美の壺「海からの贈りもの 真珠 」

<File446>つややかな光沢と虹色の輝きが魅力の 真珠 。▽近年、カジュアル使いに注目が集まっている。真珠ファンのスタイリスト・原由美子さんが、普段使いの極意を伝授!蒔絵(まきえ)など伝統工芸と組み合わせたアクセサリーや、変わった形の真珠にこだわる職人の作品も登場!歌手・夏川りみさんは、紅白歌合戦初出場の時につけた黒蝶真珠を紹介!故郷である沖縄・石垣島の思い出とともに語る。

放送:2018年9月27日

美の壺「海からの贈りもの 真珠」

海の宝石・真珠

海の宝石と称えられる真珠。古より人々に愛されてきました。その魅力は柔らかな光沢と虹色の輝き。

冠婚葬祭のイメージが強い真珠ですがモードの達人は日々のおしゃれにこそと言います。

デザインも進化しています。和の伝統との組み合わせから個性的な形まで。沖縄出身のあの人も。

夏川りみさん。自然が育む真珠に故郷への思いを重ねます。

海が生み出す奇跡の輝きその魅力に迫ります。

輝き

真珠と言ってまず思い浮かべるのは白くて丸いアコヤ真珠。その美しさには秘密があります。

真珠研究一筋50年の小松弘さん。真珠の一番の魅力はどこにあるのでしょう。「最大の魅力は照り。周りの景色を映し出す輝きと色」

魅力とは何でしょう。ツヤツヤと光が周りの景色を浮かび上がらせます。

真珠に下から光を当ててみると全体にぼっと色が現れました。これは光の色です。真珠は貝柄を作る外套膜が分泌液を出し薄い層となって積み重なることで出来上がります。

その層の一枚一枚に光が反射して影響し合うことで色が現れるのです。光を取り込みつつ生まれる真珠ならではの色。「生き物しか作れないものが最高の宝石になった」

色を楽しむ

いつまでも眺めていたい真珠。今日一つ目の壺は白の中の色を楽しむ。

スタイリストの原由美子さん。長年真珠のアクセサリーを愛用しています。

原さんは、ファッション雑誌の創刊にも関わってきたスタイリストの草分け。年代を問わずモードをさりげなく取り入れたスタイリングに定評があります。

真珠との出会いは大学生だった二十歳の頃。祖母から譲り受けた指輪でした。

「お守りみたいにずっとしてました」真珠はどんな服にも寄り添ってくれると感じた原さん。スタイリストの仕事を始めてからは毎日真珠のネックレスをつけ、いつしかトレードマークのように。例えばロングネックレス。カーディガンの中に挟んでつけるのが原さん流。目立ちすぎずかがんだ時にも邪魔になりません。真珠をもっとカジュアルに楽しんでほしいと原さん。その極意を教えてもらいました。

まずは、多くの人が冠婚葬祭用に持っている短めのネックレス。「デニムの荒い作業着みたいなものにつけると気取った感じにならない」

少し長めのネックレス。ベージュのロングカーディガンに合わせました。「自然素材にあえて真珠を添えると自然になじむ」

最後は三連ネック例のアレンジ。半分隠して首元からさりげなく。「ジャクリーン・ケネディが自分のお気に入りのネックレスをいろんな装いでしていて、いつもは出していたものを見えないようにしているのがあって、私ん中では印象的だった」一工夫でシックな雰囲気に。

「真珠はそれほどの強さではなく遊ぶ余地がある。使って楽しむものだと思います」

真珠は使い手の気持ちを柔らかく受け止めます。

デザインを楽しむ

東京銀座の宝飾店。創業1954年。真珠の生産からデザインまで手がけています。

MIKIMOTO – ミキモト|ジュエリー、パール、マリッジリング、ダイアモンド。

これまでの伝統も守りつつ最近では海外のデザイナーを起用して常識にとらわれない新しいジュエリーを提案しています。

ロンドンを拠点に活躍中のデザイナーメラニー・ジョー・ジャコブロスさんのピアス。

真珠自体に穴をあける斬新なデザインです。

一見シンプルなロングネックレスですが。

カットされ、真珠の断面が露わになっています。

「丸い真珠のネックレスはどん真珠も同じように見えます。キズがなく、色も光沢もそろったものが美しい申述されるからです。でも真珠をカットしてみると生き物としての素性が見えてきます。たとえ養殖であったとしてもひとつとして真珠な同じものはないのです」

様々な形で引き出される真珠真新しい魅力。今日2つ目のツボはみんな違って、みんないい。

https://www.rakuten.ne.jp/gold/purpose-inc/index.html

東京・代官山にあるKARAFURU(カラフル)、この店には漆や伝統工芸を用いたアクセサリーなどが並んでいます。

中でも真珠は人気のアイテム。

NHK 美の壺にKARAFURUが登場します – KARAFURU(カラフル) | キナリノモール

こちらは少し平たい淡水真珠に菊や麻の葉と言った文様を蒔絵で描いています。

デザイナーの黒田幸さん。真珠の上に蒔絵って・・・随分思い切りましたね。

「蒔絵って黒ですとか赤の漆器に描いてあるイメージが強いと思うんですけれども、それを日常の中で使うとなると少し印象が強いかなっていう感じがしてて、日常的に使えるものでと考えてたどり着いたのがパールでした」

真珠に蒔絵を施すのは京都の蒔絵師、高畑志寿賀さん。

普段は漆器に蒔絵を施していますが真珠はそれとはまるで違う感覚仕上がりに不安があったと言います。

「金が勝つかパールが勝つかと思っていたら、どちらにも別の存在感がありました」

何にでも合うように個買い金粉を使って渋めに仕上げます。落ち着いた金に引き立てられる真珠のしっかりとした質感。日本の伝統工芸に新たな風を吹き込みす。

KARAFURU ~日本の伝統を楽しむことを提案するブランドです~ | KARAFURU

不揃いな真珠たち

東京蔵前。真珠の形にこだわって作品作りをする人がいます。

彫金職人を経て自分のジュエリーブランドを立ち上げた眞貝瑞季さん。

About|RICO by mizuki shinkai

工房の引き出しには材料の真珠がずらり。

丸い形のものからゆがんだものまで色も形も様々です。かなり変わった形もありますね。

「売り物にもならない。ここから面白いかたちを探して作品にするのも面白い」いびつな形はどれも面白い。

角のような尖った真珠はピアスになりました。

おへそがちょっと飛び出たような真珠は指輪になりました。

自然が作り出したかたちを最大限生かすことで個性豊かなジュエリーが生まれます。 新しい作品のための真珠を選ぶ眞貝さん。

「この子は尻尾がピュッと生えているような形をしています。キズの部分を加工して隠すと魅力的」

真珠の一部を削り始めました。

削った部分に合わせて金の飾りを作ります。

金具から尻尾がのぞきます。

最後に飾るのは1 mm のダイヤ。

大きなうねりを感じさせるような生命力溢れる作品になりました。

海の贈り物

沖縄県石垣島出身の歌手夏川りみさん大切にしているアクセサリーが黒蝶真珠のネックレスとピアス。ふるさと石垣島でとれたものです。

今日最後のツボは海が育む神秘の輝き。

石垣島北西部にある川平湾。夏川さんの真珠はここで生まれました。

海の中のネットに吊るされているのが黒蝶貝。黒蝶貝は暖かい海を好むため川平湾は養殖場としては世界の北限。冬場の水温が低いため真珠層が2つになりきりの良い真珠が育つとか。

真珠の黒い色は黒蝶貝の外套膜に含まれる赤黄緑の色素が混ざり合って生まれるといいます。海の色を映したような緑色の輝き。今でこそ質の良い黒蝶真を量産できるようになりましたが、そこには長い道のりがありました。黒蝶貝は体液が多く養殖には向いていません。失敗を乗り越えながら1970年上質の真珠の量産に成功しました。それからおよそ半世紀黒蝶真珠は石垣島の人たちの誇りとなりました。

黒蝶真珠は川平湾の自然の中でゆっくり育まれます 。