美の壺「華やぎの ボタン 」

今回は「 ボタン 」。真珠の養殖に使う「白ちょう貝」が、夏服にピッタリの極上ボタンに変身。七色の輝きの裏に、驚きの職人技が!ルビーやトルコ石、宝石をちりばめた豪華ボタンや、色ガラス500ピースを精緻にはめ込んだ鮮やかなボタンなど、欧州貴族の豪華ヴィンテージボタンも続々登場!日常を非日常に変えてくれる、最新デザインのボタンとは…。魅惑のボタンの世界を紹介。

【出演】草刈正雄 パンテル・ステファン 高橋英一 大原千鶴 高橋拓児 【語り】木村多江

放送:2018年9月22日

美の壺「華やぎのボタン」

デザインは無限大・ボタンの世界

銀座に店を構えて70年。

老舗のボタン専門店です。

壁一面に並ぶ色とりどりのボタン。品揃えは1万種類を超えるとか。

開業当時から使っている引き出し。

入っているのは外国製の古いボタンです。

1950年代のフランス製のボタン。

注文を受けて作る高級服・オートクチュールのために制作されました。細工のひとつひとつまで全て職人の手作りです。

「オートクチュールモールは洋服自体をその人のために一着ずつ作りますので、そうなるとボタンもその人のため。その洋服のために合わせて行くたんだと思いますけど。デザインは無限大に広がります」

古今東西さまざまなボタンが作られてきました。宝石のようなボタンは貴族のステータスシンボル。日本でボタンが普及するのは明治時代。洋服とともに暮らしに根付いていきました。

そして今、ボタンは進化しています。服についてるアレなどと、侮るなかれ。奥深いボタンの世界にお連れしましょう。

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自然の輝きは大人の品格

街行く人のボタンをちょっと拝見。リボンがモチーフのボタンですね。一方男性。は皆さんどれも同じよう。

男性こそボタンでおしゃれを楽しむべき。そう語るのは紳士服のオーダーサロンを経営する松はじめさん。

注文服を作る場合。生地はもちろんボタンも選べます。プラスチックや水牛の角、木の実など好みに合わせ色も素材も豊富です。夏に向けおすすめの生地とボタンの組み合わせは。

「夏に向かっては麻の素材です。海のイメージ部ある貝ボタンが合います。

貝ボタンといっても種類は様々。とりわけおすすめなのが白蝶貝。他の素材とは輝きが違います。

「同じ白いボタンでも光沢感が違います」
主役は青い麻のジャケットボトムは爽やかな夏のコーディネートです。
前身頃と袖口にあしらわれた白蝶貝のボタンがアクセント。

麻と貝。自然素材の組み合わせが涼しげな印象を与えます。

一方こちらはウールのスーツ。改まった雰囲気ですが果たして貝ボタンは合うのでしょうか。選んだのは茶蝶貝という種類の貝ボタン。重くなりがちなスーツをリラックスした雰囲気に。光によって品よく輝き。さりげない大人のおしゃれを演出します。どんなスタイルにも静かに寄り添うその輝きは海からの贈り物。今日最初のツボ自然の輝きは大人の品格。

オーダースーツコンシェルジュ ボットーネの松はじめ

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奈良県川西町に国内シェアの半分を占める貝ボタンメーカーがあります。

社長の伴井比呂志さんは三代目。100年以上続く老舗の伝統を守り続けています。

原料となる貝は主に太平洋諸島から輸入されます。

高瀬貝は最もポピュラーな素材。シャツのボタンはほとんどこの貝です。

黒蝶貝は孔雀の尾羽根のような複雑な色合い。

そして白蝶貝。真珠の養殖に使われる貝で、虹色の輝きは宝石のよう。

「ずっと見ると同じものはありません」
天然素材の貝ボタンには一つとして同じものはありません。

その良し悪しはどうやって見分けるのでしょう。
「ギラギラしてますでしょ。こういうのはあんまりことないんですよね」
表面に凹凸や色ムラがあるものは一級品になりません。なめらかで透明感のあるものが極上とされます。

質の高いボタンを作るには材料を削る”型付け”という作業が重要です。きれいな面を選び、削ってボタンの形に整えます。

オモテウラの判断を間違えると質の良いボタンは作れません。この違いを見極められるかどうかが熟練の証です。

仕上げは”ロウ付け”の作業。蝋を曳いた籾とボタンを木箱の中に入れ、艶と手触りをよくします。

籾は蝋を適度に吸収しクッション性もあるため貝を痛めず”ロウ付け”ができます。大正時代から守り続ける製法です。完成した白蝶貝のボタン。光を当てると家から滲み出るように虹色の輝きが現れます。

国産ボタン

貝ボタン・オンラインショップ『川西ボタン倶楽部』 | 奈良県川西町

そのひと粒に歴史あり

日本のボタンの歴史には徳川幕府が深く関わっています。戊辰戦争で幕府海軍を率いて活躍した榎本武揚。

彼が着ていた海軍の軍服にはこんなボタンが。錨の上に大きく刻まれたご存知、徳川家の三葉葵。幕府海軍のシンボルマークです。

このボタンは慶応3年。幕府が初めて洋装の軍服を取り入れた際に採用されました。

デザインの元となったのは当時世界最強と謳われたイギリス海軍の軍服のボタン。

王冠を葵の紋に変えて使いました。

明治維新で体制が変わり、大日本帝国海軍の軍服が制定されても基本デザインは一緒です。

葵に代わって登場したのはさくら。日本人に馴染みのある花を国の象徴として据えたのです。洋装がまだ珍しかった当時、庶民はこの金ボタンを憧れの眼差しで見つめました。

「それまで和服を着ていた人が始めて見た軍服は、かっこいいわけです。それがステイタスシンボルになった。金ボタンが輝いている人=偉いというわけです」
海軍の制服によって洋服が広まり、ボタンも本格的に普及します。今日二つ目のツボその一粒に歴史あり。

辻元よしふみさんの著書

現在日本は世界有数のボタン製造大国。群馬県にある生産量日本一のボタンメーカーの工場です。

1日60万個以上のボタンを製造しています。

前社長の大隅浩さん。およそ70年ボタンと共に歩んできました。ボタンへの情熱が講じて世界でも珍しいもボタン専門の博物館を作りました。 大隅さんが特に気に入っているコレクションを見せてもらいました。

19世紀オーストリアハンガリー帝国の初代将軍がつけていた装飾品。ルビーやトルコ石をあしらった丸いボタンがあります。

模様を抜きした真鍮の板を叩いて丸くした精巧な細工です。

ヨーロッパではボタンはは上流階級の男性の必須アイテムでした。

手の込んだボタンを服や袖につけ、豪華さを競いました単なる留め具ではなくステータスシンボルだったのです。

とりわけ18世紀から19世紀にかけてはボタンの黄金時代。高度な技を駆使して作られました。

18金の土台に小さな色ガラスを500近く並べたカフスボタン。ローマのモザイク技法です。

ボタンは社交の場を演出するツールでもありました。洋犬や狐など狩りをモチーフにしたハンティングボタンはイギリスの貴族の間で流行したもの。

直径2 CM ほどの半球状のガラス。後から模様を彫って色を付けるリバースインタリオという技法です。

こうしたボタンは専用の箱に収められ大切にされてきました。

象牙の薄い板に水辺の風景が描かれた18世紀イギリスのボタン。所々絵が剥げているのは代々愛用されてきた証です。服が駄目になってもボタンは残る。つけた人の記憶を止めます。こうしたボタンを見ると、大隅さんはスイスの小さなホテルを思い出します。

「家族の歴史をボタンにとどめているのです」 親から子へそして孫へ、ボタンにはたくさんの記憶が詰まっているのです

群馬のボタンメーカー

ボタン/服飾パーツの株式会社アイリス|アイリスについて|会社概要

ボタンの博物館


ボタンの博物館【BUTTON MUSEUM】

ボタンの進化

都内にあるボタン専門店。オリジナルのデザインが人気です。

ボタンの中にまたボタン。

ボタンの中に地図。

なんと色鉛筆の削りカス。いずれもスタッフのアイデアから生まれたボタンです。

「何か小さいものを見るとボタンに入らないかなと思ったりしてます」

穴が5つも。いったいどうやって使うのでしょう。

「ボタンの穴は二つとか四つ。それ以外はないかといつも考えた時に作られたのがこちらになります」

糸をかけると星の形になるんですね。糸の色や大きさを変えれば組み合わせは無限大。デザインにルールなし。今、ボタンに再び熱い視線が向けられています。今日最後のツボ。ボタンが生み出す可能性。

ボタン専門店「アンドストライプ」糸が星型になるボタン

&STRIPEさん(@and_stripe) • Instagram写真と動画

商品検索 – ボタン通販|| & STRIPE ONLINE || アンドストライプ, オリジナルボタン,ボタンアクセサリー

自らの主張をボタンに込めるデザイナーがいます。テーマは時間。模様や布を少しずつずらし動きの軌跡を表しています。

ボタンも連続写真のようにずれ、時間の概念を表しています。

この不思議なボタンを作ったのは森永邦彦さん。レディーガガをはじめ世界中にファンがいます。

二体のマネキンを縦と横に引き伸ばしそのサイズに合わせて作った服。

ボタンも縦横にそれぞれ引き伸ばされています。人の体という制約を超えた新しい服のあり方を模索したいと森永さんは言います。

7年前に発表したコレクションは世界に大きな衝撃を与えました。

「この形が最も良いのは立方体の体をした人ですけれども、そういう人はいないので、ただその人間の体が着ることでそれは体に合わないとか、似合わないとか、体に対してずれるとか、そういうことになるんですけれども。そこのズレというものがデザインになるんじゃないかという作品です」

奇抜な形ですが森永さんはあくまで着るということにこだわっています。

袖を通すと立体の状態とは打って変わった柔らかなライン

ところでボタンは角の部分に合わせて直角に曲げられています。

普段なにげなく止めるボタン。

しかし、直角のボタンはねじ込んでから引き出すという動作が必要です。いつもと違う指の動きがいつもと違う自分を引き出すのではと森永さんは考えます。

「化粧時に今まで感じたことはない違和感があるとかボタンは服をとめるものですけれども何かそのボタンているかひとつのきっかけになったり一辛いの食べたり立ったり一つはその敷地になったりしてあの違う世界へ誘ってくるようなものになればいいなと思ってます」

たかがボタン。されどボタン。小さなボタンが人生を変えるかもしれませんね。

ボタンデザイナー森永邦彦さん著書

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