美の壺「和包丁」




食材のうまさと美しさをひき出す「和包丁」。

日本料理に欠かせない究極の切れ味!

日本刀の伝統を受け継ぐ職人技に密着!

熟練の研ぎ師による極上の仕上げ!

30本以上の和包丁を使いこなす日本料理の達人が登場。

薄刃包丁による“極薄の大根の桂むき”、柳刃包丁による“芸術的断面の刺身”。

鋭い切れ味は、日にちが経っても食材をみずみずしく保つ!?

さらに和包丁に合うまな板も紹介。

「トントン…」心地よいリズムが奏でられる!

【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

美の壺「和包丁」

放送:2019年3月22日

大阪のシンボル通天閣。そのすぐ近くに和包丁の専門店「刃物工房」があります。

亭主は和包丁に心を奪われ店を開くまでになったと言います。

カナダ人のビヨン・ハイバーグさんです。和包丁の魅力を伝えて13年になりました。

ユネスコの無形文化遺産に登録され、繊細さとヘルシーさが世界的なブームになっている和食。

その味と美しさを引き出すのは和包丁。ここ数年海外への輸出は右肩上に増え続けています。今日は世界が注目する和包丁をご紹介します。

鋭い

和包丁が広まったのは江戸時代。

日本刀などの優れた技術を受け継ぎ豊かな食文化とともに発展しました。

大阪堺の包丁問屋です。堺は鉄砲作りが盛んだった土地柄。高度な技術を持った鍛治職人によって上質な和包丁が作られてきました。

堺は今も料理人憧れの刃物の生産地。

日本料理の職人の多くが堺の和包丁を使っています。

和包丁は食材や料理にあわせ細分化されてきました。

その種類は50を超えます。

魚をさばくための出刃包丁。

これは堺が発祥の地です。

江戸時代腕のいい出っ歯の鍛冶職人が作ったことから名づけられたと言います。

多くの和包丁は片側だけに刃を付けた片刃包丁。食材に対し鋭く歯が入り究極の切れ味を生み出します。そして性質の違う二つの鉄を使い独特の方法で作られています。

「こちら側が柔らかい鉄。裏側は堅い鋼になっています。合わせという技術で作られています」。和包丁。一つ目の壺は、切れ味を生む堅くて柔らかい刃

創業明治5年の刃物の鍛造所です。

堺刃物、源昭忠の水野鍛錬所 オフィシャルページ <Mizuno Tanrenjo>

5代目の鍛冶職人水野淳さん。伝統の技を受け継ぎ日本刀や和包丁を作り続けています。

和包丁に使う2種類の鉄。炭素の含有量によって硬さが違います。刃となる鋼は炭素を0.3%から2%含む硬い鉄。しかし錆びやすく脆い欠点が。それを補うのが炭素をほとんど含まない軟鉄。土台となって鋼を支えます。

鋼に接合材を付け、根した軟鉄に載せます。二つ合わせた鉄を800°から900°で熱します。

叩きながら二つの鉄を密着させます。

鉄は熱しては叩き鍛えられることで結晶が細分化されて繊維状の組織に変わり硬く強くなっていきます。

包丁の形に近づいた鉄は一晩ゆっくり冷ますために藁灰の中に入れられます。これを焼きなましと言います。

「叩いて鍛造しているときに鋼に対してストレスがかかってくるので徐々に冷やしていく作業をすることによってはずねのストレスを取ってやって、鉄が柔らかくなる作用があるんで、仕上げの作業がしやすいのは焼きなましの作業」。

ゆっくり冷ますことで鍛造で生じた結晶のムラがなくなり、均一な状態になっていきます。鋭い切れ味を見出すためにもう一つ隠れた技を施します。

用意したのはかまぼこ型の金型。その上で包丁の裏側をわずかにくぼませていくのです。

出来上がったのは樋(ひ)と呼ばれる1ミリにも満たない隙間。

「樋があることにょって刃の角度が鋭角になります。樋によっては先の角度が変わるのです」。

包丁の切れ味を生み出す焼き入れ。強靭にする作業です。ふいごで風を送りながら760°から800°の温度を保ち包丁を焼きます。

「760度よりも低温だと硬くなってくれない。なまくら、それ以上だと熱が加わりすぎるのでやわになる。焼きが回る」。

鉄が夕日の色のように染まったその瞬間一気に水に放ちます。こうすることで鋼に硬さが生まれます。すぐさま今度は200°という低温で温めます。焼き戻しです。 鋼に粘り強さが加わります。「硬くなった鋼をあえて柔らかくしてやる必要がある。硬いままでは粘りがない。欠けたりする問題が起きる」。

火に焼かれ鍛えられることで硬さと柔らかさを併せ持つわ包丁になっていくのです。

ここからは研ぎ師の手に渡り生命線となる鋭い刃が作られていきます。

この道60年の南浦力さん。

刃先の部分を削り、鋼を研ぎ出します。 手の感触だけを頼りに究極の切れ味を探ります。

最後に堺で受け継がれてきた特別な仕上げが施されます。

砥石を砕いた粉で鋼と軟鉄の境目をわずかに削る”霞仕上げ”。「一言で言ったら化粧といっしょです」。

二つの鉄が溶けあうようにゆらめく霞模様。一流の都議氏の手によって生み出された輝きです。「職人さんの使う包丁は魂を入れてやらないと仕上がらない」。和包丁には職人の厳しさと細やかさが宿っていました。

旨い

日本料理の高級割烹が軒を連ねる大阪北新地。ここに和包丁にとことんこだわった料理人がいます。

北新地「うの和」 布谷浩二さんです。

うの和 大阪北新地の日本料理店 旬の素材・お酒・器・空間にもこだわっています。

さまざまな名店で修業し技を磨いてきました。

布谷さん愛用の和包丁その数32本。季節の食材に合わせて使い分けています。「日本料理は新鮮な食材を使ってますし、命のあるものも料理しないといけないので命を大切に使うためにも常に包丁は選びながら使ってきております」。和包丁二つめの壺は命を活かす。

この日は出刃包丁で春を呼ぶ魚、桜鯛をさばきます。

「魚を下ろすとき骨にあたるコツコツという音がするときれいに切れている。音が聞こえないと骨に身がついてしまっているので、音を聞きながら切っていきます」。

刺身を切るのは柳刃包丁。包丁の切れ味は見た目の美しさだけでなく旨さを引き出すものだと言います。

「スパっと真直ぐ切ることによって組織を壊さずに切ることになります。断面がキラキラ輝きます。

切れ味がうまさにつながっていますので美味しく食べられますね」。さすが見事な切り口ですね。こちらもすご技。針のように繊細に切られて行く大根のつま。

このみずみずしさは2、3日経っても変わらないのだそうです。

「包丁がよく切れるということは繊維が壊れていないのでシャキシャキ感が保たれます。時間がたつとうまみ成分が出てきますので切りたてよりもよりそう甘く感じられます」。

包丁の切れ味によって美味しさと美しさを引き出された食材たち。

一つ一つ愛しんだ命の輝きが器に溢れます。

店が終わった後、布谷さんには至福の時が訪れます。

今日活躍した包丁をねぎらうように砥石で磨きをかけるのです。「心が兪されます」研ぎ上げられた包丁はまた明日おいしさを生み出していきます。

新潟の山奥で暮らす遠藤ケイさんです。

世界各地の人々の暮らしから生まれた道具について研究しています。

包丁については鍛冶職人の下で修行してきました。和包丁は日本人の心象風景を呼び覚ます音を奏でると言います。

「子どものころ朝目を覚ますと台所でトントンいう音がするわけです。お母さんが料理している音です。あの心地よさは包丁とまな板の関係だということなんです。昔は当たり前のようにイチョウのまな板と和包丁を使っていた。イチョウのまな板はとてもいい音がする」。今日最後の壺はまな板と奏でる幸せのリズム

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最高のまな板を追及している人がいます。木工製品をデザインし、製作する福井賢治さん。

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福井さんが選んだのはイチョウ。その柔らかい性質に惚れ込んでモダンなまな板を作っています。

「イチョウの木は成長が早くてとても柔らかい。年輪が密に詰まっていないのでその分包丁の刃にも優しい。ゆるやかな木目でゆるやかなラインというのもイチョウの木独特の柔らかさに反映されてるんじゃないかな」。

テレビ番組「美の壺」「あさイチ」にてご紹介いただきました。 – お知らせ – woodpecker(ウッドペッカー) –

柔らかい性質を生かした曲線が福井さんのまな板の特徴です。その第1号が13年前結婚を機に妻へ贈ったイチョウのまな板でした。

片隅にキッチンが平和でありますようにと刻印を押しました。共に歩んだ歳月が刻まれています。

「イチョウは使い心地が柔らかい。しっとりしている弾力性があるって言うこと実感するんですけれども、音もやっぱり優しい柔らかい音がします」。

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イチョウのまな板の音は他の木どう違うのでしょうか聴き比べてみました。ヒノキは目が詰まっていてやや高い音がします。

硬くて強い桜はさらに高音です。

そして、イチョウのまな板。

「カンカンという感じじゃなくてちょっとふわっととしている」。

福井さんに特別な板を注文した人がいます。

「和食とワイン」をコンセプトに掲げる岐阜市の 『和らん』。

創作和食に腕を振る加藤和弘さんです。

ナゴヤの大人のウェブマガジン | WEB大人の名古屋 | 和らん

加藤さんご自慢の存在感のあるイチョウのまな板。厚さ10センチカウンターと同じ高さにわざわざ設えました。「立派なまな板を持つことが長年の夢でした。まな板の上で料理を盛り付けてお客さんにさりげなく盛り付けるのが目的ですが、やはりお客さんは見てくれますね。舞台のような感じです」。加藤さんが繰り広げる包丁さばき。

「いい音がしますね」。切れ味のいい包丁その心地よい音が BGM となり今宵の一品が生まれます。日々の暮らしを豊かにしてくれる幸せの音。




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