りの歌を捧げた女性です。
顔は死者の理想の姿で刻まれています。
空白を恐れるかのように隅々まで死者を守る精霊や神が描かれています。
胸元には復活の象徴とされた昆虫・スカラベ。
大きな翼を広げるのは止み
空太陽を生む女神ぬとです。

右手で鈴を鳴らす女性は死者タヌテレ
その人冥界の神オシリスに永遠の命を祈り、足元には上に届ける言葉がヒエログリフで記されています。

神や死者のために翼を広げて闇を追い払ってください
そして死者が永遠に朽ちることのない星になれますように

エジプトで永遠の命に触れたナポレオン
四年後きょうわこく美術館に新たな名前を冠します
ナポレオン美術館

ルーブルの二階にある赤のここになぽれを
自らが描かせた一枚の対策があります

1804年。
ナポレオンは皇帝に即位
戴冠式の様子を高さ六メートル幅九メートルの巨大な絵画に描かせました
ジャックルイダヴィッドの皇帝ナポレオン
今後ジョゼフィーヌの戴冠式ええ
ダヴィッドは古代ローマの枝など
歴史がで知られていました
パリのノートルダム大聖堂で二万人がさんです
荘厳な場面。
画面の中央で皇后に冠を授けるのがナポレオンその人です。
望んだのは水の一部になることです

白い毛皮に裏打ちされたマットは
海王類じゅーよん
腰にはフランス王家現代の宝石で飾り立てた剣うんはい
そして頭に古代ローマの皇帝のように月桂冠をいただいています。

刻まず皇后ジョゼフィーヌです。
シンクの的
その柔らかな風合い
はいナポレオンの背後従うように描かれているのは
カトリックの最高権威ローマ教皇
ナポレオン自らを強行を凌ぐ権力者として人々に認め
この絵が公開されると若き皇帝に浸水する民衆がルーブルに押し寄せたと言います

ナポレオンは自らの名前を冠した美術館を世界一の規模にしようとします
それまであまりなかった時代の作品を中心に五千点以上を集めました
その中に謎めいた一枚の絵画があります
金貸しとその妻。
十六世紀ヨーロッパ経済の中心地だった現在のベルギーアントワープで描かれました
金貸し夫婦の日常の一コマ夫は天秤ですよね
金貨の重さを量っています
金貨はヨーロッパ各地から集まってきたもの
混ぜ物はないか偽物は無いか計を見つめる男の表情は真剣そのものです
そして聖書をめくる妻の手は生後四のえの手前で止まっています
祈りとは違う何かに目を奪われているようです
そこには金貨の他に指輪や真珠の粒
それはこの世の富欲望の象徴
テーブルの上には小さな凹面鏡が置かれています
中に不思議な男性の姿が
よく見ると男の右手の先には教会の塔が描かれています
さらに夫婦の後にも人影がわずかに開いた扉の向こう側
左の男は人差し指を立て何かを忠告しているかのよう
神を忘れる欲望のままに生きる人間の業を描いた作品です

自らの栄光が永久に続く事を願ったナポレオン
権力の絶頂期に描かれた一枚の絵があります
エーロの戦場におけるナポレオン
ロシアプロイセン連合軍に激戦の末勝利したときの姿ですね
わずか一日で両群で死傷者五万人を出した壮絶な戦いでした
雪原に無造作に積まれた屍
栄光の影戦争の現実

勝利した皇帝の顔は青白く疲れ切ったかのよう
この五年戦争の天才だったナポレオンは冬のロシア遠征で二十四万の兵を失い惨敗。
国民の心も離れ
1814年範囲を余儀なくされます
フランス革命から二十五年
ナポレオンの時代が終わりました
戦争に勝利することで皇帝となった男は戦争に敗れることで全てを失いました

ナポレオンが権力の座を追われた後
フランスでは再び国王が即位
ルーブルは王立美術館となりました
そして現れたのはナポレオンの時代にはなかった芸術です
フランス人画家ドミニクアングル作グランド
オダリスク。
オダリスクとはオスマン帝国のハーレムに仕えた女性です。
青い布に包まれ浮かび上がる透き通るような白い肌。
そして不思議なほど長く伸びた背中。

作者アングルはナポレオンの戴冠式を描いたダヴィッドの下で歴史がを学びました。
しかしアングルは自らの感性の赴くまま女性の裸体を描き始めます。

人の英雄が去った後新たな芸術が生まれようとしていました。
過ぎ去った過去と未来。
その間でオダリスクはただまっすぐにこちらを見つめています。

ナポレオンが晩年に残した

足はどこから来たのか
私は何であるのか
その答えは私の思念を超えている
私はを知らない肉体に過ぎない

ナポレオンのの憧れがもたらした古代エジプトの書記坐像。
我々とは何か人間とは何か
四千年の時を超えルーブルの至宝は語り掛けます。