「歩きやすくて健康的!~静岡 駿河の 下駄 (げた)~」イッピン 見逃し

「歩きやすくて健康的!~静岡 駿河の 下駄 (げた)~」イッピン 見逃し

下駄 (げた)なのにハイヒール!鼻緒もカラフルで、カジュアルな洋装にもピッタリ。履くことで健康維持にも役立つという。その秘密は、つま先部分に施されたある工夫だ。この新感覚の下駄を生み出したのは江戸時代以来の産地・静岡。ここには、履き心地抜群の張下駄もある。下駄に貼られているのはなんと紙!耐久性に優れ、吸水力も強く、気持ちよく履き続けられる。これを可能にした職人の技を、女優の桜庭ななみがリサーチする。

【リポーター】桜庭ななみ,,【語り】平野義和

放送:2022年5月8日、2019年5月7日

 イッピン これまでのエピソード | 風流

イッピン「歩きやすくて健康的!~静岡 駿河の下駄(げた)~」

さわやかでポップな店構え。
店内にズラリ並んでいるのは、鼻緒の色も柄も鮮やかな下駄。
大河ドラマ「せごどん」で西郷隆盛の妹を演じている女優・桜庭ななみさんの心を一気に鷲掴み。

なんかすごくかわいらしくて見た目がトップというか。なんか下駄を見に来たっていう感じがしなくって

今女性たちの間で評判の駿河の下駄が今日のイッピン。

そもそも下駄とは木の板に鼻緒をつげた履物のこと

この店の下駄は鼻緒がポップでヒールが高く、和装だけでなくカジュアルな服装にも合うと女性たちに人気。

そしてもう一つ。

一番の特徴はですね、この指先の削りになります。指先をぎゅっと花を掴んで歩いていただけるような構造になって歩きやすい。

歩きやすさを徹底的に追求した下駄なんです。
その履き心地は。

なんかいい。これすごいフィットするんです。ヒールがちゃんとあるのにそれを感じない。歩きやすいです。これこれ一日痛いですもんね。

さらにこの下駄には健康を促進する驚きの効果があるんです。
それがある実験で実証されました。
そしてムシムシする季節でも気持ちよく履けると評判なのがこちらの駿河張下駄

汗の吸収が良くてべとつかない特別な工夫が施されているんだとか。
今日は健康的で履き心地も抜群な敦賀の下駄の魅力を探ります。

駿河張下駄

美しい富士を望む静岡市。
この町で古くから下駄作りが行われてきました。
桜庭さん肌触りの良い張下駄からリサーチ開始。

丸山宗孝さんは張下駄を作って六十三年のベテラン職人。

すごく模様がかわいくてとちょっと吐いてみてもいいですか。肌触りもすごくいいですね。
もうこのあの材料はね、夏素足である時が一番いいですね。何か家にいる感じが家にいる感じというか
なんか落ち着くというか

まるで畳のようにさらりとした肌触り。
絵柄も上品で美しいと評判の張下駄。
どのように来られるでしょうか。
かたり下駄に使うのは軽くて割れにくい桐材。
丸山さんいきなりガスバーナーを手に持って、大胆に焼き始めました。

模様というか木目がすごく出てる気がするんですよね。

火を当てると燃えにくい年輪の部分が浮き出てくるんです。
さらに、これはイボタと呼ばれる木の表面を磨くための粉。
桐箪笥など高級家具を作る時にもこのイボタが使われるんだとか。
丹念に磨いていきます。
そうです。
繊細な木目の文様がつややかに現れました。
さらりとした心地よい肌触り。
それを生み出す秘密は板の表面に貼られているこの布のようなもの。
実は意外なものでできているんです。

元はこういう材料なんですよ。素材は「紙布」。紙なんですけどね。

そう素材は紙なんです。
でも紙ならばやぶれやすいのでは。

これはこれ丈夫なんですよ。
いいですかいやなんか破け破けない怖いです。
大丈夫ですね。
そのくらい丈夫なんです。
全然形も崩れないし破ける気配もないです。

なぜ紙なのに破けないのか。
実はこの上針葉樹のパルプで作られたもの。
その紙を糸状にしたものがこちら。
針葉樹は繊維が長いので糸状によると強く絡み合うだとか。
カラフルに染められた紙の糸を使って、布のように編んでいきます。

縦と横でしっかり編み込むことで強度が増し、ちょっとやそっとでは破れない強靭さが生まれるんです。
こちらが編み上がった「紙布」
紙布は紙でできているので水分の吸収が早く、程よいクッション効果もあります。
だから足の裏はべとつかず、サラサラして、いつでも快適に履くことができるんです。

丸山さんの上品で美しい下駄。
異なる紙布を切り合わせて使うことでデザインされています。
この下駄の場合は、無地とストライプの紙布を用意し、デザインに合わせていて貼ります。
この時互いに重ならないようにぴったり貼り合わせなければなりません。
万が一表面に凹凸ができたら、せっかくの履き心地が台無しになるからです。
そして今回作業を見せてもらうのはこちらの下駄。
べースはわら色と黒のツートン。
そこに黒と赤を交互に織り込んだ細いラインでアクセントをつけています。
どのように張り合わせているでしょうか。

まず藁色の部分と黒い部分に使う紙布を重ねます。
そうその重なった部分をデザインに合わせてカットして切り離します。
今度は黒と赤を交互に織り込んだ紙布を一ミリ十二ミリ幅に細く切っていきます。
藁色の紙布も一ミリ幅に。細い紙布はこんな風に配置されているんです。
丸山さん薄紙に接着剤を塗り始めました。

まず大きめの紙布を貼り付け。
続いて幅二ミリさらに幅一ミリの細い紙布を隙間ができないように貼り合わせます。

曲げていくんですね。そこで合わせる。
私も爪が長いでしょ。こういうことやらないと、爪めが必要なもんですからね。

丸山さんはこの繊細な作業のために爪を手入れしていつも長く保っているんです。

左と右とがきれいにシンメトリになりました。
これにさらに赤い曲線をもう一本足すんですが。

丸山さん紙布を裏返し、切り始めました。
切り分けた紙のあいだに細い一ミリの紙布を挟み入れるんです。

今駿河張下駄でこう面倒なことやる人は私しかいないですよ
別々の生地だったとは思えないぐらい一体化しててはい。

どうです色の異なる三つの紙布が一部の隙間もなく見事に張り合わされています。
これを下駄に貼り付けます。
はみ出た部分はハサミで切り、紙布の端をかんなで削って丸めて最後に鼻緒をすげれば完成。
一人の職人が丸一日かけて丁寧に作り込んだ張下駄。
優しい履き心地とともに足元から涼しさを運んでくれるイッピンです。

ハイヒール下駄

江戸時代、東海道の中心として栄えた静岡。
ここには張下駄とともに広く親しまれてきたもう一つの下駄があります。

駿河塗下駄です。
漆を使って丹念に描かれた絵柄。
そこにあるだけで観賞用の工芸品のように見るものを楽しませてくれます。

静岡浅間神社

静岡浅間神社。
三代将軍徳川家茂が社殿を造営した時全国から腕の良い漆職人が集められました。
そして二十六の社殿全てが漆で塗られました。
ここで根付いた漆の技術が、駿河塗下駄を生むことになります。
その伝統を受け継ぐ片桐雅夫さん。
この道五十年の塗下駄職人です。
片桐さんは漆に顔料を加えて様々な色を作り筆一本で絵画的な世界を描いていきます。

漆を塗っては磨いていくを繰り返す。
一足作るのに一か月はかかるんだとか。
大正時代町には三百六十人の塗下駄職人がいましたが、今では四人。
生活の洋風化で需要が減り、職人も激減しました。
そんな駿河の下駄の世界に最近新たな製品が誕生し、話題を集めています。
ヒールが高いファッショナブルな下駄。

全然疲れないです
すごい軽くてすごく履きやすいです

ファッション性に優れていて履きやすいハイヒール下駄。
驚くことにはくだけで健康にも良いという優れものなんだとか。
この下駄の健康に対する効果を調べたのがこの方。
スポツ科学専門の静岡大学横山義明名誉教授。
着目したのは足の指の使い方です。

自分の足に合った靴は履かない現代人が非常に多くなっていて、歩行の時に指を使わない。そのために浮き指状態となった現代人が非常に多くなっています。

では健康な人の歩き方を見てみると、かかとから親指の付け根の順で地面に触れ、最後は足の指で地面を蹴り上げています。
一方浮き指と呼ばれる歩き方は、かかとと親指の付け根だけが地面に触れ、足の指は浮いたままです。
足に合わない靴を履いたり、歩く時間が少ない現代人の多くがこの浮き指。
この状態が続くと首や肩腰などの痛みの原因となります。
浮き指を解消するポイントが下駄の先に作られたくぼみだと横山教授は言います。

教授はこの下駄を使い学生や主婦などで実験。
足の状態がどうなるかを検証しました。
表面が平らな従来の下駄と窪みのある下駄で三十分歩行した際に足裏の温度を測定したもの。

窪みのある下駄を使った全ての人が足先まで赤くなり、足の血流が良くなったことがわかりました。
さらに全身の血液の流れまでも良くなっていました。

結果としては足の裏の血流がよくなり、浮き指が解消される状況が見受けられました

浮き指を解消してくれるというヒール下駄。
どのように作られているのでしょうか。
桜庭さんが訪ねたのは木材の加工を行っている工場。

よろしくお願いします

こちらが社長の石川清さんです。
下駄の過去は家具作りにも使われる機械で行います。
精密さが求められる作業のため、数値はすべてプログラミングされ、自動で行われます。
下駄に使われるのは地元静岡産のヒノキ。
仕上がりが美しいのが特徴です。
下駄の厚みは1.2センチ。ヒールの高さは6.5センチになるよう加工します。
ハイヒール下駄は一か月にも及ぶ試作を繰り返して、この曲線のフォルムにたどり着きました。

下駄の形になってます

そしてここからあの窪みを作っていきます。
使うのはドリルをセットした機械。
まずは親指の部分から削ります。
最も深いところで三ミリほど。
親指と他の四本の指がフィットするよう導き出した数値です。
サンドペーパーで表面を滑らかにすればボディは出来上がり。

これで完成

この独特のフォルムと足先の窪み。
どのように健康に役立つのでしょうか。

ハイヒール下駄は歩くときかかとから指先まで重心の移動がスムーズに行なわれます。
この時くぼみが受け止めることで指でしっかり地面を蹴り上げることができます。
足だけでなく体の血の巡りまでもが良くなり、さまざまな症状も解消されるんです。
ハイヒール下駄に告げる華やかな鼻緒にも人に優しい工夫が施されているんだそう。
早速鼻緒を製造する工房へ。
こちらでは鼻緒の取り付けから最終仕上げまでを行なっています。

お邪魔します

扱う鼻緒の柄は百五十種類。
様々なオーダーに応えることができます。

ええこれで切れたんですか

金属の型を使って生地を切り抜いた後に一手間加えます。
クッション材を入れます。
クッション材を入れることで、足の甲のあたりがソフトになるように心を配っているんです。
花をの幅を広めに作っているのも、足の甲を優しく包み込むようにと考えたからです。
鼻緒をつけるのは職人の手仕事。
鼻緒は少しでもしわが入ると、当たる部分に違和感を覚え、長時間歩くことができなくなります。
そのためシワができないように細心の注意を払って作業を進めます。
指先に神経を集中して何度も微調整を繰り返します。

作業を始めてから一時間。
ようやく完成しました。
一切妥協のない職人たちの手によって生まれたハイヒール下駄。
駿河の下駄に新たな風を吹き込むイッピンです。

まとめ

桜庭さん今回の旅いかがでしたか。

何よりも履いてくれる人のことを思いながら、細かく丁寧に作ってる職人さんの思いに凄く感動しました。私は時代劇の撮影だったりとかで下駄を履くことあったんですけどこれからそういう職人さんの思いを感じながら下駄を履きたいなと思います。

今日もまた最高の履き心地を追い求めて腕を磨きます。

商品情報

駿河張下駄|静岡郷土工芸品振興会

見逃したNHKの番組は動画配信サービス「NHKオンデマンド」で見ることができます。NHKの全チャンネルから最新の番組が視聴できる「見放題パック*1」は月額972円で配信期間中なら何回でも視聴できます。