絶景を堪能できるテント設置のポイントや、自然と調和したインテリアコーディネート術を伝授。古材を使ってキャンプ道具を自作する楽しみも!▽この道30年のたき火の名人が操る、繊細な炎の技を紹介。そこに宿るはかなき美とは!?たき火でラム肉を豪快に焼く、野趣あふれる料理も登場!▽アウトドアの達人に学ぶ、五感をフルにいかしたキャンプの驚きの楽しみ方!キャンプの美を堪能します。<File474>
【出演】草刈正雄,【語り】木村多江
放送:2019年4月19日
美の壺 「キャンプ」
今キャンプが大人気。その楽しみ方は十人十色です。お気に入りの道具を持って自然の中へ。ワクワクしますね。「非日常を味わってる感じで、ずっとここにいたいです」。
こちらは焚き火で肉を豪快に焼く野趣あふれるキャンプ料理。表情を変える炎に癒される夕べ。
「生き物に感じますね。火ってものは」。
こんな風流な遊び方もありました。今日は野外でこそ味わえるキャンプの美を堪能していきましょう。
住まう
目の前には雄大な富士山。静岡県のキャンプ場です。毎週のように家族や友人とキャンプを楽しむ松尾真理子さん。ロケーションに合わせたテントや家具の組み合わせがSNSで注目され、フォロワーは4万人を超えています。
まずはテントを張る場所選び。松尾さん夫婦は富士山だけでなく、手前に見える風景にもこだわります。まるで家を新築し庭を設計するような贅沢なひとときです。
「すごい好きな木が。この奥の木がすごく好きで。富士山の間に二つの木を入れたくてここに決めました。シンボルツリーなんでここのすごくこの木を入れていろんなシーンを楽しみたいです」と松尾さんは話します。
テントの中から見える風景を頭に思い描きながら、角度も細かく調整していきます。使うのは6人用の大きなビンテージテント。この景色を味わうのにぴったりなんだとか。
「窓が3面あって日差しも入ってきててすごく気に入ってるテントです。今日はここにキッチンスペースを持ってきて、目の前の富士山を見ながら調理できるので楽しみにしてます」と語ります。
インテリアにもこだわりがあります。窓に花柄のカーテンを取り付けて柔らかい印象にし、アクセントにヴィンテージのテーブルランプを使います。ランタンやドライフラワーなどの小物を飾って空間に表情をつけていきます。でも、主役はあくまで自然。飾りは控えめに統一するのがポイントです。
富士山を望みながら窓辺で食事の支度をするのが、最も幸せな時間だと言います。「家で作るのと全然景色が違うし、料理もすごく楽しく見ながら作れるので、本当に非日常を味わってる感じで、ストレスや疲れが吹っ飛びますね」と話します。
もう一つ待ち望んでいたのは、夕日に染まる富士山です。「我が家から見えるこれぞ一大パノラマ。今日最初の壺は、自然の中に作る理想の住まい」と、自然の美しさに感動します。
フォロワー40,000人超!instagramカリスマキャンパー流のキャンプスタイルとは? – .HYAKKEI[ドットヒャッケイ]
岡山県岡山市。キャンプ用具を自分で作って楽しむ人がいます。グラフィックデザイナーの柳悠介さんです。この棚も手作りで、古材を使うのがこだわりです。灯りが欲しいと思ったときには、古材とトタンを組み合わせてろうそく立てを自作しています。「売っているものから選ぶのもありますが、それじゃない。あったらいいなとか。こういう古材も自然の中にすごく溶け込むので」と話します。
この日は、新しい作品作りに親子で挑戦しています。「コーヒーを淹れるのに使おうかなと。ダサかっこいいものになればいいと思っています」と笑います。
翌日、作った道具を持っていざキャンプへ。どんな道具が出来上がったのでしょう。箱の中には、コーヒー豆とドリップセットがコンパクトに収納されています。昨日、子供たちが色を塗ってくれた足も。組み立てて使う仕組みもワクワク感を高めるちょっとした演出です。森と人の営みが重なります。
「森の中の小さなカフェ。この素材が生きるのは自然のフィールドだとキャンプに持ってきて思いました。溶け込む」と柳さんは語ります。愛着のある道具と自然に囲まれて過ごすキャンプの醍醐味を感じています。
柳悠介さん(@ajigomi) • Instagram写真と動画
たき火
キャンプに欠かせないものといえば焚き火。炎の揺らめきは安らぎを与えてくれる効果があると言われています。焚き火をすること30年、寒川一さんがその道のプロです。寒川さんは世界中の焚き火文化を現地で取材し、焚き火の魅力を伝えるワークショップを開催しています。
「僕自身は焚き火が生活の一部のようになっているので。昔の50年くらい前の人たちが毎日かまどで火を焚き、夜になるとお風呂に薪で火を入れるというのと、何かより近しいくらいの日常感が僕の中にはあります。だからもう、これなしでは生きられないくらいですね」と寒川さんは語ります。
まずは焚き付けの準備。燃えやすい針葉樹の薪を薄く削ります。切り離さないように丁寧に作業します。「松の木です。油分があるのでよく燃えます」と説明します。風の取り入れ口を作り、火を上に導くイメージで組むのがコツです。火をつけると、風の通り道に沿って燃え広がります。ムラなく安定した火を育てるための工程です。
「焚き火をコントロールするのに皮膚希望という道具を使います。火の中に息を吹きかけるものです」と言います。薪が燃えていない部分へ火を誘導します。「焚き火が燃えている場所は、薪と薪がクロスしている接点です。下に空間があいていることが重要です。吹くときはその空間を吹いてやります」。
そして日没。しだいに暮れゆく中、浮かび上がる炎が美しい光景を作り出します。「焚き火をすることで、人が美しいと思うものの原点に触れるような気がします。火そのものが美しさの源のような気がしますね」と寒川さんは語ります。
燃え盛る炎の下、薪が燃えた後の熾火が顔を見せてきます。「熾火はすごく力強く、揺るぎない感じがあります。何かこう、老師のような存在です。熾火のようになりたい」と言います。熾火が消えるまで味わうのがこだわりで、「最後が灰になる」というのが彼の楽しみです。
二つ目のツボは育てて味わう焚き火。
焚き火を操り、野趣あふれる料理を作る人がいます。野外料理人の永野修平さんです。
「目の前に食べられるものが生えているのが好きなんですよ。それをちゃんとその季節にとってあげるというのが、自然とちゃんと付き合っている感があって」と語る永野さん。春の山菜、ふきのとうなどを取り入れた料理が得意です。
今回は骨付きラム肉を焚き火で料理します。銅線を使って肉をつなぎ合わせ、復活祭やクリスマスに振る舞われる伝統料理を焚き火で焼き上げるというアイデアです。「これが王様の冠の形に見えることから、これをラムクラウンと呼んでいます。単純に置いておくとクラウンですが、ぶら下げるとシャンデリアのように見えるなぁと思って、勝手にラムクラウンシャンデリアと呼んでいます。普段は特別な時にしかやらないんですけど」と話します。
料理のために用意したのは太く長い薪。大胆に折って火の勢いを見ながら大きな薪を投入し、長時間安定して燃えるよう重ねていきます。塩、コショウ、ハーブを塗って肉の仕込みが完了。肉は少し高い位置に吊るし、広い範囲に炎を広げて上昇する熱風によってじっくりと焼き上げます。
「小さい頃、映画が好きでよく見ていました。ヒーローが追い詰められてジャングルに逃げ込み、そこでウサギを捕まえて火の上で炙り、ナイフで削ぎ取ってそのまま口に運んでいるシーンを見て、うわ、かっこいいなと思って。いつかあれをやりたいと思っていたんです」と永野さんは振り返ります。
最後に、王冠の中に小枝を通して火を導き、強火で仕上げます。外はカリカリ、中はジューシーな理想の焼き加減に仕上がりました。「ちょうどいいぐらいですね。肉に合わせるのは先ほど取ったふきのとうを刻んで作ったソースで、オリーブオイルとチーズで和えて完成です」と完成品を楽しむ永野さん。彼にとって、焚き火で料理を作ることは、ただの食事ではなく、心も胃袋も掴んで離さない魅力があるといいます。
静岡県掛川市にあるキャンプ場は、細い山道を四十分進んだ先にあります。ここは携帯電話もつながらず、夜には完全に静寂に包まれる場所です。しかし、その静けさと自然の美しさが魅力となり、連休には予約がいっぱいになるほど人気です。
このキャンプ場をデザインしたのはアウトドアプロデューサーの松山拓哉さんです。松山さんは、土地の良さを最大限に引き出すことにこだわりました。「この土地の良さって何だろうと思った時に、星が綺麗に見えるとか、今ある良さを再発見して演出するという戦略を取るしかないなと思いました」と語ります。
キャンプ場で特にこだわったのは、静寂の中で自然の音をじっくりと味わうための仕掛けです。川の上にせり出したウッドデッキを設置し、この上でキャンプを楽しむことができます。小さな沢とメインの川に囲まれた場所に設置されたこのデッキでは、他では体験できない臨場感が味わえます。夜になると、真っ暗な闇の中で自然の音が一層豊かに響きます。街では聞けない動物の鳴き声、虫の声、カエルの声などが、まるで自分が動物になったかのように感じられ、五感が研ぎ澄まされることを実感できます。
松山さんは、「ピクッと自分が動物になった感じで、五感を研ぎ澄ますことができるようになるんじゃないかと思います」と話しています。
今日最後のツボは、五感で味わう景色なら
ここには自然を丸ごと楽しむキャンプの達人、辰野勇さんがいます。キャンプ歴45年の辰野さんは、世界最年少で愛川北暦に登場し、72歳の今も現役の登山家です。彼はアウトドアを単なる西洋の文化と捉えず、日本にも豊かな野遊びの文化があると語ります。
辰野さんは一服のお茶を楽しむひとときさえも自然と一体になりたいと考えています。「アウトドアという言葉が横文字で、西洋の文化みたいに思われがちですが、実は日本には昔から自然を楽しむ術がたくさんあったと思うんです。それを忘れてしまったような気がします」と述べています。
彼のキャンプスタイルは、自然と深く結びついています。一服した後、辰野さんは山の奥へ進み、お気に入りの場所であるウグイスの滝にたどり着きます。ここで彼は滝の音に耳を澄ませ、突然笛を取り出しました。「上の音というのは最も原始的な音で、穴が開いているだけで風を吹き込むことで音が鳴る。滝の音と共鳴する感じがいいんです」と話します。
さらに、辰野さんは滝の水をすくって炭をすり、即興で音楽を演奏します。滝の水しぶきと笛の音が混ざり合い、自然との一体感を深めていきます。「この音を聞きながら共鳴していく感じがいいですね」と語り、自然との深い結びつきを実感しています。
辰野さんのように、感覚を研ぎ澄ましながら自分だけの自然の味わい方を見つけてみるのも素敵ですね。
取材先
- 辰野勇さん(モンベル代表)
モンベル | 【モンベル代表・辰野 勇】出演・メディア掲載情報 |
- 炭焼の杜 明ヶ島キャンプ場
火消し壺
キャンプ中使用する炭火が残ってしまった場合、安全に火を消すための道具です。 炭火は水を掛けるのではなく酸素を遮断することで消しましょう。
キャンプのことなら
制作
テレビマンユニオン
ディレクター 北條 薫
リサーチ 伊藤暢子
プロデューサー 高橋才也