イッピン「すっぴんがステキ!~岡山 備前焼~」




すっぴんがステキ~岡山・備前焼~

ひとりでも気軽にドリップコーヒーを楽しめる、備前焼のコーヒードリッパーが人気だ。

すっきりとしたデザインは、何年もかけて独自の土味を追求したもの。

釉薬も絵付けも施さない備前焼では、土と炎の力だけでさまざまな表情の器を生み出してきた。

炎を操り美しい花器を作る技や、伝統を守って緋色(ひいろ)の線模様を描く作家も紹介。

飾り気のない器に秘められた作家たちの技と情熱を、女優の白石美帆さんがリサーチする。

「すっぴんがステキ!~岡山 備前焼~」

【リポーター】白石美帆,【語り】平野義和

備前焼のコーヒーメーカー登場

裏蓋を外してお湯を注げばいつでも気軽に本格的なネルドリップのコーヒーが楽しめます。

今回のイッピンはコーヒードリッパー。お湯を注げばいつでも気軽に本格的なコーヒーが楽しめます。千年の伝統を持つ備前焼で作られたものです。

備前焼は釉薬を使わないのに焼くと表面にはなぜか様々な模様が現れます。なぜこれほど高いな色が生み出されるんでしょうか。

炎が作り出す以前の素朴な器に決められた奥深い世界にご案内します。

備前焼が生まれたのは岡山の山間の町。備前市伊部。

今も300人を超える作家が創作に励んでいます。

コーヒードリッパーを作っている作家さんの工房です。安藤騎虎さん。

36年前に横浜から移り住み普段使いの器作りを続けています。

安藤さんが作ったコーヒードリッパー今予約待ちが出るほどの人気です。

絶妙な触り心地の秘密は材料の土にあるのだそう。

安藤さんは工房の裏にたくさんの土をストックしています。

まず田んぼからとった土。叩いてもなかなか割れません。

続いて山の土。同じ力を加えただけなのにかんたんに割れました。 「山の土には小石がたくさん入っているので空洞が多く割れやすいのです」

安藤さんはこうした土を配合して独自の風合いを作り出しているのだそうです。

これは山の土だけで作った作品。

土の中に石を残し、炎の力で弾けさせました。

田の土をベースに上から山の土を塗った器。現代風にマットな風合いが生まれています。

こうした土作りは長い時間をかけて準備するのだといいます。 何年もかけて寝かせた土を水に漬けてます。

撹拌して篩で濾し、素焼きの鉢で一週間干してようやく完成します。

コーヒードリッパーづくりがはじまりました。

何度もサイズを測りながら整えていきます。

僅かな調整をする

備前焼は焼くと15%も縮むのです。 「粘土は有機物を含むので、焼いた時に有機物が燃えるので縮むのです」 ドリッパー部分とカップの部分のサイズを測りながら仕上げていきます。 整形が終了しました。でもよく見てみるとカップに合体させるドリッパーの接着部分が1.5ミリほどずれています。 土は分厚い部分ほどたくさん縮むため、焼いた時にまっすぐ仕上がるようにわざとずらしているのです。

最後は電気釜で焼いていきます。備前焼の基本は薪を使って焼くこと。でも手間がかかり高価になってしまいます。若い人にも気軽に作って欲しいとこのドリッパーはあえて電気釜で焼いているんです。 「自分と同世代の人に使っていただきたいというのがまずあるんです。備前焼はどうしても工芸とか美術やアートの世界の方で捉えられがちの焼き物なんですけども、それをもう少し日常のものとしてとり入れていただきたいと思っています」

使う人の顔を思い浮かべ、土からすべて手で作り上げる。ずっとそばに置いておきたくなる逸品です。

備前焼のルーツ

こちらはおよそ1500年前に岡山で作られた焼き物。 絵付けをせず、練った土を焼き締めるだけのシンプルな製法です。

以来備前の人々は土と炎の力で美しい模様を生み出す努力を続けてきました。

土の鉄分が炎に反応して色も模様も様々に変化する窯変。

焼いた時に灰が降りかかってこんな流れも。ただ焼くだけで生まれる美しい模様の数々。そんな窯変に取り組み続ける作家がいます。

胡麻の味わいに挑む

宮尾昌宏さん26年のキャリアを持つ作家です。

代表作は、窯変を存分に味わえる「堆線文花器」。

何色にも彩られたグラデーション。側面は備前独特の美しい紫蘇色。

口元の不思議な色は灰がかかって生まれる胡麻と呼ばれる変化です。

15キロもの土を使って巨大な花器づくりが始まりました。

大きなお椀型の器が完成。口の乾燥を見定めながら扇形に整形していきます。

いよいよ窯詰め。使うのは昔ながらの登り窯です。

登り窯の特徴はいくつもの小さな部屋がトンネル状に連なっていること。火を入れると薪の灰が作品に降りかかり胡麻と呼ばれる変化が起こります。中でも灰が多い手前の部屋はより変化が大きくなります。

宮尾さん花器の底にあたる部分に手を加え始めました。器をかぶせ灰を入れます。

続いてしゃもじ型の土。どうやらこのまま焼くようです。よく見てみると花器を少し後ろに傾けているようですが。

「垂直だったら胡麻が入る範囲は限られています。傾けることで広い範囲に灰がのるのです」花器を棚の一番上に置きました。

火が入れられて5日目。窯焚きは一週間ほど。

備前の土は収縮が激しく割れやすいためゆっくり焼いていきます。

焚べられるのは赤松の薪。油を多く含むためたくさんの灰を巻き上げるんです。 「経験則でコントロールするようになったかっていう偶然に頼りすぎない自分の目指すものをそのできちゃったではなく作ってるって言うことを意識しますよね」窯の温度は千度。

宮尾さんが数ヶ月をかけて生み出した花器。

灰を入れた底には不思議な色が生まれていました。

しゃもじを立てかけたところは紫蘇色のグラデーションが。灰を降らせた見事な胡麻が現れています。備前の土と炎が織りなす情熱の逸品です。

緋襷(ひだすき)に挑む親子

土肌を包み込むように現れた鮮やかな緋色。登り窯で焼くことで生み出される窯変のひとつです。

まるで炎が走り抜けたかのよう。緋襷(ひだすき)と呼ばれる模様です。

美しい緋襷を作り続ける作家がいます。

伊勢崎競さん。曽祖父の代から技を受け継ぐ作家です。伊勢崎が生み出した美しい緋襷の数々。鮮やかな緋色は特別な土から生まれます。

その名も観音土。砂や小石が複雑に混ざっているため土作りに手間が。でも鉄分や有機物が豊富で極上の器が作れるんだとか。「観音土は粘りが強い土です」

伊勢崎さんの土作りは昔ながらの方法。機械を使わず足を使って均一にしていきます。踏み続けることを30分。音に変化が。続いて石より。

長男の州さんが手伝います。踏み終えた土から一つ一つ小石を取り除く。美しい緋襷を作るために欠かせない作業です。そして土作り最後の工程菊練り。土の中の空気を抜いていきます。

緋襷を描き出す器作りが始まりました。伊勢崎さんの手の中で観音土が姿を変えていきます。注ぎ口を解くしてお酒を入れる酒器の完成。

でもいったいどのように緋襷が現れるのでしょうか。伊勢崎さんが取り出したのは稲藁です。

「あんまりこう意識しすぎるとわざとらしい線になっちゃうのでもうあまり意識せずこするとこの藁があたってる部分がちょっと反応して赤い線が出てくる」

藁をまいたところに現れるという緋襷その理由は。

「鉄分を多く含む観音土窯で焼くと稲藁に含まれるカリウムと鉄分が反応を起こして美しい模様になるんです」

備前で緋襷が生まれたのは江戸時代のこと。持ち運びのため藁で作った器をうっかりそのまま焼いてしまったのが始まりでした。釜から出してびっくり仰天。器に美しい模様が現れていたのです。

登り窯に向かう伊勢崎さんと州さん。窯焚きが終わり器を取り出す日。丹精込めて作り出した作品がどんな姿を表すのか緊張の瞬間です。

藁に包まれた器が出てきました。実は主さんが窯出しに立ち会うのは初めてのこと。家の仕事を手伝うようになって3ヶ月。ようやく将来について考え始めたばかりです。親子で取り出した緋襷の器。

「おじいさんやお父さんやっててもうやらないわけにいかない」伝統の技に行き続けてきた伊勢崎さん。

「現代風な作家を尊敬しますし、どんどん新しいもの作っていってほしいと思うんですけど僕は伝統的な仕事を、先人たちがやってきたことを自分の中で勉強しながら後世に伝えていけたらなっているような使命感っていうかそれが僕の仕事なんじゃないかな」

美しい緋色をまとって生まれた伝統の器。父から息子へと受け継がれるイッピンです。

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