2017年春、鹿児島の「霧島アートの森」で開催された展覧会に展示された独創的な作品群が話題となりました。シャツを無数の糸で埋め尽くした作品や、糸と布を部屋一面に張り巡らせた作品を生み出したのは知的障がい者支援施設「しょうぶ学園」を利用する知的障害者の人々です。
何年もかけ白いシャツを色とりどりの糸で埋め尽くした作品や、糸でつながれた布を部屋一面に張り巡らせた作品の特徴は「針一本で縫い続けるというもの」。何年もかけて刺繍を施したシャツは色で埋め尽くされ、強烈な存在感を放ちます。自由でエネルギーあふれる作品の数々はファッション界やアートシーンから高く評価されています。
しょうぶ学園が始めた刺しゅうを使った創作活動をはじめたのは1992年のことでした。刺しゅうの概念を超えたさまざまなアートはなぜ生まれたのか。番組ではヌイ・プロジェクトを訪ね一本の糸から広がる“無限の世界”を探求します。
【出演】詩人…蜂飼耳,鹿児島しょうぶ学園施設長…福森伸,【司会】高橋美鈴
初回放送日: 2017年6月25日
日曜美術館「糸から生まれる“無限の世界”~ヌイ・プロジェクトの挑戦~」
おびただしい数の糸で施された刺繍。4年半の歳月をかけてシャツを縫い、生み出された作品です。
制作したのは自閉症の41歳の男性です。毎日五時間ひと針ずつ色を重ね続けます。
活動するのは鹿児島にある知的障害者支援施設しょうぶ学園。
その工房では作り手の個性が生かされたシャツが次々と生まれています。
独創的な作品はファッション誌の編集者からも注目されています。
「根源的な強さです。トレンドとか誰かにどう見られるのかではなく、
作りての人が本当につくっているものに力を込めている」
針と糸で自由に自分を表現。刺繍という枠を飛び越えた作品も生まれています。
淡い色が糸によってつながれ、部屋一面に散りばめられた独自の世界。
専門家の目に止まり、美術館で展示されました。
「心のなかにある感情がああいう色と形になっている。あの空間そのものが彼の心なんだ。心のかたちなんだ。こういうものをアートと言わなくして何をアートと呼ぶんだ」
何かに突き動かされ、描き出される表現。一本の糸から紡ぎ出される内なる表現はいったい何を伝えようとしているのでしょうか。