美の壺「心潤す 湧き水 」

美の壺「心潤す 湧き水 」

<File421>湧出量一日100万トン以上!“東洋一”と言われる「柿田川湧水群」。水底は絶滅危惧種の水草ミシマバイカモが咲き誇る幻想的な光景!圧巻は、岩手県岩泉町の洞窟奥、湧き水でできた巨大地底湖。不思議な伝説が!さらに湧き水でいれたコーヒーや、湧き水で養殖した極上川魚など、湧き水が生み出す“味”に注目!そして、冷たい湧き水を台所や冷蔵庫がわりに使いながら暮らす、琵琶湖ほとりの集落に密着。

【出演】草刈正雄【語り】木村多江

放送:2018年9月28日

美の壺「心潤す 湧き水」

大自然からの恵み湧き水。今日はその魅力を味わいます。

柿田川湧水群

富士山のふもと静岡県清水町。ここに世界でも珍しい湧き水があります。

1200メートルにわたって無数に水が湧き出している柿田川湧水群。

富士山の雨水や雪解け水が10年以上の歳月をかけて地下の溶岩流をくぐり抜け湧き出していると言います。

湧き出す水の量は1日100万トン以上。天然のフィルターを何層もくぐり抜けてきた湧き水はどこまでも透明で澄み渡っています。

川底に咲くのは絶滅危惧種に指定されているミシマバイカ。モ世界でもこの場所でしか見ることができない貴重な水草です。

同じく絶滅危惧種のアオハダトンボ。そして綺麗な水辺を好んで生息するカワセミ。

湧き水が生み出した自然ないきものたちの楽園を作り上げています。

柿田川湧水群は地元の人々の手によって大切に守られてきました。この日は外来植物を取り除いていました。

「柿田川が私のこの地元の人は心のふるさと。水を飲むと綺麗だよ」 湧き水。

一つ目のツボは大自然がもたらしためぐみ。

岩手県岩泉町・龍泉洞の湧き水

岩手県岩泉町ここにも驚きの湧き水があります。総延長3600 M にも及ぶ龍泉洞。

洞窟の奥で水がこんこんとわいているのです。昔から水が湧き出す洞窟・涌窟と呼ばれてきました。

湧き出す水は毎分90トン以上。龍泉洞の中には大量の湧き水が作り出した地底湖が八つもあります。

そのひとつ第三地底湖。水深98 M 世界屈指の透明度を誇ります。なぜ龍泉洞では豊富に水が湧き出るのか。

この辺りの地質に秘密がありました。「このあたりは昔は海の底だと言われていました。

そこに石灰岩になるサンゴ。有孔虫が堆積して地層を作っております」

石灰洞は水に溶けやすく長い年月の間に地下水の通り道ができていたのです。

龍泉洞の水源は14 km 北に広がる広大なブナの森。

ここに降り注いで雨水や雪解け水が腐葉土や粘土層を通るうちにろ過されていきます。

こうして湧き出た龍泉洞の水。暮らしを支える生命の泉として昔から大切にされてきました。

龍泉洞の湧き水は今でも人々の生活に欠かせません。街の中心部に暮らすおよそ1600世帯で水道水として使われているのです。

「美味しいも美味しくないも当たり前。空気と同じです」「氷を食べてます。おいしいです」

龍泉洞の近くに建てられた小さな祠。

言い伝えが残されています。

「江戸末期に先祖の目がみえなくなった。洞窟の水で目を洗えば見えるようになったんだけどその時に白い蛇が中に入っていった。それお祭りしたのが始まりです」

龍泉洞の湧き水は人々の営みを変わらず支え続けます。

富山県黒部市・箱根清水

富山県黒部市。地元で古くから親しまれてきた湧き水があります。

箱根清水と呼ばれる湧き水。余分な成分の少ない口当たりの良い水です。

湧き水を管理している結城茂博さんです。箱根清水は代々結城家が受け継いできたら水でした。

江戸時代結城さんの先祖はこの湧き水を使って茶屋を営んでいました。結城さんは湧き水を地元に寄贈。

県外からも人が訪れる人気の場所になりました。毎日箱根清水の水を組みにやってくる人がいます。

地元に住む北山晃さんです。実は葉山さんは近くの喫茶店のオーナー湧き水で入れたコーヒーが店の人気メニューになっています。

「コーヒーに香るように、水にもやっぱり色々な種類があるんですよね」北山さんは焙煎する前の豆を水に浸します。

焙煎したコーヒーは湧き水を使って水出しをします。3秒に2滴12時間かけて抽出するこだわりのコーヒーです。

2つ目のツボは名水湧くところに麗しき味わいあります。

岩手県八幡平市・ 金沢清水湧水群

岩手山を望む岩手県八幡平市。ここにニジマスやイワナなどの養殖を研究し販売する施設があります。

ニジマスやイワナは澄んだ水でしか育たず養殖が難しい魚です。

この施設では長年かけてその技術を軌道に乗せました。大きなニジマスなんと重さ4 kg ありました。

養殖場の裏の森。一般の人が立ち入ることができない森の中。

座頭清水は岩手山に降った水がおよそ20年かけて湧き出す金沢清水湧水群の泉です。 伝説によると、

このあたりに住んでいた龍が頭を上げた時、地面に空いた穴から水が湧いてきたのだとか。以来途切れることなくこんこんと湧き出る泉。

養殖場ではこの湧き水をいけすに引き込み、山の清流と同じ環境を作り上げているのです。

湧き水の温度は12°。新鮮な湧き水の中で暮らす魚たちは病気にかかりにくくデリケートな稚魚も丈夫に育ちます。

滋賀県高島市 針江地区の湧水

滋賀県高島市 針江地区。およそ170世帯が暮らす琵琶湖のほとりの小さな集落です。

この地区では 至る所で湧き水と出会う事ができます。その数は 110か所に上ります。

人々は 湧き水を暮らしに うまく利用してきました。湧き水を引き入れた場所を川端と呼び、野菜を冷やしたり炊事をしたり それぞれに工夫して使っています。

最後の壺は「湧き水でつながる人の営み」。

水路の脇に建つ 小さな小屋。中にはこの家の川端がありました。

三宅さんは40年前 川端のある暮らしに憧れこの地区に やって来ました。

三宅さんの家の川端は3つの池に分かれています。

湧き水につながる 元池ときれいな水をためる 壺池。

洗い物などに使う 端池。端池から出た水は 水路へ。

家同士は この水路を通じてつながっています。代々 針江地区で暮らしてきた福田千代子さんです。

福田さんの家にも古くから受け継がれてきた川端があります。

福田さんの家では水道が通ったあとでもずっと川端を使い続けてきました。

この日は 長男 慎一郎さんの友人たちが集まってバーベキューパーティー。

うたげのあとの洗い物は川端の端池で。その時 活躍してくれるのが端池で飼っている魚たち。

人や生き物が優しくつながり合う湧き水の里です。

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