イッピン 「絵画をまとう優美な楽しみ~京都 京友禅~」

イッピン

京都の伝統的な染め物「友禅染」。動植物や器物などが絵画のように美しく描かれた着物は根強い人気を誇っている。さらに最近人気なのが、伝統的な友禅染で作る“アロハシャツ”。遊び心と上品さを兼ね備えた柄が、和にも洋にも不思議とマッチする。職人が染料を一筆一筆塗っていく「手描き友禅」、型を使った「型友禅」、それぞれの工房を女優の藤澤恵麻さんが訪問。長い伝統に培われ、今も進化する京都の職人の手技に迫る。

【リポーター】藤澤恵麻,【語り】平野義和

放送:2019年4月23日

イッピン 「絵画をまとう優美な楽しみ~京都 京友禅~」

今日のイッピンリサーチャーは藤澤恵麻さん。身にまとうのは友禅染の着物です。光沢のある切れ地に描かれるのは可憐な花々で彩られた宴の様子。晴れた日の華やかな雰囲気が表現されています。今日のイッピンは京都の友禅染。

着物全体に広がる一枚の絵画のような世界。鮮やかな色合いはすべて職人の手によって丁寧に染められたものです。はんなりとした美しさと人々のハレの時を彩ってきます。さらにモダンなイッピンも。

着物の柄をアレンジしたファッションアイテムのお店。中でも人気はこれからの季節にピッタリのアロハシャツ。ポップだけど全て着物の古典柄なんです。シルク生地で上品に着こなせるのも人気のポイント。海外からのお客も伝統の柄に夢中。和でも洋でも楽しめる友禅染。身につける人の気持ちを華やかにするその魅力に迫ります。

友禅染の一大産地・京都。まずは戦国時代から続く老舗の呉服問屋へ。「こんにちは初めまして藤沢と申します。」

いち年に手掛け製作責任者・森輝昭さん。一年に400着以上の着物を手掛けています。森さんが手がけた着物。
全て手描き友禅という技法で、職人の手作業によって染められたものです。

江戸時代夏物で使われてました「茶屋辻模様」というデザインを参考にデザインしています。

涼やかな水辺を描いた茶屋辻と呼ばれる模様。季節を問わず着られるよう春の桜から秋の菊までが描かれています。小さな王様を生き生きとさせているのはぼかしの技法。柄一つ一つに濃淡をつけ表情を変えているんです。

「着物をどうやって染めてるのかすごく気になりますね。」

作っているのは、明治32年創業の手描き友禅の工房です。現在、10人の職人が工程を分担して作業しています。

まずは下絵から始まります。呉服問屋が指示した図案を反物に移していきます。次は糸目糊置きです。下書きを終えた生地に糊を置いていく作業を行います。

この工程を担当するのは、磯川藍さん。京友禅の世界に入って4年の若手のホープです。

糊を置く作業は、生地が染まるのを防ぐために棒線を作る重要な作業です。この糊が境界線となり、柄を染める際に隣り合う色が混ざらないようにする、手描き友禅の重要な工程です。

糊を置いた部分は、仕上がった時に白く残ります。

「この白が、くっきりとした印象を与えるんです。」

使うのは「先金」という道具です。細いものであれば、0.1mmの線も絞り出せるものもあります。親指で筒を押し、糊を少しずつ出していきます。この時、ただ糊を引いているだけではなく、微妙に強弱を付けて太さを変えています。

「先端に向かって徐々に細くしているのがわかりますか?これで形が決まってしまうので、できるだけ綺麗でいい形になるように意識して描いています。」

美しい形を作るためには、下絵通りに描かないこともあります。自らの感覚で、形とバランスを微調整するのです。

こうして生き生きとしたもみじの葉が現れます。

そして、いよいよ色をつけていく工程です。この道45年の友禅職人、大苑英雄さん。糊置きされた柄に染料を塗っていきます。同系色を重ねることで、あっという間に表情の違うもみじが描かれていきます。

一枚一枚の葉の色を変えることで生まれる奥行き。それぞれの葉の中にも濃淡をつけ、立体感を表現します。

「いろんな色を迷いなく塗られているように見えますが、色はどのように決めていらっしゃるんですか?」

「さすがですね。」

担当の方から「配色弁当」と呼ばれる指示を渡されるんです。この中には様々な意味合いがあり、例えば花にはこの色を使ってくださいとか、葉っぱはこういう風に仕上げてくださいという風に指定されています。

配色の元となるのは、問屋が指定した色見本です。しかし、どこにどんな色を入れるかは、時には職人に任されることもあるそうです。


デザインの意図を汲み取り、最も美しい色と配置を考えるのが職人の腕の見せ所。果たしてそのコツは何でしょうか。

「まずは幹の中心となる赤い花をもとに配色を考えます。だいたい端が赤であれば、葉っぱはグリーンにするんですね。でも、もしここにグリーンの葉を置いたら、お互いが喧嘩しちゃうんです。色が強すぎてぶつかり合ってしまうんですね。そこで、黄色を加えることで柔らかい雰囲気に和らぎましたよね。」

濃い赤と緑だけでは、お互いの印象がぶつかり合うと判断し、黄色を加えることで柔らかさを生み出しています。今、葉の色には渋めの緑と淡い水色を置きました。

「最初の段階よりも柔らかくなりましたね。葉と花の色を一色ずつ追加することで、遠近感が出てきます。」

染める前の色の組み立てが作品の完成度を大きく左右します。京友禅独特の柔らかく上品な色使いは、こうして生まれているのです。

時には同じ色を何度も塗り重ねることで、微妙な濃淡を表現することも。価値を施すことでご覧の通り花に命が宿りました。一人一人の手仕事の積み重ねが海だす究極の美。はんなりとし
た逸品です。

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京都生まれの友禅染。そのスタイルが確立したのは、17世紀後半です。立役者となったのは、当時人気の絵師、宮崎友禅斎。彼が着物に描いた絵が評判となり、絵画のような友禅染が生まれたといわれています。これまでにないデザインは大流行し、その人気を支えたのは、多くの職人たちでした。

女物の着物ができるまでにはおよそ一つの工程があります。それぞれの工程を専門の職人が担当し、分業制が取られています。森さんは構想を練り、指示を出す、いわば着物づくりの総監督です。時には同時に40着の着物作りを進行することもあるという森さん。その仕事を支える独特のシステムが京都には存在しています。

森さんの元を訪ねてくるのは、問屋と職人の間を調整する「悉皆屋(しっかいや)」です。京友禅では、多くの職人が各工程に携わるため、悉皆屋は責任者に代わって職人と直接やり取りをする現場監督です。毎日職人の元を訪れ、各工程の進捗を確認し、着物が染め上がるまでにおよそ20回、時には責任者とも意見を交わしながら仕上げていきます。

「ブルーは抑えめの色の方が…」と、色合いの調整にも気を配りながら、着物の仕上がりの良し悪しは悉皆屋の手腕次第で決まります。彼らは常に、求められている以上の仕上がりを意識しているのです。

「その仕上がりを見せるまでに、やっぱり自分で直すべきところはしっかり直して、森さんに気に入っていただけるようにしています。何度も確認してから持っていくので、気に入っていただけると本当に嬉しいですね。スムーズに商品を仕上げられるかどうかは、職人の腕次第ですし、私たちの存在が欠かせないのだと思います。」

高い品質を保つ京友禅のシステムは、自分の仕事に誇りを持つ職人たちの熱意によって支えられています。

続いては、友禅染のファッションアイテムが揃うお店です。

「いろんな模様がありますね。可愛い!」

こちらは、気軽に楽しめる友禅染がコンセプトの商品で、すべて着物の古典柄を使ったものです。

「これも素敵ですね。大胆な柄で、少し斬新な感じがします。」

カラフルな色で描かれた柄と、シルクならではの上品な質感が楽しめる一着です。

「早速試着してみますね。なんだか、とても上質な感じがします。」止めているんでしょうか。行ってきたのは大正はち年創業の染色会社「亀田富染工場」。

「今日はどうもこんにちは。」

「初めまして、藤田と申します。」

今日は亀田和明さん、友禅アロハの発案者にお話を伺います。

「ここに工場があるので、何か染めたものを作りたいと思ったんです。既製品に頼るのではなく、伝統的な友禅染の技術を生かして、何か新しいものを生み出したいと考えました。」

こちらの会社では、かつて100人以上の職人が着物を作っていたそうです。しかし、平成に入る頃には着物の仕事が減り、洋服を染める下請けに依存する状態になってしまったそうです。

そんな時に出会ったのが、この美しいブルー。もとは女性の着物用の反物だったそうで、これを見た時に「何か新しいものを作ろう」とインスピレーションが湧いたんです。

生地にエネルギーを感じた亀田さんは、「延命や願いが込められた伝統を、自分たちの手で蘇らせよう」と決意しました。

思いついたのがアロハシャツ。複雑な裁断が少なく、魅力を最大限に活かせると考えたのです。多くの人が気軽に普段使いできるように色を黒に変えた友禅アロハは完成しました。

染職人の水口義久さんは、40年のベテランです。現在、この工場では「型友禅」という技法を使って生地を染めています。染めたい部分がメッシュ状になっているシルクスクリーンを用い、生地への定着を良くするために糊が入った染料を使用します。

アロハシャツには10色が使われており、それぞれの色を重ねていくために10種類の型を使用します。少しずつ柄が浮かび上がってきますが、毎回正確に型を重ねて、色を均等に乗せていくことで美しい柄が生まれます。

作業に使用するのは「築地」と呼ばれるヘラです。先端についているゴムに染料を付け、型の上を滑らせて塗り込んでいきます。柄がずれないように、台の印に合わせて型を固定し、片手でヘラを持ち、上から下へ一気に滑らせる作業です。

アロハの生地の幅は1メートル以上あり、身体全体を使って一定のリズムで染めていきます。

「この部分が赤くなったわけですか?」

「はい、そうです。ちょっとそこの部分に色が乗ったのが早いですね。」

あっという間に、鮮やかなルージュの赤い色がつきました。目にも止まらぬ速さで染められます。

染め上がりを見てみると結構重労働です。「均等にやるのが難しいですね。私がやったところは下の方は誰かが止まってない割にここにはもうトロトロ。」

水口さんが染めた生地は、どこをとってもムラがなく均一です。なぜこんなに差が出たのでしょうか。

注目すべきは染料を塗るヘラです。水口さんのヘラは、肩の角度が約75度で、上から下までその角度が変わりません。一方、藤田さんは大きなヘラを両手で支えながら頑張っていますが、角度を変えてしまいました。そのため、染料を塗り込む力加減が変わり、ムラができてしまったのです。

「実に、ヘラを動かす際の角度と力加減が重要です。水口さんは、力を入れても下まで同じ力で塗り続けることができており、ムラができることはほとんどありません。」

水口さんは、ヘラを親指で支え、角度を固定しつつ押し付ける力も一定に保っていました。

親指図解で生まれた染めムラのない記事。
シンプルな動きのなかに熟練の技が隠されていたのですね。黒が入ると染めは完了。
染めた生地を蒸すことで色が定着し発色が一段と鮮やかになります
仕上げの水元と呼ばれる工程で余分なのりや染料を洗い落とすとより一層力強く色お花アロハシャツの生地が完成です
色を重ねるごとに現れる柄のエネルギー身にまとい外に出かけたくなる逸品です

華やかな彩りが重なり合う京都の友禅染。長い歴史とプライドを胸に、技と感性を磨く職人たちの追及はまだまだ続きます

商品情報

株式会社 亀田富染工場
弊社は京友禅の染屋として大正8年に創業し、着物を染めてまいりましたが、着物の需要が激減、機械化が進み、業務縮小を余儀なくされました。それでも「京友禅」という日本の美しい文化を残すために試行錯誤していたところ、アロハシャツが、ハワイの日系移民が着物をほどいて開襟シャツに仕立てたことが起源であることを知ります。そして平成13年、工場の蔵に眠る着物の図案から1枚のアロハシャツを仕立てたところ、評判となって商品化するにいたり、京友禅のアロハシャツとカットソーのブランド「Pagong(パゴン)」が誕生しました。私たちは、日本に伝わる美しい文化を伝えるために、海亀が語源の「Pagong」と泳ぎ出したばかりです。

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