イッピン「木をいかす 新たなカタチ~石川 木製品~」

1万本に1本、切り口から鮮やかな黒い模様が浮かび上がる柿の木がある。その板を薄くスライスして牛革と縫い合わせたバッグが、女性の間で大人気だ。厚さ0.14ミリという極薄なのに、曲げても引っ張っても破れない、そのわけとは?またテーブルの上において、お湯を沸かすことができるコンパクトな桐の火鉢も注目を集める。どちらも木の工芸の盛んな石川県から生まれた。リサーチャーはモデルの生方ななえさん。【リポーター】生方ななえ,【語り】平野義和

放送:2018年11月25日

 

イッピン「木をいかす 新たなカタチ~石川 木製品~」

プロローグ

不思議な模様のバッグ。

この模様、実は天然の木目。

石川県で作られている木のバッグです。

「木の模様がとってもアクセントになっていて、木のぬくもりが伝わってきます」

薄い木の板と牛革を縫い合わせています。

板と言ってもその暑さはわずか0.14 mm。これだけ薄くても丈夫曲げても割れません。

いったいなぜ。

さらに懐かしい桐の火鉢にも新たなヒット製品が生まれました。

地球儀のように丸い形。そして簡単に持ち運びできるコンパクトさ。

テーブルの上に置き炭火を起こして優雅なコーヒータイムを楽しむもよし。

ワインクーラーにするもよし。

そのまま置いてもおしゃれ。

夏でも冬でも気軽に使えると若い世代の注目を集めています。

今日は新たな木の魅力を引き出した石川県の木の逸品です。

金沢の木製品

江戸時代豊かな文化が花開いた古都金沢。

創業71年。伝統的な木工製品を作る会社です。

木のバッグが登場したのは10年前のことでした。

工場の2代目谷口雅春さんです。

「家庭用品の木工屋です。これから女性の好まれるようなものをと作るようになりました」

0.14 mmの厚さなのに曲げても割れません。

その秘密をさぐります。


能登半島の真ん中にある穴水町。

工場に木のバッグの原木がありました。黒柿です。

普通の柿の木の断面は白。もようもありません。

ところがごく稀に黒く美しい木目を持つものがあります。

1万本に一本にしかない銘木で、値段も普通の木に比べて数十倍になります。

原木を切り出し板状にすると複雑な黒い模様が現れました。

この板状になった黒柿を0.14 mm にしていきます。

職人歴45年のベテラン向信義さん。

向さんまず板の表面を削ります。0.14ミリにスライスするためには可能な限り板を平らにしておく必要があるのです。

黒い模様がくっきりと浮かび上がりました。そして機械でスライスしていきます。

こちらの工場で改良した特殊なカンナです。鋭い歯がほんのわずか突き出しています。

作業開始。まさにあっという間。硬い柿の木が一瞬にしてスライス。

葉の上にはローラーとベルトが備え付けられています。

ローラーが板を送り出し、下についた刃がスライスする簡単なしくみです。

でもそこに職人の優れた方が発揮されています。

「ローラに適当な圧をかけないと材料を送っていかない」

ローラが板を押し下げる圧力こそが鍵でした。圧力が強すぎるとスムーズに動かず、逆に弱いと刃がしっかりありません。

さらに削れば板はどんどん薄くなるため、かける圧力もその都度変えなければなりません。

もう一つ向さんは作業を始める前にある工夫をしていました。

カンナの刃を斜めにセットしていたのです。

刃を直角に当てると板にあたる面が狭いため抵抗が生まれ、ささくれてしまいます。

刃を斜めに当てることで板にあたる面が広がり滑らかに削られていくのです。

一見何気ない作業の中にローラーの圧力や刃の角度の調整など貴重な黒柿を無駄にしない細心の注意が払われていました。

一枚の板からおよそ200枚がスライスされるといいます。

どれもがほぼ同じ0.14 mm の薄さです。でもまだ終わりじゃないんです。

「次の工程で破れないシート状の板に変わります」

極薄でしかも破れない訳とは。用意したのは接着剤。

これを薄い布に塗ります。そこにスライスした気を貼り合わせ、 200°に熱したアイロンをかけます。

すると「破れないシートになりました」

木に貼り合わせた布は不織布。

CD の保護カバーなどに使われ、しなやかで強度に富んでいます。

さらに接着剤にも秘密がありました。

普通の接着剤だと固まると硬くなってしまいますよね。

これだと簡単に木が割れてしまいます。

こちらの接着剤は固まっても弾力がある特殊なもの。

詳しい成分は企業秘密です。

これで曲げようが引っ張ろうがへっちゃらです。

最後に縫製です。

木の素材と牛革を縫い合わせます。なんとミシンの針を通しても割れません。

見事に縫えました。

「皮とそんなに違いがないと思うぐらい縫いやすい」

完成です。

0.14ミリの薄さながら丈夫で木の温もりを感じさせます。

使う人はもちろん見る人の心を和ませる逸品です。


石川県は良質の木材に恵まれ、江戸時代から木工製品や漆器が盛んに作られました。

木目を楽しむ山中漆器。重厚な塗りを味わう輪島塗。

絢爛豪華な金沢漆器。

どれも日本を代表する工芸品です。

その木工の技術と蒔絵の技を見事に融合させたのが金沢桐工芸。

主に暖を取るための火鉢が作られました。良質の桐の木は雪国になればこそ。

そこに職人が丹精込めた蒔絵を施しました。

しかし1960年代以降石油ストーブが普及すると火鉢は実用品ではなくなりました。

そんな火鉢が再び脚光を浴びています。それがこちらの丸い火鉢。

くりぬいた桐の衣。

銅で作られたおとしを入れます。

底に炭を入れ五徳を乗せればお湯も沸かせます。若い瀬田性を中心に人気を集めている丸い火鉢。

工房を訪ねました。職人の内田健介さんです。

こちらの工房は大正2年創業。桐の火鉢を作り続けています。

「軽くて湿気に強い。発火点が高い(燃えにくい)から火鉢に向いている。

表面を一回焼いてるんで床の木目の柔らかさっていうのが出てるんですね」

焼いた木肌に漆で図柄を描き、そこに金、銀を施す高蒔絵という手法で仕上げています。

作業には削って焼いて蒔絵を施すという三つの工程があります。

桐の木を丸い形にする職人お風呂で岩本匡史さん。

材料の桐を見せてもらいました。

「桐の木は必ずこの芯の所に穴が開いてまして、火鉢は中がくり抜いてあるものなので、この桐は火鉢に適してます」

桐の木にはどれも穴が開いているので器などには向かない素材。

でも火鉢はくり抜くので穴が開いていても大丈夫なんです。

作業はまず桐の木を轆轤に固定するところから。

最初は外側を大まかに削っていきます。桐の木は柔らかいためうまく削るのが難しい素材です。

「ボソボソしているので硬い気に比べて削りにくい。そのため道具を始終削っていかないときれいに削れない」

曲線は火鉢の命。繊細に削ります。

綺麗な曲線ができました。

次に内側を削ります。

内側の刃先が当たっている場所が見えにくいので指先に伝わる感覚を頼りに削っていきます。

半分できたらもう片方も。外側内側と同様に削ります。

綺麗な丸い球体が出来上がりました。

ただ、表面はまだ毛羽立っています。

ここで内田さんにバトンタッチ。

表面を焼き、毛羽立ちをなくしてなめらかにしていくのです。

ムラができないようにバーナーの火を当てていきます。

焼かれている表面をよく見ると実は微妙な差があります。

この部分は固くて燃えにくい。

線になっている部分は柔らかくて燃えやすいんです。

火の粉が舞っています。すると内田さんを素早く火を消します。

「いくら火に強いからと行っても焼きすぎると燃えてしまうので、燃えそうになったら消します」

焼入れが終了。毛羽立ちが目立たなくなりました。

でも全体が黒い煤で覆われています。この煤を落として行きます。

表面を傷めないように木目に沿って作業を進めます。

美しい木目が浮かんできました。

美しい木目が浮かんできました。

「白木のときと違って凹凸を感じる。これが桐の特徴。やわらかみのある温かい感じになる」

柔らかい部分が焼けることで窪みができていました。

それが木目をくっきりさせていたのです。最後は高蒔絵の作業です。

優雅さと立体感を強調します。

高蒔絵の担当は職人歴44年のベテラン谷義治さん。

星座が描かれた型紙を貼り、小刀でくりぬいて行きます。

木肌を傷つけないよう慎重に。次に砥粉と漆を混ぜていきます。

錆漆です。

錆漆をくりぬいた部分にのせていきます。型紙を外します。ここからが高蒔絵の真骨頂。

乾かしたら錆漆の上に漆を塗ります。

さらに漆を塗り重ね、星座のイメージとなる銀粉を蒔く。

何層にも漆を塗り重ね仕上げていきます。

腰の部分には金箔を貼って。最後に磨きをかければ完成。

美しい木目の夜空にいくつもの星座が瞬きます。

石川の伝統の技が集結した桐の火鉢です。

「必ずしも生活に必要なものではない。でも火鉢があったおかげでなんとなくあったかい気持ちになれた。

そういう風に感じられるようなものを作れたらいいなとおもってます」

木と漆でできた小さな丸い宇宙。時間がゆったりと流れるようです。

木が持つ力を今の暮らしにもっと活かしたい。

どの職人からもそんな思いが伝わってきました。

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木製品の温かみをお届けする「木のお店」 ますこっと

まんまる夏火鉢

金沢桐工芸 岩本清商店ホームページ

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