美の壺「参上!キモノ男子」

美の壺「参上!キモノ男子」

西郷どんの愛した大島紬。職人が腕を競う“西郷柄”とは?

60色もの糸を駆使した驚きの紬(つむぎ)も登場!

着物にサッシュベルト、そしてトレンチコート!着物にシャツとブーツ!自由自在な着こなしで世界にはばたく着物

24時間着物を愛用。人気大学教授のこだわりとは?

着物でシャンパンを楽しむ京都の旦那衆の集まりに潜入。

粋な着こなしのポイントは華麗な帯。

金箔を施した豪華で品のある帯は必見!<File462>

【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

美の壺「参上!キモノ男子」

放送:2018年12月14日

プロローグ

銀座にある呉服店。着物のコーディネートの講習会が開かれています。

「これも独特のムラ感があるんですよねこういう形でちょっと作っていました」新作の着物や帯にときめく男たち。着物を着こなすのは最高の男磨きとか。「日本人の顔立ちスタイルに着物は合っているのでは」。

インターネットで販売もしている東京・上野にある男の着物専門店「藤木屋」。この3年で売上を3倍以上伸ばしています。客は20代から30代の若者が増えているそうです。

「若い方を中心に、東京オリンピックが決定して以降、日本に対する意識が変わってきて、ファッションの分野では着物を来たいという方が増えたのではないかと思います」(木寺幹さん)

変革の時代を迎えた男の着物。最新の魅力を紹介しましょう。

サプライズ

慶應義塾大学のキャンパス。羽織袴のこの男性。いったい何者。

着物を着た英語で講義をしているのは大学教授の中村伊知哉さん。ITメディアやポップカルチャーの分野の第一人者です。この講義を聞きたくてはるばるやってくる留学生も多いとか。中村さんの着物姿いかがですか。

「男の人がスカートを履いているようで奇妙ですが好きです」

中村さんが着物を着るようになったのは十年前。それまでの洋服一辺倒の生活に転機が訪れました。

「クールジャパンの対策を考える政府の会議に出ていました。私はマンガやゲームの話をしていたのですが、これからはファッションだという話になりました。出席していた議員はスーツ姿でした。そんなこといったってみなさんスーツじゃないですかと言ってしまったのです。そしたらお前、和服になれと言われました」

以来、仕事もプライベートもすべて和服でこなす中村さん。今日本で一番着物を着ている男を自認しています。

「初めて出会う方にはサプライズを与えるといいますか、驚かれることが多いです。それが話題となってコミュニケーションの手段としても役に立ちます。それから実際よりも年上に見えるみたいで電車の中で席を譲られることが増えました」

中村さんの着物のコーディネート術には独特のこだわりがあります。スカーフなど洋風な小物も中村さんの手にかかると。

「フランスのスカーフを潰して半襟に、少しここを覗かせるとか、

こんなバッチをつけてみるとかですね、見えないところでちょっと遊ぼうって言う江戸の粋みたいなことやってみたくって」

中村さんが着こなしの手本としているのはあの幕末の英雄です。

「坂本龍馬さんの和服に袴でブーツ。これもスタイリッシュだということでそれもやってみようと思って」

進取の気性で着こなす男の着物。今日一つ目の壺は着こなし自由自在。

進化する男の着物

男の着物専門店を作った木寺幹さんはもともとアパレル業界でスーツの販売に携わっていました。

新たなファッションを生み出せないかと考える中たどり着いたのが着物だったといいます。

「着物だからといって難しく考えるんじゃなくて、ファッションで使うコーディネートの公式を使えばきれいになると思います」

襦袢の代わりに着るのはワイシャツ。

「スーツを着るときの感覚でシャツを中に入れて着物を着るスタイルを提案しています。洋服のアイテムを合わせることによって、着物のファッションの幅が広がってくると思います」

この斬新なコーディネート。実は150年前すでに取り入れていた人たちがいました。

幕末エジプト経由でヨーロッパに渡ったサムライです。

西洋文化に触れ新たな着こなしにチャレンジしていたのです。

パリで買ったと思われるシャツとネクタイをつけた誇らしげな表情。

刀と本と蝶ネクタイ。来るべき新たな時代を象徴するようないでたちです。

「当時の写真を発見した時すごいびっくりしたので、今よりもだいぶ昔の方が実は和洋折衷と言うか、シャツとかネクタイとか取り込んで着物をコーディネートする人がいらっしゃったというのが非常に刺激的ですね」

木寺さん150年前の侍たちの感性をさらに進化させ、着物をもっとグローバルな衣装に変革していきたいと考えています。

裏地に迷彩柄。見えないところにこだわった江戸っ子の心意気を現代風にアレンジ。

帯には太いサッシュベルト。着物に羽織るのはトレンチコート。

これが不思議に調和します。

ボーダーレスなスタイルはヨーロッパの風景にも馴染みます。常連客の皆さん。店に通いつめるうちに着こなしがどんどん自由になってきたようで、ヒョウ柄の足袋にパッチワークの着物。

「いろんな種類があって、人と被らないとか、そういったところがいいかな。個性的になってきてっていろいろも合わせたらもうどっぷりはまっちゃいましたね」

「なかなか洋服ではできないような着こなしができるので、来て楽しいでする。今までなかった自分の発見ですかね」

着こなしにグローバルな感性を取り込んで。男の着物は今覚醒の時を迎えます。

着物の好きにはたまらないのが大島紬です。

紬は全国各地で作られてきた織物ですが、中でも大島紬は細かい絣模様が特徴で、藩の献上品にもなっていました。

奄美大島出身の呉服商「銀座もとじ」、泉二弘明さんと息子の啓太さん。大島紬の魅力を二代にわたって伝えています。

「男の着物は紬に始まり紬に終わると言われるくらい、初心者から着やすくて着崩れしにくいのが紬なんです。体温に寄って柔らかく体に馴染んでくる」

大島紬の中には西郷柄と呼ばれる精緻な模様がいくつもあります。格子の中に更に細かい絣模様を織り込むなど、技の粋を結集。西郷の名に恥じぬよう奄美の人々が競い合って様々な模様を生み出してきました。

「緻密で凝っている織物。礼装には向かない織物を職人が競い合っていいものより作ろうとする。これが日本の美意識かなと思いますしそれが紬の魅力になってくるんじゃないかなと思います」

今日二つ目のツボは情熱と誇りを織り込んで。

長野県上田市。戦国時代真田一族が活躍。その後養蚕や製糸業の町として栄えてきました。

ここで生まれた上田紬。江戸時代真田も強いが紬も強いと言われる堅牢さを誇り、裏地を回取り替えるほど長持ちしたと伝えられています。

上田の街には紬を商う呉服屋が軒を連ねていました。

先人の技を受け継ぎながら新たな紬を製作する「紬工房」です。

染織作家の小山憲市さん。

日常着として使われていた上田紬をおしゃれな男の着物に生まれ変わらせています。

一見、無地のシックな着物。

近づいてみると太い糸や節のある糸が複雑に織り込まれています。

さらに青や緑黄色など鮮やかな色が散りばめられていることがわかります。

静かな佇まいの中に様々なこだわりが織り込まれているのです。

「生地はおしゃれじゃなきゃいけない。光沢とかツヤとか柔らかい風合いも含めて、いろんな糸を組み合わせることによって、しなやかな着心地の良い現代的な織物になっていくのだと信じて作っています」

小山さんが使うのは3種類の絹糸です。

細くて光沢のある一般的な生糸。

二匹の蚕がひとつの繭を作ったため糸が複雑に絡み合い節の多い玉糸。

蚕が孵化し穴を開けてしまったくず繭から作る紬糸。

ふわふわと毛羽立った繊維によりをかけると素朴な風合いとなります。

様々な表情の糸を小山さんは天然の素材で染め上げます。

こちらの糸を染めたのは栗のイガ。

その他にも木の実や柳の枝。はんなりとした色彩を生み出します。

いよいよ織りの作業。

糸車を並べる小山さん。織物の骨格を決める縦糸を準備しています。

この糸の並び方が実際に織り込まれる縦糸の順番。小山さん思案のしどころです。

「織物の性格を決める大事なところで、作り手のその考え方とか意思がここで全て反映されます。一本でも間違うと着物の性格が全く違ってしまうのですごい緊張する場面ですね」

今回用意した縦糸はなんと60色。

緻密に計算された配色が小山さんの紬の命です。

織り手は87歳になる小山さんの母節子さん。節があり絡みやすい玉糸や紬糸を織り上げるには 熟練の技が必要です。

鮮やかな60色の縦糸。それに対し横糸は白一色で織って行きます。白い糸の狭間に見え隠れするわずかな縦糸の色。

「織物の縦糸にいろんな色を潜ませるということをしてます。紬というのは男の内面。男の品格。それを引き出すものとするとでしゃばりすぎてはいけないんですよね。人生を重ねた人ほど深みを増していくのと同じように、織物も横糸縦糸絡み合わせて深みを、奥行きの深さを出して味わいというものを作っていくものだと思っています」。小山さんの紬。

作りての志も隠し味として織り込まれているようです。

夕闇迫る京都。粋な着物姿の旦那衆たち。盛り上げるのはシャンパン。そしてとっておきの料理。普段は別々の仕事をしている異業種の人が着物を楽しむために集まる会です。「着物でシャンパンを楽しむ描い。きもシャンといっています」

メンバーの着物をコーディネートしているのが西陣の織元「服部織物株式会社」の服部一正さん。

今日最後の壺は帯に技あり縁あり。

服部織物株式会社 HATTORI ORIMONO

織物の町京都西陣。江戸後期、天明年間に創業した織元です。

長きに渡り華やかな帯を作り続けてきました。

服部さんは13代目にあたります。2003年から男性の帯にも着手。現代的で洗練されたデザインの帯を世に送り出してきました。

「今着ていただける方の層が若くなってきてますので、デザインとか色に関しても非常に昔と違ってやっぱり新しいものも求められてます。帯は着物の要ですので自分を主張するとかオシャレを主張していける部分なので楽しんでいただきたいなと思います」

男の着物が注目されている今。さらに斬新で遊び心のある帯を作りたいと考えた服部さん。

参考にしたのは華やかな女性の帯。

祖父の代から作られてきた引箔という技法でした。

和紙に金箔を施し糸として使って行くのです。きらびやかな箱を織り込んだ帯は華やかで世の女性たちを魅了してきました。更にこんな利点も。

「従来はきらびやかに見せるため、色糸がたくさんかかっていて、その分このように色が渡ってしまって異常に重いになって締めにくくなってしまうということで、祖父が代わりにこの引箔を使いまして軽くて薄くて着物に本当にしっくりきたとくるような織物を世の中に出したわけなんですけれども」

服部さんは男の帯にもこの引箔を使うことにしました。

「男性は多分引箔というのをなかなか締める機会はなかったと思うんですただその軽くてすごく薄くて締めやすいって言うのでお男性ものも絶対締めるべきだとこれだと思いました」

引箔の帯を折り続けてきた工房で新たな挑戦が始まりました。

「細く細かい繊細な表現を出したいので」服部さんが選んだのは銀色の引箔。

「男性なのであまりキラキラというよりか、汽船をベースに少し光を抑えて 落ち着いた雰囲気を出したいと思いました」模様は銀色と紺のエキゾチックなペイズリー柄。「男性ものの場合は女性ものと違って帯の柄が見える面積ってのが少ないので、細かい繊細な表現を工夫しながらやってみたけど。

今回の柄も実はペイズリーの中に七宝を入れたりとか星を入れたりとか楽しいデザインも入れながら考えてたんですけど」

新しい感覚の色と光が加わった帯。男の着物はまた一つ進化を遂げました 。

取材先など

NHK BS プレミアム「美の壺」にて「男の着物」が特集されます(放送予定:12月14日(金)19:30~他)|メディア掲載【銀座もとじ】

NHK BSプレミアム『美の壺』12/14(金)放送にて、藤木屋を取り上げていただきます!!<File462>男の着物/参上!キモノ男子 | メンズ着物&メンズ浴衣 藤木屋ブログ

参上!したキモノ男子は私だ。 | 徒然電磁日記

テレビで「参上!キモノ男子」@14日(金)夜 美の壺! – きものタイムズ

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