日曜美術館「器のむこうに人がいる~ 茶の湯 が生んだ至高の美~」

信長、秀吉、家康…天下人をはじめ、多くの人たちを魅了してやまない茶わん。茶を飲む器が、なぜ人々を夢中にさせる? 茶の湯 その秘密を名品と時代のつながりからひもときます!

茶の湯の名品をより楽しむコツは、時代によって果たした役割が違うことを意識すること。足利将軍時代、茶わんの名品といえば中国からもたらされた唐物(からもの)。飾って目で味わいました。千利休が活躍した戦国時代、茶わんは一服の茶を飲んで心を研ぎ澄まし、自分を見つめるもの。古田織部が活躍した江戸時代の初めになると、笑いや面白さも求められました。それぞれの時代で大事にされた魅力を探りながら、名品を堪能します!

【ゲスト】MIHO MUSEUM館長…熊倉功夫,美術家…森万里子,【出演】春風亭昇太,文教大学教授…中村修也,根津美術館館長…根津公一,IT企業経営者…近藤俊太郎,【司会】井浦新,高橋美鈴

放送:2016年12月4日

日曜美術館「器のむこうに人がいる~茶の湯が生んだ至高の美~」

京都慈照寺(銀閣寺)の東側には8代将軍足利義政が使っていた四畳半の座敷があります。ここが茶室の原点と言われています。

室内を飾っていたのは 華やかな紅白の芙蓉の花の掛け軸。中国の宮廷画家が描いたものです。

窓辺には意匠に富んだ文房具を並べ、違い棚には茶道具を並べました。

義政がこよなく愛した器があります。「雨過天晴」雨上がりの空の青と形容された最高級の青磁の茶碗です。この茶碗下に鎹で止めたあとがあります。この茶碗にはこんなエピソードがあります。

義政はこの茶碗が割れた時中国におなじものを求めましたが、「これ以上のものはもうできない」と鎹を打って送り返されました。

ならばと、鎹をイナゴに見立てて「馬蝗絆」と名付けて愛でたと言われています。当時唐物の茶碗は何者にも代えがたい貴重な宝でした。

義政が大切にしていた唐物美術。その鑑賞法を記したマニュアルが残されています。

道具の飾り方や茶碗の美しさ、珍しさを格付けした秘伝の書です。その中で茶碗の最高級品に挙げられているのが曜変。

黒い釉薬の上に予期せぬ斑紋が現れた曜変天目。

怪しいほどの輝きは一体どのように生まれたのか、いまもって答えの出ない奇跡の焼き物です。曜変天目は今日本にだけ残されています。それは、日本人がそこに美を見出したのに対し、中国では必ずしもそうでなかったことを物語っています。

油滴天目は豊臣秀吉の跡、関白を継いだ秀次が大切にしたと伝えられています。この時代、こうした唐物の名品はめったに使われなかったといいます。

一休禅師の教えを受けたという奈良の村田珠光は、位の高いものたちが楽しむ茶ではなく、庶民も楽しめる茶の湯を提唱しました。

珠光が使ったと言われる珠光天目。唐物です。珠光は自ら茶を点て親しい人たちに振る舞いました。薄っすらと黄色みを帯びた釉薬が雲間からのぞく月光のように輝きます。

見るだけでは味わえない。使ってこその器の時代になったのです。

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