2024年注目の展覧会とは?豪華プレゼンターが美と出会う!▽のんが憧れのイラストレーター・デザイナー宇野亞喜良に想いを伝える!▽磯村勇斗が日本を代表するポップアートの巨匠・田名網敬一の創作の秘密に仰天!▽板垣李光人が金沢でデジタルとアートのやばい関係に迫る!▽玉城ティナがホンマタカシの逆さまな写真の謎を解く!▽坂本美雨が青森の奈良美智展で土地と音楽の力に共感する!▽クイーン・オブ音声ガイド発表!
初回放送日:2024年1月1日
日曜美術館 「SP ハッピーニューアーツ!」
2024年辰年。新年あけましておめでとうございます。美が溢れる明るい一年のスタートを願って、「ハッピーニューアーツ」。新しい年、新しいアートが私たちを待っています。絵画も撮れた感じですよね。
「今年注目の展覧会を一挙紹介!」子供が泣いていると、すごく切実に感じます。憧れのアーティストとの感動の出会い。「今の年からそんなこと考えたら絶対ダメだよ」と言いたくなる。ここ、銀河ですよね。ここに積み上がっているのは。これはすごい、一枚目が生まれる瞬間を見てしまいました。豪華プレゼンターが星野アートを駆け巡る59分。
ちょっと勝ち誇った気分になる「日曜美術館お正月スペシャル・ハッピーニューアーツ」。
2024年、新しい年が始まりました。
今日はその新しい年の始まりにふさわしい素敵なお客様にお越しいただきました。
どうぞ、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
辰年ということで、龍についてどう思いますか?
「そうですね、龍といえば王や神に仕える神聖な生き物というイメージがありますが、同時に怖いという印象もあって、不思議な存在ですね。」
今日、私たちがお邪魔しているのは東京丸の内にある静嘉堂文庫美術館です。ぱっと見、周りは龍だらけですね。
1月2日から始まる展覧会、その名も「ハッピーリュウイヤー」。龍にちなんだ美術品が集まっています。
浜代さん、何か気になった作品はありますか?
「私は真の時代に作られた漆の物入れが素敵だなと思いました。何度も重ね塗りした漆から竜を彫っていったという話を聞いて、使っていた人の姿を想像してしまいました。」
さて、まずは憧れのアーティストの作品からご覧ください。
「ハッピーニューアーツ」のんさんです。
「私が大好きなのは宇野晶さんです。高校生の時、本屋さんで宇野さんの本を手に取って、それ以来彼女の描く女の子に魅了されました。」
これまで何度も宇野さんの個展に足を運
んできたノンさん
アトリエを
訪ねたこともあります
本棚に
落ち葉 が
置いてあったんですね
すっごい綺麗なわけでもない
し、 すごい
不気味なわけでもなくて、
口葉だな
っていう落ち葉
その落ち葉を拾
ってる宇野さんを想像したりとかして、
面白いなぁって
思った記憶があります
お はよ
うございます
よろしく
お邪魔します
ノンさん、
七年ぶりの
アトリエ訪問です
全部せっ
か
なんか、
もうちょっとちっちゃい人
みたいな
あ、
そうですね、
伸びるってことはないですよ
伸びました
あ、
そうです
二十三センチ伸びました
どうですか、
落ち葉だ
なんですか、落ち葉が好きなんですか
お好きなんですね
以前もお伺いした時に、 落葉が
棚に置いてあって、
今日は
刺してある 壁に、
なんで落ち葉を
飾っているんですか
頭の中で
葉っぱを描くのと
違って、実際に
起こっているので、変に
変容していってるんですね
こんな風に
頭の中ではこういう造形ができない
最近あまり作らないんですけど、こういう
例えば
こういうのが
変容したりっていう
ものが変わっていくこ
ととか、
そういうことも好き
なんですね
かっこいい
かっこいいですね
宇野晶さんは
千九百五十年代に活動を開始
日本の
イラストレーターの草分け的存在です
七十年に及ぶキャリア
その真骨頂は
少女たちです
八十九歳の今も
書き続けています
宇野さんくんです
これもね、
持ってて
そうなんです
私は
宇野さんの
絵を見てて、
ちょっと
不気味な世界観だったりしてる時も、
変なポーズしてたり、
この子みたいに
頭から手が
出てるように見えるところとか、
そういうユーモア
が入っているところがすごい好きです
僕は
そういういい加減なことを
考えるのが
好きなんですよね
以前いただいた
化粧品とのコラボの
これ
タイツに
この印象的な
イニシャルが入ってるところとか
面白いなって思うし、
下着が見えてる、
あ、これ下着だ
これ、一緒に振り
見えるの
可愛いですね
宇野さんを一躍有名にしたのは
千九百六十年代、
寺山修士の演劇ポスターです
今も空重郎の舞台をはじめ、
依頼が絶えません
仕事を依頼されて
書くとき
とかって、
ご自身の表現をどのくらい
入れ込む
かとかって
考え
ますか
頼まれちゃった以上はこっちに
自由があるから
脚色していくわけですよね
今
例えばこれ、
ここ原画ですよね
ここに積み上がってるの
これはあの
からさんの芝居
なんですけど、
骸骨持つとこありますよね
これは
冗談を言っているように
ファミレットは
骸骨に押し
ていると
炭酸の芝居だから
冗談もありだろうなっていう
なるほど
面白いですね
途中で
執行
立ち音便を考
えるとか、
いろんな書いていく時に
プラスアルファで
アイデアが出てくる
ですね
なるほど、
テーマと
自分をどう
融合させるかとか、
自分流のアイデアを入れていくかっていう
ことも、
イラストレーションを書く楽しみ
ですね
なるほど、
のんちゃんの場合、どうですか、
芝居やってて、
もうちょっと自分
この本はこういう風にしたいとか、
セリフはそのままで、
どんな解釈ができるかなっていうのは
すごく考
えますね
なるほどね
一見明るく見えるけど、
すごく複雑な感情
が内在してたり
するシーン
とかも
どっちも考
えられるけど、どっちなんだろうって考
えた時に、私は
なんか複雑
になっていく方が好きなので、
笑ってるけど
なんか
悲しそうにも見えるっていう
解釈ができる
シーンがあると、
腕の見せ所
だってなります
ノンさんとの会話に刺激を受けた宇野さん
おもむろに
絵をかけ始めました
そうする
ん
よし
あ、ありがとうございます
すごい作品が
誕生した
落ち葉ですよね
そうですわ
かっこいい、
めちゃくちゃかっこいい
のんちゃんが入ってきて、
これに目が止まって
落ち葉の話をしたんでしたけど、
一番の話、
それ
ですよね
だからのん ちゃん
がいてくれることで、
落葉が
モチーフになったっていうこと、
面白いですね 落葉と
天使、羽
鳥ですか
鳥のような
翼を描きたくて
カサカサしたのと、そうではないもの、
ふさふさしたものと、
面白い
今年四月、
宇野さんの
過去最大規模の個展があります
僕のこういうピンナップが増えていくっていう
ことをやりたいみたいで
その一枚目、
だんだん増えていく
そうですね、
一枚目、
一枚目、
一枚目、
すご い
一枚目、
頑張れるところを見ちゃった
素敵です
めちゃくちゃ
かっこいいです
いや、すごく贅沢な
vtr だなぁと思って、
その場で
作品が生まれたりとか、
宇野さん自身が本当にこう
片時
も止まっていないような、
ずっとこう
アートを生み出すっていうことが
本当に生きる
喜びにつながっているんだな
というふうに思いましたし、
ノウさん自身もそれを
素直に
受け入れてらっしゃって、
なんだか
二人の相性がとても
いいなぁと
思いました
アートと出会ったことで
何かこう自分がパーって広がるような経験って
お二人はありますか
私はやっぱりお部屋の
中にもできるだけ
アートを置くようにしてたりとか、
絵も
飾ってますし、
寝室に写真も
置いていたり、
私は
普段写真
を撮られたりするということも関係があるのか、
写真を用いた
アートって
いうのに、すごく興味があって
私が一番好きなアーティストが
ソフィーカルっていう
違うんですよ
そうですか、
やっぱり
なんだか写真を用いた
アートっていうものに惹かれる
ことが多いですね
僕はすごくポップアートが好きで、
ポップアート好きの人に会ったり、同じ
作品の
絵を
持っている 人と
会ったりすると
話は盛り上がったりしますね
そっちがすごく嬉しいです
磯村さん、
実はアーティストを訪ねてるんですよね
そうですね、
僕は敬愛するアーティストの方
にも会ってきました
国際式で彩
られたサイケデリックな世界
アーティスト、
棚上圭一さんの作品です
本日はですね、
僕が敬愛する
日本のポップアートの
巨匠、
七海キャイスさんの
アトリエにお邪魔したいと
思います
僕はもともとポップアートが好きで、
キースヘリングだったり
草麻衣さんだったり好きなんですけど、
なんかその
田辺さん、作品も
夢の世界であったり
幻想の世界に誘
ってくれるような
作品が好きで、
普段どのように
考えているのかな とか、
そういった作品の
制作過程みたいなものづけたらなと
思っています
マンションの
異質にアトリエがあるということで、
廊下なんですけど、
本当静かですね
ドキドキしますね
はい、どうも
こんにちは、
よろしくお願いしま す、
菅田です
よろしくお願いします
うわ、すごい
作品がたくさんあ
りますね
アトリエの中は
作品でいっぱい
これはね、
サーフボードなんですよ
サーフボードアメリカの
会社で作った
また
緩みがいいですね、
これ、すごく
あ、すごい、
スカジャン
いいですね、これ、
スカジャンいいでしょ
あ、ほんと、サッカーボールがあります
こちら走
ってしまいます
すごい、
これ蹴れないね、これね、
外でもったいなくて
じゃあ、こっち行きますか
失礼します
あ、
セッションおお、
すごい、このやつかこれ、
ちょっと足元気をつけないと
ここに積まれているのは、
直筆の原画
これね、
ペンって書いてんのよえ、
これ、ペンって書いてあるんですか
ええ
ええテント
見てください これ、
これも書いてるんですよ
これも原画ですよ
これ、結
果なんですか
あー、
でも本当だ、 光に
なんか村があるでしょ
はい、見上がります、肉 が えー、
すごい、ちょっと信じられない
えー、こんなに
精密
にバーっと書いてありますね
千九百六十年代、
グラフィックデザイナーとしてそのキャリアを
始めた七海さん
三十九歳で
日本版月刊プレイボーイの
アートディレクションを担当
こうした仕事の体験を生かして、
アート作品を
次々に発表します
今世紀に入って、
日本を代表するポップアーティストとして
ニューヨ
ーク近代美術館など、
海外の著名な美術館
に作品が収蔵されるようになりました
今年八月、
初めての大規模開古展が開催されます
現在それに向け
新作を制作中です
なんかこう
幻覚を見ているような
感覚にも
なる感じが
しますね
かわいい
鶏みたいな鳥もいるし、
子供たち蛇みたいな
体になってるしっていう
楽しいですね
見ていて
いろんな想像が
膨らむというか
棚上さんの制作方法は
独特です
僕が言って全部いろんな
パーツが
あるじゃないで
すか
それが百 くらい
一つの絵の具があるんですよ
こういうふうに
分割して
こういうものが
作ってあるわけ
大小
様々なパーツを一
つずつ作り、
それをコラージュのように組み合わせて
一つの作品にします
かなあみさんの作品を見るたびに
磯村さんが
いつも気になっていることがあります
七海さんの作
品を見ている中で、
もちろん
ポップに描いてはいるものの、
どこが死というものを
感じてたんですよ
薄く
基本的には僕の
戦争のイメージっていうのはもちろんあるんですよ
それは幼少期に体験し
て 戦争
を体験したのはね、
四、五歳後
の頃なんですよ
その頃
目黒に住んでいて、
新潟に疎開して、
戦争が終わったんで
目黒駅に帰ってきたんですよ
ところが帰ってきたら
もう 目黒は
悲惨な状
態になってるわけですね
要するに少女で
焼けただれた、
もう赤い地位ですよね それと
水平線の上は
真っ青な空なんですよ
だからもう
本当に綺麗な
青空なんですよ それと
真っ赤っていうか、
赤っぽいその照度
との
二つの色がこういう風になってるわけ
で
それを見た時に、
子供流れ
なんだけどもね、
すごい衝撃
を受けたんですよ
その、要するに
それだけの期間にそれが
なくなっちゃったということに対する
その 理解が
やっぱりどうしてもできないんですよ
だけど、その
絵面というか
絵だけはね、
もう脳内にこうインプットされちゃったね
だから僕の絵ってね、
青い空と
赤いその照度っていうのはね、
どんな絵
にもね、みんなで
ベースになってるんですよ
もう本当にそういう幼
児体験っていうのが、
もう強烈
なものがあって、
それになるべく触れないように、
そこから逃
れよう、逃
れようと思って絵を描いてきたんですよ、
本当はね
そのために僕は表現
も現職を使ったりして、
非常に明るい
調子にしてるんだけど、
どうしてもその自分の背景
っていうのはね、
知らず知らずのうちにこう
やっぱり出てくるよね
あの、 なんか
狭間にいるような感じなんですね、
そうなんですね
アトリエのあちこちに、どこかで見たような絵がいっぱい。
「ここにあるのはみんなピカソですね。すごい量です。」
開古展でお披露目予定だという大量のピカソの模写が、この中に書き始め、今ではその数が600点以上に上ります。
「機関車がどういう筆圧で描いたのか、筆の置き方や絵を描く速さなど、いろんなことがわかるんです。そういうことが、僕の絵を描く勉強に非常に役立っています。」
棚上さんも80歳を超えているのに、今なお学び続けていることがすごいですね。
「僕は絵があまり上手じゃないんです。だから、どうすれば面白いものを作れるかを考えて、トレーニングとして模写が役立っています。上手になりたいとは思わないけど、面白いものを作りたい。」
87歳になってもなお学び続ける田中実さん、七海さんの描く手法は、進化しているように感じますか?
「そうですね、進化していると思います。僕が40代の頃よりも今のほうが、仕事の量は多いです。肉体と精神が衰えても、仕事はできるんです。」
「いやー、今の自分の年では想像できませんね。」
「だから、年齢のことは考えちゃダメなんですよ。」
磯村さんは心の動きが伝わってくるようで、感動されていましたね。
「本当に贅沢な時間でした。今までの田中実さんの作品もたくさんありましたが、狭間という言葉を使われていましたよね。あれはどういう意味ですか?」
「あれは、幼少期に見た光景から脱却したくて、明るい色を使ったり、違う絵を描こうとしても、どうしてもそれが出てしまうんです。その中で、狭間で戦っているような感じです。」
「田中実さんの描く幻想や現実の世界を行き来するような描き方が、まさにその狭間なのかもしれません。」
「そうですね、僕は狭間という言葉を使いました。」
「最初に田中さんの絵を見て、心を動かされたのはなぜですか?」
「やっぱり、死の静止感のようなものが強く感じられたからです。ポップなのに、死の匂いがするところが心地よかったんです。」
「田中さんに欲はあるかと聞いたら、物欲はないと言っていました。だからこそ、余分なことが頭に入らず、絵を描くことに集中できるんですね。創作に必要な欲が少しずつ減って、より純粋に取り組めるようになっているんです。」
「深い話ですね。聞けてよかったです。」
続いては、デジタル世代のお二人にぜひ見ていただきたい展覧会です。
「ハッピーニューアーツ」、板垣理人です。今日は、21世紀美術館にお邪魔しています。中学生の頃からデジタルアートを制作している板垣理人さん。デジタルアートの企画展、どんな作品があるのか楽しみです。
金沢21世紀美術館で3月まで開催されている「デジタルトランスフォーメーションプラネット」。
AI、メタバース、ビッグデータを取り入れた23組の作品が並びます。
「スプツニコさんの『クローバー』ですね。AIは本当に人を幸せにするのかを問うため、四つ葉のクローバーをAIが超高速で見つける作品です。」
「これを見ると、子供の頃に地面に膝をついて四つ葉を探していた頃を思い出しました。たまにAIが見逃した四つ葉を見つけると、ちょっと勝ち誇った気分になりますね。」
続いての作品は、草野えみさんの映像作品。生成AIで作られた架空のストリートスナップです。
「たけのこ族や80年代の若者のファッションを英語の単語で入力し、生成AIに作らせた静止画を学習させて動画にしたものです。」
「こんにちは、よろしくお願いします。この作品の作者、草野えみと申します。」
「初めまして、すごくファッションが好きなんですね。作品からそれがよく伝わってきます。」
1990年生まれの草野さんは、生まれる前の80年代アイドルの「ださかっこよさ」に惹かれ、架空の80年代を作品にしてきました。
「生成AIは面白い技術ですが、プログラム通りに出ないことも多いんですよね。たけのこ族を入力しても、AIはそれが何かわからないので、少しずつ指示を出して作り上げています。」
「AIの映像制作の方法、すごく気になっていましたが、やってみたらハマりそうですね。」
ここからは、草野さんと一緒に会場を巡ります。
「すごーい! 世界で活躍するウィッグアーティスト河野富裕さんの手によるウィッグは、未確認生物を思わせます。」
「あ、これすごい! かわいい! 動くぞ、あ、ついちゃう。踏んじゃった!」
ウィッグは、人間の変身願望を叶えるというコンセプト。体験型のARフィルターを開発しました。
「かわいい。」
こちらは、デジタルアートの先駆者、トルコ生まれのレフィーク・アナドールの作品です。
「綺麗というか、質感的にもすごいツルッとしてそうな感じですけど、こういう流動的な液体のような映像って、ずっと見てられるし、すごく癒されますね。心地いいですよね。」
この作品は、人間の脳波をもとに作られました。ポジティブやネガティブな状態の脳波のデータを採取し、作者アナドールが独自に開発したアルゴリズムによって映像に変換しました。
制作のきっかけは、アナドールの叔父がアルツハイマー病になったことです。
「叔父に何を見せると心が安らぐのか、そんな思いから、感情とAIをつなぐこの作品を生み出しました。」
「やっぱり人間って感情があって、命が短いからこそ、最終的に作品を選ぶのは作家自身だったり鑑賞者自身だったり、どう心を震わせるかが全てだと思うんです。どんなに機械が何でも作れるようになっても、そこに意味をもたらすのは人間かなと思います。」
「今は本当に、誰でも簡単に作れるツールがある時代で、いかにそこに自分のフィロソフィーやアイデンティティを入れて、血を通わせられるかが大事だと感じます。デジタルでイラストを描く身としても、そこは大切にしたいですね。」
「こういうデジタルの作品を見られて、玉城さんはどのように感じましたか?」
「もしかしたら、デジタルアートは今の私たちの世代に一番近い存在なんじゃないかなと思いました。例えばARのフィルターを使って自撮りをしたり、それを加工して形を変えたりすることが、日常の一部になっていますよね。そうやって日常的に行っていることが、角度を変えるとアートになり得るんだなと感じました。」
「今、SNSで生成AIによって描かれたアニメや人の写真が流れてくるのを見ると、ほとんど人が撮った写真と区別がつかないくらい精密にAIが作っているんです。これがどんどん進化していくと、区別がつかなくなってしまうかもしれません。」
「その時に、AIの良さと人の温もりをどう見極めるかが問われると感じます。作る側も見る側も、しっかりと考える必要があると思います。」
「こういった作品を見て、生成AIで動画を作ってみたいなと思うことはありますか?」
「すごく興味があります。自分の生成AIを使って、自分の描きたい世界を作ってみようかなと思うんですけど、自分で生み出したいという欲もあるので、まだやらないようにしています。ハマってしまいそうなので。」
「絶対楽しい世界だからこそ、今はまだ控えています。」
玉城さんがある展覧会を訪ねてくださっていますが、こんな展覧会でしたでしょうか。
「私は、ちょっと不思議な写真の世界を覗いてきました。」
玉城ティナさんが訪れたのは、日本を代表する写真家・本間隆さんの展覧会「即興」です。
「早速、この穴、覗いていいのかな?何の穴なんでしょうね?覗いて、じっくり奥の写真ですかね。展覧会に入るスイッチが入るような感覚があります。」
「これは逆さまになってますよね?写真が電極…やっぱり見慣れたものや知っているはずのものが、違うもののように見えるっていうのは、やっぱり写真のいいところだなって思いますね。こうやって見ると、本当に宇宙船みたいですね、逆さまで。」
「本間さんは何か、逆さまにすることに強いこだわりがあるのかもしれません。OK、これは何ですか?私が先ほど覗いていたであろう箱の中から聞こえてきます。」
「さあ、ん、花の向こうで演奏しているのは…」
「こんにちは、どうも、本間です。」
「すごい、びっくりしました。」
1990年代、イギリスでファッション誌の撮影を始めた本間さんは、1998年に東京郊外で発表した作品で、写真家の登竜門・木村伊兵衛写真賞を受賞。感情を排した一定の距離感が注目されました。
「2006年の『東京マイドーター』。映っているのは友人の子供です。これまで映っているものは真実なのか、写真とは何かを問い続けてきました。」
改めまして、玉城ティナです。本間さん、「ピアノはそういう演出なんですか?」
「それもだから即興ってタイトルで、いつやりますとも言わないで、何か突然お客さんがいる時に急に聞こえたり、聞こえなかったりするんです。」
「今の曲はなんていう曲ですか?」
「いや、もう本当に卒業です。」
「どうして逆さまの写真というのがすごくモチーフとしてあったんですか?」
「全体がカメラ・オブスキュラっていうテクニックを使ってやっています。カメラ・オブスキュラとは、暗い部屋の一点に穴を開けると、外の風景が逆さまになって向かいの壁に映し出されるという現象です。この現象は写真が発明されるよりもっと全然前、紀元前から知られていて、最初に画家がそれをなぞったんです。」
今回、本間さんはこの手法を使って作品を撮影しました。窓を塞ぎ、そこに穴を開け、部屋を暗くすると、壁に外の風景が逆さまになって投影されます。投影された像の中で、写真にしたい部分にフィルムを貼り付け、録音させることで作品が完成します。
「だから未だにどのカメラも、例えば携帯の中も、あんなに薄いけど、その中でこれと同じ現象が起きてるんです。」
「その昔の技法を使って現代風にイメージ作ったらどうなるのか、だいたい一枚撮るのに平均1時間くらいかかります。」
「エルメスの赤い夜景の写真、あれは夜だからもう8時間くらい待機して撮ったんです。」
「えー、じゃあシャッターはどうしているんですか?」
「シャッターは黒いテープ。一回穴を塞いで、せーので外して、またペタンとくっつける。だから普通のカメラと一緒ですよ。」
「なるほど、その押して戻すまでの長さが1時間。じゃあこの穴はそのシャッターの代わりになるんですね。」
「そうです。本間さんが開けていた穴の置き場は初期バージョンです。」
「へぇ、面白い。この富士山の写真も撮影するのに1時間かかりました。」
「だからこれ、ちょっとぼやけてますよね?」
「はい、だからすごい時間がかかっているから、消えちゃっている部分もあります。でもそれが良いですね。」
「今気が付きました、本当ですか?なんか幽霊っぽい、かつて人という生き物がいたような感じがします。」
写真とは何かを問い続けてきた本間さん。今回の展覧会では、もはやカメラを使っていません。
「今、簡単に写真が撮れすぎるじゃないですか。バンバン撮ってネットにもいっぱいありますし、その中で一枚一枚じっくり時間をかけて撮るというやり方は、かえって良いんじゃないかなと思って。だから僕、普通のファッション撮影とかも、ちょっとしか撮らないよね。すぐ終わりにしちゃうんです。」
「モデルからしたらありがたいですから、寒い時とかね。」
「写真って、どうしてもモデルさんを撮る時、ちょっと攻撃的じゃないですか。映像や写真には暴力性があるなと思って。この手法は逆なんですよね。部屋でただじーっと待っているだけだから、相手が来る、映像が来る。それがすごく受動的なやり方なんです。」
「カメラを使わない撮影…ちょっとまだ理解が追いついていないんですが、何が起こってるのかすごいですね。」
「小さい穴を開けて投影させて撮るってことですよね、まるで消えてるような感じがします。」
「写真家さんが写真を疑い続けているっていうのが、私はすごくいいなと思います。撮られる側からすると、少しでも考えてくれている写真家さんがいるっていうのは救いです。」
「今、簡単に写真が撮れる時代に、あえて時間をかけてやるという本間さんの姿勢には、疑い続ける心を感じました。」
「今は映像や写真がどんどん速くなって、時間をかけずに情報を得ていく時代だからこそ、原点に戻るアナログな手法には魅力を感じますね。じっくり時間をかけるのは良いことだと思います。」
ハッピーニューアーツ、坂本美優です。
青森県にやってきました。とっても空気が綺麗です。
今日は、青森県出身で世界的に活躍するある方の作品に会いに行ってきます。
ミュージシャンの坂本美宇さんは、音楽家の両親を持ち、アメリカで通った高校では美術を専攻していました。
音楽とアートに身近に触れてきた坂本さんが、熱烈な思いを寄せる展覧会とは?
「おやすみだ。嬉しい。」
青森県立美術館で開かれている、弘前市出身の美術家・奈良義友の展覧会です。
現在から学生時代にまでさかのぼる作品で、創作の歩みと奈良義友のルーツをたどる展示。
ふるさと青森だけで見ることができる大規模な個展です。
まず足を止めたのは、この子かな?
ドイツを拠点に制作していた1996年の作品。奈良さんといえば、やっぱり一番最初に浮かぶのがこの二人で、最初見たとき衝撃でした。
この目つきの悪さだけど、憎めなくて、誰にも媚びることなく、可愛くないからこそ可愛いという。
音楽のする方へ行ってみてもいいですか?
展覧会場にある木造の建物は、かつて弘前にあったロック喫茶を再現したものです。
高校生だった奈良が入り浸った原点とも言える場所で、写真や関係者の記憶をもとに1970年代の空間がよみがえりました。
奈良はここで年上の友人たちとロックやフォークミュージックに没頭しました。
展覧会のため、本人も再現に参加し、原点を再認識したと言います。
同じ展示室には、奈良さんが集めたレコードのジャケットも展示されています。
青森を離れ、東京の美術大学に進んだ奈良は、大好きな音楽をアトリエに流しながら制作するスタイルを続けてきました。
坂本さんが一番印象に残ったのは、平和をテーマにした展示室です。
「平和を求める時っていうのは、すごく怒りが内側にあると思う。戦争や原発についてなど、いろいろな社会問題を自分ごととして考え、誰かの役に立ちたいとか、世界が良くなる方向に一滴の雫となるような行動をしたいという気持ちがあります。だから、とても勇気をもらいますし、何と言われようと信じることを言わなきゃいけないんだと思います。」
最後に、新作が展示された部屋へ。
「子供が泣いていると、すごく切実に感じる。今の時代の子供たちのことも考えるし、でも目の中にはすごく綺麗な光が溢れていて。」
「音楽やロックに影響を受けて奈良さんは描き始めたんだと思います。本当に彼の根底にあるルーツでしょうね。当時のロックは今よりも戦争や社会問題に対する反対のメッセージが強く、奈良さんの絵と同じく、できることをしている姿勢が共通していると思います。だから、音楽を聴きながら、自分はこれでいいんだ、これが自分のやりたいことなんだって勇気をもらったんだろうし、奈良さんの力を最大限に引き出す魔法のようなものが音楽だったのかなと思います。」
「奈良さんの作品は二頭身の子供のモチーフが多いんですが、もし七頭身、八頭身だったら、問いかけることが違ったのかもしれません。私たちが子供や小さき存在に対して感じること、求めてしまうこと、そういった二重の意味を感じさせます。」
「そういう立場の人に戦争反対というメッセージを背負わせているのだと感じて、なんだか責任を感じてしまいました。」
「田中さんもおっしゃっていましたが、本当に苦しくなります。何ができるかと言われると、何もできない気もしますが、でもこうやって収録している最中にも世界中で戦争が起こっていることを考えると、若い世代として発信できることは発信しなければならないなと感じます。絵やアート、音楽の力で戦いたいと思いました。」
「演技の力を信じて、頑張ります。」
「今日のお話を伺って、辰年ということで、磯村さんが最初に使った『狭間』という言葉が印象的でした。狭間にある存在、何かと何かをつなぐ存在としての龍も、アートや信じること、疑うことが揺れ動く中で、私たちが一つの場所に安住せず、いろんな新しい風景を見せてくれるのではないかと感じました。」
「本当に二人のお話を聞けて良かったです。」