機能だけでなくファッションアイテムとしてかかせないメガネ。パリで生まれたロングセラーの名作フレーム。希少なセルロイドが生み出すこはく色の輝き。縄跳びから発想したスタイリッシュなメガネとは?完成まで2年!こだわりのパーツから作られる洗練を極めたメタルフレームとは?女優・草笛光子さんのおしゃれコレクション大公開!!鉄と竹で創り上げるオートクチュールメガネのこだわりとは?!<File454>
【出演】草刈正雄,草笛光子,山田光和,外山雄一,中川浩孝,山ノ瀬亮胤,【語り】木村多江
放送:2018年11月4日
美の壺 「個性を楽しむ メガネ」
古より、私たちの眼を支えてきたメガネ。
描けた人の個性まで表すメガネはいまやファッションアイテムとして多彩な世界を展開しています。
希少なセルロイドを使ったフレーム。深みのある光沢が魅力です。
究極のパーツが生み出す美しいフォルムと、かけ心地。
メガネ作家が作るオートクチュールのメガネとは。
お眼鏡にかなう眼鏡。紹介します。
セレクトショップ
東京渋谷に世界中のメガネを集めたセレクトショップがあります。
GLOBE SPECS 渋谷店
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店主の岡田哲哉さんはメガネコレクターとしても知られています。
このケースには長年収集した貴重なコレクションが。
これは18世紀頃、ヨーロッパで使われたメガネフレームです。耳にかけるつるがないため鼻に挟んで使いました。
19世紀に入るとメガネにつるがつき現代とほぼ同じ形に。
さらに20世紀。セルロイドやアセテートというプラスチック素材の出現により眼鏡の世界が大きく変わります。
「 メタルの素材というのが19世紀以前主流でしたが、20世紀に入ってセルロイドフレームがヨーロッパに初めて登場した。それまで金や銀しかなかったところに黒や茶色が出てきただけでも画期的っていう印象があったのではないか」
新たな素材は様々なデザインを生み出しました。1920年代。パリで生まれたクラウンパントぅ。フレームの上に王冠のような凹凸がつけられました。エスプリの効いたデザインはおよそ100年経った今もロングセラーを誇っています。
「古いデザインですが未だに長く愛されていて、モダンな印象をもっている眼鏡になっています」
「50年代に作られた飴色のべっ甲調の色ですけど。同じクラウンパントゥでもブルーのものは印象が違ったものになっています」
とっておきのものを見せてくれましたフランスのメガネ職人からもらったという眼鏡です。
「使うというより、職人がここまでできるということを示すために作られた。 ラインストーンという石を埋め込む技術っていうのも今はこれできる人はフランスのに3人しか残ってないらしいんですけど、プラスチックの職人さんとラインストの技術の職人さんがコラボレートして作られた昔からの技術の継承したっていうのは記念すべきメガネです」
メガネ。今日一つ目のツボは素材の持ち味を楽しむ
メガネのふるさと
日本のメガネの9割を生産している福井県鯖江市。
ここにメガネ作り60年を超える職人がいます。
山田光和さん。明治から昭和にかけて盛んに作られたセルロイドフレームを今も作り続ける数少ない一人です。
セルロイドは19世紀に生まれた初めてのプラスチック素材です。
まだら模様が多いのはべっこうの代用品として使われたことに由来しているそうです。
強くて弾力性がある一方で、取り扱いが難しいことからしだいにアセテートが主流になってきました。
しかし山田さんの元にはこの希少価値の高いフレームを注文する人が後を絶ちません。
「光沢の深さがある」セルロイドは時間がたつに連れ固く強くなりますが、曲がっていく性質があります。 二三年寝かせ、反りが止まってから使います。
「しなるような時期が済むと反りが止まるんです。ブレが止まった頃に加工すると狂わないメガネが作れるんです」
しっかり寝かせたセルロイドは曲がることのない堅牢なフレームになっていきます。
フレームに光沢を与える作業に入ります。
回転する布に貝を粉末にした研磨剤をつけながら一本一本丁寧に磨き上げます。
角という角を磨いていくとセルロイド特有の深みのある光沢が生まれ琥珀色に輝きます。
次にメガネを箱の上に並べていきます。
箱を開けると電球の熱で眼鏡のつるを温めていました。
昔ながらのやり方でつるが曲がって行きます。
一発で理想のカーブが生まれます。
セルロイドの良さはレンズを入れた瞬間にも分かるといいます。
「レンズをはめてから、セルロイドはレンズの抱きがいいと言われます」固くて粘り強いセルロイドはレンズをしっかりと積み込みます。
難しいと言われる素材をなだめながら愛おしみながら作り上げたメガネ。優しい光を放ちます。
遊びから生まれた革新的なデザイン
世界が注目するメタルフレームがあります。繊細なラインは未来的。このデザインは意外なものから発想されました。
メガネデザイナーの外山雄一さんです。
YUICHI TOYAMA
今夜再放送♪“個性を楽しむ眼鏡 NHK 美の壺” | OBJ -京都本店-
公園で、ある光景を目にしたことがきっかけでした。
「ダブルダッチという縄跳びを見たんです」
目に焼き付いた流線型のライン。デザインを重ねていくうちにこれはメガネのフレームになるという予感がしたと言います。
「アイデアは浮かんでもそれを実際にプロダクトに落とし込む(製品に仕上げる)ことができるかできないかで大きな差があると思います」
どうすれば描け心地のいいメガネにできるのか葛藤が続きます。
最終形はこんな形に。左右のレンズが一本のワイヤーで一筆書きのように繋がっています。
その上にもう一本ラインが加わり縄跳びと同じ2本の線でメガネフレームが作られました。
「余計な装飾というものをすべて排除して、メガネフレームが構成されていることが「引き算の美学」みたいなものを直接反映できたじゃないかなと思ってます」
完成したデザインは試作を作る専門の職人の手に渡されます。
小畑勝さんはデザインを実際の製品にできるかどうかを検討します。
ワイヤーをフリーハンドで曲げ、自作のフレームを作っていきます。
一本のワイヤーで左右対称のレンズの形を作るのは容易ではありませんでした。試作を繰り返し実現できました。
縄跳びから発想したフレーム。躍動感と遊び心にあふれています。
メガネ。今日二つ目のツボは研ぎ澄まされた細部を味わう。
究極のパーツで作るメガネ
中川浩考さん。従来にない発想でメガネをデザインしています。
一見さりげないメタルフレーム。
しかしつるは極限の細さ。
丁番も精緻を極めたデザイン。
つるの先端でメガネのバランスをとるエンドチップは18金。
ノーズパッドには天然の白蝶貝。
部品が主役のメガネです。
もともと機械工具メーカーに勤めていた中川さん。部品には並々ならぬこだわりがありました。
「機能的なものってかっこいい。たとえば壊れにくいとか、少しでも軽くなるとか。そういうちゃんと意味がある機能が最終的にデザインになっているっていう。そこにすごく惹かれるんです。それを追求していった時に第三者が見た時にすごく美しいなと思えるそんな世界に惹かれる」
機能と美しさを兼ね備えた部品。中でも心血を注いだのがネジでした。
わずかゴマ粒ほどの大きさ。完成まで長い時間を費やしました。
「いろんな眼鏡を見た時に自分の中で最高のネジっていうものを居間までの製品に見つけることができなくて、で、最高のネジを作りたいというところから2年かかった」
六角形の星型をしたネジ。一般にはパソコンなど精密機器に使われるものです。
細いつるのためにネジは特別に開発しなくてはなりませんでした。
そのネジづくりを支えたのが福井市にある工場。
材料は軽くて強いベータチタンのワイヤーです。
これを小さな金型に通して引き伸ばしていきます。直径は1.185 mm。 1/1000ミリという高い精度が求められました。
難問に答えたのがワイヤー作り40年の丸山裕恭さんでした。
「千分の1ミリというところまで要求されたので、できるかどうか半信半疑。自分でもかんがえるところがありました」
丸山さんに課せられたのが細いワイヤーにする金型作り。
使ったのは竹串。ダイヤモンドの研磨剤をつけ金型の内側を削ります。
「竹串と金型との間での微妙な抵抗を感じ取りながら、僅かなところを削り取るように調整する」
構想から二年。強さと美しさを 併せ持ったネジが生まれました。
専用の極細のドライバーを使って止めていきます。
究極の部品をちりばめて美しい形が生まれました。
いいオンナのメガネ
今年出版界であるスタイルブックが注目を集めました。
草笛光子さんが80代で記した華麗なるおしゃれ遍歴。
愛用の服で様々なコーディネートを披露しています。
着こなしにスパイスを効かせるのがサングラスです。これはその一部。
数え切れないほどお持ちなんだとか。
「合うメガネするとすごくいい女に見える。合わないのはいいオンナじゃなくなっちゃう。お化粧の一つみたいで、アイシャドウのかわりをすることもあります」
いつまでも攻めの姿勢が大切と草笛さん。
メガネ今日最後の壺は新しい自分が見える。
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メガネ作家の山ノ瀬亮胤[note]老舗の眼鏡工房で技術を学んだ後に独立し、1998年自らのアトリエを東京・世田谷に構える。「大量生産は肌に合わない」と、デザインから金属の鋳鍛造・成形まで、制作工程のすべてをひとりで手がける、数少ない眼鏡作家のひとり[/note]さん。
服を作るように眼鏡を一点一点作っています。
丁寧に採寸しその人の顔立ちに合ったデザインを提案します。
全てを手作業で行うため完成まで3~4ヶ月かかります。
一味違ったメガネを望むおしゃれ好きには垂涎の的。フレームは鉄。弦は竹でできています。
「竹という素材は風合いが面白いので華やいだ雰囲気にもなったり穏やかな表情になったり。できる限り無駄を省いたものの中に宿る美だったり生命感だったり、最も洗練された形を求めていきたいと思った」
竹が優雅な曲線に削られていきます。細いつるの中に景色が生まれました。
鉄のフレームは火の洗礼を受けて黒く焼きしめられていきます。
力強さを宿したフレーム。凛とした佇まいです。
山ノ瀬さんの眼鏡の挑戦はまだ続きます。まるで現代アートのような世界。
メガネの可能性を追い求める実験的な作品だと言います。
かけてみるとしぎな光景が。
「メガネは人に最も近い道具だからだと思うんですねだから造形的なその美しさを宿すことができたら。それってそれをかける人も美しいっていうことかなと思うんですよね。それを誰よりもきっと追い求めてるんだろうなって思います」
メガネにあくなき美を求める。メガネはどこまでも新しい世界を広げています。
ryo yamashita | KUJO LTD. 久常商店
眼鏡作家の山ノ瀬亮胤さん。「江戸金枠」という技術で、竹と鉄で眼鏡を作る。初代山ノ瀬亮胤は、徳川家斉に金枠の眼鏡を作っている。現代アートとしか言えない実験的な眼鏡も作る。「できるだけ無駄を省いたものの中に宿る美、生命感」を追う。こんな方が京都、上京区におられたとは知らなかった… pic.twitter.com/fydjzpZlrp
— nofret (@mouchette1967br) 2018年9月9日
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