美の壺「巨樹」




“神様の木に会う”地上最大の生命体、巨樹。

樹齢2000年の太古の桜が満開。幹の中が空洞!日本一の巨樹の神秘。

あの木なんの木?新緑の美、熊本の日本一美しいクスノキ、巨大な傘のような姿にうっとり。

瀬戸内海の人口18人の小さな島が大にぎわい!まか不思議な形で島を守る巨樹。

北海道富良野の森で、巨樹を描く脚本家の倉本聰さん。

人生と重ねる点描画とは?東京麻布の大空襲を生き延びた黒いイチョウ

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【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

美の壺「巨樹」

放送:2019年3月8日

地球上で最も大きく長く生きる生命・巨樹。日本では古くから神の木と崇められてきました。

地上1.3 M の位置で幹周りが3 M 以上ある木を巨樹と言います。

巨樹は四季を映し出します。樹齢2000年の桜。

ほとんど朽ちた幹。それでも花を咲かせています。途方もない時間をかけ自然が作り出した姿。今日は巨樹の魅力を鑑賞していきます。

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異形

熊本市の畑の真ん中に日本一美しいと言われるクスノキがあります。

寂心さんのクスです。人と比べるとその大きさのわかります。

幹周り17.1 m 高さは30 m。四方に広がる枝は直径50 m 以上もあります。

巨大な傘のようです。美しさに引き込まれ近づいてみると別の顔が現れます。

今にも動き出しそうな得体の知れない物体は根っこです。地面を這うように伸び、まるで巨大なタコの足のように見えます。木とは思えない異形の姿です。いろんな人がこの木に会いに来ます。その姿に昔から人々は畏敬の念を抱いてきました。

今日、一つ目の壺は人知を超えた形。

日本海に面する青森県深浦町。ここに日本一大きいイチョウの木があります。北金ケ沢のイチョウ。

樹齢1000年。雪に包まれた紅葉が輝きます。このイチョウも美しい紅葉をくぐり抜けると異形が現れます。無数に垂れ下がった枝のようなもの。

垂乳根。

垂乳根は空気中に現れた気根という根っこのことです。

おっぱいのような形から垂乳根と呼ばれています。

このイチョウには不思議な言い伝えがあります。祈ると母乳の出が良くなるというのです。

「ここに縫ったさらしにお米を三合入れて拝みました。イチョウの木のおかげで娘が元気に育ちました」。

不思議な力を持つ垂乳根のイチョウ。自然が作り出したその大きな姿で、北国津軽の人たちを見守っています。

生命力

鹿児島県姶良市にある神社の境内に日本一の巨樹があります。

蒲生の大クス。

幹回り24.2メートルは日本最大。樹齢1500年です。

この巨樹の周りに神社ができ、人が住むようになり町ができました。この地域のシンボルツリーです。

木の根元に何と扉があります。中はどうなっているのでしょう。

「年に四回樹勢診断を行っています。クスの特性で仲が空洞になるのが老木の特徴でして」。

巨樹の内側は長い時間の間に腐食し8畳ほどの大きな空間ができていました。

幹の中で伸びていたのは根っこ。

水分や養分を吸収し表面の皮を通して吸い上げます。

そのために木が空洞でも生きていけるのです。

さらに上に上ると外につながっていました。

大クスの最上部は16メートル。中が空洞になっても生き続ける驚きの生命力です。

二つ目の壺は悠久を生きる生命力。

浮世絵にも巨樹は描かれていました。ところは江戸。

イチョウの巨樹です。

ちょんまげ侍も江戸の名所として親しまれていました。

東京麻布。都会のど真ん中に今もそのいちょうは立ち続けています。

樹齢750年。善福寺のイチョウです。江戸から明治そして昭和平成。

激動の時代を生きてきました。そんな善福寺のイチョウに訪れた最大の危機。1945年東京を襲った大空襲。

4月5月の空襲では麻布にも多くの焼夷弾が落とされ、善福寺も大きな被害に遭いました。

銀杏の木に空襲の爪痕が70年以上経った今も残っています。

近くの寺の住職桜井敏雄さん。空襲から7か月後、疎開先から焼け野原の麻布に戻りました。

「木の大きさが今より二周りくらい小さかった記憶があります。焼夷弾が当たったかもしれませんけど、上の部分は火災で焼け落ちた。だから全体的に木が小さくなっていた」。

空襲でほとんどが焼かれ小さかったイチョウ。 しかし、20年ほどで木は回復し、もとの大きさに戻ったといわれます。

「どうしたって人間だからへたることはいくらだってあるわけで、そういう時はやっぱりこういうとこに来てイチョウの姿を見たりね、我と我が身と比較をする。とやっぱり人間は普通に小さいので、やっぱりこの自然のイチョウがいかに大きいのかわかる。あんだけ大変な思いして何百生きてきたんだから、自分もそれに負けちゃいけないなって気を起こすのが一番のことじゃないですかね」。

瀬戸内海に浮かぶ香川県志々島。島には学校も警察もなく人口はわずか18人。そんな小さな島に今国内外から多くの観光客が訪れます。お目当ては一本の巨樹。志々島の大くすです。樹齢1200年。昔から島の守り神として大切にされてきました。地を這うように真横に伸びる枝は50メートルに達します。根元からすぐに両側に広がる形が特徴です。この巨樹は思いもかけない方法で生き延びてきました。それを目の当たりにした樹木医がいます。川西玉夫さん。15年前大きな枝が折れてしまい治療のために呼ばれました。一目見て無理だと思ったと言います。「あきらめなければいけないと思った」。 わずかな部分だけを残し折れてしまった太い枝。一度地面につきながらも先へと伸び、枝先には緑が茂っています。いったいなぜ。「これが根です。元の根からの水分の供給がむつかしくなれば何とか生きようとすると、それがもし地面についておけば新たに根を下ろして水分を確保する」。折れた枝から新たに根を下ろし、ここから水分を吸収しているのです。「折れてからに三年はだんだん枝が枯れてきた。ところが急に元気になりだしたんでどうしてかなと思うと、どうやらここで根を下ろしているみたいなので」。樹木医も諦めた状態から自らの力で見事に蘇った巨樹。神秘の生命力です。

想像する

広大な森で巨樹に魅せられ絵を描いている人がいます。脚本家の倉本聰さん。目の前の巨樹の姿形をデッサンします。20年前から木の絵を描き始めた倉本さん。ここはお気に入りの森。かつらの巨人がずらりと並びます。「本当にここの森はすごいですよね。ねじれているじゃないですかこの機。あっちには素直な気もあります。だからこの人はかなりねじれた性格で、僕の周囲にもいっぱいそういう人がいますけど、ねじれているほうが生き延びているというか、そうすると性格がねじれたほうが長生きするのかなとかおもっちゃったり、人間社会と結び付けて考えていると本当に木っていうのは面白いですよね」。倉本さん。すっかり巨樹に惚れ込んでますね。「色っぽい気はあります。なんとも色目かしく感じる木はありますよね」。京最後の壺は、想像力を膨らませる。
倉本さんの絵です。目のように見えるのが幹のこぶ。日本の木が会話しています。「どうだ最近」「白内障が進んじまって周りのものがよく見えねえ」「いいんだ周りなんて見えなくて。見えてみろ腹の立つことばっかりだ」。「惹かれますね、木にね。いい女がいてね、うんと惹かれてね、でも庭にある一本の木でね、その気とどっちを選びますかと言われたときにどっちを選ぶんだろうね・・・。フフフ。こっちも選びたいし、捨てがたいですよね」。森でデッサンしたかつらの巨樹を点描画にしていきます。ボールペンで一つ一つ点を討ち続けます。かつらの絵が描きあがりました。黒く描いた幹の上にのせた金色の落ち葉。「『桂の谷には聖霊が棲み、舞い落ちる落葉を言霊に変える』って書いたんだけど、落ちてる葉が全部言霊に代わっている感じがしたですね。なんかみな一個ずついい言葉をもって落ちてくるみたいな」。倉本さんの想像力を掻き立てる巨樹です。




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