今回のイッピンは静岡の「プラモデル」。静岡は、国内出荷額の9割を占める「模型王国」。海外の注目度も高く、見本市には毎年、多くのバイヤーが集まる。魅力は、本物に限りなく近い「精密さ」。リアリティを生むための製造技術が、飛躍的に進歩してきた。あの細かく、精巧にできたパーツは、どうやって作られるのか?船や飛行機といった定番から、ガンダムまで。普段は見ることができない工場内部を徹底取材する。
【リポーター】賀集利樹,【語り】平野義和
放送:2018年11月21日
イッピン 「夢つくる精巧な模型~静岡 プラモデル~」
新宿のファッションビルにある「模型ファクトリー」。女性達が何やらお稽古に熱中しているようです。彼女たちが作っているものはプラモデル。こちらの女性は戦車に挑戦。この模型ショップでは月に一回女性限定のプラモデル教室を実施。先生だって女性です。「手芸とかビーズでアクセサリーを作ったりとかネイルアートとかそういった細々した作業が好きな方って言うが女性には多いかなと思うので、女性がプラモデル楽しみをきっかけになってるんじゃないかなと思う」
今や男女を問わず誰もが楽しめるプラモデル。メーカーは静岡県にあります。実は静岡プラモデルの国内出荷額の9割を占めているんです。最近のヒット商品がこれ1/32サイズの小惑星探査機はやぶさです。細部に至るまで忠実に再現されたレーシングカー。学校の机や椅子だってプラモデルに。箱を開けてびっくり。静岡のプラモデルは進化し続けています。精密でリアリティあふれる製品を生み出す技術。この地で生産が盛んになった理由とは。静岡のプラモデルの魅力を徹底リサーチします。
プラモデルの聖地・静岡
プラモデルの聖地静岡。ラーメン屋のショウウィンドウにプラモデル。居酒屋にもプラモデル。「趣味の話で盛り上がろうという」寿司屋にはマグロ漁船。理容室にも車のプラモデルが。区役所を尋ねてみると、地元の産業を盛り上げようと5年前から区の職員が作ったプラモデルを展示しています。毎年5月静岡で行われる静岡ホビーショー。世界最大級のプラモデルの見本市。訪れる客は7万人以上世界中からバイヤーも殺到します。精密さが評判の静岡のプラモデル。箱を開けて見ると。こんなに細いパーツをどうやって作っているんでしょうか。
工場に潜入
訪れたのは大手メーカー。そもそもプラモデルのパーツてどうやって作っているんでしょうか。「部品を作るための金型はこちらになります」パーツを作るのに欠かせないのが金属を掘って作った金型。溶かしたプラスチックを型に流し込むことで作られています。金型を見てみると細かい。どうやったら硬い金属をこんなに繊細に彫ることができるんでしょうか。秘密が隠された部屋を特別に見せてもらいました。「こちらは電極です。自動車のボディーのようにわかりやすいものもあれば、小さな部品もあります。電極を使って金型を彫る作業しています」電極で彫るとはどういうこと。「こちらの電極は部品の形を彫るためものです」電極は作りたいパーツと全く同じ形をしています。電極を使って金型を作る機械。車輪のパーツを例に金型のはどのようにできるか見てみましょう。使うのは車輪と同じ形をした電極。これに電気を流すことで金型を彫っていくんです。光が出ているところが放電によって削られているところ。一つのパーツを作るのに平均3時間近くかけて彫るんです。金型 一セット分に一か月以上かかるなんてこともあります。精密なパーツがあってこそのプラモデル。その秘密は金型作りの技術にあったんですね。
進化するプラモデル
ご存知ガンダム。プラモデルのパーツはさらに進化しています。ガンダムのプラモデル。通称ガンプラは1980年に発売開始。30年以上経った今もシリーズは続き、累計販売数は4億個を超えています。「初代のガンプラは色もなく接着剤で貼り付けたのに対し、30年後のガンプラは樹脂自体に色がついて組み立ててシールを張っただけのものです」そう、現在のパーツは色がはじめから全部ついているんです。色塗りで失敗することなく完成します。 色付きのハーツを作る最新鋭の多色成形機。ポイントはここにある管型。どのようにしてパーツごとに色をつけるんでしょうか。原料のプラスチック樹脂は着色済み。金型には4色を入れることができます。溶かされたプラスチック樹脂は金型に流し込まれます。その際、色の境目をストッパーでせき止めます。一つの色が固まったらストッパーを外し、別の色のプラスチックを流し込む。これを瞬時に行います。一枚ができるまでに必要な時間は20秒です。30年の間進化し続けてきたガンダムのプラモデル。より成功でカラフルな姿になりました。そしてさらに色を使い分ける技術を応用したのがこちら。これガンダムの手なんです。組み立てなくてもこの通り。部品を切り取っただけで最初から指の関節が動きます。なぜこんなことが可能になったのでしょうか。この技術を開発して西澤純一さんです「ものすごく硬い素材のものと柔らかい素材の二種類を使っています」固さの違う二種類のブラスチックを同じ金型に流し込みます。材質が違うためお互いがくっつくことはありません。二つのプラスチックが接する部分は動かすことができるようにジョイントになっています。そのため関節が動くというわけなんです。「よりプラモデルを組みやすく楽しく組めるんじゃないかと思っています」プラモデルを完成させたときの悦びを誰にでも味わってもらいたい。そんな作り手の情熱がより精密な組み立てやすいプラモデルを開発する原動力になっていたのです。
アートなプラモデル
取材先など
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