日曜美術館40周年特集「ゆく美 くる美」。日本でもっとも多くの展覧会を取材する番組、日曜美術館が、総力を挙げて年末年始にお送りする特集!2016年はどんな美が人々の心をとらえた?2017年の注目の美は?
2016年のさまざまな美術展の振り返りと、2017年注目の美術展や 美術館 の紹介を1時間にまとめる。
放送:2017年1月1日
“ゆく美 くる美” 2017年 注目の美術館・美術展日曜美術館 「タイトル」
2017年注目の美術館。岐阜県多治見市に2016年夏にオープンしたのが、美を丸ごと体感できるミュージアム「多治見市モザイクタイルミュージアム」
「しっくいの壁ですね。ここにタイルが茶碗が埋め込まれています」
中に入ると、天井には大きな穴が開いています。雨が降るとずぶぬれです。
よく見るとタイルのオブジェ。地場産業タイルが主役の美術館です。たしかに水に強い。
「タイルだから作品に触ることができます」
展示されていたのは実際に使われていたもの。壁画は全国の銭湯から集められました。
「特許タイル風呂」
かつて集合住宅で暮らす人が入っていました。
タイルはピース一つ一つ手作業で組み合わされます。使う人が喜びを味わうまで多くの手間がかかっています。
「この時期分業という体制が整っていまして、メーカーさんの中でも加工する人とか」(学芸員村山閑さん)
作る人。使う人。その両方にも思いをはせられる全国でも珍しいタイルの美術館です。
アートを通して禅の心を体感する新勝寺「禅と庭のミュージアム」です。
「仏教の修行する感じですよね。禅って」
本堂には国内有数の禅画のコレクションがあります。江戸時代の禅僧・白隠です。作品は220点。白隠は自由闊達な書と絵で庶民に禅の心を伝えました。
この作品は、誰にでも心の中に仏がいる。そのことに気づけば救われるという意味。
大胆な絵をたのしみながら禅の心に触れる空間です。
ミュージアム最大の見どころ。彫刻家・名和晃平がかかわった建築・SANDWICH「洸庭」。
中は暗闇。残念ながら内部に広がる不思議な作品の撮影は禁止。足を運んだ人だけが体感できます。
「禅とアートの融合」
なぜかお風呂まであります。
「アートって限られた一部の人だけのものと思いがちですが、体験・体感型っていいですよね。どうですか。ほぼ伝わってないですよね。窓もないし中に何があるかわからないし、入ったら湿気を感じた部分がすごい。真っ暗だし。でも、30分いましたけど一瞬でした」
「今やインターネットが普及して、なんでも検索して手元で見ることができるという時代だからこそ、そこに行かないとえられない体験・体感が大事だし、人々は潜在的に求めているところはあるのではないかという気はするので、体感は一つのキーワードになるのかなという気はします」
「空気とか湿気とか湿気とおっしゃってましたが、五感に訴えるようなことというのはなにか次のアート体験のキーワードになるのかなという思いもする一方で、でも美術館は視覚から想像の中で五感を働かせる場なのかもしれないという両極に引き裂かれるかのような気持があります」
「基本的には視覚芸術なのですが、例えば山水図。そこに浮かぶ雲、向こうに見えるはるかな山並みで、そこに立ち込める湿度はどんな感じなのか、差し込む光はという、視覚から自分のほかの感覚を起動していってというのもとても能動的な鑑賞体験ですから」
「本来美術館というのは見る行為によっていろいろな想像力を伴わせて体感する場だったということは発見だったと都市を重ねてはじめて気が付きました」
「でもそれって、知識とか経験の積み重ねがあるレベルの高い人のことですよね。でもこれくらい親切にやってもらうと”親切”って思いますものね」
「知識を勉強するとかよりも、想像力というところに重点を置きたいなと思ってまして、考古学やっている立場で言うと、これはだれが作ったのだろうとか、誰が使ったのだろう、最終的に誰が捨てたのだろうという、”知らない第三者”に思いをはせるのですね。こうした他者を思う想像力って今の日本にいるのではないかとなんななく思って、そういう気持ちを醸成させる場としてミュージアムの果たす役割があるように思います」
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