日曜美術館 「変容するイラストレーション 宇野亞喜良」

イラストレーター・宇野亞喜良。1950年代から活動を始め、和田誠や横尾忠則らと共に「イラストレーション」を世に浸透させた。寺山修司の依頼で描いた叙情的な少女像や、アングラ演劇の官能的なポスターなど、唯一無二のスタイルで常に第一線で活躍を続け、この春90歳を迎えた。時代を超えても色あせない宇野のイラストレーション。その魅力の秘密はどこにあるのか?創作の現場や、宇野を知る人々の証言からひも解いていく。

初回放送日:2024年5月26日

日曜美術館

宇野亞喜良

宇野亞喜良、九十歳。日本のイラストレーターの先駆者で、今なお現役です。大企業の案件から地元の祭りのポスターまで、依頼は絶えません。

「夏祭りなんで、夏の感じと、女の子をどうするかっていうことで。」

宇野の代名詞と言えるのが、笑わない少女のイラストレーション。まだ日本にイラストレーターという職業がなかった時代から半世紀以上、宇野の描く物憂げな少女の姿は、常に時代の変化を捉えながら、見るものの心を掴んでいます。その作品は多くのクリエイターを刺激してきました。

「とにかくうまい。イラストレーションが圧倒的にうまかったです。六十年には宇野さんさ、今も変わらないような絵描いちゃってるんだよね、すごいよね。」横尾忠則さん

「変わってないって言われると、嬉しいような、嬉しくないような。」宇野亞喜良さん

イラストレーション黎明期から今もなお第一線で走り続ける宇野亞喜良。その原動力に迫ります。

「変容するイラストレーション 宇野亞喜良」

マンションの一室にある宇野のアトリエ。近年、彼は俳句をテーマにした作品作りに熱中しています。この日選んだのは寺山修司の俳句。

著:寺山 修司
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「『鰐狩りに文法違反のたびに出き』っていう俳句があって、よくわからないんだけど、ワニを描いてみようかなって思って選んだんです。」

選んだ俳句からイメージを膨らませていきます。

「もうちょっと映ってましたね、ここはこんな感じかな。はい、多分こんな感じです。どうぞ。」

宇野が惹かれたのは、俳句の中にある「鰐狩り」という言葉。

「この少女は今、ワニの中にいるんです。」

「そうですね、俳句だから鰐が出てくるんですけど、ワニ狩りってどういう意味かはあまり理解していないんです。バランスがちょっと危ない方が面白いかもしれません。」

完成までわずか二十分、一気に描き上げました。

「女の子を描こうと思って、彼女がワニを追いかけているのか、ワニに乗っているのか、どうしようかって。ワニの口は大きいから、そこに挟まって食べられそうだけど、食べられてはいない。ある種のジョークみたいに、手で『これ以上口を閉めないでくれ』って言っているような、ちょっとこちらを眺めている感じですね。これから旅に出るよ、みたいな感じもある。」
「食われているように見えるけど、実はそうでもない。」
「リボンをしてあげたりとか、多少の愛情関係があるんです。鎖があった方が、ワニを飼っているという感じがより具体的で、面白いかな。イラストレーションというのは、自分の思想ではなく、人の考えをどう視覚化するかっていうこと。これが僕がイラストレーションを好きな理由の一つです。俳句をリアリズムじゃなく、僕流に勝手に解釈して描くっていう、テーマをどう扱うかっていうゲームのような感じで、僕は俳句を絵にしています。」

戦後、高度経済成長の始まりとともに、日本の広告業界は黄金期を迎えます。高校で商業美術を学び、18歳でデザイナーとして活動を始めた宇野。1960年。26歳で広告制作会社に就職します。

入社してすぐ手がけた企業広告のポスターで、若手デザイナーの登竜門である日本宣伝美術会展の最高賞を受賞。一枚の布が鳥の姿へ変容する様子を描き、「重さを忘れた繊維」というキャッチコピーを鮮やかに視覚化しました。

その後、新たな活躍の場を求め、31歳で独立。その頃に出会ったのが、カリスマとして知られる寺山修司でした。寺山は、時代を挑発するようなスキャンダラスな舞台で、アングラ演劇ブームを巻き起こします。

宇野は寺山との出会いを機に、演劇のポスターを手がけます。

愛奴

耽美で独特な世界観が評判となり、ポスターは剥がされて持ち去られるほどの人気を博し、一躍人気イラストレーターとなりました。

現在開催中の宇野の展覧会「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」(東京オペラシティ アートギャラリー)の中でも、特に注目を集めているのが、1950年代から現在に至るまでの180点ものポスターです。

「よろしくお願いします。お久しぶりです。」「イラストレーター宇野さんにとって、このポスターっていうのはどういうものですか。」

「僕はポスターが好きなんですよね。僕がこういうものを始めた最初に、日本宣伝美術会っていうグラフィックデザイナーの集団があって、そこで認めてもらうことが、まず業界の入り口だったんですね。ポスターというのは、絵画的な要素とグラフィックデザインの要素がうまく融合していないと、デザイン的な計算がまずいと面白いポスターにならない。それで、絵を描きたい気持ちとデザインをしたい感覚が一緒になって、今に至るわけですけど、その要素が一番詰まっているのがポスターだと思うんですよ。」

新宿版千一夜物語

新宿版千一夜物語。宇野が初めて手掛けた寺山の演劇ポスターです。

「全体はミステリアスですし、でもちょっとコミカルな印象も受けますね。」

「そうですね、台本を僕、まだ読んでないっていうか、寺山さん自身もできてなくて、僕が勝手にこういうシーケンスを書いたんですけどね。寺山さんが面白がってくれて、こういうおっぱいからミルクを絞ってカフェオレっていうか、裸の女性がおっぱいから出すっていう、こういうシークエンスが、寺山さんが このポスターを見て、マジシャンに相談して、脇の下にミルクを入れて、こうやって実はここを脇を締めておっぱいが出る、そういう仕掛けをね、やってくれたんですよ。」

「寺山さんは面白い仕事をいっぱいやってて、例えば横尾忠則とか、僕以外にいっぱいアーチストを知ってるわけですから、僕に頼まれた以上は、僕の自由があるっていうことで、ある程度勝手なことができると。」

「本当に自由な発想を生かされたんですね。」

「そうですね、全く勝手に。例えば当時はアンダーヘアーが描けない時代でした。で、こういうリボンを飛ばして、これが蝶々のようにこの男が蝶々を追っかけている。」

「宇野さんの作品はこういった比喩といいますか、メタファーが多いなぁと感じるんですけれども、意識的にされているんでしょうか。」

「意識的ですね。僕たちは、印刷されたものが街に貼られることを考えるので、ルールとして描けないものがあったりします。それと、なぜここにリボンがあるのか、ちょっとした謎を投げかけて周囲を引きつけることもあります。」「そういった規制をどううまく違う方向に持っていくかが、イラストレーターとしてとても大事でよよね。」「そういう部分が、また面白いところでもありますね。」

当時、宇野と人気を二分するイラストレーターがいました。

「こんにちは、うわぁすごいなぁなんかいろんなものいっぱいあるね。」
横尾忠則です。「なんだかものがいっぱいありますねものだらけだねうわぁここで宇野さん仕事してるわけ。いっぱいものが仕事できないじゃんできないじゃない。宇野さん、この部屋一室だけ。」「そうだよ。」「これは何コレクションいろんな。宇野さん作ったものもあるわけ。」「うんと、例えばこの鏡ね、あるいはフレームを僕が。その辺で買った枠に外側に彫刻を僕がくっつけて・」「よくそんな趣味的なことをよくやりますね。」

横尾と宇野は二つ違い、広告制作会社の同僚でした。妙に気の合った二人は職場以外でも一緒に時間を過ごしたといいます。

「久しぶりに会うと、相変わらずかっこいいなって思うんだけど、よく会って話をするうちに、横尾ちゃんがフランス語を使ったりして、横尾ちゃんの影響もあると思うね。外来語を使うの。古臭いなと思う人とはあんまり付き合いたくないって思うけど。何を話したかは覚えてないけど。」「大した話はしてなかったと思うよ。たとえば、もし千万円あったら、それを一日でどう使おうかなんて話を、二人で朝まで喫茶店で喋ってさ、メモ帳に数字を書きながら妄想するんだよ。まあ、誇大妄想って感じだよね。」

二人で面白いことをしよう出版社に売り込み、絵本「海の小娘」を発表します。

宇野亞喜良 横尾忠則 梶祐輔『海の小娘』復刻

ある国の港町で少年が不思議な少女に出会う物語。二色のイラストレーションが重ねて印刷されています。赤が横尾、青が宇野です。赤いフィルムを重ねると、横尾の絵が消え、宇野の絵が浮かび上がります。一方、青いフィルムをかぶせると、横尾の絵が現れます。二人の絵によって異なるストーリーが進行する仕掛けです。発表から62年、今年復刻されることになりました。

著:梶祐輔, イラスト:宇野亞喜良, イラスト:横尾忠則
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「これ復刻っていうのはかなりリアルに出てますね。」「このね、難解な二色分解して、よくやったなぁと。僕の方は鉛筆で書いていると。そうでもないかこれはペンだったり、これは鉛筆の拡大だったり。」「僕はねこの時に初めてねまあうるさんと仕事するっていうことだよねずいぶん緊張したよね。」「そうでしょ。とにかくこの少年のイメージを二人の 間で少し詰めようっていうんで、映画を見に行って「白い馬」かな

フランス映画の見に行って、少年のイメージを二人が同じようなイメージを共有」「ビスコンティかなんか。」「いやフランス映画だった。そう、これ写植を貼った記憶はある。」「僕はないね。よく覚えてますね。」「極力いいよね。」

東京イラストレーターズクラブ 第1回展

1964年、二人は同世代の友人、和田誠と東京イラストレーターズクラブを設立します。

まだイラストレーションという言葉すら一般的でなかった時代に、自分たちの存在をアピールしようとしたのです。集まったのは二十五人の同志たちです。柳原良平や長新太など、日本のイラストレーションを牽引する早々たる顔ぶれが団結しました。人気イラストレーターとして確固たる地位を築いた宇野と横尾。しかし、1980年、横尾はいきなり画家に転身。異なる道を歩んできました。

「気質の違いが僕とね、横尾とは違うんだけど、仕事の依頼がないと考えるエネルギーが出てこない。」「それはねデザイナーの時は僕はそうですよ。依頼のないことは絶対やらなかった。アートに転向してからは依頼のあるものに興味なくなっちゃったんです。それよりも自分の描きたいものを描くっていう。」

「僕の場合は多分ビジネスとして宇野亞喜良に頼むと、この辺のものが出来上がるだろうっていう予想を立ててくるから、比較的自由にやれるっていうか、多少裏切りたいっていう感じもあったりするから、いろんな楽しみ方が僕は楽しんで描いてるけど、逆にスポンサードされないとなんだか不安って。頼まれている自分の存在が気持ちがいいっていうかね。」

「60年には宇野さんさ、今の絵と変わらないような絵描いちゃってるんだよね。すごいよね。」「変わってないって言われと嬉しいような、嬉しくない。」

「それとね、あの者さんを嫌がるかもわかんないけど、最初のスタートと同時にいきなりゴールに立っちゃってるわけですよ。これがすごいと思いますよ。ある意味でね、時代を先行してるっていうのが、これから無意識に影響を受けた人、いっぱいいると思うよ。だからこの一枚の絵を見て、誰かがこの絵の影響を受ける、受けた人をまた別の人が見て、それがさらにまた影響を受けるっていうので、どんどん拡散していくわけだから。だから風俗にも随分影響を与えてるし、時代も先行しているわけだから。それがね、やっぱりイラストレーターとしては一つの使命でもあるしね。それは宇野さんはイラストレーターとして存在させている何かだと思いますね。」

空想百貨博物館 2014 ISETAN IRODORISAI 彩り祭

移り変わる時代の中で、宇野が一貫して描き続けるイメージがあります。新宿の大手百貨店のショーウィンドウを飾るのはミステリアスな笑わない少女。ものうげな少女の姿は宇野独自のスタイルとして定着しています。

俳優・アーティストのノン。宇野の描く女の子に惹かれています。

「描かれている女の子が言うことを聞かなそうな子なところがいいなと思って。その中でその女の子が可愛く着飾ってたりとか、かっこいい服着てたりとか、そういうところに惹かれました。やっぱり自分こうでありたいとか、自分の中にこういう部分があるって思ってる共通項があるから惹かれるんだと思うんですけど。」

【2024-1-1 日曜美術館SP ハッピーニューアーツ!のん×宇野亞喜良】

ひとりぼっちのあなたに 寺山修司

1965年に出版された「ひとりぼっちのあなたに」。寺山修司が若い女性をターゲットにした読み物で、自ら感傷的と評する言葉がつづられています。宇野はこのイラストレーションを担当しました。ひとりぼっちのあなたに – 株式会社新書館

寺山の言葉から生み出したのが笑わない少女です。宇野はこの時、少女というモチーフを初めて意識的に描いたと言います。

「すごく繊細ですね。」「このシリーズが好評でいくつか続くんです。」「この不思議な少女たち何かの化身のようなそうですけれども、お魚が乗っていたりとか、角が生えていたり。寺山さんの文章を受けて、テーマを受けて、具体的にどんなふ うに膨らませられたんでしょうか。」「具体的に文章の中のシークエンスを絵にしようという風にはあまり考えていなくて、寺山さんのエスプリというか、詩人の構造っていうかね、その辺を理解して、なるべく自由に僕も寺山さんが勝手に作ったように、僕も勝手に面白いところに飛びたいっていう感じが。」

「Keiko’s(ケイコの店)」

60年代後半から流行したサイケデリックなファッション。女性たちはより個性的な価値観を求めました。宇野のイラストレーションもサイケブームの一端を担いました。眉をそり落とした物憂げな表情。宇野亞喜良スタイルと呼ばれ、メイクやファッションを真似する女性も現れました。

「一人ですんと立ってる女の子が多いですから、そういった強さというのも憧れだったり共感したりすることがあるのかもしれないですよね。何かどこか馴染めないなぁって感じる女性がこの子を見た時に自分みたいだなって思ったり、自分もちょっと他と違うなって感じてる子が共感したりっていうこともあるしね。」

1967年の東急百貨店の「すごろく

「よく大衆雑誌というか、なんかタレントさんがカバーにいる。だいたいニッコリさせてますよね。媚びを売ってるようで僕は嫌なんですよね。相手がいないのに何でニッコリできるのかとか。普段にっこりして生活している女の子はあまりいないと思うんですね。むしろなんかどこか何パーセントかは社会に対して不満のある存在の方が面白いですよね。」「そうですね、それが凛として見えるっていうかもしれないですね。」「そうです。」

宇野亜喜良マスカレード

1982年、宇野は新しい女性像を発表します。成熟したエロティシズムを纏う裸婦像。世間に浸透した宇野のイメージを自ら打ち破る大胆な挑戦でした。宇野が再び少女の姿を描くようになったのは、2000年頃。先の見えない混沌とした時代の中で、まっすぐな目をした物陰な少女を描きたくなったといいます。

宇野亞喜良《サタニズム》(2017、部分)

「その何を考えているのか分からない表情というのが、人を惹きつける想像させますよね。」「だから少女を描く時は、ある程度イメージ化されたというか、宇野亞喜良商店で扱っている商品会で、その種類の空き役というか、風景とか男たちとか、ものであるとか、食器であるとかね、そういうもので別の味を出したいなっていうだから、 それ少女たちも、そのコスチュームとか、そういうことでいろんな変容はさせているわけですよね。」「一人の少女は、変用はしていっているけれども、作品によって違うけれども、同じ少女なんですか。」「それもね、全く考えないで、あの解放区にいる少女だから、なるべく解放区に住んでほしい。特定のある基準があって、唇の大きさをこれで願うっていう理想をこっちに作ることもできるんだけど、やってない。むしろ毎秒というか、変容していってほしい願望がありますね。でも、なんとなく手から出てくるものはいつもの少女だったりするし、僕は変えているつもりでも、第三者から見たら同じ女の子を描いているのかもしれないですね。」「少女は、でも毎回 違う。」「できれば違ったら楽しいでしょうね。まあ、あれですね、僕の一日座の劇団員みたいなもんで、きっといるんですしょうね。」

宇野の描く少女に一目惚れしたことをきっかけに、五十年もの間、一緒に作品を作り続けた人物がいます。児童文学作家、今江祥智です。

著:今江 祥智, イラスト:宇野 亜喜良
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最初の作品は1966年に発表した絵本「あの子」。舞台は戦時中の日本。村に住む少年は、町から疎開してきた少女に出会います。少女には不思議な力がありました。私、 馬と話ができるのよ。心惹かれてゆく少年。しかし、少女は街に帰ります。その夜、街は空襲で焼き尽くされるのです。今江から依頼を受けた宇野は、敢えて原稿を読まずに、あらすじだけを聞いて制作に取り掛かったといいます。

「この特にこの馬と少年と少女が一体 化した絵というのは、絵本の中では引き裂かれてしまうというかね、一緒になれなかった二人が馬によって一つの生き物になっているというような印象も受けますし。」「 僕の戦争中が嫌だっていう感じが全体をリアリズムから発しているんですけどね。だから女の子もこんなに長い髪みたいなことありえないし、男の子もバリカンで刈られてた時代ですよね。で、そういうファッションも戦争中を書きたくないなっていう思いがあって。」「その絵本というと、やはりその文章の中に描かれていることを描く方がもちろん多いと思うんですけれども、そうではなくて、心象風景。」「そうですよねまさに身長風景的な。」

「あの子」は大人も楽しめる絵本として評判を呼びます。これ以降、 今井は2015年に亡くなる直前まで宇野と一緒に作品を発表。その数は60を超えました。亡くなる前年の今江の言葉です。

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「最初の頃、宇野さんには叙々的なものやファンタジー作品の絵をお願いしていた。けれど、少しずつ宇野さんのいろんな面が見たくなってくる。それでコミカルな作品や曲げ物もお願いすると、それがまた面白かった。たくさんの喜びや楽しみを味わわせていただいてきた。まことに贅沢なことであった。

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「この作家は僕を望んでいるんだなっていう自由があるのか、向こうにイメージが強烈なあるスタイルが浮かんでいるのかどうかとか、そういうことを考えながら自分一人で造形物を作る純粋画家と 違うイラストレーターだからの面白さっていうのは僕は正しいんですけどね。自分理由に書くっていうより、相手が何を僕に対してどういうイメージを持ってくれているかとか、商品的にどういう狙いがあるのかとか、それに応えるのも好きだし絵本を作るって僕の中の特殊なジャンルですよね。」

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イラストレーター宇野亞喜良の仕事は多岐にわたります。その一つが舞台美術。セットや衣装などの慣習だけにとどまらず、自ら制作に携わります。「もうなんかすごいでしょ、アジトみたいです演出家・金守珍(キムスジュン)。2006年から宇野と一緒に舞台を作ってきました。

about – Project Nyx 公式ページ

「このフィンクスが今、片方がオペラシティの展覧会に行ってます。口から煙が出るんですよ。後ろで吹くんですけど。」

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これまで宇野が携わったのは20公演。時には演出に関わることもありました。宇野のアイデアで取り入れられたのが人形。古道具ではなく役者として舞台に登場します。

「人間で表現できないものは人形に託した方がイメージがもっと豊かになるとその宇野さんマジックっていうのはなんかぼーっとしたのを応援してますけど、これがお芝居の中で輝いていくんですよ。」

Project Nyx 15周年記念公演『霧野仙子』

岩の上に一人の少女がいた青いジーンズに灰色の成果を無造作に着て、短い髪を風になびかせているこの少女も、 恐らくさっきの霧で道に迷ったのだろう。

「ファンタジーって普段日常にないものじゃないですか。そうすると 何かの力を得ないと 夢物語というものを紡ぎ出せない。宇野さんの頭とか手とか、もう見る目とファンタジーというか、埋まってるのかな、見えないものを見ようイメージで見る力をいやしないってことなのか野沢それを教えてくれたとか、実際感覚で立体的にしてくれているし。」

「宇野さんはイラストレーターという職業の草分け的存在ですし、九十歳を超えられてもまだまだ第一線で描き続けていらっしゃいますけれども、そのモチベーションとなるのは何です。」

「描くことが好きで、僕自身の精神状態と別に一応面白がってくれる人がいるということですよね。だから 依頼する人たちによって僕は触発されたり開発されたりという気がしますよね。あまり意識的ではありたくないっていう。だから自分の思想で世の中を変容しようとか、そういうことがなくて、こういう社会が求めている、こういう情感もあるよとか、自分の情緒的な部分で反応していきたいっていう、そういう人生だったような気がしますね。」

「いろんな人の思想とかを求めることとか、言いたいことっていうのが、宇野晶さんの体を通して、頭を通して世の中で生み出されてきたんだなぁというのは不思議な気持ちがしますね。みんながちょっとずつ乗り移っているような思います」「。僕が乗り移ったんですね。」「やっぱり宇野さんが乗り移ってるわけですか。」「乗り移れる気質でありたいとは思いますよね。」「その繰り返し、繰り返し、やっぱり考えない、意識しないでおっしゃるのはのがだんだんとわかってきました。そうしないと乗り移れないんだなって。」「きっとそうですね。」「いろんな方の求めることとかメッセージとかと、さっきのあの子の馬みたいに一体化するために、宇野さん自身はある意味空白の部分というのが必要なのかもしれないですね。イラストレーターとしての先駆者でおられるけれども、誰も真似できないと思うんです。」

「宇野さん、90歳っていうのは想定してました。」
「自分が90歳まで生きるって言われてなくてね。多分みんなそれぞれの九十になっていくだろうからね僕の90全く考えてなくてまあ。」「今でもね宇野さんね、救助っていうのはなんかこう、嘘みたいな話でさ、なんかね、フィクションみたいな感じを受けるよね。」「そう言われるとね、嬉しいけど。」「だいたい宇野さんはね、90になってね、あんな 男が女かわかんないような、そういう少年か少女かわかんないような絵をさ、メルヘンシックって言うとちょっと失礼かもわかんないけど、90の人がね、爺さんですよ。だから変態ですよ。あんな十代のさ、女の子の絵を描くっていうのはね、普通はいないんじゃないかな。ちょっと世界でも珍しいんじゃないかな。」「それはちょっと理屈がおかしいと思うけどね。」「これ三十代ですよ。これは三十代の人が描いたってわかるけどね。お値段が九十代なんて言って誰も支援しないじゃないですかね。いや、あのね、どっかにね、まあかかっていいのかこういうものを作りたい人は変態的なものを持ってないとダメだしさ。だからそういうものをどっかで無意識で求めているのかもわかんないね。そうでないと芸術みたいなもの生まれないわけですよね。」「まあ変態っていうのは病理学的に言われると嫌だけど、でもまあ、変態だと思いますよね。女の子書くのが好きとか、横ちゃんを女の子を書くのが好きとか、そういうことはないですよね。最近なんだっけ中国の寒山拾得。あれ、何年ぐらい前から。」

「展覧会のために書き始めたわけですからね。もう二年ぐらいになるのかな、二、三年ですね、もうあれはあれで終わっちゃったもう今書かない、書かない。この年になると、宇野さん九十で、僕は二つ下だって言ったって、ほとんど同じだからねできるだけ長生きしてくれてた方がいいなと思いますね。」

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