イッピン「伝統の技でスタイリッシュに!~富山・高岡の金属製品~」

イッピン

控えめな金色が愛らしい、円すい形のフォルム。たたくと「チーン」と澄んだ音色が響きわたる。実はこれ、仏壇に欠かせない「おりん」を現代風にアレンジしたもの。日本有数の金属産業の町、富山県高岡市では今、伝統の技法を組みあわせた斬新な製品が次々生まれている。銅を青く深い味わいに加工した、ぐい飲み。ビールの冷たさを維持し、鉄の持ち手がしっかりと支えるビアカップ。新しい金属製品の魅力を、中山エミリがリサーチ!

【リポーター】中山エミリ,【語り】平野義和

イッピン「伝統の技でスタイリッシュに!~富山・高岡の金属製品~」

放送:2019年7月28日

富山県内にある和食のお店。
料理に花を添えるのはツ一トンカラーのモダンなぐい呑。
「想像していたよりもしっかりと重みがあるんですね」
実はこのぐい飲み。
青い部分は金属でできているんです。
作られたのは日本有数の金属産業の町。
富山県高岡市。
今高岡では伝統技術を生かした斬新な製品が次々に生まれています。
美しいフォルムのこちら。
皆さんもよく知っているあるものを現代風にアレンジしたものなんですが。
さらに冷たいビールを楽しむカップにも高度な技が生かされています。
柔軟な発想でスタイリッシュに。
高岡の金属製品の魅力に迫ります。

金属加工関連の会社が百軒以上集まる富山県高岡市。
リサーチャーは中山エミリさん。
訪ねるのはあるものを現代的に生まれ変わらせた会社。

こんにちはよろしくお願いいたします

老舗仏具メーカーの四代目。
こちらの「おりん」になります。

仏壇に必ず置いてある「おりん」。
叩くと澄んだ音色を響かせてくれます。
でもこちら。
一見「おりん」には見えませんが。

確かに美しい音色が。
シリーズの中でもベルのような形が愛らしいと人気なのがこちらの「おりん」。

どうやって使うかトライします。
これはですね納めていただいてこんな感じで使います。
なるほどいや可愛らしい。
なるべく今のあの自由空間にも違和感ないように使いやすいようにってことでこういう形にしています。

どうやって作るのか見せていただくことに。

これが材料ですね。五円玉と同じ素材で真鍮っていう気持ちになります

真鍮とは銅と亜鉛を混ぜたもの。
光沢が美しく、加工しやすいため昔から美術品や仏具に多く使われてきました。

ここから覗いていただくとですね、今ちょうど暖められた真鍮がこちらに今来て、叩くと形になるあっという間です。

真鍮に強い力を加え五輪の形に加工する作業。
まずは真鍮を八百度まで熱します。
そして三百トンの力でプレス。
一瞬にして「おりん」の形に。
簡単そうに見えますが、実はこの作業には重要なポイントが。
それは上下の方々に油を塗ること。
塗る油の量によって出来上がりの厚みが微妙に変わってくるんです。
真鍮は強い力で押されることで形に沿って伸びていきます。
この時油が少ないと伸びが悪く、分厚い仕上がりに。
逆に多すぎると伸び過ぎて薄くなります。
真鍮の厚みは「おりん」の音色を左右する重要な要素。
油の量を調節し的確な厚みにすることが大切なんです。

プレスした真鍮の外側を美しく削り、「おりん」のべースが完成。
でも理想の形と熱海に行き着くまでには様々な苦労があったんだとか。

こちらがいろいろ試行錯誤されたものってことです。
薄いものを作ったんですけど薄くなると

微妙な厚さの違いで全く音が変わってくるという「おりん」。
聞き比べてみると。

全然違いますね。あと余韻とか。長く響くとか。

目指したのは透明感のある音色と心地良い余韻。
二十個以上の試作を作りようやく理想の音色にたどり着きました。
いよいよ仕上げの金メッキ作業。
真鍮の「おりん」を金を溶かした溶液に。
電流を流すことでしっかりと付着させます。

透明な塗料でコーティングしたら最後の工程へ。
音の伸びや透明感を確認する検品作業。
「おりん」が使われる場面を思い浮かべて耳を傾けます。

「祈りの心ってすごく大切だと思うんですよね。先祖を敬うとかそういったものを文化として残していきたいので、そういう文化はですね今の今後もですね続けれるようなものをですね作っていきたいなと思っています」

時代が変わっても祈りの場を守りたい。
作り手の思いが響くイッピンです。

高岡で金属加工が始まったのは四百年前。
町の中心には職人たちが青銅で作った巨大な大仏がそびえています。
こちらは香炉などの美しい金属製品を生み出している会社。
金属の表面に特殊な加工を施し深い味わいを出す技に定評があります。
その技術を使って生み出したのが木と金属を融合させたこちらのぐい呑みシリーズ。
グッドデザイン賞を受賞しました。
中でも人気なのが直線のラインが印象的なこちらの器。

素敵ですね。すごい磯際な感じがするので、すごく馴染んでいて、木と金属っていう意外とありそうでなかった組み合わせじゃないかなと思うんですが

「なかったことはないとは思うんですが、僕たちは金属に軸足を置いたものづくりをしてまして、金属をどう活かせばいいかって考えた時に一つ可能性としての磯財の組み合わせの可能性を探ったんですね」

白木との美しいコントラストを生み出す金属部分。
独特の質感と色合いに高岡ならではの技が生かされています。

材料はこちらも真鍮。
機械で正確に削り出していきます。
今も昔ながらの分業制が残る高岡専門の工房に運ばれて作業が進みます。

何かおっきな釜みたいのが。
ここで作業してます。最初の段階でこれをそれを乗ります
これはどんな液体なんですか。
これはちょっとね馴染み深い品物なんですけど米ぬかなんです。

使うのは塩と硝酸カリウムを混ぜ込んだ米ぬか。
真鍮の表面に丁寧に塗っていきます。
米糠を塗った真鍮をバーナーで炙り始めました。
実はこれ抜か焼きという高岡に古くから伝わる技法。
金属の表面をあらし、深い味わいを生み出す技なんです。

あぶった真鍮を水で洗うと味のある模様が現れました。
一体何が起きたのかというと。
真鍮は銅と亜鉛を混ぜたもの。
一方の米ぬかには硝酸カリウムと塩が入っています。
これを高温で熱すると酸化銅という物質が生まれ、表面の風合いが変わるというわけです。

続いて真鍮を美しい青に変身させていきます。
実はこの銅が錆びた色なんです。
まずは真鍮を塩谷酢の入った薬品に。
続いてアンモニア水の入った容器と一緒にしてビニールで覆います。
八時間後。
真鍮が鮮やかな青に。
アンモニアガスがサビを発生させたんです。
きれいなブルー。

これがアンモニアで色が変化したんですか。

錆止めとツヤ出しの塗料を塗ったら金属部分が完成。

青を同じ色に均等に行ったのだとその味は出ないですね
そうなんですよ。ひとつひとつ焼いた味。発色した色があるから面白い。金属はその味がすべてです。

金属と繋がる木のカップは別の工房で制作中。
水目桜やナラの木を丁寧に削り出します。
金属の味わいを引き立てる端正な木の器。
何人もの職人の手を経て、ぴたりとはまりました。
産地が受け継いできたさまざまな技がモダンなデザインに詰め込まれたイッピンです。

日本各地の選りすぐりの雑貨を扱うセレクトショップ。
今注目を集めているのがこちらのビアカップ。
冷たさを保つ銅のカップにしっかりとした鉄の取っ手が付いています。

手にフィットするのでもち個々人はとてもいいなっていう印象が
安定性いいですよね確かにこれなかったらたぶんこぼれちゃうし、だからこれちょっと重たいんだなっていうのが分かります。

カップを開発するときこだわったのが取っ手の部分。
テーブルにしっかりと接するためカップが安定し倒れにくいです。
この通り。
紙一枚も通りません。

この取っ手には高岡で受け継がれてきた高度な技術が隠されているんです
この道六十年の中村進さん。
溶けた鉄を型に流し込む鋳造という技法
精密で複雑な形でも寸分たがわず量産できるといいます。
作業のスタートは原型作り。
取っ手と全く同じ形を蝋で作ります。
この原型を組み合わせ、いよいよ鉄を流し入れる形を作っていきます。
材料はセラミックを溶かしたもの。
蝋の原型を直接浸して周りに層を作っていきます。

セラミックの上にさらに砂を。
この工程を何度も繰り返すことで次第に厚みを増していきます。
十分厚くなったところでこの技法最大のポイントが。
型を高温の蒸気にあてて中の蝋を溶かしてしまうんです。
蝋が溶け出した後には原型通りに空洞が生まれます。
そこに鉄を流し込み思い通りの形に仕上げるという仕組み。
完成した型に熱した鉄を流し込んでいきます。

あれこれ今流したばっかりなんですよね。だってまず暖かいです。

十分ほど待ったら型を割って鉄を取り出します。

ああ出てきた
中山さんも挑戦。
結構強くいかないと。これは本当に丈夫なんですね

取り出した取っ手は持ちやすく磨いて仕上げます。
サンドペーパーの付いたベルトサンダーで丁寧に。
黒く色を付け。
ようやく持ち手が完成。
別の工房では銅のカップが着々と仕上げられていました。

丁寧に作られた取っ手が出会う運命の瞬間。

一寸の狂いもなくつながりました。
ご覧の通り少しの隙間もありません。
幾多の職人たちの手を経てどっしりと作られたカップ。
幸せな時間も運んでくれるイッピンです。
昔ながらの分業制を守り、自らの道に邁進する高岡の職人たち。
守り続けた技が交わり新しい挑戦が生まれています。

商品情報

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ガジェット愛好家です。世の中にあふれるモノゴトはすべてヒトが作り出したもの。新しいモノの背景にある人の営みを探るのが大好きです。発見した情報はまとめて発信しています。