美の壺「奄美大島 大島紬」




鹿児島県の奄美大島で古くから作られてきた着物「大島紬(つむぎ)」。
ソテツやハブなど南国の自然をデザインした図柄、精緻きわまりない織りで知られる。
土臭さとモダンな感覚が共存する通好みの着物として人気が高い。
ほかにはない織りやしゃれたデザインは島の風土と複雑な歴史に培われたものだった。
田んぼの泥を巧みに使った「大島の黒」、うねるような柄を生み出す驚きの技…。
情感あふれる島唄とともに、大島紬の美に迫る。 

【出演】草刈正雄 礒野佑子(語り・ナレーション)

美の壺「奄美大島 大島紬」

放送:2019年8月9日

プロローグ

奄美大島。鹿児島市から南西におよそ350 km。 鹿児島と沖縄本島のほぼ真ん中に位置する島です。この島でいつどのようにして大島紬が誕生したのかたしかなことはわかっていません。江戸時代半ばにはすでに洒落た絹織物として知られていました。最大の特徴は精緻な柄。柄に表されるのはこのハブなど様々な島の風物。暮らしや自然の情景です。味わい深い柄。その秘密は糸にあります。斑に染まった絹糸。この糸を縦横に織り交ぜ柄を浮かび上がらせる仕掛け。絣の技法を奄美大島独自で発展させたものです。糸の点を重ねて織り上げると、こんなふうに細やかで深みのある美が生み出されるのです。大島紬をさらに魅力的なものにしてくれたのが奄美の大地。人と自然との偶然の出会いが生み出した奇跡の黒です。

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東京銀座にオープンした専門店。 銀座もとじ 大島紬。土臭さの中に、モダンな感覚が宿る通好みの着物。お値段は30万円から70万円程とか。「細かい絣が入っていまして、迂回色の味わいを感じます」「さらっとしていて、少しくらいの飴だとそのままでも平気です」着物の宝石と呼ばれる大島紬。今日はその魅力に迫ります。

奄美大島出身の店主 泉二弘明が故郷への想いを込めて、大島紬専門店「銀座もとじ 大島紬」を開店させたのが2012年2月25日。5年の月日を経てこの度、店内に機を構え、お客様に直に見て、聞いて、触れて、心で感じていただける店舗としてリニューアルオープンいたします。機織りの音色の響く店内で、大島紬の歴史や風土に触れ、種類豊富な反物を手にとってご覧くださいませ。

大島紬 一本の糸から日本を輝かせる着物店【銀座もとじ】

織り

大島紬の細やかな模様。筆で描くわけではありません。ご紹介したように斑に染めた糸を織りあげる絣の技でこんなに細かい模様が生み出されているのです。その絣どんな風に織るのか見せていただきましょう。ピンと張って並べた経糸に横糸を折り返しながらどうして行く機織りの作業。画面の左、織られる前の縦糸をよくご覧ください。すでに模様になっているのが分かりますね。織る前に糸一本一本を仕上がりを計算に入れた微妙に異なる柄に染めているのです。経糸の白い部分と横糸の白い部分が合わさり模様が完成します。「大島紬は咲き初めの織物で、縦の絣の点と横の絣の点をきれいに合わせて織るとどんなに細かい模様でも作れるっていうことですね」今日最初の壷は絣の柄は精緻の極み。
緻密な絣の柄には島が歩んだ歴史が秘められていました。江戸時代初頭、琉球王国に統治されていた島は薩摩藩の侵攻を受け支配下に置かれます。奄美の産品は薩摩の財源となりました。莫大な利益を生み出すサトウキビ。そして大島紬。薩摩藩は大島紬を独占し幕府への献上品などに使います。島にはこんなお触れが出ます。島の者は大島紬を着てはならない。品質を高めたい薩摩藩の求めに応じ、大島紬は洗練されて行きます。しかし自分で織った紬に袖を通すことの叶わない人々。大島紬の美をたたえた島唄はどこか悲しげに響きます。
精緻な柄を作るために考え抜かれたアイディアにあります。機を織り上げているように見えますがそうではありません。これは機織りの原理を応用して糸に柄をつけるための作業。奄美大島独特のやり方です。「機織りは織るという作業なんですけれども、柄を作るための作業ですので締めこむと言います。糸に柄がついてますよね。その糸に柄を作ってるところです」機織りに似た作業。ではどのように柄を作っていくのでしょうか。絹糸に木綿の糸を括りつけていきます。木綿糸で覆って染料に染まらない部分を作っているのです。

染め残したい部分だけに機で木綿糸を絞めこんでいきます。染料に浸したあと、木綿の糸を取り去ると作っているのですその部分だけに畑でもメインで行きます染料に浸した後木綿の糸を取り去ると覆われていた部分だけが白い点となり現れます。逆にこちら。木綿の糸で覆われていない部分が染料で染まるところです。では機織りの原理を応用するのはなぜか。最後に木綿の糸を外した時、絹糸に同じ柄のパターンを反復させる為なんです。こちらが木綿糸をくくりつけ、その上から染めたもの。木綿の糸を外していきます。そうすると同じ柄が反復する、長い糸ができます。この糸が着物一反の縦糸なんです。一反の反物はこうして出来た数百本の経糸を織ることでできています。それを切り分け着物に仕立てるのです。同じ柄のパターンが反復する長い糸を使うことで、着物の上に全く同じ模様を反復させることができるのです。
長く培われてきた絣の技術を明治の頃に集大成生まれた技です。エキゾチックな騎馬の人物や鳳凰を表した模様。同じ精緻な柄が繰り返され、着物の上にうねるような独自の世界を生み出しています。白く染め残ったところに色を入れることで、また違った表情の着物が出来上がります。細かな柄の反復が生み出すリズム。自らが着ることのできない着物を黙々と織ってきた人々の魂が宿っているかのようです。

大島紬ならではの色があります。それは独特の黒。手間をかけ特殊な力で生み出されてきました。少し茶色がかった淡い黒です。化学染料で染めた黒い着物と比べてみると大島紬のほうが茶色がかっていて温かみのある複雑な色合いであることがわかります。この色を出すために必要なものがあります。まず奄美大島に生えている「ティチ木」(車輪梅:シャリンバイ)。この木の幹から作った液体にあるものを加えると独特の黒になると言います。職人の金井志人さん。それは工房の裏にあるというのですが。やってきたのは田んぼ。一体どういうことでしょう。「この田んぼで大島紬の黒を作り出していく。田んぼの中の鉄分とティチ木のタンニン酸と反応させて色を作っているということですね」なんと、田んぼの泥で着物を染めると言うのです。今日二つ目のツボは奇跡の黒に泥の力。

金井工芸 | 古代天然染色工房




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