日曜美術館 「生中継!“ 鳥獣戯画 展”スペシャル内覧会」

鳥獣戯画

4月13日から東京国立博物館で開催される展覧会「国宝 鳥獣戯画のすべて」。開幕を2日後に控え、まだ誰も見ていない会場の様子を伝える。最大の見どころは、「鳥獣戯画全巻(甲・乙・丙・丁巻)44メートルが、全部開いた状態で展示される」こと。作品の詳細は、事前に撮影した8K映像で堪能。断簡や明恵上人像など、見どころを余さず中継し「テレビだからこそ可能な、スペシャルな内覧会」をお届けする。

放送:2021年4月11日

日曜美術館 「生中継!“鳥獣戯画展”スペシャル内覧会」

日曜美術館です。今日は生放送でお届けいたします。私たちが今日来ている東京国立博物館では鳥獣戯画の展覧会が明後日4月13日から始まるんですけれど、今回はテレビスペシャル内覧会と題し展覧会の様子をお見せします。

NHKのEテレ日曜美術館とBS8Kの同時にお送りいたします。

ゲストは森美術館館長の片岡真美さんと、アーティストの井上涼さんです。よろしくお願いします。

片岡さんって言うと思う現代アートがご専門でというイメージが強いですけど。鳥獣戯画が大好きだとか。

「一ファンとして大好きで、もうあの言葉がない。見ているだけでどんどん想像が膨らむあたりが永遠に楽しめる」

そして井上さんは。

「びじゅチューンという番組で鳥獣戯画を歌とアニメで紹介したことがあるんです。7年前ぐらいなんですけど、本物を見るのはこれが初めてなのでとても楽しみにしております」

それでは早速会場に参りましょう。

鳥獣戯画の背景を紹介します。

鳥獣戯画は京都の北西、閑静な山の寺に所蔵されています。

高山寺。

日本最古の茶園があることでも知られる歴史ある寺です。

この寺を鎌倉時代に再興した明恵上人。

山の中で一人厳しい修行を重ねたという明恵。

和歌にたけ、動物や草木をこよなく愛したとされます。

そんな寺で鳥獣戯画は大切に守られてきました。

甲乙丙丁の全部で四巻。

平安時代から鎌倉時代にかけて描かれたと言われています。

絵巻を開いていきましょう。

この展覧会が今までになく特別なのは、巻物を最初から最後まで全て開いた状態で見られること。

あの有名なカエルやうさぎの場面だけではありません。

滅多に見ることのできない他の三巻も。

合わせて44メートル以上にも。

絵巻を右から左へ。

余すところなくみんなで一緒に見ていきましょう。

第一会場にやってきました。

東京国立博物館絵画・彫刻室長の土屋貴裕さんです。この展覧会を企画された方です。

よろしくお願いいたします。

企画したということでぜひ見て欲しいポイントなどをまず伺ってまいりましょう。

「鳥獣戯画といえば、うさぎやカエルや猿が登場するのが皆さん思い浮かべるかと思うんですけれども、その巻とは甲巻という巻なんですね。鳥獣戯画には合わせて四巻、巻物があります。合わせるとですね44メートルを越すかなり長い作品になるんです。今回の展覧会は44メートル以上ですね、一度にご覧いただく初めての試みになっています」

世界初ですね。

日本初初めてづくしを一つありますけどね

博物館の中に似つかわしくない装置がございます。

「空港や駅で見かける動く歩道です。こちらに乗って国宝の甲巻はご覧いただくことになっています」

見えてきたのは何でしょう。

川が見えてきました。

背中洗ってもらってる猿がいます。

岸に植物がいっぱい生えてますね。

枯れ木のようなものだったり花が咲いていたり。

また生き物がいっぱい出てきました。

的をめがけてうさぎが矢を射ってる。

宴の準備みたいなのがもう始まっています。

料理を運んでいて釜飯みたいな。

服を着た猿が、供物をたくさん受け取ってますね。

偉いのかな。

猿がうさぎに追いかけられてます。

倒れてるカエルもいますね。

お腹を上にして、カエルがひっくりカエルですね。

大きなお花が後ろに広がってます。

大きな萩の木なんだ。

季節は秋なのかもしれないですね。

お相撲が続いていて今度はまた密集してますね。

カエルの阿弥陀如来です。

猿がお経を読んでいる。その後また供物を大量にもらうんだ。

そしてそのシーンがラストシーンなんだ。

終わりのシーンは唐突に終わってしまいます。

今のみんなで見てきましたけれど、他のものと違うってはどういうことですか。

「大きくいうと二点あります。通常絵巻の言葉書という物語を記した部分があるんですがそれが一切ないに点。二点目が色が付いて彩色を施していない墨の線のみで描いている。それが大きなこの作品の特徴になります」

何のために描かれたものなんですか。

「いろんな説がありまして、皆さん自分の説が正しいとおっしゃっておられますので、なかなか一つに今ここでご紹介することはできないんですけれども、ともかくいろんな説があります。800年ほど前の、平安時代の終わり頃に描かれたものです。巻物ですので場面が展開していくんですけれども、この歩道に乗っていただくことで動きながら絵巻きを手元で繰り広げるようなそういった感覚もこちらで体験していただければと思っております」

アニメーションみたいに、どんどん次のストーリーがやってくるっていう感じになってくる感じはすごく強かったですね。

なんかちょっとこの場所が気になった、初めて見た甲巻でここが良かったので所ありますか。

猿がやたらとお供物を受け取っている点が気になった。

この甲巻のために音楽家の大友良英さんが曲を作りました。

「音楽家の大友良英です。今日は鳥獣戯画にインスパイアされた曲をすばらしいメンバー達と一緒に演奏しようと思います。

初めて見た時に絵が動いてるような、音楽が聞こえてくるような絵でした。それを当時の音楽はできませんが今の感覚でやればいいなと思ってますのでどうかお楽しみください」

この広い部屋。

ここは乙丙丁の絵巻が時に見られる部屋でございます。

もうこの巻物だけでこれだけの空間を使うというのは贅沢な空間だと分からないことですよね。

乙巻の方に近づいてみましょうか。

甲巻が有名ですけれどもなかなか乙巻から先は見るチャンスがない。特別ですね。

ちょっと画風が変わりましたね。

さあこの乙巻を楽しむためのワンポイントキーワードを土屋さんが考えてくださいました。ちょっとご紹介しましょう。

「平安時代の動物図鑑」

「甲巻と乙巻は、うって変わって、動物が動物のまま描かれています。前半が身近にいる動物たちで後半がから急に異国の動物。そして空想上の霊獣などに描かれている」

乙巻は、井上さんの発見ポイントどこにあるのかご覧いただきましょう。

乙巻の最初は馬の群れ。

動物が人間のように描かれた甲巻とちがい、乙巻では動物は動物らしく。

走ってるたてがみがすごい。逆らってますね。

他の馬と喧嘩してるのかなあ。

でもこっちの馬の方が手がかかってるな。

足に色がついてる分こっちの方に分がありそうですねなんとなく。

目も怖そうだし。

仔馬かな。

雌馬な感じのお母さんかな

何だろう何が違うんだ。

骨が細くなったのかな。

顔もほっそりして女性的という言葉は合うのか分からないですけど、お母さんなのかなと感じさせられますね。

今度は牛だ。

後ろむきの牛からスタートするというのもなんかあえてのって感じるかなあ。

でもすぐ正面の牛が出てきた。

イケメンの牛だなぁ。

目がキラッとしてて。

今度は木に背中を擦りつけてるって事ですか。

本当だちょっと皮のたるみは気持ち良さそうな顔も描けてる。

闘牛とかで見たようなポーズ。

牛だけでもこんなに表情が描けるのはやっぱうまいんだろうなぁ。

やっぱり喧嘩が始まってますね。

馬も牛も喧嘩するんですね。

角が組み合わさって。

組み合わさってる所って描くのすごいめんどくさいから私は避けちゃうけど。やっぱこの人は俺は描けるぜって感じがなんかするな。

今度は鳥だ。かっこいい。

枯れ木に泊まるのは鷹。

左向き右向きちょっとしゃがんだのってポージングのバリエーションもすごい。

鷹の次は犬。

こちらも様々な姿勢で描かれています。

犬も喧嘩しています。

お次はニワトリ。

走ってる走ってる。

これは何を追いかけてるのかな。

ちっちゃいのがいた。

子供を追いかけてきたのかなあ。

さっきのお父さんが子供を追いかけてきたのかな。

こっちに鷹だか鷲だかがいるから危ないよって追いかけてきたのかな。

次の水辺のシーンで急展開。

空想の生き物が登場。

背中に甲羅のある一角獣は中国の神話に出てくる玄武と言われています。

顔は猫のようですけど、足は馬のようで尻尾もなんか見たことない広がりですけど何ですかね。

これはそれが麒麟です。

空想上の麒麟。でも何かこう無意味なパーツが。

続いては当時日本にいなかった動物が登場します。

ヒョウです。

見ている人が海を越えて異国に旅しているという設定かもしれません。

そしてヤギ。

この頃ヤギもまだ日本にはいなかったそうです。

今までの厳しいものが続きましたけどここらで可愛いのも挟んでおこかなっていうプロデューサー的な感覚があるのかな。

今度は虎の登場。

ちょっと表情が豊かだから舌出してるのも、ちょっとテヘペロ的なニュアンスを感じちゃいますね。

これは唐獅子。

唐獅子図屏風っていう屏風もびじゅチューンで取り上げたことがあるんですけどそこで書かれてた髪の毛のぐるぐると似てるかな。

やっぱ痒いんだ。

もう今までで一番掻いてて気持ち良さそうな顔してるかも。

たまんねぇなぁって感じの顔してますね。

なんかもうすごい気合い入ってんのかもうすごい。

龍か。

尻尾の向こう側に足がかかってて、こういうところもやってやるぜ感が凄い感じるなー。

なんか俺はこういうの交差させちゃうんだぜ。

まだあるんですか。

これまだあるんですか。

次何出せばいいんでしょうね。

象か。

龍の次とくれば龍ぐらいでないとって感じなんですかね。

なんだこれ。

今までで一番謎な生き物は。

この生き物でおしまい。

ここで終わり?。

謎を残してなんか劇場版へみたいな感じ?

これは夢を食べるという獏。

ここで夢が終わるってことか。

このいち大トリップの夢がここでバクに食べられて終わりってことなのかな。

まさに動物図鑑という感じでしたけれどもね。

井上さんがおっしゃってた通りに細部がね描き込まれてて、見るものにいろんな想像を誘うっていうか、まさに僕の夢の中にいる感じがありました。

その夢の中でですね面白いものを片岡さんが見つけたとおっしゃっています。

「私はこのハクゾウが気に入ってしまいました。白い象。日本には象は足利時代に初めて来てその後江戸時代にも輸入されたりとかしていて、長崎に着いた象が江戸まで歩いて旅をしたことがあるって言う話もあって、その時に人々は寄って集って見に行った。それとこの時代との数百年後にそんなことが起こったんだなと思って。多分中国からものすごく色々な図像も伝来してたんですね」

象そしてバクと来てさらに向こうに目を転じると丙巻がありますね。

またガラッと描かれているものが変わるんですよね。

それ何が描かれているのか何か。ワンポイント解説こちらでございます。

「表裏にあった人物戯画と動物戯画」

片岡さんが8Kの映像で事前に見てくださっています。

最初は囲碁をする人々。

ここで初めて人間が登場します。

こちらはすごろく遊び。

なぜか裸の人が。

負けて色々取られてるとられた後なんですかね。

多分この家族を養うためのすごろくで賭けに出たんだけども負けに負けてもう素っ裸っていうそういうところですかね。

その隣では将棋。

小さな子供がおじいちゃんに教わりながら勝負しています。

一人一人が豊かな表情。

和やかな遊びの様子が伝わってきます。

こちらは当時流行った遊び「耳引き」です。

ちゃんと紐の結び目まで書いてありますね。

すごい。

周りで子供ですかね応援してるみたいな。

またもしかしたらお父さんは賭けに出てるんですかね。

今日の晩御飯がどうなるんだろうと思って心配してる。

さらにすごいね。

これ首の綱引きになってて、これもちゃんと結び目までちゃんと描いてありますけど。

たぶんこの人がもうなんかガチガチになってるのでこっちが勝ちそうなんですかね。

なんかこの人の方が若くてこちらは割と背骨もゴツゴツ見えている。

まそういうなんか強弱が逆転してる感じも面白いんじゃないですかね。

その隣ではにらめっこ。

ゲラゲラ笑っている人もいます。

すごく痩せ細った人とか、洋服を着てないか子どもたちが出てくるので、なんか社会はそれほどではなかったように見えるので、まあその中で本当にも綱一本、布の紐一本で遊べるようなところで笑いを求めていたのかなってこう見るとしてきますね。

人間の勝負事が続いた後は動物の二番勝負。

まずは鳥合わせ。

この頃行われていた鶏を戦わせる遊びです。

烏帽子をかぶった観客の姿も。

この鳥合わせ。

庶民だけでなく宮中でも人気だったといいます。

そしてこちらは犬合わせ。

闘犬です。

この後唐突に動物の世界に変わります。

ウサギやカエルが登場。

猿は鹿に乗っています。

何かの競争でしょうか。

動物の描きかた。

甲巻や乙巻とはちょっと違うようにも見えます。

これは強そうな牡鹿が出てきましたね。

めっちゃ戦う顔してますね。

何かこの猿を追いかけてるようにも見えますけどね。

でもこの高下駄を履いて逃げるのは結構難しいかなと思いますけど。

また笑われてます。ほんと笑えますね見てるだけで。

この辺に吹き出しがあったら色々書けるんじゃないですか。

このシーンは豪華ですね。

ここすごいですね。

鼓を持ってますからお祭りが行われてるのかもしれないですね。

烏帽子の代わりに葉っぱとか。

みんなそのありあわせの物でそれなりになんか役割を果たそうと参加をしようとしてるあたりが面白いですね。

毎日を生き生きと過ごしているエネルギーがずっと絵巻が流れるのと一緒に流れてますね。

だいぶ酔っ払ってきてますかねこれ。

心配そうに眺める一群が登場しましたけど。

あんなに入っちゃってていいのかしらって。

賑やかな宴の後、蹴鞠が始まります。

カエルが高々と鞠を蹴り上げています。

こちらは修験者や僧侶が神通力を競い合う場面。

猿組とカエル組が逆立ちする猿に神通力を掛け合っています。

応援に駆けつけたカエル達。

杖をついているのはカエルの長老でしょうか。

被り物が気になりますね。

このかぶってるの何なんでしょう。

鬼灯みたいですけどちょっとなんかサイズ感が合わないのかなーと思ったり。

これ本当にも色が付いてたらどういう色だったんでしょうね。

まあでもこれをカラーでイメージするのも楽しいでしょうね。

絵巻の最後を飾るのがカエルの天敵蛇。

実はこんな楽しいことばかりではないんだよという事言っているのか、何かものすごくメッセージが込められているような。

表裏というキーワードはどういう意味なのですか。

「丙巻は前半が人物を描いている。ここが前半後半の境目になるんですけれども、ここから動物戯画が始まります。全く違う主題テーマ。なぜ同じかになっているのかということがずっとわからなかったんですけれども、最近行われた修理によってもともと紙の表と裏に人物と正月の戯画がそれぞれ描かれていて、それをある段階で紙をスライスして二枚に分けて、今このような巻になっていることが判明した。

証拠の場所がちょうどこの黒い墨の点があります。

ちょうどその裏面に当たるのが人物戯画側の黒い点。この黒い墨の周りに墨の汚れが付いてそれを剥がしたために同じような場所に汚れが残ったた」

わくわくポイント発見ポイントがあるということです。どこでしょうか。

僕も片岡さんと同じでこのカエルさん達にひきつけられましたね。自然界の中にあるものを使って仮装してる。その後ろにはリアルなカエルさんが立ってて、その後ろにさらリアルのカエル。普通のカエルになっていき最後にそこに蛇がいて・・・。ふとしたら蛇から逃れようとしてたんじゃないのか。楽しんだけどリアルな現実にも根ざしているとか。

物語を楽しんでいるんだけれども最後の方に現実に持って行かれるって言うあたりが狙いとかあったのかとか気になりますよね。

「蛇は予兆的というか、何か突然悪いことがやってくるのを予兆するようなメタファー。これからまた何か次の物語が始まる感じがしますよね」

急にフット終わってしまったりするところが、分かってないことが多いだけに謎の部分がね。

夢から現実に戻されて丙でも二重の夢に表と裏で入って、またあの出てきましたけど

現実に。私たちはどこに行くのか。

丙巻を見てる間に井上さんが別の部屋に入っているようです。今度は井上さんを呼んでみましょう。

私は今第二会場におります。

見た感じ鳥獣戯画とそっくりな絵が飾られています。でも巻物じゃなくて掛け軸の形になってますよね。これは何でしょうか。

「断巻というパートになるんですよ。断巻というのは巻物から抜けてしまった場面です。絵巻物というのは紙を糊で繋いで長くして巻物にしますので、糊が弱まったりするとどうしても途中から抜けてしまう場面もあるんです。

ですからあの先ほどの順番ですとか終わりが唐突であるというのも、そういった受けた場面があった可能性がある。

こちらの場面はまさに国宝の甲巻の中に入っていた可能性が極めて高い。それがですねこちら。

断巻の後の場面が、甲巻の相撲の場面の背景に萩の花がある。花びらがこっちの背景にも散っている。ですから元々こちらの断巻は甲巻のこの部分の前にあった場面ということが分かる訳です」

どういう場面なんですかねこれは。

いろいろいろんな服を着て。猿ですかね。手に色々な物を持って。

「猿は藤の花を持っているんですね。後ろのカエルが持っているハスの花は傘ですので、貴人、尊い人の上に掲げる傘ですから、このおさるさんはですね身分の高い人を表す」

今度は別の展示室に入っているようですよ。

小野さんはいはいあの島田さん

「僕は鳥獣戯画奥を大切に守られて来られた高山寺にご縁の深い明恵上人のコーナーに来ています。高山寺はご自身の夢を記録した「夢記」で有名なんですけど、本物初めて見ました。すごいなあ。

リアルな夢を見てたんですね。夢の中に現れてきたものをきちんと絵に書かれてるし、大きな帳面なんだという発見がありました。発見といえばそれだけではなくて、こちらには壁があって窓があってその向こうに、これきっと明恵上人ですよね」

「ふだん高山寺の開山堂という堂にお祭りされている像で、年に二回だけ特別な仏事でしか厨子の扉を開けられない大変貴重な像になっています」

「今回展覧会にご出品いただくのは28年ぶりになりまして、大変貴重な機会であります」

「右側の耳をご覧いただければと思うんですけれども。右の耳の上の辺りが少し欠けててらっしゃいますね」

「明恵さんは24歳の頃に生まれ故郷の紀州・和歌山で右耳を切ると言うことをしたんです。修行の一環として自分の体を仏様に捧げるということで右耳を切りました。左の耳と比べていただくとその違いがよく分かるんじゃないかと思います」

こちらでは最後の四巻目になりますけど、丁巻を一緒に見ていこうと思います。

丁巻を見るときのポイントは何でしょう。

「実力派絵師の崩し描き?」

「丁巻は鎌倉時代に描かれたと考えられているんですけれども、一般にあまり上手くないというそういった評価をされているんですが、よくよくご覧いただくとですねそうではないということが分かると思います」

「いやなんか、この筆使いは上手い人の筆ですよね。本当に上手な人が飲み屋でさらっとこんなにコースターに描いた絵だけどうまいみたいな。きちんと描こうとしてないんだけどどうしても上手くなっちゃうっていう。少ない筆使いでリアルな顔の表情も出てますし」

例えばここ。お坊さんでしょうかね。

「剛力の比べをやっているんですが、墨の線が薄いですね。薄いんですけれどもかなり早いスピードで筆を走らせていることがわかります。隣の坊さんの服の線ですか、相当早いですね」

「描き始めが分かりますよね」

蝉が多い所から

風邪っぽいとこから帰ったを書くまでに一度も筆を付け替えてないみたいなスピード感

5分ぐらいでこれを描いちゃったのかな

「実はさっき見た場面が甲巻があったと思います。猿がお坊さんでお経をあげていてご本尊でカエルがいたパロディになる。動物が人間の王様のパロディ。そのさらにパロディがこの丁巻ですので、甲巻を見ていないとこの丁巻でのは面白さがわからないとそういう仕掛けになる」

先に行くと動きがすごく面白いシーンがありまして、その辺り何でしょうかね。

「大木をみんなで綱を引いて引っ張ってる場面になります」

「ひっくり返って放屁してる」

「綱切れてひっくり返ってみんな大爆笑している場面」

放屁で大笑いしている人たちとそのお隣の人の顔がまた全然違う。

「放屁合戦をもう一人だけ後ろ向いて見てる。右側では作業してる左側では厳粛な法会の場面があって、大声におそらく驚いたひとりの公家が振り返ってる場面。

その振り返った顔をよくご覧頂きたいんですけれど非常によく描けていると思いませんか。他のタッチと全く違うんですね。おそらくこの丁巻を描いた絵描きさんは、本当はここまで描けるんだけれども他の場面少しわざと手を抜いたように見せて、本当はここまで描けるんだけどわざと手を抜いて見せたメッセージでもあるのかなというところを見せてるって思わせぶりな絵」

「仙厓とかと同じで、あえて詳しく描かないという例と近いですよね」

「色を塗るとか筆を重ねるということやればやれ上手く見えるんですけれども、少ないタッチでいかに上手く見せるかという意味ではこの丁巻は極めて上手な絵描きさんが描いていると私は思います」

そしてこの丁巻の子牛の冒頭のシーンから違う舞を舞うシーンで終わります。

「紙の色が若干違う。おそらく別の場所に保管されていて、別の場所に入っていた場面だと思うんです。ある段階でこの修理した際に最後に張り付かれた場面ですので、他にも丁巻も含めてですけれども失われた場面にもある可能性がある」

まだ見れないところがまだまだあるかもしれないのすよね。

ここまで今日は甲乙丙って四巻そのもの一緒に見てきましたけれども、改めてですが片岡さんはいかがでしたか。

「本当にあの今のアニメーションを見てるようにどんどんストーリーが向こうからやってくる。それにこちらから言葉をつけていくっていうような想像力の遊びがたっぷりできるなと思って本当に楽しませて頂きました」

一体誰が何のためにそんな遊びをしたのかなっていうことを考えると面白い。

井上さんは。

「なんか笑わせようという感じが、より本物を見ると何か感じるなと思います。動物のちょっとした表情でもこういう人見たことあるやろみたいな、あるある感を出そうと書かれている気がして、見てる人を楽しませてもっとを笑わせたいみたいな笑いへの熱意を感じました」

「紙と墨のなんかこういうをしている感じが本物はすごくいい。馴染み感が本物はさすがでございました」

色が付いてないぶんその墨の濃さとかタッチがよくわかりました。

「一度に見られることはないかもしれないですね」

「ないかもしれません。是非この機会にご覧ください」

「高山寺の見所の一つ。ぜひお見逃さないで頂きたいというあの可愛い子犬さんです」

ちょうど展覧会場の最後の部分ですよね。

もうあのお客さんをお見送りするかのような位置にあるわけですよね。

本当にですねあの鳥獣戯画を拝見してですね。ワクワクする。ちょっと俗っぽい笑いがある。見た後にあの明恵上人の深い森の静けさ聖なるものっていうものにも触れられるような思いがありました。最後にこのあの子犬のところに来るとまなざしがやっぱり明恵上人と同じで深いんですね。展覧会の最後を締めくくるにあたり何かこそすごく象徴的な役割を果たしてる気がしますね」

皆さんどうもありがとうございました。

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