美の壺「日々を潤す ビール 」

美の壺「日々を潤す ビール 」

注ぎの名人が作り出す、極上の泡。注ぎ方を変えるだけで、同じ ビール が全く違った印象に!まるで宝石箱!味わいを追求した先に生まれた、色とりどりの「エールビール」世界が驚いた、「黄金色のビール」誕生秘話世界大会で金賞受賞のアメリカ人醸造家が静岡で作る、香り高きビールとは!?世界各国のビールと絶品料理を組み合わせた「ペアリング」で新たな魅力が!日々を潤すビールの奥深い魅力に迫る!<File481>

【出演】草刈正雄,端田晶,【語り】木村多江

放送:2019年8月9日

美の壺「日々を潤す ビール」

東京銀座にある昭和9年から続く老舗のビアホール。

ここには年中ビールファンが集まります。みなさグイっと

注ぎの名人が生み出す極上の泡。小規模で清算するクラフトビールが増え、

作り手のオリジナリティあふれるビールも盛り上がっています。

今日は目にも舌にも美味しいビールの魅力に迫ります。

広島県広島市。毎日夕方になると行列ができる店があります。

お目当てはビールです。実はここ。100年近く続く酒屋。

その一角で様々な泡のビールを味わえるのです。「炭酸の当たり方が違います」「全然違います」

ビールを注ぐのは店主の重富豊さん。同じビールを注ぎ方だけで全く違った印象に変える達人と呼ばれています。「初体験の口当たりをお楽しみください」ではその技を見ていきましょう。

まずは一度注ぎ。

「ビールにだけ許された喉を駆け抜けていく爽快感です」

勢いよく流れ出たビールをグラスにぶつけた衝撃で力強く泡立てます。ビールを回転させることで炭酸を程よく抜いて行くといいます。

粒が大きく荒々しくはじけていく泡。この泡がのどを通る時に心地よい刺激を感じる仕掛けです。「仕事終わりの一敗目のビールはこれがおススメですね。特に楽しかった時よりは、仕事で失敗したとか、ちょっと悔しい時に飲むとより気持ちがいいです」

次は二度注ぎ。「一度注ぎより少し激しくてグラスいっぱい泡で満たしてこの泡が落ち着いて行くのを、約1分半から2分お待ちください」グラスいっぱいだった泡が半分くらいになったところで。

「では仕上げます。泡が減っていきます。ここにもう一回フレッシュなビールで泡立てて完成するのが二度注ぎです」

ふわっとしたメレンゲのような泡。唇が埋もれるような感触がたまりません。

「飲んだ時の爽快感と飲むときのうまみとか味わいとか、また飲み終わった後のアフターティストのやさしさをベストバランスでお客様に出せるのが二度注ぎ」

泡の秘密はこのサーバー。昭和初期に使われていたモデルを当時の図面をもとに特注しました。 「ここは冷蔵庫。冷蔵庫を土台にしてビールサーバーをとりつける。昭和初期にあった当時のもの。超シンプル。穴が開いてるだけ。ビールが通る管は一般的なもののおよそ四倍。流れ出る勢いを巧みに生かして様々な泡ほ生み出しているのです。最後にとっておきの一杯。まず一般的なサーバーで炭酸を逃さないようゆっくり注ぎます。仕上げは復刻したサーバーで。蛇口のひねり加減でビールの通り道を極限まで狭くすることで粒が見えないほど細かな泡を生み出します。なめらかに滑り込む泡のやさしいのどごしと炭酸を同時に感じられる極上の一杯です。「まずは見た目。口当たり。のど越し。 そして味わいだと思うので、ビールの味わいよりも先に泡の口当たりと食感。それが大事。今日の日のストレスはビールの泡が洗い流してくれるのではないかと思ってます」今日最初の壺は泡を制してビールを制す。

広島の「ビールスタンド重富」

『がんばろう広島』「ビールスタンド重富」の店主・重富さんが今年の夏もTAU登場! | TAU -ひろしまブランドショップ-

東京府宙にあるビール工場。

醸造家の岡賀根雄さん。この道30年のベテランです。理想の泡を求め日々研究が行われています。

「ビールの泡持ちを検査しています。泡はビールにとって非常に重要な品質ですので、注いでしばらく時間がたってから泡がどれだけ残っているか壁面にどれだけ付着しているか」

ビールの泡を作るのは発行の段階で生まれる炭酸ガスです。

それを生み出すのが酵母。

発酵している酵母のコンディションを日々確かめます。

「酵母が機嫌よく働いてくれるといい泡ができる。その条件を整えるのが人間の仕事で、ビール造りの仲間」

その酵母を麦汁に入れ、発酵させると炭酸ガスが生れます。

この炭酸ガスを麦芽のタンパク質とホップの苦味成分が包み込むことでビール特有の消えにくい泡になるのです。

麦芽はタンパク質が豊富なものを使います。その一つがチェコ産のダイヤモンド麦芽。

釜の中で泡に必要なたんぱく質などの麦芽の成分を数時間かけて抽出します。

「 泡はビールの履歴書と言われてまして、ちゃんとした工程で作られたか、ベストな条件だったか泡によって評価されるのです。全体を醸造家が見守りながら仕上げていく」

出てきたビールを注ぐと、クリーミーでなめらかな泡。見つめてよし口付けてよビールに欠かせない泡の魅力です

ビール造りの歴史は長く、古代メソポタミア文明に始まったとされています。

かつてビールの色は黒や褐色でした。麦芽を乾燥させる工程で釜で直火にかけていたため焦げて濃い色合いになったのです。

19世紀チェコの街プルゼニュで劇的な変化が起きます。

醸造家のヨーゼフ・グロルが熱風で乾燥させた色の薄い麦芽だけを使ってビールを作りました。

そこにプルゼニュの軟水を合わせたところ、濁りのない黄金色のビールが誕生。

町の名前からピルスナーと呼ばれ、世界中で最も飲まれるビールになりました。

「今まで見たことない透明な黄金色。泡も当然真っ白で相当衝撃だった。日本でいえばどぶろくしか飲んでいない人が初めて澄んだ清酒を見たような、そんな驚きがあったのではないでしょうか」

さらにチェコでは時を同じくして器にも変化が起きました。

「それまではこういう陶器のものが主力ですからどうしてもビールの色は上が泡で液体の色見えないわけですよ。陶器だと全くね。

一体というのはそのボヘミアガラスというのはずっと前から作られていて、透明度が高いというのは言われておりますし、どんどん技術も上がっていってね大量生産も聞くようになっていくわけですね。ですからそれから比べると黄金が見えるというのはこれはもとても素晴らしかっただろうなと思いますね。ビールそのものの色をその楽しむ透明なガラスのものが、黄金のビールを引き立てたであろう」

今日二つ目の壺はグラスの中に輝く魅惑の色彩。

神奈川県厚木市にあるクラフトビールの醸造所。岩本伸久さん。ビールの国際大会で金賞を受賞してきた醸造家です。作るのは様々なエールビール。フルーティーな味わいと豊かなコクが楽しめるビールです。 「今日はブラウンポーターというビールを作ります。黒いビールになるので麦芽はこんなものを使います。まずこれがベースの麦芽。どのビールにも使われます。そしてこれがチョコレートモルトという黒い麦芽です。注ぎにキャラメルモルト。こういうみーものをブレンドして黒いビールを作っていきます。ビールのほとんどの部分は麦芽のブレンド配合で決まるので大事なところです」ビールの色は麦芽の比率によって変わります。このビールではわずか六パーセントほどの黒い麦芽がこんな色を生み出します。

元祖地ビール「サンクトガーレン」公式ホームページ

麦芽の比率を変えるとアンバー系の色に。こうした色の幅広さが楽しめるのはエールビールならでは。岩本さんが出会ったのは日本でまだほとんど知られていなかった89年。「アメリカで飲んだのが最初で、一見のレストランに入ったら、そこでビールを醸造してたんです。それを見てちょっとびっくりしまして。ビールを作れるのかというのがショックでした。実際に飲んでみたら今まで僕たちが飲んでいたビールと全然違うじゃないかと思って、これがエールというものだった」アメリカで二年間ノウハウを学び、日本で醸造所を立ち上げた岩本さん。様々なスタイルのエールビールに挑戦してきました。「こんだけ小さいところですから小回りが利く。色んな種類のビールが作れる。その中で何か表現ができる。僕が目指したのはきれいなビール」岩本さんこだわりのブラウンポーターは。「若干のチョコレートモルトでこんな色に。見た目にもとても楽しいと思います」まろやかな苦さとチョコレートのような風味がほのかに主張するビールに仕上がりました。味わいを追求した先に生まれた様々な色。宝石を選ぶような気分でビールを選んでみてはいかがですか。

香り

静岡県伊豆市。自然豊かなこの場所でビールを作る人がいます。アメリカ人醸造家のプライアン・ベアードさん。静岡に住んで22年になります。ビールの香りの元となるのはホップというつる性の植物。使われるのは雌株にできるキュウカと呼ばれる花の部分。「今年は一番ベストだと思います。大きくて美味しそう」涼しい気候を好み、栽培に手間の掛かると言われるホップ。ベアードさんは3種類の品種を育て、この土地との相性を確かめています。日々の醸造に使うのはアメリカなどから取り寄せた冷凍保存のホップです。「原材料はいちばん自然に近い形で使うのは一番いいんじゃないかと。やっぱり香りの質は大きな違いがあると思います」ホップは熱を加えすぎると香りが飛ぶため、煮沸のさじ加減が命。思い通りの香りを引き出すための分刻みの作業です。こだわりぬいたその香りは。「それだけでも結構フルーティ。口当たり。味が膨らむ」豊かな自然と共に育った薫り高きビール。今日最後の壺は、香りで広げる新たな楽しみ。

ベアード ビール

東京赤坂にあるビアバー。選りすぐりの世界のビールが飲めると、ビールファンが訪れます。ビールを注ぐのはこのグラス。ビールの特徴に合わせて最適な形で提供されます。「ビール自体がいろんな味の幅があるから、それに合わせてグラス自体も変えて、味とか香りとか楽しみ方が変わる。 香りの強さによって、香りを閉じ込めるものか、逃がすような形にするのか」まずはベルギーで作られたピルスナー。醸造所独自の酵母から生まれたフルーティな香りが特徴です。合わせるのは旬の野菜。ズッキーニのフリット。こめ油で軽く揚げ、素材のみずみずしさを生かしたといいます。「ホップが弱いビールなので補うように一緒に楽しんでもらう。パクチーの花とイタリアンパセリの花の香りが伸びると言うか余韻が長く楽しめる」次は小麦を使った白ビール。オレンジピールとコリアンダーを使い、華やかで柔らかい香りの一杯。「イタリアンパセリの花とパクチーの花の余韻の中でこのビールでつながりを楽しんでもらう」あわせたのはキュウリのサラダ。グラッティーナというチーズをのせました。散らしたのはミントとレモン。食べる場所によって様々な掛け合わせが楽しめます。最後はルビー色のカナダのビール。原料に使われているのはハイビスカス。酸味とやさしい味わいが特徴です。飲み口のすぼまった形のグラスがハイビスカスの繊細な香りを逃しません。合わせたのは蒸したスズキ。出汁に柑橘系の香りを持つ黒文字の枝を入れました。ハイビスカスの香りと合わさり清涼感のある余韻が楽しめます。「ビールの良さが出てきた理、もう一口食べたいという楽しみ方」香りを組み合わせ、かけ合わせていくことでビールの世界はどこまでも広がっていきます。

sansa

NHK美術番組『美の壺』にビールが登場。ビールは目でも楽しむ時代がやってきた! | 日本ビアジャーナリスト協会