ついに登場!山口の萩焼。土味を生かした柔らかな色合いが魅力の器が、今多彩に変化。フチはピンク色。それが底に向かって緑から白へと変化するパステル調の器は、全国で注目されている人気製品。また、独特な絵付け技法で生み出された、カラフルでかわいらしい模様のティーカップは熱狂的なファンを持つ。さらに、繊細なグラデーションにより光と影を表現したモダンなデザインの器など新しい萩焼を、中山エミリが徹底リサーチ!
【リポーター】中山エミリ,【語り】平野義和
放送:2019年1月11日
イッピン 「やわらかに!モダンに!~山口 萩焼~」
古い家並みの続く城下町。山口県萩市。イッピンリサーチャーは中山エミリさん。大好きな焼き物を訪ねます。
萩といえば萩焼。柔らかな風合いが特徴で、主に茶道具として愛されてきました。でも中山さんは心惹かれたのは。
「口とかよく見るとグラデーションになってるんですね」。
これが今日のイッピン。見るも鮮やかなパステル調の色彩が美しく溶け合った新しい萩焼。今全国で注目されています。
東京新宿。各地からモダンな工芸品を集めたこの店でも発売以来人気が右肩上がりなんだとか。
「2~30代の方が結構多く買われてますねあの優しい風合いがやっぱり引きつけてるかなっていうふうに感じます」。
今萩焼に個性的な器が続々登場。
ユニークな手法が生み出した可愛い模様。
こちらは陰影に富むモダンなデザインの皿。進化し続ける萩焼。その多彩な魅力をご紹介します。
萩焼の里
萩焼の窯元はおよそ100軒。萩市とその周辺の町で作られています。
中山さんが訪ねたのはパステル調の器を作った萩市の工房。
窯元の磯部直樹さん。「女性の方に喜んでいもらえるような商品を考えた」。
好評なのは楕円形の大皿。少しゆがんだ動きのある曲線。料理に合わせると一層生き生き。そしてみの繊細な色。淡いピンク、緑、白が溶け合い移ろいます。この見事なグラデーション。どのようにできるのでしょう。作業場を拝見。まずは成型です。
「作る作業と合わせた速さで動いています」。こちらの成型法は独特。ベルトコンベアだけなら珍しくはありませんが、そこに職人の手作業を組み合わせるところがミソなんです。全国でも珍しいんだそう。一方向に動くベルトコンベアーの脇に3人の職人が立ち分担して作業を行い器の成型を進めていきます。まず大まかな形作り。
使うのは地元産の大道土。萩焼の伝統的な材料で柔らかな土味が特徴。
石膏の型を機械にセットし大道土を置いたら、コテを押し当て形を整えていきます。終わったら型ごとベルトコンベアに。実はベルトコンベアは下から熱する仕組みになっていて、器は移動しながら乾燥していくんです。およそ45分後2番目の職人さんの元に到着。程よく固まった器に手で細かな成型を施します。
器の特徴的なフォルム、わずかな歪みを加えるんです。ばらつきが出ないよう径を計って正確に。そしてまたベルトコンベアに戻したら最後の工程へ。スタートから75分。アンカーは削り担当。
さらに乾燥が進んだ器をカンナで削り仕上げます。
このシステムを導入したのは20年前。生産量が30%増し価格を抑えることができたんだそうです。こうして出来た素地に色を付けていきます。最初はピンク。その上に白。最後に緑と三層重ねていくんです。
まずはピンク。担当はキャリア20年の三浦充江さん。
ピンクは化粧土。粘土を水で溶き顔料を加えたもの。ここに器を浸し外側にたっぷりつけたら。
特製のポンプで内側に化粧土を噴射。ムラなくかけられる仕組みです。最後に余分な化粧土を切って終了。
よく見ると化粧水と素地の境は滲んだようになっています。実はこの滲みが後の美しいグラデーションを産むのに重要なんだとか。では滲みはどうやって作られたんでしょう。秘密は化粧土をかける前の工程にありました。
器を水に浸すんです。水に浸した部分は化粧土地の吸収が弱くなりぼやけたようになるのです。
ここで中山さん器を水に浸し化粧土をかけてみます。力を入れてなんとか器を水平にし、無事化粧土をつけることに成功したはずだったんですが。化粧土地のつき方にムラがあり綺麗な滲みができていません。何が問題だったんでしょう。中山さんはもっと素早く化粧土に浸さなければならなかったのです。
器を水平に押し付けると空気が入って抵抗が増し時間がかかってしまいます。いっぽう三浦さんは器他手向け抵抗を減らしさっと浸します。施設は水はつけてもすぐに器に吸収されてしまいます。だから急いで化粧土をつけないときれいに乗らないんです。
続いては2層目の白。この白と次の緑は釉薬なんです。担当は変わって坂本ひろえさん。先ほど化粧土をかけた器を素焼きしたものにまず白の釉薬をかけます。器全体を沈めるずぶ掛けという方法。「ダイナミックなんですね」。勢いよく引上げすかさず押し込む。内側も外側もまんべんなくかけました。次の緑の釉薬は柄杓を使い丁寧に。その理由は。「内側と外に二センチくらい。溶けて下がってきます」。外側は淵から二センチのところまで釉薬をかけるんです。すると後で美しいグラデーションになるんです。
かけ終わったときはまだ緑の釉薬の境界線がはっきり残っています。しかし窯で焼き上げるとこの通り。一体何が起きたんでしょう。1200°の炎の中ピンクの化粧土は溶けることはありませんが緑と白の釉薬は溶け流れ落ちていきます。まず口の部分にピンクが現れます。元々少なめだった緑の釉薬は真ん中辺りで止まりますが、たっぷり塗った白はさらに底の方まで流れ落ちます。その結果緑からピンクそして白いという柔らかなグラデーションが生まれるのです。計算され尽くした工程を重ねついに完成した器。繊細な色の重なりと移ろい。それは知恵と炎の美しい結晶に他なりませんでした。
萩焼七変化
萩焼の誕生は400年前。城下町を築いた大名毛利輝元が茶の湯を楽しむため焼きものづくりを命じたのです。その後萩焼は古田織部など著名な茶人に愛され、広く知られるようになりました。代名詞は琵琶色と呼ばれる淡い色合い。地元で取れる鉄分が少ない大道土がもたらしました。昭和の初めには白い萩焼が登場。作者の名前から休雪白と呼ばれ萩焼のもう一つの色として定着しました。変化し続ける萩焼。新たな試みは続いています。そんな逸品を探しに中山さんが訪れたのは地元の人気ギャラリー。カラフルでキュート。ひとつひとつ微妙に異なる色合いが器に施され、花が咲いたようです。
今全国に熱狂的なファンを持つという不思議な器をリサーチ。金子司さん。独特の模様づくりに取り組んで20年。色と形が複雑に絡み合ったもの。こちらはシンプルなストライプ。愛らしいティーポットの蓋に注目。「選んでもらうんです」。カラフルな色。不思議な模様。いったいどうやって作るんでしょう。工房をお邪魔しました。これが金子さんの秘密兵器。どんな模様もこれだけでできるんだとか。作るのはカップのソーサー。乾燥させた素地に化粧土を掛け準備は整いました。秘密兵器はスポイト。顔料を混ぜた化粧土を一滴一滴たっぷりと垂らしていきます。
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