日曜美術館 「オルセー美術館 II月の肌触り」

日曜美術館 「オルセー美術館 II月の肌触り」

オルセー美術館には、印象派をはじめ、19世紀中盤から20世紀初頭にかけて新しい芸術の扉を開いた作品たちが所蔵されている。

パリの街や暮らしが大きく変わった時代。特にこの時代、「夜」のとらえかたは格段に豊かになった。

マネが魅せられた夜の女、ゴッホが独特のタッチで描いた街灯の光、ドガがとらえたカフェの情景。

「月」に導かれて、閉館後の誰もいない館内をめぐり、豊穣な闇の表現を堪能する。

初回放送日: 2022年2月13日

 

日曜美術館 「オルセー美術館 II月の肌触り」

世界中どこにいても時代がいつであってもたった一つ変わらないことがある。
それは太陽が昇る。昼が来る。月が満ちてかける。夜が来るなんだ。
そんな当たり前のその当たり前をきちんと見つめて描いたことで美の革命が起こった。

あれは十九世紀から二十世紀になろうとする頃だった。
時代が移ろう中で、芸術家たちが見つめた昼と夜。光と影。
これらが美の結晶となって、今も輝いているのがここフランスオルセー美術館。
輝ける美の源。
太陽と月に導かれて巡るオルセー美術館の物語。
二回に分けてご案内しよう。


今日は月。
夜のオルセーをたっぷり味わっていただきましょう。

あの画家も夜に魅せられた一人。
夜の帳が降りてきた。
寝静まった美術館へようこそ。

夕暮れ。
もうすぐパリに夜が訪れます。
セーヌ川のほとりにその美術館はあります。
輝き始めたエッフェル塔。
この塔ができるちょっと前の十九世紀の中頃から二十世紀初めにかけての作品が主役のオルセー美術館。
パリが一番華やかだった頃の空気を味わえます。

閉館後。
夜の美術館です。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った館内。

オルセーと言えば光溢れる印象派の名画を思い浮かべることでしょう。
でも夜の一時。
光のない闇の時間を描いたものもなかなかです。
その絵が描かれたのは十九世紀の後半。
彼女は夜のパリで男たちの視線を誘いました。
エデゥアール・マネ「オランピア」
実は彼女夜の女。
その源氏名がオランピア。
娼婦を描くとはもってのほか。
批判の声が上がりました。
さらにその容姿をこきおろす者も。
醜悪という人まで。
影がないのでのっぺりと見える。
体化粧がないので崩れたかのような顔。
しかし一方でこのお姉さん。
若い芸術家たちのミューズとなったのです。


そうだな。マネの仕事は革新的だった。
多くの若い画家がマネに刺激を受けた。