昨秋、香港にアジア最大規模の美術館「M+(エムプラス)」が開館した。
美術のみならず、建築、デザイン、映画、大衆文化など広範囲なビジュアル・カルチャー全般を扱うM+では、出会えるものも型破り18階建てのビルの壁面自体が≪LEDスクリーン≫。
≪8万体のフィギュアの海≫があれば、≪多機能に形を変える不思議なアパート≫をそのまま再現した部屋も。
M+とスタジオを中継で結び、現場にいる気分で空間全体を楽しむ。
初回放送日: 2022年3月6日
日曜美術館「開館!アジア最大のアートスポット 香港 M+美術館 」
美術ファンが待ちに待っていたミュージアムが誕生しました。
去年秋、香港にオープンした、アジア最大級のアートスポット「M+(エムプラス)」そのコレクションはこれまでの常識を打ち破るものです。
部屋いっぱいに土の人形。
中国現代美術が丸ごとここに。
香港の風物詩のようなネオンサイン。
これも美術館の展示です。
M+(エムプラス)とはミュジアムプラス。
従来の美術館を超えるプラスとハ一体なんなのか。
開館したばかりのM+(エムプラス)に日曜美術館のカメラが向かいます。
日曜美術館です。
今日は香港で注目の美術館M+(エムプラス)です。
世界中の人が楽しみにしていて、去年の秋にオープンしました。
現在は新型コロナウイルスの影響を受けて休館中です。
今日は香港と中継で結び、休館中の美術館に特別に入ることができます。
ゲストをご紹介しましょう。
この美術館の開館をとても楽しみにしてくださっていた、森美術館館長の片岡真美さんです。
よろしくお願いします。
「待望の美術館で、コレクション自体は十年前ぐらいから始まっています。今か今かとアート界の人達が待っていて、本来であればこの三月にアジア地区最大のアートフェアがありますから、それに合わせてみんな行こうと思っていたところだったんですよね」
私たちを案内してくださる香港のお二人をご紹介します。
プラスのデザインと建築のチームのリードキュレーター横山いくこさん。
そして香港を取材してきたの若槻真知香港支局長です。
よろしくお願いします。
せっかくオープンしたのに今お休みになってしまったんですよね。
「そうなんです。残念です。11月にオープンしてから一月の最初の週まで凄い連日皆さんに来ていただいたんですけど急速なコロナの感染の状況を踏まえて四月ぐらいまで多分休館になりそうで、海外の皆さんに来ていただくまでにはちょっと時間かかりそうなので今日は特別に幾つかのスペースをご案内したいと思います」
若月さんは取材されてきたっていうことですけどもオープン当初はいかがだったんですか。
「新しいものが好きな香港の人達とても多いのであのオープン当初は大変な賑わいでした。新しい観光スポットができたという意味もありますし、香港の市民の人たちが身近に芸術や文化に触れる場所という意味でもとても期待が高まりました。そして香港だけではなくて中国政府としても香港を文化芸術の発信地として発展させていきたいという計画もありますので、そういう意味でもとても注目されている場所なんです」
私たちは今日特別に入れるということでお願いします。
早速中に入りましょう。
メインホールです。
二本のエスカレーターで二階のギャラリースペースに行きます。
動いているデジタルのサイネージ「ドナーウォール」です。
日本のインタラクティブデザイナーの中村勇吾さんに作品としてこういうデジタルサイネージを仕立ててもらいました。
そして桜吹雪のように散っていきました。
作品の一部になってるっていうことで皆さん美術館に関わってるっていうなんか雰囲気がみんなあのサポーターも美術館の中にこう取り込むような形であの活動をしていきたいっていうところが象徴されているかなと思います。
すごく広いのでナビゲーションするのが大変なのでまずこのインフォメーションカウンターに来ていただくとオレンジのシャツを着たスタッフがお迎えしてくれます
ここでまずマップとガイドもらってください。これがマップで散歩みたいに広場をぶらぶら歩く感じでもいいのでこれに沿って歩きましょうみたいなのないんですけど
東西北。
三つの入り口から自由に出入りできるエムプラス。
そのコンセプトは開かれたミュージアムです。
設計を手がけたのはスイスの建築家ユニット、ヘルツォーク&ムーロン。
国際的な建築コンペティションで選ばれました。
ミュージアムのコンセプト作りからキュレーターと共に手掛けるという斬新な建築コンペでした。
外から見ても印象的な三角屋根は一階に設けられたラーニングハブ。
教育のためのスペースが館内で一番眺めがいい場所に。
専門のチームがワークショップや講演会をプログラムします。
建物を特徴づけるのが「発掘された場所」という名のダイナミックな地下空間。
真下を通る地下鉄のトンネルが掘り出されたかのようにむき出しになっています。
ここにはどんな作品が。
「へギュファンという韓国人のアーティストの作品の音を聞いてもらいます」
音がずっと空間に広がってる感じなんですね
「韓国の子供の童話からヒントをえたっていう作品で、ソニックレスキュー・ロープっていうんですけど、たくさんの鈴がついていて音の反響を生かして平和の祈りみたいなそういうものが現れている作品だと思います」
「最初のオープンのときはもうみんながすごい触りたくなっちゃって大変なのでトレーニングされた作品の係員が定期的にならしてます」
「コンクリートのスペースっていうことと、斜めのやっぱ対角線みたいな空間。正方形じゃないっていうところなんかもダイナミックに。空間の高さだとか奥行きみたいなのを生かした作品を今後もここのスペースに合わせて作品のコミッションなんかもしていくので、私たちもどうやって使うかっていうのが凄い楽しみにしてます」
Mプラスは香港の街をそのまま取り込んでいるかのようです。
入り口に並ぶランプシェイド。
とってもスタイリッシュですが香港の人にとっては親しみ深い形。
市場の照明器具と同じ。
こちらは香港の夜を彩る原色のネオンサイン。
伝統的なネオンの職人はもう少なくなってしまいました。
Mプラスでは消えゆくネオンサインをコレクション。
ネオンを修復する様子が見えるようにしています。
「香港の視覚芸術をテーマにした展覧会になっていて、美術以外にもビデオやゲーム、広告、グラフィック建築などが集まっている展示コーナーになってます」
「最初の扉なんですけど、これはあのキングオブカオルンっていう香港で2000年代の後半までなくなるまで香港の街中を特にこのカオルンを町中をキャンバスにずっと自分のカリグラフィというか、文字を色んなところに書きあの続けた人で、その人のこれもその街中にあったドアにキングオブカオルンが書いたものを保存してここに持ってきています」
「いわゆるストリートあーと・グラフィティみたいなものなんですけど、おまけに書いてる内容っていうのも彼のイマジネーションというか、自分はクーロンの王様であるっていうそれをこう受け継いだものであるという家系図みたいなものが、本当じゃない彼の空想なんですけど、そういうものを町中にメッセージとして書き続けて、すぐ警察だとか公安とか清掃の人とかやり取りをしながら、書いては消され書いては消されっていうことをしたので、みんなそれで彼のことを覚えている人もいるんです。
有名人で、漂白剤の広告にも出演して自分で書いたものをこう消されるっていうユーモアがある。トレーニングを受けてないあの作家なんですね。なのでその自分の空想と想像力を作りたいっていう意志だけに突き動かされて作品を作り続けていた作家です」
「展覧会で最初にこの人を持ってきたのはすごくいいなと思っていて、Mプラスが美術だけではなくてインクアートとか建築とかグラフィックデザインっていうものをあつめていてそれを香港っていう角度で切り取った時に何が見えてくるのかっていうまあそういう見方ができるのですごくあの興味深いなと思いますし、まちょうど今香港の人たちしか見ることができていないのであの新しくできた美術館に地元の方たちが来て外外国の知らないものばかりが並んでいるのではなくて、自分たちにもよく分かる自分たちのことが美術館に入っているっていうのを見られるっていうのも凄くいいですよね」
「若い人たちにとってみると凄く香港らしいものを香港らしさというものが凄く感じられるものなんじゃないかなという風に思いますね。ご存知の通りここ数年間香港社会運動活発になってそうした中でその香港の人達が香港らしさとは何だろうということをすごく意識するようになったんですね。そういう意味でもこういったものがその自分たちのルーツ。自分たちの香港の文化というものに対する意識の高まりとともに若い人と特に若い人たちにとってすごく誇らしいもので大事なものという風に思えるようになってきたんじゃないかなっていう風に思います」
「Mプラスの一つの視覚芸術って言ってポイントもあって、この作品を最初に持ってきてるんですけど、そのいわゆる芸術っていうものがその理論的とか歴史的な評価の枠を超えてエスタブリッシュされた美術があると同時に起こっている表現活動みたいなものがの繋がりだとかそういうものから生まれる町中とか人々の共感みたいなものを含めて言った人達は収蔵しようとしているのでまあこれはそういう意味ですごく象徴的な作品になってます」
「これはあの原寸大で香港の実際にあるゲーリチャンっていう建築家が住んでいるアパートを再現したものでちょっとすごく変わってるので中に入ってご案内します」
原寸大のアパート。
ドメスティック・トランスフォーマー
「ここすごい今広々とあのすっきりしてますけど、ここからからくり屋敷みたいに
色んなものが出てきます。テレビ台の裏がキッチンになってて、食洗機もあるんです。狭いところでお料理しないでも広々とここにスパイスとかも入れられて、お料理ができるっていう。ここの時はここにいたいのでこっちが狭くてもいいじゃないとかそういう発想ですね。このラックの奥にはお風呂のバスタブも出てくる。クロゼットもあって、狭くても自分の好きなものを諦めない。広いベッドは広いベッドで寝たいし、お風呂も入りたいしっていう、そういうところを我慢しないっていう発想のシステムのアパートになってます」
「住宅が足りないというのがすごく社会の中でも問題になっていて、日本でイメージするような普通の家庭五人とか四人とか家族が住んでいるスペースがとっても狭いなという風に思います。香港のテレビとかを見てますとここまでではないですけどどんなふうにその自分の狭いなりにどんなふうに工夫して暮らすかっていうような、特集の番組っていうのとても多いですね。すごく人気があります。どういう風に快適に狭いなりに快適に過ごしていくのかっていうのは香港の人たちにとっても大事な課題なんだなっていう風に思います」
「視覚技術を使うっていうのは偉い作家の作品を見て見て、分かる分からないっていう感想ではなく、自分のところに近く感じられるような要素があるみたいな意味では、やっぱりこここのフルスケールで見せて、模型とかビデオで見せてもいいですけどそれだけだとフルスケール感って分からないじゃないですか。これ三十二平米なの随分違うとか、そういう感想っていうこと自体が美術作品とかデザインを
その超えたところでデザインしてもらうきっかけになると思って、こういうインスタレション持ってきました」
さあ今度は二階に上がります。
「ここには東西南北に絵と四つのギャラリーがあるんですけど。全部で部屋の数は31ギャラリになっています。ここが私が担当したデザイン。建築のコレクションがメインのギャラリーで本当はいっぱいこのギャラリーには日本以外の色んな国の作品があるのでお見せしたいものはいっぱいあるんですけど、次のギャラリーに向かいます」
横山さんは日本のデザインはアジアにおいては人々の暮らしを変えるライフスタイルチェンジャーの役割を担ったといいます。
迎えてくれたのは1960年代前半に海外へも輸出された日本の三輪自動車。
「日本では三輪自動車って寿命は短かったんですけど、その後東南アジアのすごい混んでる街とか、道路。整備ができてないところとかで重宝されて、小回りが利くっていう東南アジアとか南アジアの交通も変えたという一つの例ですね。東芝の1955年発売の世界初の全自動炊飯器で、そこに置いてあるのが60年代から東芝の技術提供を終えて始まった台湾の炊飯器。全くほぼ同じですよね。この炊飯器っていうのはそのもうこれで家事から凄いもう薪から解放されるんですけど、ライフチェンジャの製品が生活を変えていくんですけど、変わっていくスピードだとか
使い方っていうのが随分国によって捉え方が違うなっていうところが、台湾人の同僚がいるんですけど彼女とか聞くと、このこんな凄いレトロなモデルを未だにみんな
台湾では使ってて、蒸したりとか使い方が私たちの想像を遥かに超えるぐらい使いこなしてる」
「香港の人たちがその日本に親近感を持っているなって感じるんですね。それはやはり身近なところでたくさんの日本の製品をたくさん使う機会があって身近な生活の中で日本をすごく身近に感じてきてたんじゃないかなっていう風に思います」
「色々なものをいつも探偵業のように集めてくるんですけど、これは何とか守らなきゃっていうものをご案内したいと思います」
「私はこのカウンターの中にいます。いらっしゃいませ」
この寿司店は1988年に東京新橋に開店。
1014年にプラスが購入。
2021年に移築されました。
倉俣史朗がデザインした店内はお寿司屋さんとは思えないモダンな空間です。
「扉も凄くシンプルですけど何もないみたいに見えますね」
「ここには実はあのすごく楽しいお宝があるのでお見せします。壁じゃないのこれはキャビネットなんですよ。これは当時当時の食器。お寿司屋さんの折ってありますよね。薄い木の。美しいですよね。でその多分それにつけていたナプキンなんかは布で物があったりとか。これ自身は倉俣さんのデザインとか。当時のお寿司屋さんの大将が使われたものなんですけど。デザイナーがデザインして。そこにまた大将の色んなものの世界観が入ってくるっていうこともやっぱりデザインの現実なので、今までこの倉俣さんの本が出版されても、空間の写真はあってもこういうものっても見えないのでこういうところが見せるところもちょっとうちらしいやり方」
「皆さんにお寿司出さないのかって言われるんですけど、美術館のギャラリーなんで衛生局とかのライセンス取ったりとか、水回りもないのでなかなかチャレンジなんですけど。でもまず最初はこれですね」
お寿司の代わりに出してくれたのはMプラスのために日本で買ったコレクション。
たまごっちですね。
寿司屋だけにたまごっち。
「デジタルなものにも命があるみたいなことを感じられる日本人みたいのがすごいかわいいなと思って収蔵しました」
「今ここはギャラリーのあったフロアの真上に当たる屋上庭園。美術館の中の建物を入らなくても外側からエスカレーターで繋がっていて、市民の公園みたいに自由にみんながヨガしたりジョギングしたりしてる人なんかもいて自由に入ってこれる公園になってます。昼間はあのここがモニターになってるので全然気付かないような作りなんですけど毎日夕方六時になると埋め込まれている五千個のLEDが光ってMプラスからのメッセージだとか作品のコレクションのモンタージュしたアニメションだとかがみられます。私たちにとってやっぱここは広告塔じゃなくて、ギャラリー一つの扱いとしてコミッションワークをしていて、一つお見せしますね。携帯電話で遊ぶゲームなんですけど、これはオンラインで今東京の皆さんとか世界中にいる皆さんが参加できるゲームで今この携帯の中が生簀なんですけど、七時からこのファザード自体が全部生簀になる。そうすると自分のアバターのお魚がファサードに映っていて、ぐるぐる回すと私の魚を確認できるような、世界中からも参加できるし、ここにそれが映るっていうインタラクティブな作品をオランダべースのスタジオモニカっていうデザイン事務所に作ってもらったところです。全部完成するまで三時間か四時間ぐらい触ってなきゃいけないんですけど最後の終わり方が凄い哲学的であの面白いので是非皆さんもやってみてください」
「香港の人達だけではなくてその世界の人達の中で町がどういう風になっていくのかっていうのはすごくまあ楽しみでもありますし、知ってほしいなっていう風に思いますので、香港が今どうなってるのかっていうことを伝えていきたいなっていう風に思っています」
「ミュジアムプラスのプラスが何なのかなと思って、今日楽しみにしてきたんですけども美術だけではなくてデザイン、建築、そしてまあらゆるビジュアルカルチャー、それから作品だけではなくてアーカイブも五万点ぐらいあったりとか、これからの美術館がどうあるべきなのかっていうことを、今改めてそのプラスの中に込めて考えさせてくれるなと思いました」
ただ絵を見る美術、触れる、それを享受するだけの場ではなくて、研究や他者の交流や市民の憩いの場にもなるっていう美術の余白の広がりをプラスとして表現しているっていうこともあるし、他の地域や他の国の人々をつなぐプラス、加算っていうか繋ぐ記号っていうのもがこの美術館のプラスなのかなと思いました。
一番の目的はここが今これから皆さんの道具箱として美術館があるんだっていうことを分かってもらって使ってもらえるようになってくっていうところが一番重要です。